どうぶつのこころ

動物の心について。サルとか類人猿とかにかたよる。個人的にフサオマキザルびいき。

野生ニホンザルのデンタルフロス

2009-07-27 00:56:58 | 思考・問題解決
A50 Leca, J.-B., Gunst, N., & Huffman, M. A. (2009).
The first case of dental flossing by a Japanese macaque (Macaca fuscata): Implications for the determinants of behavioral innovation and the constraints on social transmission.
Primates. (DOI:10.1007/s10329-009-0159-9)

ニホンザル(Macaca fuscata)によるデンタルフロスの最初の事例:行動の導入の決定因と社会的伝達の制約にかんする含意
ニホンザルによるデンタルフロス行動の事例をはじめて報告する。横断データを用い、この新奇の道具使用行動が集団水準で生じているのか評価した。この行動は、中央〔の群れ〕にいる中程度の順位と年齢のメスが、毛づくろいの相互行為をおこなっているあいだに頻繁におこなっており、それが少なくとも4年前には現われていた。しかし、それはこの導入に独特のままにとどまり、現在にいたるまで群れのほかの成員に広がっていない。この導入を促した要因として、環境的文脈やこの導入者の個体特性、その行動の構造的および機能的な面といったものを調べた。群れの大きさと血縁、順位は、ほかの群れの成員がその導入者を観察する機会を制限すると考えられる社会人口統計学的な要因である。そのため、その行動は新しい行動的な伝統となりうる潜在的な候補であるものの、それらの要因のために拡散に制約が課せられている。これは、自然条件下にて霊長類で道具使用行動が自発的にあらわれたのを記録した稀有な研究のひとつである。ヒト以外の霊長類の社会的な群れのなかで〔新奇の行動の〕導入が起こる決定因とその拡散に課せられた制約を明らかにすることは、文化進化を理解するうえでとくに興味のもたれることである。
キーワード:行動の異型(Behavioral variant)・制約(Constraint)・導入(Innovation)・伝統(Tradition)・道具使用(Tool-use)


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著者は、ジャン=バティスト・レカ(Jean-Batiste Leca)(京都大学)、ノエル・ガンスト(Noëlle Gunst)(ジョージア大学 University of Georgia)、マイケル・アラン・ハフマン(Michael Alan Huffman)(京都大学)。

今回の記事は、前回の記事の続きで書いている。前回触れたとおり、カニクイザルは、ヒト(観光客)の髪の毛をデンタルフロス(歯に挟まったものをとる細い糸)として使用することが報告されている [Watanabe et al 2007]。

これと同じ行動がニホンザルにもみられた。場所は京都嵐山モンキーパークいわたやま。こちらは毛づくろいで得たものであり、しかもおこなっているのが1個体のみであるので、観光客は心配しなくてよい。その個体は嵐山E群のメスで、こちらに写真の載っているチョンペ-69-85-94。

渡邊邦夫らのカニクイザルの研究では群れのなかにこの行動が広がっているのにたいし、このニホンザルの研究では1個体しかこの行動を用いていないという点がおもしろい。論文でも広がらない要因について考察している。

興味のある人は嵐山に行ってみてはどうでしょうか。

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