0.05秒

 0.05秒

 人間にとって何を言っているか判断できる音の限界だそうです。つまり「アッという間」ではなく、「アッという音を聞ける限界」ほどの一瞬。

 オリンピックの舞台に上り8年目。アトランタ・シドニーではメダル候補と騒がれ、敗退して帰国すると「不甲斐ない」とバッシングの餌食。同い年で同種目の金メダリスト岩崎恭子と比較され、ついには他国に練習環境を求め日本を飛び出した田中雅美。

 周囲に騒がれる以上に、おそらく本人が渇望したであろうオリンピックのメダルまで、あとたったの0.05秒だけに迫ったのに。数年に及ぶ彼女の努力と苦労は、「アッという音の間」だけ届かず、目に見える結果を伴うことができませんでした。

 残り50メートルの追い上げは圧巻。もう誰も彼女のことを責める人はいないでしょう。胸にメダルはないかも知れませんが、堂々と前を向いて帰国の途についてもらいたいと思います。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

念願の金メダル

 ゴールデンスコアに突入した準決勝を乗り切ったことが一番の勝因でしょうか。消極的な姿勢は即指導を取られかねない。かと言って、相手はまともに組み合わない。小さなポイントを狙いにいくことは、柔道家としての信念に背くかも知れない。
 4分強の間、阿武の胸には不安や恐怖が次々とわき上がっていたのではないでしょうか。

 そんな準決勝を勝ち抜いての決勝戦。もはや畳の上にいるのは、オリンピックでまったく勝てなかった阿武ではありませんでした。自分が世界一強いことを知り、切れ味鋭い技をいつでも繰り出せる、世界選手権で4度優勝している本来の阿武がそこにいました。

 この金メダルは本当にうれしいことでしょう。いつも的確な回答を寄せるメディアへの対応からは、彼女の誠実な人柄がうかがえます。ようやくこれまでの努力が形となって報われました。最高の結果が出て、何よりです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

アーチェリー:山本の経験力

 アテネでは、各競技で強い風に選手たちが悩まされているといいます。テニスでは世界ランクトップのロジャー・フェデラーが初戦限りでコートを去り、野球では平凡な外野フライがフェンスを越え、ボート競技では風のため競技が中止になることも。

 アーチェリーも風の影響を受けやすい競技の一つ。前後左右から吹き込む風を計算に入れ、70メートル先の標的を狙います。
 そんなとき武器になるのは、これまで積み重ねてきた経験と、どんなときにも動じない冷静な精神力。
 41歳の山本が20年前のロサンゼルス以来のメダル、しかも1ランクアップしての銀メダルを手にできたのも、今回の競技環境が影響していたかもしれません。

 20年以上、競技の第一線を維持し、前回シドニー時の代表落選にもめげずモチベーションを維持し続けた山本博だからこそ、手に出来た今回の銀メダルでしょう。

 本人が今回のメインターゲットに据えている団体はこの後。こちらでも、好結果が期待されます。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )