聖マリアンナ医科大学病院臨床研修Blog

聖マリアンナ医科大学病院に勤める研修医たちの日々の情報をリアルにお届けいたします。

指導医の役割

2011-01-23 21:09:33 | 医学教育
臨床指導医ガイドラインでは指導医の役割を次のように紹介している
指導医には単に医学知識や臨床手技を教えるだけでなく
その他の様々な役割を果たすことが求められている

ここでは6つの役割に整理して概説されている
指導医には様々な役割があるが
質の高い臨床研修を保証するためには
すべての指導医が自分自身の果たすべき役割について共通の認識を持つ必要がある
そうでなければ指導医によって研修医への対応に大きな差が生じてしまい
結果として研修医は指導医に何を期待してよいかわからず
看護職など他の医療職の人々もどのように医師の研修に協力してよいかわからないであろう
そのように解説されている

医学知識とその検索・活用方法を伝える
膨大な医学知識すべてを、一人の医師が記憶することはもはや不可能である。
とくに近年、毎年数十万篇もの医学論文が発表されていて、なかには、従来定説となっていた知識が覆される事例もある。このような、いわば「生きている」医学知識に常に追いついていくことは、狭い専門分野に限ってさえ容易ではな い。
指導医には膨大な知識を切り売りすることのみが求められているわけではなく、診療上頻繁に必要となる医学知識と救急処置に必須の知識を除けば、むしろ、必要な時に必要な知識を短時間で入手、活用するテクニックを伝えることのほうが重要である。

臨床手技(スキル)
1.医療面接のスキル
2.身体診察のスキル
3.基本的な検査手技
4.基本的な治療手技
5.診療記録の書き方

診療の一般原則を示す
経験則
臨床判断・決断の原理・原則を診療のルールとして、印象深い文章で簡潔に表した教えは数多い。
「診察時に、患者が痛みを訴える部位を必ず触診しなさい」、「薬の変更は1種類ずつ行うこと」など、枚挙に暇がないであろう。このようなルールを、実際に受け持っている患者について、タイミン グよく教える。
臨床判断・決断の根拠
指導医としては、臨床判断・決断を経験則に頼るのみでなく、論理(Reasoning)に則った科学的な アプローチも教える必要があろう。臨床判断・決断の根拠には、次の4つの情報源がある。
1.病態生理学的知識
2.過去の患者群で得られたデータ
3.患者の意向・選好
4.社会的規範(倫理、道徳、法律、経済などの要因)
以上の情報源から得られた根拠(エビデンス)がそのまま臨床上の疑問に答えるもののこともあれば、複数のエビデンスを統合して最終判断を下さなくてはならないこともある。複数のエビデンス を統合する手法としての決断分析(Decision Analysis)や費用効果分析(Cost-effectiveness Analysis)は今後ますます重要になるものと思われる。

研修医の精神心理面へ配慮する
研修はストレスに満ちている。指導医は、研修医の認知面、身体面での負担の大きさ、その結果としての情動面での脆弱性に十分配慮しなくてはならない。当然、研修医一人ひとりの能力を十分見極めた上での配慮ということになる。

1)研修医が学ぶべき医学知識や技量が一時に能力を超えて多くはないか?
1.受け持ち患者数は適切か?
2.今まで受け持ったことのない病気の患者ばかりではないか?
3.新しい手技を必要とする患者が多くはないか?
4.プレゼンテーションやカンファランスでの発表が矢継ぎ早に当っていないか?

2)身体的な負担が、能力を超えて大きくないか?
1.週間ないし1ヵ月あたりの当直回数は多くないか?
2.重症患者や救急患者のケアで、睡眠時間が短すぎないか?

3)情動面での負担は大きくないか?
1.人の生死に立ち会うということ自体のストレスの大きさ、仕事量の多さ、身体的な疲労などが重なった結果としての情動面の問題はないか?
2.特別な場合ではあるが、研修医が医療上の過誤を犯した場合のカウンセリングが適切に行われているか?

研修医を評価する
指導医が研修医を評価する目的にはいくつかある。
第一に、わが国の医療体制のなかで診療を任せられるだけの臨床能力を備えた医師であることを国民に保証するため(総括的評価)である。
第二に、 評価することで研修医の学習意欲を高め、より優れた医師になってもらうため(形成的評価)である。研修医の学習意欲を高め、研修目標を達成するために適切な方向に向かっているのかを知らせる上で形 成的評価は非常に重要である。
誰でも自分自身、どのように他人から評価されているのかは気になるところである。子供に比べて大人は、第三者からの評価にとりわけ敏感であり、学習の達成度に大きな影響を及ぼす(成人学習理論 Adult Learning Theory)。したがって、研修医についても、一般的には、成人学習理論に基づき、指導医は次のような形成的評価の仕方を心がけるべきであろう。
1)研修医の優れた点、良いパフォーマンスを見つけて褒めることを忘れない。
ただし、褒め方も節度のある褒め方であるべきで、歯の浮いたような褒め方、誰についてもいつも同じ褒め方では逆効果とな る。
褒めるときには、衆目の面前で褒めるとよい。
2)良くない点、改善を要する点についても必ず言及する。
これらの点を指摘することこそ形成的評価の 最大の目的である。しかし、あくまでも指導医が自ら観察した研修医の決断や行為について具体的 に指摘するべきで、性格を非難したり、人格を否定したり、一般化するような言葉を投げかけてはならない。
悪い点、改善点の指摘は、個人的に、1対1になって行うべきである。
3)良くない点、改善を要する点について言及するにあたって、どうしてそのようなパフォーマンスになってしまったのか、研修医に説明してもらうこと。
行動の背後にある論理、思考・認知過程を理解するこ とで、どこに誤りがあるのか明確になることが多い。
また、研修医にとっても、問答無用に非難されたとの反発心を抱く可能性が少なくなるはずである。

ロールモデルとなる
指導医が果たすべき最も重要な役割は研修医のロールモデルとなることであろう。
医学知識を伝授するのみでなく、臨床現場での技能や態度を伝えるためには、同時代を生きるモデルとしての振る舞いが必要である。指導医が医師としてヒューマニズムあふれる診療態度や教育態度を示すことにより、研修医はそのような態度を自然に身に付けていくものである。実際、学習者は「するようにと教えられたこと」よりも「実際に行われていること」により強く影響される。
指導医はロールモデルとしての役割を十分に認識し、思慮深く振る舞う必要がある。一人ひとりの研修医の能力やニーズ、パーソナリティーの違いに配慮し、できるだけ教育のための時間(ディスカッションとフィードバッ ク)を取ることが望まれる。教えることによって自分自身も学ぶという指導者の態度は、それ自体、生涯学習の態度として研修医に伝えるべきものである。


ここまで指導医ガイドラインからいろいろ紹介してきた
本学の指導医にもいろいろな方がいると思う
ただここに紹介しているものは全国の医学教育に精通した指導医が示しているものであり
私たちが参考にすべきものと考える

研修医がこうだから指導医もという発想はどうであろうか
少なくとも研修医はまだ医師はこうあるべきであるというものが見えず
だからこそ研修しているのだと言えないであろうか

研修医がポートフォリオを十分に理解せず行動することに対して
我々指導医がなすべきことは
まず実践してみせることだと考える

少なくとも
本学には研修医にきちんとポートフォリオを持ってこさせて
目の前で評価している指導医がいる
一人で夜な夜な1ページずつ印鑑を押し確認している指導医がいる

だからこそ研修医は
そのような指導医がいることをきちんと理解して
自分の作成しているポートフォリオを提出することを自覚してほしい

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。