アジアカップ準々決勝、代表劇的勝利

 社会事象は違った目線で見ると全然違ったものに見えることがあります。たとえば会社の企画会議だって、おびえながら社内プレゼンをしなければならない若手社員と余裕をかましながら仕事をしている中堅社員、また会議に参加する管理職。それぞれに異なる視座から、ぜんぜん違う会議室を見ているはずです。

 プロ野球改革問題も、現経営陣と選手、ファンが見ている景色、同じファンでもジャイアンツファン、バファローズファン、ホークスファン、それぞれに感じている空気には差異があることでしょう。

 タイトルにある今日のアジア杯準々決勝、試合終了の場面。そこには3通りの“GKから見る劇的な結末”を見ることができました。

 アジア杯になりレギュラーをつかんだ川口能活。ヨルダンのPKを7本中2本はじいた、彼のスーパーな活躍があり日本代表は準決勝へ進出するわけですが、最後のキッカーのボールがポストの脇に抜けた刹那、達成感・充実感に満ちあふれた勝者の表情を我々に見せてくれました。彼は荒れたピッチ上に、輝ける道筋を見いだしたかも知れません。

 ケガがもとで、その川口にポジションを明け渡すこととなった楢崎正剛。試合終了後、ピッチで川口の健闘をたたえる彼の口元には笑みが浮かんでいました。が、勝利の喜びとライバルの活躍に対する焦燥感が入り乱れているだろう彼が見るドラマティックな結末は、どんなものだったか? 川口が感じたほど明るい結末ではなかったのではないでしょうか。

 そして、ヨルダンのGKシャフィ。チームの仲間ともども、日本代表を上回る最高のパフォーマンスを発揮し、自身もファインセーブを連発。PK戦でも有利に中澤のキックをセーブして勢いづいていた23歳の彼には、重慶のピッチは絶望に満ちた真っ暗なものにうつったことでしょう。
 ベンチに引き上げる彼が、懸命に涙をこらえる姿がテレビ画面に映し出されたのは、とても印象的な場面でした。

 おそらく明日のスポーツ新聞は、「川口!!」で埋め尽くされることでしょう。でも、同じとき、同じ場所で、同じGKの役割を担うものが、まったく別の景色を見ていたことに目を向けなければ、「劇的」勝利とはなり得ないのではないでしょうか。
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