今回の作品「Dogs Life」は、
チャップリンの「犬の生活」を下敷きにしています。
犬との出会いと別れ、そして再会の物語は
8年間共に過ごし、昨年引退した盲導犬モナミのことを思って書きました。
物語は貧乏なバイオリン奏者が路上で演奏して、
わずかな投げ銭を恵んでもらう毎日。
空腹からパン屋で万引き、野良犬とパンを取り合い格闘します。
やがて犬と仲良くなり、食べ物を分け合う楽しい生活、そして別れ。
犬のいない寂しさから、再び出会う感動のフィナーレ。
バイオリンの演奏の仕方がわからないので、
音楽教室に通ったり
小道具のバイオリンケースは楽器屋で譲ってもらい、
古めかしい塗装を施しました。
舞台稽古が始まると、
シナリオはどんどん変更されます。
「犬ともう出会わないかもしれないよ」
「えッ?…」
江ノ上先生の演出に戸惑います。
不安の中での稽古が続きます。
「はい、そこであきらめて行こうとする…」
ケースを持って立ち去ろうとした瞬間
「『ク~ン…』犬が尻尾振ってるよ」
「!!」
この時、僕に沸き起こった感情を、
江ノ上先生は狙っていたんだと思います。
これが[舞台演出]というものかと、
頭をトンカチで叩かれたような衝撃でした。
舞台には1メートルほどのタコ糸がT字形に貼ってあります。
目が見えない僕らはこれを頼りに正面を認識して演じます。
走ったり格闘するなど激しい動きをすると、このタコ糸をよく踏み外します。
外した瞬間、命綱が外れた宇宙飛行士のような気持ちになります。
しかし演技は止められません。
「あきらめるな! どこかにあるから悟られないように続けろ!!」
江ノ上先生の檄が飛びます!
「俺はな、『目が見えないからしょーがない』っていう舞台は絶対にやらないからな!」
記憶にある風景を思い出しながら動きます。
見た目とのギャップを埋めるには、先生の言葉だけが頼りです。
「中途半端なことやるな! やるならやる、やらないならやらない!」
「お前のちっぽけな羞恥心なんか捨ててしまえ!」
鏡を見てチェックできない分、
稽古中の先生の言葉にはっとさせられます。
当日本番前、緊張がピークに達して、
体も表情も硬くなっているのがわかります。
先輩の金子さんが、自分の初演の体験談を元にアドバイスをくれました。
「失敗を考えると縮こまっちゃうから、思いっきりやったほうがいいよ。」
餡子さんが舞台のタコ糸のところまで誘導してくれます。
ケースを置いて、バイオリンを構えて立ちます。
ここからはもう独りでやり通さないといけません。
拍手が鳴って、音楽が始まります。
私のパフォーマンスはSOUKI YouTubeチャンネルアーカイブ(2週間)でご覧になれます。
https://youtube.com/watch?v=F2jSZCQx-FI
演じ終えると、僕の頭の中は真っ白でした。
充実感というよりは、全てを絞り切って枯れ果てていました。
稽古でできたことの6割もできませんでした。
江ノ上先生が近寄ってきてボソッと言いました。
「よし、よくやったぞ。がんばったな。」
改めて振り返ると、舞台演劇とはものすごい仕事なんだなと心底思います。
1年前、最初の稽古で先生が言っていました。
「ただ突っ立ってるだけでは、誰も見てくれないよ」
「見続けてもらうんだよ。釘付けにするんだ。」
[観てもらう]というただその1点に向かって、
膨大な時間と労力を傾けて舞台に臨んでいます。
お客様からいただいた拍手、投げ銭、感想が次の舞台へのエネルギーになります。
終わった後、大先輩に言われたことが印象的でした。
「舞台に一度立ったら、一生やめられないよ」
写真撮影:(c) Masami Gan Iwafune
難波創太
現在、SOUKIのYoutubeチャンネルにてアーカイブが配信されています。
(※2週間限定。8/7(金)まで)
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