プロ野球 -未来絵図の不在を嘆く

ドラフト改革で対立、結論先送り 12球団代表者会議

 日本のプロ野球界は改革に燃えています、…表向きは。
 けれど残念ながら、プロ野球のどこに問題があって、解決のためには何を改善しなければならなくて、そのためには何をすべきなのか。そうした手順が一切合切、抜け落ちているために、いつまでたっても議論が始まりそうで、始まらない。そんな風に見えて仕方がありません。

 おそらく各球団では、綿密なリサーチや戦略構築の上に、ビジョンを描いていることでしょう。数十億の金額を扱うビジネスパーソンの皆さんが、それほど無策だとは思えないし、思いたくもありません。
 しかし、それぞれの描くビジョンの行き着く先、すなわち到達すべきプロ野球像に、コンセンサスが得られていないのだから、彼らの努力が実を結ばないのは明らかです。

 そもそも、プロ野球とはどのようにあるべきなのか。「地域密着」とか「ファンに愛される」とか、そんな空虚な言葉に身を委ねず、具体的にNPBとして何を目指すのか。まずは、それを確定しないことには議論の進めようがないはずです。

悪:設計図の不在→思惑乱立→議論の不成立→未改革(改悪)
良:リサーチ→設計図の確立→問題点の洗出→議論→試行→再議論→改革


 各論を俎上においても、考えるべき点は見えてくるはずです。たとえば上記のドラフトの問題。
 プロスポーツは共同体であるのだから、戦力均衡は必ず測られなければならないのか? あるいは強者に権力を与え、資本主義の競争原則を用いて、弱小球団の経営努力を促すのか?

 ドメスティックなレベルでの完結(たとえば国内リーグのみ)を望むのであれば、戦力均衡は不可欠でしょう。毎年、福岡ソフトバンクが優勝するのでは、見ていても楽しくありませんから。ならば、その状態でチーム数の拡大を目指すのか否か。戦力を均衡しつつ、球団数を拡大していくならば、メジャーリーグとの実力格差はさらに広がり、有力選手の海外流出はますます拡大化することでしょう。

 では、海外の球団との公式戦の場を設け、彼らに劣らない力をつけるために「強者はより強く」という社会を築くのか? そのためにはドラフトを廃止、あるいは優勝チームから順に指名して行く逆ウェーバーに移行することが必要ですが、いつまでたっても優勝できないチームに客が足を運ぶのか、毎年同じチームが(国内では)優勝して、盛り上がるのか。こちらも新たな問題が生まれます。

 新たな制度を模索すれば、新たな問題が生まれるのは必然。それを解決する武器は、プロ野球に関わる全員が描く共通した未来絵図でなければなりません。Jリーグにはなぜドラフトがないのか? Kリーグのドラフト制度はなぜ破綻したのか? 選手の保有権が解消される方向に行く時流の中、FAやポスティング、トレードの制度の行く末は?

 NPBがすべきは、徹底的なリサーチに基づいたプロ野球の将来設計と、それを広報できるカリスマ性にあふれたトップの創出です。
 それはJリーグの手法(c.f.広瀬一郎さんの「Jリーグの制度設計」)に似ているかも知れません。役立たずのコミッショナーの下に、いつまでも各自がバラバラな意見を述べ合うのではなく、NPBの事務局が徹底的なイニシアチブを持ち、できれば(あまり役に立たなさそうな松田会長を選んだ)日本野球連盟を巻き込み、「野球」という競技を統一して改革できる組織の登場をまつばかりです。
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