「ダーク (上・下)」 桐野夏生
お薦め度:☆☆☆☆ /
2006年9月26日読了
主人公は村野ミロ。
「顏に降りかかる雨」、「天使に見捨てられた夜」、「ローズガーデン」の主人公と同じだ。
前2作は面白く讀めたが、「ローズガーデン」はいまひとつの感あり。
高校時代に義父とからだの關係をもつたといふ話がどうしたといふのだ、そんなことをレビューに書いてゐる。
で、今囘の「ダーク」。
これはもはや、「顏に降りかかる雨」や「天使に見捨てられた夜」とは別の作品だ。
主人公は同じだし、登場人物も共通するところがあるし、ストーリーも繋がつてゐるやうだ。
しかし、そのテイストは全くと云つてよいほど違ふのだ。
「ダーク」といふタイトルの示すとほり、この作品は暗い。
それも明るさがないといふよりは、明るさそのものを拒否してゐるかのごとき暗さだ。
主人公のミロはかつてのミロではない。
惡漢小説といふ言葉がある。
ピカレスク・ロマンなどともいふ。
「ダーク」は惡漢ならぬ惡女小説である。
惡女とはもちろんミロのことだ。
義父殺しはミロにとつて何であつたのか。
そして何故ミロは逃げ出すのか。
韓國でミロは「朴美愛」となり、徐鎭浩とともに暮らす。
この徐鎭浩といふ人物を描くに際して、作者は光州事件を描いてゐる。
韓國で起こつた光州事件とその時の徐鎭浩を描くためにまるまるひとつの章を費やしてゐる。
ミロの物語は停滯するが、それでもあへて描いてゐるだけあつて、この章は生々しい迫力があり、面白い。
しかし、それにしても、この作品はミロを主人公にする必然性があつたのだらうか。
これまでのミロの造形を使ふことで作者は何を語らうとしたのだらう。
讀み終つても、私にはこの疑問についての解答が思ひつけないでゐる。
9月24日讀了
9月26日讀了
お薦め度:☆☆☆☆ /
2006年9月26日読了
主人公は村野ミロ。
「顏に降りかかる雨」、「天使に見捨てられた夜」、「ローズガーデン」の主人公と同じだ。
前2作は面白く讀めたが、「ローズガーデン」はいまひとつの感あり。
高校時代に義父とからだの關係をもつたといふ話がどうしたといふのだ、そんなことをレビューに書いてゐる。
で、今囘の「ダーク」。
これはもはや、「顏に降りかかる雨」や「天使に見捨てられた夜」とは別の作品だ。
主人公は同じだし、登場人物も共通するところがあるし、ストーリーも繋がつてゐるやうだ。
しかし、そのテイストは全くと云つてよいほど違ふのだ。
「ダーク」といふタイトルの示すとほり、この作品は暗い。
それも明るさがないといふよりは、明るさそのものを拒否してゐるかのごとき暗さだ。
主人公のミロはかつてのミロではない。
惡漢小説といふ言葉がある。
ピカレスク・ロマンなどともいふ。
「ダーク」は惡漢ならぬ惡女小説である。
惡女とはもちろんミロのことだ。
義父殺しはミロにとつて何であつたのか。
そして何故ミロは逃げ出すのか。
韓國でミロは「朴美愛」となり、徐鎭浩とともに暮らす。
この徐鎭浩といふ人物を描くに際して、作者は光州事件を描いてゐる。
韓國で起こつた光州事件とその時の徐鎭浩を描くためにまるまるひとつの章を費やしてゐる。
ミロの物語は停滯するが、それでもあへて描いてゐるだけあつて、この章は生々しい迫力があり、面白い。
しかし、それにしても、この作品はミロを主人公にする必然性があつたのだらうか。
これまでのミロの造形を使ふことで作者は何を語らうとしたのだらう。
讀み終つても、私にはこの疑問についての解答が思ひつけないでゐる。
9月24日讀了
9月26日讀了