プロコフィエフの日本滞在日記

1918年、ロシアの若き天才作曲家が、大正期のニッポンで過ごした日々

春の香り

1918-05-19 | 日本滞在記
1918年5月19日(旧暦6日)

 春の香りがした。北の遅い春の香り。私は春の香りが好きだ。木々が茂る鮮やかな緑にまじり、ところどころ白樺で真っ白になった丘の間を鉄道は走る。列車の窓からとはいえ、春をほんの少しでもつかまえられたのが嬉しい。さもないと、アメリカへの旅でせかせかしていて、大好きな季節に気づかずに過ごすところだった。九月のアルゼンチンの花咲く大草原で、春に会えることばかり楽しみにしていた。