へぇ~Bonn便り

ニューヨークからボンへ引っ越してきました。時にはへぇ~と言いたくなるようなドイツの平凡を皆さんにお便りします。

難しい選択

2006-08-22 03:54:57 | ドイツでの妊娠・出産

 ボン大学のラボで羊水検査をしました。考えて決めたことですが、その場でドクターから真剣に説明をされると今さら心が揺らぎました。羊水検査によって流産が起こる危険性の割合が200人に1人。私の年齢でダウシンドロームの子供が生まれる可能性は400人に1人。今のところ私の妊娠データは正常値なので危険性は少ないから、数値だけ見たら検査を受けるリスクの方が高い。どちらのリスクを選ぶか決めてください。と言われました。勿論どの本を読んでも同じデータ乗っているので、既に承知のことでしたが、ドクターにあらゆる方向から確認をされて最終決心をすることができてよかったです。

 「何故羊水検査を希望するのですか?」という質問から始まり、まるで面接試験のようでした。「確率の見方は人によって違う。ルフトハンザが墜落したら暫く乗りたくないと思うけど、確率が低くても宝くじには大金を使うことができるかもしれないでしょう。」などかなり発展的な例まであげてじっくりと説明をしてくれました。「リスクを計算してみてください。」と言われても、天秤にかけられることではありませんが、結果的に受けることにしました。それまで、ゲーテのクラスメイトのお医者様たちが「全然大丈夫よ!」と太鼓判をおしてくれたし、アメリカで友だちが日本に比べて標準的に受けていて、最近はカジュアルになった印象がありました。「夫婦でよく話し合って決めてください。」婦人科の先生からも言われ、妊婦マニュアルにも書いてあって、タイミングを探していましたが、結局深く話し合うことが恐かったんだと思います。だから私は数日間緊張していましたが、終わってまずは安心しました。夫は終わったら緊張してきたと言っていました。いくつものモニターで夫が針が赤ちゃんから離れたところで羊水に入ったところを確認しました。こういう情報公開はドイツはオープンだと聞いています。羊水は赤ちゃんのおしっこと、試験管を見せながら説明してくれました。薄い黄色をしていました。12日後に結果が送られてくるまでは、また新たに緊張の日々が続きそうですが。。

 21番目の染色体異常が見つかった場合。これは結果がでてみないと現実的には考えられません。 でも、前に書きましたが、二人目の妊娠は、お腹の中にいる赤ちゃんの生命が、もっと現実的に感じられて、「この子が産まれてくるんだ」ということをよりハッキリとイメージができます。だからモニターで赤ちゃんの顔や指が見えたり、足を曲げ伸ばしたりしている様子を見ると、既に産まれて存在している我が子のように愛おしく感じられるのです。大きくなってきたお腹を毎日抱えながら、母親の実感が強まっていく日々の中、今日は赤ちゃんの性別も教えてもらって、喜びと楽しみが膨らんだところです。ここまできて我が子を殺す選択を誰が出来るでしょうか。乱暴な言葉を使いましたが、それだけ真剣に受け止めなくてはいけないし、その結果は身を引き裂かれ自分を失うかも知れません。

 一方、初めての妊娠の時には「どんな状態で産まれてきても精一杯育てよう」と決めていましたが、長男を育てる中、「寝返りが遅いんじゃないか。」「うんちはちゃんと出てるかな」「お友達と仲良くしてるかな?」・・・些細なこと1つ1つに、心配したり安心したりを繰り返す子育て。大人しいけれど健康でハッピーな息子の子育ての中でさえ、成長に合わせた心配事はあるものです。もし赤ちゃんの健康が悪かったら、どんなに心配で心を痛める日々になるでしょう。友人に「どっちの選択も辛い・・。」と漏らすと、「でも考えてみて。この先30年、40年、50年・・親子とも苦労をしていくことになるんだよ。」とハッキリと言ってくれました。確かに今ドイツに住み始めたことでも、今まで以上に言葉の壁によって、情報が得にくかったり、行動が制限されたり、見えないストレスを抱えています。息子がハッピーに学校に通ってくれるので、私たち親は語学学校に通うなどして、その壁を克服することが「海外に暮らすことの面白さ」と受け止めることが出来ます。この先たとえばダウン症が判明したとして、急遽方々から駆使してあらゆる情報を集め、住居を変えたり、学校を変えたり、あるいは仕事を変えたり、どうなるかわかりません。自分たち自身が、一生をかけてタフな精神状態を保ち続けることができるでしょうか。

 どちらにしても、受け入れられないくらい辛い選択になるでしょう。随分シビアな記事になってしまいましたが、万が一悪い結果がでてからでは、こんな冷静に書くことも出来なくなるので、今の気持ちを残しておこうと思います。


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