森の詞

元ゲームシナリオライター篠森京夜の小説、企画書、制作日記、コラム等

清々しい敗北

2010年06月05日 | Weblog
 今日はとても心に残る出来事がありました。

 息子を連れて行ったスイミングスクールにて。
 ロッカールームで息子を着替えさせていると、一人の男の子が声をかけてきました。

「すみません。鍵を閉めてもらってもいいですか?」

 年の頃は息子と同じか、一つ上くらいでしょうか。
 どうやらロッカーキーが上手く回せずに困っている様子。
 私が通っていた小学生の頃から使われているロッカーですから当然老朽化しています。いい加減新調すべきではないかなどと考えつつも、笑顔で了承して若干固いキーを回し、閉めてあげました。

 男の子は礼を言って泳ぎに行き、息子もプールへ。
 一時間半後、泳ぎ終えて帰ってきた息子を再びロッカールームで着替えさせていると、先程の男の子が着替えていました。
 ちゃんと開けられたんだな、と思って何気なく見ていると、着替え終えて帰ろうとしたところで男の子が私に気づき。
 わざわざ私の前で歩みを止めて、ペコリと頭を下げました。

「さっきはありがとうございました」

 口には出しませんでしたが、お見事! と思わず賞賛を送ってしまいました。
 彼をそのように躾けたご両親に対してです。
 私も息子の躾けには気を配っていますし、きちんとお礼が言える子に育てている自負はあります。しかしおそらくは、その場でお礼を言うのが精一杯でしょう。次に顔を合わせたときに、以前の出来事に対する謝意を示せる段階には達していません。

 子は親を映す鏡と言います。
 彼のご両親は余程躾けが上手いのか、あるいは、ご両親がそのように感謝と誠意を持って人と接している姿を常に子供が目にしているのか。
 いずれにせよ、親としての格が違うと感じさせられる出来事でした。

 私ももっと頑張らないと。
 常々目標としている「息子が誇れる父親」に少しでも近づけるよう、改めて気合を入れなおした、そんな清々しい敗北のお話でした。