できるだけごまかさないで考えてみる-try to think as accurately as possible

さまざまなことを「流さずに」考えてみよう。"slow-thinking"から"steady-thinking"へ

柏市にはお世話になってるからこそ改めて言うけど・・・気にしすぎ。逆に子どもが気の毒

2011-06-16 02:16:08 | Weblog

放射線は目に見えないから怖いのはわかるが、何でも「子どもが心配」と言い続けることで、自分たちの根拠のない不安を自分たちで増幅させ続けているようにしか見えない。申し訳ないけど。

千葉県柏市は、私がお世話になっている地域でもあるし、すでにかなりの愛着も湧いている、私にとっては大切な街の一つである。だからこそ、見ていて痛々しいのだ。もちろん東京在住者の一人として、東京も心配しているが、より心配なのはホットスポット扱いされている地域である。そんなわけで、今までも、こういう記事を書いてきた。

 

勝手に柏、松戸、流山、三郷、守谷、金町をホットスポットに指定した二人の「科学者」(2011.05.25)

日本共産党の調査結果によると、「ホットエリア」「ホットゾーン」という認識の方が正確になるだろう(2011.05.27)

 

さっきやっていた日本テレビ「ニュースゼロ」で、一時、心ない「肩書き科学者」たちによって、「ホットスポット」扱いされてしまった、千葉県柏市のある主婦の行動について特集していた。まあそういう展開になるだろうなあ、という流れである。

 

<1歳・3歳の母親、 大作ゆきさん(33)>

<柏市は、市原市とは約40キロ離れている>

<千葉県が公表している測定値と、柏にある東大とがん研究センターの発表値があまりにも違うことに気づいた>

<近くの公園で、放射線量を毎日測定している>

<0.3マイクロシーベルト/時 以上で、アラームが鳴るように設定している>

「やっぱり遊ばせることはできないですね」と語る>

<今月2日、柏市に要望書を提出、署名も約1万人集まった>

<柏市は、大作さんのグループ以外からも、放射線量を調査してほしいなどの要望が5900件以上寄せられた>

↑なぜこの図だけ大きいかというと、書かれている内容を読んでみてほしいからだ。ただ、「測定値公表前」の要望項目ではあるのだが。

 

主な内容の(1)で、読めるものを書きおこしてみる。

・柏市独自、または学校単位で放射線量の測定をするべき(市原のデータは不安)

・東大公表データの測定値が高くて不安(特に西原小、~(読めない)小)

・体育や休み時間に校庭に出るのは危険ではないか

・修学旅行の行き先(日光市)を変更するべき

・校庭の土の入れ替えをしないのか(郡山市の報道を受けて)

・(安心できるまで)学校を休ませたい

・雨天の野外活動(授業、部活動)は中止すべき

・ホットスポット対策を早急に講じてほしい

 

 


 

 

・・・こういう一連の動きを見て、一番強く感じるのは、

とにかく放射線だけ極限まで被曝量を少なくしなきゃ!

というパニック心理だけであって、具体的に、どのくらいの被曝からが危険なのかという、「定量的な発想」が完全に抜け落ちている点だ。これでは、子どもたちに不要なストレスを「親の心配」という名の下で「強制」することにもなりかねず、その結果として、逆に、慢性的な健康被害(心の問題含む)が子どもに生じたり、「親の心配」という名の下で、風評被害が他地域に連鎖する危険性が、みごとに現実のものとなってしまっている。上の中で、「日光市への修学旅行を変えるべき」などがその最たるものであろう。

 

例えばさっきのこの図も、

「3/21または22の最高値でも、『0.8マイクロシーベルト/時』 である」ということは、1日8時間外にいて被曝するとしても、

・0.8×8(1日あたりの被曝量)×365(1年)=2336マイクロシーベルト=2.236ミリシーベルト

であって、内部被曝がこの4倍あったとしても、11.18ミリシーベルトにしかならない。しかも、上の図を見てわかるように、放射線量は減り続けている。今では「高くて0.3マイクロシーベルト/時」にすぎない。実際には、今年の3月~来年の2月の1年間に、10ミリシーベルトも被曝しないであろう。内部被曝も含めてだ。

 

 

前から何度も登場いただいている放射線予防医学総合研究所のHPのこの図(↑)を見ても、「10ミリシーベルト/年 以下」であれば、自然放射線でさえそれを上回る地域が世界にあり、そこでは子どもも含め、がんの過剰発生等は認められていない。その意味で、武田邦彦氏などがドヤ顔で繰り返す

「年間1ミリシーベルト以下に!!」

という訴えは、「科学」的には、全く何の意味もないということである。武田氏が本気で年間1ミリシーベルト以下の被曝を!と考えているのであれば、上記の、年間100ミリシーベルト以上の自然放射線を被曝している地域が実際にあるということをどう考えているのか全くわからない。その地域に住む住民を強制移住させよ!とでも言うつもりなのか?彼は「もとから1ミリシーベルト/年以下と決まっているのだ!」としか繰り返さない。しかし、ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告としては、

・「緊急事態期」には100ミリシーベルト/年 以下、

・「事故終息後の復旧期」には、20ミリシーベルト/年 以下、

そして、

・「平常時」には、1ミリシーベルト/年 以下

に抑えよとしているだけである。つまり、子どもも含めて、事故終息後の復旧期(おそらく長くて2~3年だと思われる)には、20ミリシーベルト/年 以下で十分と考えて良いのだ。

 

 

しかし、このルポの主役であった大作さんは、公園が0.3マイクロシーベルト/時の被曝量であれば、「子どもを外で遊ばせられない」と言う。それでは、遊びたい盛りの子どもたちに余計なストレスをかけるだけで、逆にそれが原因で、子どもたちに心因性の体調不良を慢性的に生じさせる危険が、将来の発がん確率の増加分より、はるかに大きく生じる怖さを感じる。その中でも、いわゆる「精神・神経系の体調不良」が一番心配である。

 

0.3×8×365=876マイクロシーベルト、内部被曝4倍分を加えても4380マイクロシーベルト=4.38ミリシーベルトである。

 

なぜ私はこんなに強く訴えるのか。それは、あのチェルノブイリ原発事故が起こったときに、私は北海道に住んでおり、事故が起こったときには、関東の人以上に旧ソ連に近い分だけ、相当量の被曝をしているという確信があるからである。しかしだからと言って、そのせいで自分や周囲の人間の発がん率が高くなったとは全く考えていない。

私たちは、あの炉心自体が爆発し、地球中に放射線をまき散らしたチェルノブイリを生き抜いてきたのである。そういう「記憶」「実績」「経験」を冷静に思い出すべきである。

 

そうでなければ、しつこいが、「定量的観点」を忘れた「自称、子どもを心配する親たち」が、日本中の子どもたちを高ストレス状態に追い込むことになるだろう。日光市や会津若松市への予約大量キャンセルという「風評被害」と共に。後になって、「こんなにストレスが溜まったから受験に失敗したんだ!」と嘆く中3生や高3生、浪人生は一人も出てきてほしくない。受験生じゃなくても、「がんにはならなかったけど、これがきっかけで強迫神経症に」などという事態にも絶対になってほしくない。

こういう事態が続くと、政府や地方公共団体が、放射線量に関する情報公開を躊躇する気持ちが逆にわかってしまう。原発事故などなくても、宇宙からの放射線を私たちは一定量浴びているし、ラドン温泉も立派な放射性物質を使った温泉である。そういう温泉に子どもと一緒に入り、羽を伸ばしていた日本人はどこへ消えたのだろうか?

 

こういう、「放射線アレルギー」、または「放射線潔癖症」とでも呼ぶべき状況は、少しずつ終息してほしいものだ。そのためにも、今後も似たような記事を私は書き続けるだろう。



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