当ブログの朝生レビューでもなんども登場いただいていた、拓殖大学大学院教授の森本敏氏が、なんと防衛大臣に抜擢されたとのこと。
で、なぜか「シビリアン・コントロール(文民統制)」という角度からの批判が、自民党からではなく、民主党から出てきている(笑)。
ポイント:自衛隊の最高指揮官は総理大臣であって、防衛大臣ではない。
次に、wikipediaより、森本敏氏の略歴を。
東京府東京市出身。大阪府豊中市育ち。豊中市立第六中学校、大阪府立豊中高等学校、防衛大学校本科卒業(電気工学専攻、第9期生)。1965年航空自衛隊入隊。1977年外務省アメリカ局(現・北米局)安全保障課に出向。1979年航空自衛隊除隊、外務省に正式入省。1980年タフツ大学フレッチャー法律外交大学院修士課程修了。
在ナイジェリア日本国大使館参事官、外務省情報調査局企画課安全保障政策室長などを経て、外務大臣官房領事移住部領事移住政策課長を最後に1992年2月20日退官。
次に、今日のNHKニュース7より、あれだけ防衛問題が何もわかっていなかったにもかかわらず、「シビリアン・コントロール」の観点から森本新大臣を批判しようとする、一川元防衛相。
民主党 一川参議院幹事長「シビリアン・コントロールということからすると、政治家がしっかり有権者の声を受けて」
「国防政策を責任を持ってタッチする方がいいのではないか」
「『あれでいいのかな』という感じがちょっとする」。(ここまで)
お前が言うな一川。
wikipediaより、一川保夫元防衛大臣の名言を。
「安全保障に関しては素人だが、これが本当のシビリアンコントロールだ」
2011年(平成23年)9月2日、防衛大臣の認証式前、記者団に「安全保障に関しては素人だが、これが本当のシビリアンコントロール(文民統制)だ」と述べた。この発言に対して、元防衛相である自民党の石破茂政調会長は「閣僚解任に値する。任命した野田佳彦首相の見識も問われる」と批判、国会で追及する考えを示した。9月2日夜、記者団に対し首相官邸内で「ほとんどの国民は(安保政策は)素人だ。一般の国民を代表する国会議員が監視するのがシビリアンコントロールだと思っている。国民目線で、国民が安心できるような政策が大事だと(いう意味で発言した)」と弁明した。(ここまで)
・・・ということは、一川の言う「シビリアン・コントロール」とは、
・ほとんどの国民=素人の国民を代表する、防衛には素人であるが選挙で当選しただけの国会議員が防衛政策を「監視」とやらをする
ことのことか?
でだ。「防衛には素人であるが、選挙で当選しただけの国会議員」が、防衛政策のどこをどうコントロールできるのだ??
例えば一川時代に、普天間問題は1ミリでも進んだのか???
wikipediaの続き。
「ブータン国王が来て宮中で催し物があるが、私はこちらの方が大事だ」
2011年(平成23年)11月16日、国賓として訪日中のブータン国王ジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュク夫妻を歓迎する宮中晩餐会を欠席して日本・ブータン友好議員連盟副会長を務める高橋千秋民主党議員の政治資金パーティーに参加。この中で、「ブータン国王が来て宮中で催し物があるが、私はこちらの方が大事だ」とスピーチした。翌17日の参院予算委員会で「軽率だった。申し訳なく思い、反省している」と陳謝したが、志位和夫日本共産党委員長は「国賓がお見えになっている外交上の行事での、そういう対応は閣僚としては大きな問題行動だ」と批判した。山口那津男公明党代表も「非常識であり閣僚の資質が欠けている」と批判した。
「正確な中身を詳細には知らない」・「少女「乱交」事件」
2011年(平成23年)12月1日の参議院東日本大震災復興特別委員会で、自民党・佐藤正久からアメリカ軍普天間飛行場返還運動の端緒となった1995年(平成7年)のアメリカ海兵隊員らによる沖縄米兵少女暴行事件について問われ、「正確な中身を詳細には知らない」と答弁した。また、翌2日午前の記者会見で前述の沖縄米兵少女暴行事件を少女「乱交」事件と発言。本人によるその場での訂正はなく、会見後に防衛省広報を通して訂正の申し入れを行った。上記2発言及び元沖縄防衛局長の不適切発言による更迭を含め、仲井真沖縄県知事に対する謝罪を行ったが先方は強い不快感を示しており、会見は短時間で打ち切られた。先述の「安全保障に関しては素人」発言、ブータン国王夫妻来日時における自身の言行と併せ、第179回国会の会期末で野党が提出した問責決議案が可決された。なお、任命者である野田佳彦内閣総理大臣は問責決議案が可決された以降も一川及び山岡賢次国家公安委員長兼消費者担当大臣を更迭しない意向であったが、野田改造内閣の発足により解任された。なお、一連の騒動の発端となった元沖縄防衛局長に対し停職処分を宣告したほか、監督責任を取る形で自身の在職中の大臣給与を全額返納している。
(ここまで)
忘れてた方もいるであろうから改めて貼っておいたが、こんなのが民主党の「現参議院幹事長」である。こんなのが防衛大臣だったときに、例えば安倍政権のときのように、北朝鮮からミサイルが飛んできていたら、素早く的確な「防衛における、総理の補佐的役割」を果たすことができたのか??それができて初めて「国会議員による『文民統制』ができた」と言えるのだが。
私自身のツイッターにも書いたことだが、文民統制とは、軍の最高指揮官は文民(非軍人)にすることで、軍部だけが国家と離れて動くことを牽制する目的で作られた概念である。しかも上で森本大臣が言っているように、防衛大臣は、自衛隊の最高指揮官ではない。自衛隊の最高指揮官は総理大臣である。
だとするならば、自衛隊の最高指揮官ではない防衛大臣は、有事においては首相を補佐する立場に立つわけだから、むしろ軍事に関する知識や経験はいくらあっても多すぎると言うことはない。だからこそ自民党政権時代にも、中谷元議員(元自衛官)などが防衛大臣になったわけだ(当時は防衛庁長官だったが)。
で、中谷元議員が防衛庁長官になったときも文民統制の観点から議論があったとwikipediaにはあったが、回ってきたツイートにもこういうものがあった。「なるほど、これなら『議論』を『でっち上げる』ヤツがウヨウヨ湧いて出てくるな」という印象しか湧かない(笑)。
憲法的見地から。文民統制、学説は現在職業軍人でない者、過去職業軍人の経歴がなく且つ軍国主義的思想のない者、過去職業軍人でない者まで多岐に別れるが森本防衛大臣は、過去防衛庁出身に加え国民の選挙で信任を得てない民間人である所に疑義あり。流石野田総理、真逆の適材適所! #nhk #政治
7:00 PM - 4 6月 12
・・・日本国憲法には、軍隊や自衛隊を規定した条文は一つもないのだが。したがって、自衛隊を文民統制によって規制すべし、という主張は、どう逆立ちしても論理的には導き得ないのだが、こういう人は何もわかっていないようだ(苦笑)。
ただ、日本というのは不思議な国で、軍隊などの、日本国憲法には全く規定されていない組織についてであっても、「憲法学」や「学説」、あるいは東大法学部閥を中心とした「通説」とされるアドホック(恣意的)な主張を「勝手」に設定し、
日本国憲法の条文からは何ら論理的には導けないことを、「これが通説だぞー!」や「これが学説だぞー!」という枕詞をつけて、威張ることができる「勝手なヒエラルキー」を作ることができるというのが、日本の「法学」界の不思議な伝統である(冷笑)。上の「みっちゃんSP」なる方は、そういう「伝統」に片足を突っ込んでしまった、あるいはちょっとかじってしまったがゆえに、日本国憲法には何ら規定されていない「軍隊」や「自衛隊」を、「文民統制」という原理で統制すべき、ということが「学説」として普通に通っている、ということが信じられる、ある意味では犠牲者なのかも知れない。私に言わせればただのアホであるが。
上のツイートで一番アホなのはここ。
>軍国主義的思想のない者、
・・・あのさ、法学理論的に、ある人間が「軍国主義的思想」を持っているかどうかって、どうやって検証するのか「法学」の先生は教えてくれた?そもそも、法学理論に「軍国主義的思想」ってあった?あったとして、「軍国主義」ってどういう定義なの??さっぱりわからない(笑)。
おそらく、せいぜい岩波の『世界』レベルの文章しか読んでいないのだろう。『世界』や岩波新書レベルでは、こういう検証不可能で無意味な発言があふれているからねえ。単なるバカサヨク&ネトサヨ、しかも頭が悪い部類への「うわべの答えだけを書いた文章集」に過ぎないからねえ。
さて。ここまで、文民統制の角度から森本敏を叩くヤツはアホだ、という主旨で文章を書いてきたが、だったら白河は森本防衛大臣に大賛成なんだな?と思った読者もいるかも知れない。それは、これからの働き次第である。しかし、今つっこむにしても、他の角度からいくらでもつっこめるでしょ?ということを今は言いたい。
例えばこういうところである。朝鮮半島問題にせよ、普天間問題にせよ、防衛省だけでなく、関連する省庁との利害調整や「根回し」というものが必要になる。選挙で選ばれた国会議員が強いところがこういうところである(一川は知らん(笑))。相対的に、民間人大臣が弱くなるところはまさしくここで、防衛官僚のうち、誰をどう使えば、どの省庁やどの議員とどういうパイプが作れるか、特に沖縄県や名護市の誰をチャンネルとして設定すればいいのか、アメリカだと国務省の誰か、という「ねばっこい部分」について、民間人だと技術的に弱くなる、という側面は確実にあるだろう。ただその点も、森本は防衛庁(当時)だけでなく、外務省へ出向し、その後外務省の正規職員となった経緯があるので、この点でも一川なんぞよりかは数倍~数万倍の能力を発揮するかも知れない。いや、数値では比較不能かも知れない。ゼロは何倍してもゼロなのだから(笑)。
私としては、野田政権時に沖縄の普天間基地の辺野古地区への移転がリーガルに決まればこの上ないことだと思っている。防衛や年金制度など、政権が変わることで大きく方針が変わると日本全体の屋台骨が崩れるポイントはいくつもある。普天間基地問題は、そのポイントの一つであろう。
あー、山本一太も地雷を踏んでしまっている・・・
http://ichita.blog.so-net.ne.jp/2012-06-04-2
>だいいち、選挙で選ばれた国民の代表ではない森本氏が防衛大臣を務めるということ自体、シビリアンコントロール(文民統制)の原則を逸脱しているのではないか?防衛庁発足以来、民間人の防衛大臣が1人も出ていないことには、ちゃんと理由があるのだ。石破茂元防衛大臣の「政治家でもないのに、どうやって責任を取れるのか?」という発言も、そのとおりだと思う。
ただここは妥当だな。
>過去6ヶ月、参院予算委員会の集中審議や外交防衛委員会において、佐藤正久氏(ヒゲの隊長)が質問に立った時には、必ず田中防衛大臣を守るための「佐藤シフト」なるもの(防衛官僚が大臣を取り囲む現象)が出現した。 なるほど、森本防衛大臣なら、ヒゲの隊長の追及に対して「ピント外れの答弁をする」ことはないだろう。それでも、理論と実際の政策は違う。しかも、防衛大臣は、沖縄との交渉の責任者でもある。森本大臣の対外交渉力や政府内調整力は、全くの未知数だ。
最悪の想定は、野田総理が、「森本なら国会答弁もできるし、オレがコントロールできるな」とたかをくくっていることだな。そうなると森本大臣は政権内で完全に孤立することになるだろう。
防衛という国家の根本問題について、与党も野党も、鼎の軽重を間違えることがないように、心から心配している。
野田さんの思惑が気になりますね。野田さんはしたたかな人だと思いますが、野田さんの計算が国益につながるのかどうかが大事なだけですから・・・。
朝生マニア(笑)の間では見慣れた方なんですけどね。麻生内閣では防衛大臣補佐官も努めました。
沖縄県議選は辺野古移設には厳しい結果となっていますが、辺野古住民の合意が取れていることは森本氏も知っているはずなので、なんとか少しでも状況を動かしてくれれば、と思っています。