個人情報

　「今ホテルに着いたから、墓参に付き合ってね」と姉からの電話。
　快く承諾して定宿のホテルに出向き、名前を伝え呼び出しを頼んだ。

　ホテルマンはPCで調べて「個人情報ですから呼べません」と言う。
　「私が来るのを待ってるのよ」と頼んでも頑として聞き入れない。

　「携帯で直接連絡したらどうですか」と迷惑そうに突き放す。
　姉は携帯は持ってない。途方にくれたがあきらめるより他ない。

　帰路、姉から私の携帯に連絡が入り今回は別のホテルだと言う。
　お互いが確認しなかったのが間違いの元、何とか落ち合ったが…。

　それにしても個人情報を盾にあのホテルは意地が悪い。
　

古い駒下駄

　私は着物は似合わないし好きでないから洋装で通してきた。
　嫁入り道具も周りの心配をよそに着物類は持参しなかった。

　すると結婚最初の夏、姑さんが浴衣一式を揃えて下さった。
　着物は苦手とも言えず１回だけ袖を通し桐の駒下駄も履いた。

　それっきりタンスの奥で眠っている。浴衣は色あせたかも？
　先日物置からその下駄が出てきた。履くと軽くて心地良い。

　赤い鼻緒も可愛らしいので庭下駄として履くことにした。
　素足によく馴染んでカラカラ鳴る音も何だが楽しい。

　あの当時の姑は現在の私の年齢より若かった。色々思い出す。

梨の季節

　毎年、今頃になると「○○さんちの梨！」と夫が催促し出す。
　友人の紹介で知り合った○○さんは「古谷の梨」の生産者。

　夫は果物にはこだわりがあって割合頑固を通す。
　「そこのじゃないといけない」ので予約して取り置いてもらう。

　いつもとは限らないが形不揃いのB品を勧めてくれる時もある。
　生産者の勧めてくれる品は当たり外れがなくてお買い得！

　梨の次は柿が楽しみ、これも決まった人から分けてもらう。
　他にも苺、西瓜、イチジク、ミカンなどもよく食べる。

　男性でこれほど果物好きは珍しい？私も果物には目がない。

　

物忘れ

　誰でも還暦を過ぎた頃から物忘れを自覚するようだ。
　予定や約束事はカレンダーにメモするようにしている。

　今日は銀行さんが来る日、昨夜しっかり確認していた。
　それなのに朝にはきれいさっぱりと抜けていた。

　買い物に行こうとしているとチャイムが鳴る。
　「誰かしら？」開けると制服姿の担当者が立っていた。

　「あれっ！忘れてたわ、ごめんなさい」と慌てて招き入れる。
　タッチの差で迷惑をかけなくて済んだが自分で嫌になる。

　今後は朝に夕に確認しなくちゃぁ、油断禁物、情けない！

籠の鳥

　最近、夫の介護が少し楽になって緊張感が薄らいできた。
　有難い反面、中途半端な解放感がまどろこしい。

　私は籠の鳥？　自由なようでいて夫に縛られている。
　滅私奉公とまでは言わないが夫のペースで１日が暮れる。

　毎日体は多忙なのに心は退屈で仕方ない？
　人のペースに合わせるのが苦手、我儘なのだろう。　

　折り合いが大事と分かっていても逃げだしたくなる。
　でもそれは許されない事、理性と感情の板挟みになる。

　上手に気分転換すべし！答えも出ているのにグダグダ悩む。　

　

取り越苦労？

　何でこんなにと思うほど腹が立つ時がある。
　夫の食いチューブが原因、注意しても暖簾に腕押し？

　「健康を考えているんだから勝手に食べないで！」と私は怒る。
　規則正しい生活が大事と思うのに時間に無関係に食べ物を漁る。
　

　お腹満腹と言った尻に、冷蔵庫を開けて盗み聞いをしている。
　後１０分もすれば食事の時も、待ちきれなくバナナ等を食べる。
　

　「冷蔵庫に鍵をかけるわよ」と怒ると「腹が減るもの」と言う。
　好きにさせる方が私は楽だが放っておく訳にもいくまい。

　痴呆の始まりかなと心配する。取り越し苦労であってほしい。

新品好き

　ボウリングの日、早く来すぎたので商店街で時間潰しをした。
　クリアランスセール５０％引き、紳士服売り場で足が止まる。

　マネキン着用のシャツが夫に似合いそうだったので買った。
　帰宅して披露すると「買わなくても一杯あるじゃない」と言う。

　「来年用よ。古いのは沢山あるけど新品もないと困るのよ」と私。
　「１年先、生きてる保証なんかないよ」そんな事を言う。
　

　縁起でもないと怒りたいが夫の言い分も一理ある？一寸先は闇。
　「それなら明日のディ行きから着ればいいわ」となった。

　夫は満更でもない表情で「うん」、要するに新品好きなんだ。
　

しゃっくり

　朝食を終えた頃からしゃっくりがヒックヒック出だした。
　水を飲んだり、咳払いをしてみたが止まらない。

　気になるとその事に気がとられて意識が散漫する。
　しゃっくりで体調を崩す人なんていないと思うが不快！

　気にしている間は駄目だがふと気が付くと止まっていた。
　昼間は忘れていたのに夕食後また始まっていた。

　こんなしつこさは何年振りかな、イライラしてくる。
　それでも入浴する頃には自然に消えていたから不思議。

　痛くも痒くもないがしゃっくりは苦痛、招かざる客。
　

迷子扱い

　夫が「病院に連れて行って」と言う（かかりつけ病院にディ施設も併合）
　曜日は違うが同郷人が同じ施設に通ってると聞いたので会いたいと言う。
　

　同郷と言っても小豆島は６万人近くの人口、知人の確率なんてゼロ！
　説得しても聞く耳持たないので１時間後に迎えに行く約束で連れて行く。
　

　迎えに行くと施設の職員に付き添われてベンチに座っていた。
　「館内をうろついていましたから保護しました」と迷子扱い？
　

　夫の会話力では来た目的を説明できず相手を探して歩いていたのだろう。
　「迷惑かけました」と私は謝まったが夫は「迷子じゃない！」と不機嫌。


　夫は院内で迷うことはないと思う。３０年近くの通院だもの。

　

慇懃無礼

　今日は携帯電話の件でAUに寄る用事があった。
　事が済み、帰る際に店員さんの態度に違和感を覚えた。

　二人の店員が外に出てきて車が出るまで見送ってくれる。
　腰を直角に折りそのままの姿勢で頭を上げようともしない。

　マニュアルに従った行為と思うが馬鹿丁寧で芝居じみている。
　この猛暑、一刻も早く涼しい店内に戻りたいのが本心と思う。

　客に感謝の意を示しているのだろうが「止めて」と言いたい。
　車屋でもメガネ屋でも似たような見送りをされた経験がある。

　それも仕事の一部かもしれないが、やりすぎは返って慇懃無礼。
　

台所戦争

　昼の片づけを終え冷蔵庫の中を見ながら夕食の段どり等を考える。
　買い物に行った日は材料豊富で楽だが有り合わせの日は頭を使う。

　いつも４時半に私が取り掛かるよりも早く夫は食卓で待っている。
　せわしない！私が料理を出すのと夫が食べるのが競争みたい。
　

　まず常備食の煮豆とか佃煮、漬物、時には出来あいの惣菜を出す。
　次は冷奴とか刺身など生もの、食べている間に煮物に取り掛かる。

　和え物や火の通りやすい炒め物等も作り煮物も仕上げて最後は汁物。
　最近は品数多く１皿の分量は少な目を心掛けている。果物も１品。

　全部並べると結構立派と自画自賛する。１日の中で１番頑張る時間。

トウモロコシ

　近所の方から北海道旅行の土産にトウモロコシを２本頂いた。
　「好き？」と聞かれ「買ってまでは食べない」と正直に答えた。


　トウモロコシは数回しか食べた事はないけど欲しいと思わない。
　「美味しいから食べてみて！」と言われて折角だからゆでた。

　夫に２分の１本を出したら「歯に引っ付かかりそう」と敬遠する。
　ところが私が食べて驚いた。甘くてみずみずしくて美味しい！

　私の食べっぷりに釣られ夫も口をつけ「美味いなあ」とニッコリ。
　結局１本半を私が食べた。トウモロコシがこんなに美味しいとは？

　食わず嫌いとはこの事だろう。ピュアホワイトという銘柄だった。

遠方より友来る

　旧友から電話が入って「墓参りに来たけどちょっと会える？」
　先方の都合で１５分程度しか時間的余裕がないそうだ。

　それでも構わないと浮き浮きした気分で待ち合わせ場所に行った。
　５年ぶり位の再会になる。今回は初対面の旦那様も同伴していた。

　彼女とは中学２年以来の友達で現在徳島在住、５５年の付き合い。
　数年に１度、顔は見る機会はあるが普段は年賀状のやり取り程度。

　彼女は最優秀の成績、私は及びもつかなかったのに何故か仲良し。
　束の間の再会だったが連絡してくれたことに感激、嬉しかった。

　お土産に鳴門金時芋と梨をもらう。私はコーヒをご馳走して別れた。

二人でお茶を

　今日は普段はあまり行かない近所の直売所に行ってみた。
　この夏は夫がトマトに凝っていて底なしに欲しがる。

　トマトなら体に悪い事はないと思って要求に応えている。
　それで品切れになったので買いに行った。パン屋も食堂もある。
　

　パン屋のモーニングサービスの看板の前で夫が立ち止まった。
　「お好きなパン２個付きだって腹空いたなぁ」で喫茶室に入る。
　

　夫は２個とも好物のアンパン、飲み物とサラダもついている。
　室内は適度に涼しく清潔感もあり静か、パンも美味しかった。


　二人の外での飲み食いは久々なので感慨深いものがあった。

やせすぎ？

　「又一段と細くなったようだけど元気？」兄嫁さんへ言葉をかけた。
　背丈は私とほぼ同じ、彼女は昔から小柄で頼りないぐらいの痩身。

　「細いと言われてもあなたと同じじゃない」と笑われた。
　私の肉付きは普通と思っているから細いと言われてもピンと来ない。

　私は自分ではデブとも思ってないが　痩せているとも思っていない。
　娘時代、小太りだったからそのイメージがぬぐいきれないのかも？

　結婚後少しやせて高校時代の体重に戻りそのまま現在に至っている。
　私個人の好みは、中高年の女性は痩身よりも少しふっくらの方が良い！

　色白の餅肌、ぽっちゃり型の方が女性的魅力があるように思う。