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オレゴンでの学生生活から南下して社会人生活へ。IT産業でホットなサンフランシスコ・ベイエリアで地味~に文系の仕事してます

ゲイのカウボーイ?Oh, My God!!---映画『Brokeback Mountain』

2005-12-31 | 映画
オレゴン州最大の都市・ポートランドに滞在しています。ここにある自然食品スーパーのパーソナルケア売り場をチェックしていると、「Cowboy」というブラン名の男性用パーソナルケア製品(写真)が目に入りました。女性をメイン・ターゲットにした製品が多く並ぶパースナルケア売り場。そんな売り場に行きづらいと思う男性が多いようです。そんな男性だってこの「Cowboy」が目的であれば、堂々とパーソナルケア売り場に行ける。そういう考えもあって、カウボーイというネーミングにしたのでしょうね。



カウボーイといえば、今年度のゴールデングローブ賞に、作品賞を始めとする最多部門ノミネートしている映画『Brokeback Mountain』(写真上)。二人のゲイのカウボーイが主人公、ということが話題になっているようです。大都市から順次拡大公開しているようで、わたしが住んでいる町ではまだ公開されていないのですが、ポートランドでは公開されているので鑑賞しました。

この映画のウリである、「gay cowboy」。矛盾語法(oxymoron)とも取れるようです。カウボーイというのは「男の中の男」というか、(保守的な)アメリカ人男性の「icon」的存在です。多くの西部劇でジョン・ウェインがカウボーイを演じ、アメリカ人が理想とする男性像を体現している、と言われていたはず。アメリカ文化において、男の代表と位置付けられているカウボーイ。「女々しい」ゲイのカウボーイを描くことで、そんな位置付けに堂々と挑戦する映画の出現に、少なくないアメリカ国民がショックを受けている様子です。

戦後、マルボロというタバコメーカーがカウボーイを広告に使用し、この「Marlboro Man」は、American manhoodというか、アメリカ人男性気質のシンボル的存在になりました。映画の主人公のように、自然の中で一人、または少人数で黙々と働くカウボーイというのは、一般的に使われる「フロンティア・スピリッツ(開拓者精神)」の体現者。このような男性こそが、このアメリカという国を切り開いてきたのだという、ある意味で誇りがあるようです。(もちろん、こんな考え方は今では賛否両論ですが、ここでは触れません。)ブッシュ大統領がテキサスの牧場に暇があれば帰っているのは、単なる気分転換以上の意味があると思います。ゲイが主人公の映画といえば、10年位前にトム・ハンクス主演の『フィラデルフィア』がありましたが、その主人公は確か、大都市に住む弁護士でした。「(腐敗した)都会に住む(悪徳)弁護士」がゲイでエイズに感染した、というのはまだ許せても、「開拓者精神の体現者であり、アメリカ人男性のシンボル的存在」であるべきカウボーイがゲイであるというのは、アメリカ文化の根本を揺さぶる大事件!

ちなみにこの映画、1963年から20年間という時代設定になっていました。ゲイ権利運動の始まりとされる、ニューヨークでの警官によるゲイバー摘発に対して多くのゲイが抵抗したのが、1969年。1970年代には、ニュークークやサンフランシスコなどの両海岸の大都市を中心に、ゲイが市民権を得てきたのはご承知の通り。しかしこの映画は、作り話とはいえ、ゲイがいたのはそんな「堕落したリベラルな、両海岸の大都市」だけではなく、アメリカのHeartland(中心)と呼ばれるワイオミングやテキサスなどの田舎にもゲイがいた、という設定になっています。Heartlandの田舎にもゲイがいた、ということは言い換えると、アメリカ中どこにもゲイがいた(いる?)ということです。保守的なアメリカ人にすれば、「Oh, My God!!」って感じでしょうね。

映画自体はどうだったか?映画批評家とわたし個人の趣味(おバカさんコメディ好き)というのは、基本的に一致しませんので・・・。(地元紙の評価では、『Brokeback Mountain』は満点の☆☆☆☆。わたしが気に入ってリピートして観た映画はたったの☆!)日本でもおそらく近々公開され、「良かった」とか「愛とは何かを考えさせられた」とか、分かったような分からないような感想がブログに氾濫するのでしょう・・・。

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