写真家 田沼武能
世界の子どもや下町の風景などを長年記録し続けた写真家の田沼武能(たぬま・たけよし)さん
田沼さんは1929(昭和4)年2月18日、東京・浅草の写真館の家に6人兄弟の次男で生まれた。小学校に通う道すがらに仏像を彫る家があった。
それで彫刻家になろうと思ったが、父親に反対され、建築家に妥協した。
16歳の1945年3月10日、東京に大空襲があった。自宅周辺は火の海に包まれた。道路には逃げる人でいっぱいで、どうにも身動きがとれない。
田沼さんと父親は、「ガスタンクがあって爆発するかもしれない」と恐れて、人がまばらな方向に自転車を走らせた。
竹ノ塚方面に逃げようと鐘紡の工場の土手まで来たが、メラメラと炎が土手を越えていた。
熱さでこれ以上は無理と、反対方向に戻り、隅田川の河畔の原っぱで一夜を明かした。
「もし引き返さずそのまま進んでいたら死んでいたでしょう」
自宅に戻ると、家は全焼していた。
自宅前の熱で水が枯れてしまった防火用水槽に3歳くらいの子どもが燻製のように黒焦げになって直立不動の姿で亡くなっていた。
「その姿はまるでお地蔵様のようだった」。
そのときからお地蔵様は子どもの化身だと思うようになった。
Dinner/Nocturne - Yo Yo Ma plays Ennio Morricone
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます