相場博士(ファンドマネージャーのテクニカル分析)

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情報処理へのバイアスー行動ファイナンスの選択的受容

2011-08-28 18:22:23 | 行動ファイナンス
注目のジャクソンホールでのバーナンキFRB議長の講演は事前の市場予想の範囲内の結果となりました。しかし、市場の解釈、後講釈に違いが見られ、面白く感じました

講演の中で追加金融策を示さなかったことから、株式市場は緊急対策を講じるほど景気は悪化していないとの判断と受け止めたようです。
一方、債券市場では、FRBが金融当局にはなおも複数の景気刺激手段があると述べたものの、その詳細や実行の時期、実施の可能性については触れず、具体的な追加金融緩和策には言及しなかったことを重視。QE3によるリスク資産上昇に伴う期待インフレ率上昇の連想に繋がらず、 相場の支援材料と見なされたようです。

行動ファイナンスでも指摘していますが、人間は情報を自己のポジションに合致する部分にのみ強く反応し、否定的な情報を避けようとします。情報処理にバイアスがかかるのです。これを選択的受容といいます。私たちは自分たちの行動や態度を確認してくれそうな情報のみを受け入れようと試みる傾向がある。アナリスト、ファンドマネージャーなど市場関係者の態度は、彼らが以前書いたものに影響されがちである。彼らは不快な現実から身を守るべく、情報の選択的受容に訴える可能性が高い。
今回の株式市場と債券市場の反応がこれに当たるようにみられます。




市場が強気と弱気の場合に出来高が非対称的である心理学的背景③

2006-11-12 00:09:48 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

市場が強気と弱気の場合に出来高が非対称的であることを説明する心理学的背景③

『認知的不協和』
私たちの意思決定が誤りだったことを示す情報が現れたとき、認知的不協和が発生する。私たちはそのような情報を回避し、あるいは歪曲し、さらにそうした不協和に焦点を当てるような行為を回避しようとする。損失を確定することは誤りを確認する行為であり、認知的不協和を作り出す。

『自己過信』
私たちは正しい意思決定をする自らの能力を過大評価する。相場が上昇して利益をあげると、それは自分に抜け目がなかったからだと考え、同じ理由からさらに多くの売買をし始める。


市場が強気と弱気の場合に出来高が非対称的である心理学的背景②

2006-11-04 23:35:32 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

市場が強気と弱気の場合に出来高が非対称的であることを説明する心理学的背景②

『後悔理論』
私たちは、自分たちが間違いを犯したことを確認する行動を回避する傾向が高い。認めたくないのである。損失を確定する手仕舞い(売買)は、そうした間違いの確認であり、自ら認めたことになる。つまり、面子を失う行動を取りたくないのである。こうした行動が損失の先送りの背景となる。

『精神的区画化』
私たちは全体を別々の区画に分け、全体ではなく、格々の区画の最適化を図ろうとする。単に今現在、利益が確保できるという理由からポジション(持ち高)を手仕舞うのは、こういう理由からだと推察される。これは、利益の確保(利食い)が早い原因の一つと考えられる。



市場が強気と弱気の場合に出来高が非対称的である心理学的背景①

2006-11-03 22:26:20 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

市場が強気と弱気の場合に出来高が非対称的である心理学的背景①

『展望理論』
私たちは利益を増やす可能性に賭けるよりも、あえて損失拡大のリスクを冒すことに対してより積極的であるという非合理的な性質を持つ。これは利益を稼げるときは速やかに売却するが、損失がでているときには売却しないことを意味している。

『確実性効果』
私たちは、実現の蓋然性は非常に高くても確実ではないはるかに大きな利益よりも、確実な利益を好む傾向が強い。このことは、持ち続ければ利益がさらに増える蓋然性が大きいと分かっていても、そうせずに利食いの手仕舞いを行う。

『自我防衛的態度』
私たちは、自分が既に行った意思決定を確認するように自分の態度を順応させる。購入後に相場が上昇すれば、売却して利益を確保する。しかし、下落すれば長期の投資家になり、保有し続けようと決断する。


情報処理過程を歪曲する可能性のある心理的諸現象③

2006-10-29 14:12:45 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

情報処理過程を歪曲する可能性のある心理的諸現象③

『枠組み形成効果』
相場は上昇中であるという事実は、それを通して経済情報が解釈される枠組みを作り出す。枠組み形成効果は、当然のことながら、強気市場という文脈で経済情報の再検討が行われる際に生じ得る。

『社会比較』
解釈が困難な主題に遭遇したとき、私たちは他人の行動を情報源として利用しようとする。このことは専門職業的には、いちばん抜け目のない人たちの市場行動を観察するか、あるいは多数の人々が何をしているか聴取することによって行い得る。しかし、その結果、金融市場ではほとんどが必然的に間違うことになる。


情報処理過程を歪曲する可能性のある心理的諸現象②

2006-10-27 01:10:36 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

情報処理過程を歪曲する可能性のある心理的諸現象②

『選択的受容』
私たちは自分たちの行動や態度を確認してくれそうな情報のみを受け入れようと試みる傾向がある。アナリスト、ファンドマネージャーなど市場関係者の態度は、彼らが以前書いたものに影響されがちである。彼らは不快な現実から身を守るべく、情報の選択的受容に訴える可能性が高い。

『選択的知覚』
自らの行動や態度を確認するように見える仕方で、私たちは情報を曲解する。これもアナリストなど市場関係者の自己防衛方法の一つである。

『確認バイアス』
私たちの結論は、自分たちが信じたいと望むことによって不当な偏りを持つ。これまでに景気や相場などに関して書いたことのある人たちは、それと矛盾する新しい情報が現れた後も、自分が書いたことは今でも正しいと信じたがるものである。


情報処理過程を歪曲する可能性のある心理的諸現象①

2006-10-22 23:58:54 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

情報処理過程を歪曲する可能性のある心理的諸現象①

『順応的態度』
私たちは知人と同一の態度を取ることが多い。市場関係者はお互いの記事を読みあう社会に属している。このため順応的態度が生じる可能性がある。

『認知的不協和』
私たちの意思決定が間違っていたことが証明されると認知的不協和が発生する。私たちはそうした情報を回避し、さらに不協和に焦点が当たるような行動を避けるように努める。このことは、市場関係者が現在の相場のトレンドと相容れない情報を無視することで可能となる。

『同化の過誤』
受け取った情報を間違って解釈し、それによってこれまでの行動を確認したように思う。投資家が以前の意思決定を通じて市場にコミットしているのと同様、アナリストも以前に書いたことを通じて市場にコミットしている。こうして市場参加者全員が情報を誤って解釈する理由をもつ。


パニック時の心理現象

2006-10-15 23:28:11 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

パニック時の心理現象

『身体標識理論』
強い脅威がパニック持続を強める身体反応を作り出す。この現象は、パニックが個人におけるより急速な態度の変化を誘発する急激な株価下落時に発生する可能性がある。

『社会比較』
私たちは自分では解釈の困難なテーマについての情報源として他人の行動を利用する。集団的パニックは、株式相場や景気に関して他の人々がどう考えているかを示す非常に明確なシグナルを送ってくれる。私たちはそれに影響されるのである。

『準拠』
私たちの意思決定は、正しい解答を示唆するように思える情報の投入によって影響される。株価は今急激に低下しているという情報が投入されれば、おそらく私たちは景気も同様に悪化しつつある、あるいは悪化すると結論する確率が高い。

『後知恵バイアス』
私たちは過去のいくつかの事象の結末を予測できた蓋然性を過大評価する。つまり、パニックは予測できたはずだと考え、間違いを是正することにさらに熱心になる。



安く買って、高く売るはずが・・・

2006-09-03 02:15:38 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

『安く買い、高く売る』という投資・運用のアドバイスを聞いた人は多いと思います。
しかし、実践するのは簡単ではありません。

何故でしょうか?それはハウスマネー効果により、リスクの高い投資をしてしまうことが考えられます。例を挙げると、既にかなり値上がりした株式に投資することでしょう。こういう株式は過大評価や期待によって株価が買われ過ぎており、また短期的投機資金が流入している可能性も高く、値下がりリスクが高いのです。つまり、『高く買う』行動になるのです。
また、株式が下落し始めると、スネークバイト効果で、不安になり、『安く売る』行動になります。

ハウスマネー効果とスネークバイト効果によって『安く買い、高く売る』はずが、その逆の『高く買い、安く売る』行動になってしまうのです。

もっと上がるかもしれないという期待や思惑による高値掴み、もっと下がるかもしれないという不安や焦りによる安値叩き。

こうした行動は、人間の感情がもたらす非合理的な側面であり、似たような表現では市場心理や相場の地合いという言葉が使われています。『相場は理屈通りに動かない』のは、市場参加者が人間だからであり、感情に影響を受ける人間の行動の背景が必ずしも合理的な意思決定に基づいているわけではないからなのです。

しかし、そうは言っても人間ですからね~!


自信過剰 - 米国の研究事例

2006-04-23 21:10:43 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

自信過剰 - 米国の研究事例

ICT化の進展で、個人投資家は情報アクセス量が増えたことで自信過剰に陥ることが指摘されています。その結果、過度に頻繁な取引を行い、パフォーマンス悪化をもたらすという報告がされています。

BarbarとOdean(1999)によれば、米国1607人の投資家に調査を行ったところ、ポートフォリオの売買回転率が、オンライン投資の転向によって50%も上昇した(70%から120%に上昇)との結果を得ています。
また、パフォーマンスは、オンライン投資に転向後は悪化したといいます。これは売買回転率上昇による取引コストの増大、利益の早期確定と損失の先送り、高いリスクの株式の購入、ポートフォリオ分散化の不十分などが原因と推察されます。

尤も、最近の米国では、デイトレーダーのような短期売買をする投資家の数は減少し、じっくり長期投資をするスタイルの投資家が増えているという報告がされています。

やはり、イントラデーはなかなか難しいですからね。
日計り、手間ばかり、損ばかりとも言うし。。。

行動ファイナンス用語

2006-04-16 23:10:30 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

ハウスマネー効果、スネークバイト効果、ブレークイーブン効果

利益を上げた後では、人間はより多くのリスクを取ろうとする傾向が強い。
ギャンブラーはこれをハウスマネーによる遊びと呼ぶ。ギャンブラーは勝ったお金を自分のお金とは信じられないことから、カジノのお金『ハウスマネー』でギャンブルをしているように感じるのである。

競馬でも、儲けの半分、あるいは全部を次のレースにつぎ込む人が多い。儲けた金はあぶく銭で、痛みは少ないと思うのだろうか?儲けたレースよりも多くのお金を次のレースに使う人が多いのである。

リスクをとらない人間も、利益を上げた後では、リスクを取ることが多い。
この現象を『ハウスマネー効果』と呼ぶ。

また、損を出した後では、損をし続けるかのように感じてリスクを取らない傾向が強い現象である『スネークバイト効果』は、以前取り上げた。

さらに、人間は損を埋めるためにリスクを取る場合がある。損を埋めてゼロ(ブレークイーブン)にしたいという欲望からリスクをとる行為を『ブレークイーブン効果』と言う。

行動ファイナンスの専門家によれば、ハウスマネー効果によって過度にリスクを取る行動は、市場にバブルをもたらし、スネークバイト効果により過度にリスクを避ける行動はバブル崩壊後の株価低迷をもたらすという。

1980年代後半の日本の株式市場のバブルとその後2003年までの株式市場の長期低迷は、
まさにこういった行動ファイナンスの側面からも理解できるものと考えられるのである。

2003年4月28日の7607.88の大底以降、日経平均は下落トレンドを終了し、上昇トレンドを続けている。市場はハウスマネー効果で上げるべきところまで上げ、その後の下げをスネークバイト効果でさらに低迷させる相場展開をまたも繰り返すのだろうか。

歴史は繰り返すというが・・・。

行動ファイナンス用語

2006-04-03 00:10:59 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

選択的受容

プロ野球が開幕しました。復帰した原監督の下でジャイアンツは2勝1敗と勝ち越しました。
ジャイアンツのファンなら、試合に勝った日のスポーツニュースは何度でも見るでしょうが、負けた日(昨日1日)はあまり見たくなかったのではないでしょうか?

今日の行動ファイナンス用語ですが、心理学では認知心理学といわれる学派に属するものです。人間は自分の行動や態度を確認するように見える情報のみを受け入れる傾向が強い。このことを『選択的受容』といいます。自分の意思決定が正しいと思われる情報により強く反応し、自分を説得するのです。

自分の相場観を支持するファンダメンタルズの情報を選択するのに該当すると考えられます。

行動ファイナンス用語

2006-03-26 00:40:41 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

代表制の過誤

相場の格言にも『まだはもうなり、もうはまだなり』という言葉がありますが、相場にトレンドが見られるとき、人々はそのトレンドに対して、いつまで続くのか、天井や底はいくらなのかと言う関心を抱きます。

さて、今日の行動ファイナンス用語です。人間は現在観察されるトレンドが今後も継続すると思いがちであり、そのような状態のことを『代表制の過誤』といいます。
例えば、右肩上がりの株価などを見ていると、未来永劫上昇しそうな気がしてきますね。
心理学的に、人間は現在起こっている現象に大きく影響されることが報告されています。

情報処理と意思決定②

2006-03-05 01:36:18 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス

米国の有名な経済学者でロバート・シラーという人がいます。彼は1987年10 月19日のブラック・マンデーのときに面白いアンケート調査を行っています。
機関投資家1000社、個人投資家2000人を対象に質問状を送り、それぞれ284社、605人から回答を得ています。質問の内容は株価下落中に最も重要と考えたユースは何かというものです。面白いことに、一番多かった回答は、経済や政治のニュースではなく、相場の動きだったといいます。つまり、株の下落それ自身だった考えられます。
株が大幅に下落しているから、不安になって売ってしまった。もっと下がるかもしれないと思い、慌てて投げ売りをしてしまったということだと考えられます。

生身の人間がパニック売りをすることで、売りが売りを呼ぶ現象はこれまで何度も繰り返されてきました。こういうときには何が起こっているかファンダメンタルズから説明するのはまず無理でしょう。日経平均の裁定取引、外国為替のオプションの行使価格近辺の防戦売り、債券のコンベクシティヘッジなど、現在市場で見られる高度な売買手法、瞬時の大幅な相場変動など、相場の動きそのものが市場参加者の売買の動機となっているのです。
さらに付け加えると、市場参加者のうち、短期売買を行うディーラーなどの参加者は、ストップロスというリスク管理を行っています。相場下落が一定の水準を越えると損を限定する行動に出ます。このため臨界点をこえる相場変動は(下落の場合は、さらに下落に弾みが付くこと)さらに激しく同一方向に変動が拡大することが多いのです。さらに、ストップロスを付けに行く行動を取るディーラー、短期投機筋もいるくらいです。

行動ファイナンスの情報処理と意思決定のコーナーで書きましたが、あえて繰り返しますと、情報が相場を形成するのではなく、相場が情報を形成し(相場の状況が人間の情報の解釈を左右し)、その形成された情報(解釈された情報)によって、相場がまた形成されていくと考えられます。市場参加者が強気と弱気の時では、情報の受け止め方が違う場合がありますが、相場の動きに合わせるかの様に、情報を事後説明的に使う場合が多い。つまり、市場参加者にとっては、情報をどう解釈し、意思決定をするかという問題よりも、最終的には、市場価格の変動自身に影響されて行動を起こしていることが多いと考えられるのです。

つまり、市場の変動を情報などによって説明し、理解することと、市場から収益を上げることは同じではないのです。


行動ファイナンス用語

2006-02-19 15:55:37 | 行動ファイナンス
行動ファイナンス 

スネークバイト効果 

しこったポジションは損の神様がずーっと見ていて、損切りするまでいじめられ、
辛抱たまらなくなって切ったら反対の方向に動き出す。キーツ。悔しい~。

すぐに気分の切り替えができればいいんですけど、人間には感情があるのです。
この感情が次の行動を起こすときに影響を与えるのです。

またやられるんじゃないかと不安になり、過度にリスクを取らない状態になることをスネークバイト効果といいます。そう、蛇に足を咬まれた感じです。