聖マリアンナ医科大学病院臨床研修Blog

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指導医日記 ~形成的評価と総括的評価~

2011-02-27 10:47:28 | 医学教育
指導医養成ワークショップで混乱してしまう言葉に
『形成的評価』と『総括的評価』がある

研修医のポートフォリオにも形成的評価と総括的評価があり
日頃指導医から質問を受けることが多い

指導医ガイドラインから引用すると
教育評価は
学習者(研修医)の可能性を引き出し成長・向上を促すフィードバックを行う形成的評価と
目標達成の程度を把握して成績をつけ、合否などの判断をする総括的評価とに大別されるのである


形成的評価 Formative Evaluation又は診断的評価 Diagnostic Evaluationというものは
それぞれの研修診療科において研修到達目標を修得しているか否か
つまり学習中にその形成過程の改善を目的に実施される評価である
つまり
その評価結果は研修医の学習や指導医の指導方法を是正し
日頃の研修内容の改善へのフィードバック資料となるべき内容となる

一方
総括的評価 Summative Evaluationとは
達成された研修目標の程度を総括的に把握するための評価である
通常は研修診療科の終了時や全研修が終了した時期に実施され
修了判定のために行われるものである

単に研修修了判定のみの目的であれば
総括的評価が研修2年目の最終段階にのみ実施されればいいことになる

これまで医学教育において総括的な評価が重要視されてきた
医学部における学習のように
総括的評価のみで学科の学習目標に到達したか否かを判定しようとする場合には
これを合格した者の中にはいわゆる「一夜漬け」で学習したものもいるかもしれない
実際小生もこのタイプだった

このような学習者のその後の忘却のスピードは極めて速い可能性が大きい
それに対して1学習単位ごとに形成的評価からのフィードバックを受けて
効果的な学習を行い
前述の学習者と同じレベルの合格点を総括的評価で取った学習者の忘却曲線はなだらかとなることが報告されている

研修における学習のプロセスにおいて頻繁に実施すべき形成的評価が極めて重要であることは明白である
研修のどのタイミングでどのように評価を受け適切なフィードバックが得られるか

これが研修医の成長に大きな影響を与えることは間違いないのである

ポートフォリオは聖マリアンナ医科大学においては義務である
義務化することで常に意識させている
評価表にすべての研修目標が記載されているのは
常に意識することになるためである
電子化は達成度の低い海外のポートフォリオで多いに応用されつつある
国内でも専門の業者すらあって興味深い

今後は比較検討しないといけないであろうが
形成的な評価が実践されない限り十分な効果が得られない可能性が高い

ある程度振り返りが可能なレベルに成長していれば
パーソナル・ポートフォリオとしての電子化は進めるべきであろう

もしくは医学部の一部の評価に用いるのもいいかもしれない

いずれにせよ
形成的評価と総括的評価は単なる言葉の違いだけではない
大きな目的の違いがあると感じている

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