A43 Hare, B., Melis, A. P., Woods, V., Hastings, S., & Wrangham, R. (2007).
Tolerance allows bonobos to outperform chimpanzees on a cooperative task.
Current Biology, 17, 619-623. [link]
協力課題においてボノボは寛容さのおかげでチンパンジーを凌駕する
協力の進化にかかる制約を理解するため、われわれは、ボノボおよびチンパンジーが協力して食物回収問題を解決する能力を比較した。われわれは、2つの仮説を提出した。「情動反応性仮説」は、寛容の水準がボノボのほうで高いため、ボノボのほうがもっと協力に成功するだろうと予測する。この予測は、馴化動物の研究から着想されている;このような研究は、情動性反応にたいする選択が社会的問題を解決する能力に影響しうるということを示唆している[1, 2]。対照的に、「狩猟仮説」は、チンパンジーのみが野生で協力して狩猟していることが報告されているため[3-5]、チンパンジーのほうがもっと協力に成功するだろうと予測する。われわれは、動物が共採食しているあいだに社会的寛容を測定することで情動反応性を指標化し、ボノボのほうがチンパンジーよりも共採食に寛容であることを発見した。加えて、共採食テストのあいだ、ボノボだけが社会的性行動を示したし、〔チンパンジーと比べて〕もっとよく遊んでいた。独占するのが難しい食物を回収する課題を呈示されたとき、ボノボとチンパンジーとは、同じように協力的だった。しかし、食物報酬が非常に独占しやすいとき、ボノボは、チンパンジーと比べて、それを回収するために協力することに成功した。これらの結果は、情動反応性仮説を支持している。気質にたいする選択〔淘汰〕は、ヒト上科を含む種のあいだに広がる協力能力の相違をある程度説明するかもしれない。
〔[1] Hare B, Plyusnina I, Ignacio N, Schepina O, Stepika A, Wrangham R, Trut L (2005) Social cognitive evolution in captive fox is a correlated by-product experimental domestication. Curr Biol 15:226-230. [2] Hare B, Tomasello M (2005) Human-like social skills in dogs? Trends Cogn Sci 9:439-444. [3] Mitani J, Watts D (2001) Why do chimpanzees hunt and share meat? Anim Behav 61:915-924. [4] Boesch C, Boesch-Achermann H (2000) The chimpanzees of the Taï Forest. Oxford University Press, Cambridge, England. [5] Fruth B, Hohmann G (2002) How bonobos handle hunts and harvests: why share food? In: Boesch C, Hohmann G, Marchant L (eds) Behavioral diversity in chimpanzees and bonobos. Cambridge University Press, Cambridge, England, pp 231-243〕
マックスプランク進化人類学研究所のブライアン・ヘア、アリシア・ペレス・メリス、ヴァネッサ・ウッズ、サラ・ヘイスティングズ、ハーヴァード大学のリチャード・ランガムの論文。
ブライアン・ヘアが2008年5月28日(水)「チンパンジーとボノボの認知の比較」というタイトルで京都大学にて講演をするそうです(こちら)。ヴァネッサ・ウッズも翌日に講演があります。
前回平田と不破の論文を紹介したが(こちら)、その装置を元にしたメリスらの研究があって(こちら)、今回はその発展版。
装置の図はこのようなもの。このブログで3回目の掲載になるが。
何回かまえの記事でドゥ・ヴァールがA1で言及しているのがこの論文だろうと思われます。
霊長類の協力行動の心理学的研究について、いろいろと紹介してきましたが、90年代~00年代についてはあと3回ほどでだいたい尽くせると思います。
Tolerance allows bonobos to outperform chimpanzees on a cooperative task.
Current Biology, 17, 619-623. [link]
協力課題においてボノボは寛容さのおかげでチンパンジーを凌駕する
協力の進化にかかる制約を理解するため、われわれは、ボノボおよびチンパンジーが協力して食物回収問題を解決する能力を比較した。われわれは、2つの仮説を提出した。「情動反応性仮説」は、寛容の水準がボノボのほうで高いため、ボノボのほうがもっと協力に成功するだろうと予測する。この予測は、馴化動物の研究から着想されている;このような研究は、情動性反応にたいする選択が社会的問題を解決する能力に影響しうるということを示唆している[1, 2]。対照的に、「狩猟仮説」は、チンパンジーのみが野生で協力して狩猟していることが報告されているため[3-5]、チンパンジーのほうがもっと協力に成功するだろうと予測する。われわれは、動物が共採食しているあいだに社会的寛容を測定することで情動反応性を指標化し、ボノボのほうがチンパンジーよりも共採食に寛容であることを発見した。加えて、共採食テストのあいだ、ボノボだけが社会的性行動を示したし、〔チンパンジーと比べて〕もっとよく遊んでいた。独占するのが難しい食物を回収する課題を呈示されたとき、ボノボとチンパンジーとは、同じように協力的だった。しかし、食物報酬が非常に独占しやすいとき、ボノボは、チンパンジーと比べて、それを回収するために協力することに成功した。これらの結果は、情動反応性仮説を支持している。気質にたいする選択〔淘汰〕は、ヒト上科を含む種のあいだに広がる協力能力の相違をある程度説明するかもしれない。
〔[1] Hare B, Plyusnina I, Ignacio N, Schepina O, Stepika A, Wrangham R, Trut L (2005) Social cognitive evolution in captive fox is a correlated by-product experimental domestication. Curr Biol 15:226-230. [2] Hare B, Tomasello M (2005) Human-like social skills in dogs? Trends Cogn Sci 9:439-444. [3] Mitani J, Watts D (2001) Why do chimpanzees hunt and share meat? Anim Behav 61:915-924. [4] Boesch C, Boesch-Achermann H (2000) The chimpanzees of the Taï Forest. Oxford University Press, Cambridge, England. [5] Fruth B, Hohmann G (2002) How bonobos handle hunts and harvests: why share food? In: Boesch C, Hohmann G, Marchant L (eds) Behavioral diversity in chimpanzees and bonobos. Cambridge University Press, Cambridge, England, pp 231-243〕
マックスプランク進化人類学研究所のブライアン・ヘア、アリシア・ペレス・メリス、ヴァネッサ・ウッズ、サラ・ヘイスティングズ、ハーヴァード大学のリチャード・ランガムの論文。
ブライアン・ヘアが2008年5月28日(水)「チンパンジーとボノボの認知の比較」というタイトルで京都大学にて講演をするそうです(こちら)。ヴァネッサ・ウッズも翌日に講演があります。
前回平田と不破の論文を紹介したが(こちら)、その装置を元にしたメリスらの研究があって(こちら)、今回はその発展版。
装置の図はこのようなもの。このブログで3回目の掲載になるが。
何回かまえの記事でドゥ・ヴァールがA1で言及しているのがこの論文だろうと思われます。
霊長類の協力行動の心理学的研究について、いろいろと紹介してきましたが、90年代~00年代についてはあと3回ほどでだいたい尽くせると思います。