A34 de Waal, F. B. M. & Davis, J. M. (2003).
Capuchin cognitive ecology: Cooperation based on projected returns.
Neuropsychologia, 41, 221-228. [link]
オマキザル認知生態学:利益を見積もることにもとづく協力
安定した協力をするには、お互いの〔損得の〕清算が個別に行為したときに利用できる分を超えなければならない。チャイロオマキザル(Cebus apella)についてのこの研究は、協力にかかわる決定が (a) 協力のあとに起こりそうな競合の量に左右され、(b) 即座になされるのか、それとも慣化の期間があってはじめてなされるのかを調べた。オトナのサルの組は、資源の独占の仕方(餌が集められているときと散らばっているとき)や〔協力〕相手との関係(血縁個体か非血縁個体か)にかんして機会がさまざまとなっている相互協力課題を呈示した。前訓練のあと、サルの組(N = 11)はそれぞれ、おのおの15回の2分間試行からなる6つのテストを受けた。報酬〔餌〕が集められている分布のときは、協力にたいしてすぐに否定的な効果があらわれた。つまり、この効果は開始直後から見られ、集められている試行が散らばっている試行と交互におこなわれるときでさえ、まだ見られた。協力が少なくなったのは、非血縁個体についてのほうが血縁個体についてよりもずっと劇的であり、これは優位非血縁個体が集まっている条件で半分以上の報酬を要求する傾向によって説明された。そのように反応が速いことは、決定過程が協力から予測される成果にもとづいていることを示唆する。それゆえ、協力にかんする決定では、〔協力のあとに〕引きつづいて起こる利権をめぐる競合の機会およびその起こりやすさの両方が考慮されている。
キーワード:オマキザル(capuchin monkeys);協力(cooperation);生態(ecology)。
エモリー大学(Emory University)ヤーキス霊長類センター(Yerkes Primate Center)リヴィングリンクス(Living Links)のフランス・B・M・ドゥ・ヴァール(Frans B. M. de Waal)とジェイソン・M・デイヴィス(Jason M. Davis)とによるフサオマキザルの協力行動についての論文。ドゥ・ヴァールは同大学心理学部(Deparment of Psychology)にも所属。要約文ではチャイロオマキザルとなっていますが、フサオマキザルのこと。
前回紹介した研究の応用。装置は、板のうえに食物の入ったカップが2つ載っており、2本の棒が延びているもの。2個体のサルが、2本の棒を同時に引けばよい。要約文にある「餌が集められているときと散らばっているとき」というのは、その2つのカップの接近程度のこと。2つのカップが近いほど、板が手前に寄ったときの競合が大きくなると予想できる。
Capuchin cognitive ecology: Cooperation based on projected returns.
Neuropsychologia, 41, 221-228. [link]
オマキザル認知生態学:利益を見積もることにもとづく協力
安定した協力をするには、お互いの〔損得の〕清算が個別に行為したときに利用できる分を超えなければならない。チャイロオマキザル(Cebus apella)についてのこの研究は、協力にかかわる決定が (a) 協力のあとに起こりそうな競合の量に左右され、(b) 即座になされるのか、それとも慣化の期間があってはじめてなされるのかを調べた。オトナのサルの組は、資源の独占の仕方(餌が集められているときと散らばっているとき)や〔協力〕相手との関係(血縁個体か非血縁個体か)にかんして機会がさまざまとなっている相互協力課題を呈示した。前訓練のあと、サルの組(N = 11)はそれぞれ、おのおの15回の2分間試行からなる6つのテストを受けた。報酬〔餌〕が集められている分布のときは、協力にたいしてすぐに否定的な効果があらわれた。つまり、この効果は開始直後から見られ、集められている試行が散らばっている試行と交互におこなわれるときでさえ、まだ見られた。協力が少なくなったのは、非血縁個体についてのほうが血縁個体についてよりもずっと劇的であり、これは優位非血縁個体が集まっている条件で半分以上の報酬を要求する傾向によって説明された。そのように反応が速いことは、決定過程が協力から予測される成果にもとづいていることを示唆する。それゆえ、協力にかんする決定では、〔協力のあとに〕引きつづいて起こる利権をめぐる競合の機会およびその起こりやすさの両方が考慮されている。
キーワード:オマキザル(capuchin monkeys);協力(cooperation);生態(ecology)。
エモリー大学(Emory University)ヤーキス霊長類センター(Yerkes Primate Center)リヴィングリンクス(Living Links)のフランス・B・M・ドゥ・ヴァール(Frans B. M. de Waal)とジェイソン・M・デイヴィス(Jason M. Davis)とによるフサオマキザルの協力行動についての論文。ドゥ・ヴァールは同大学心理学部(Deparment of Psychology)にも所属。要約文ではチャイロオマキザルとなっていますが、フサオマキザルのこと。
前回紹介した研究の応用。装置は、板のうえに食物の入ったカップが2つ載っており、2本の棒が延びているもの。2個体のサルが、2本の棒を同時に引けばよい。要約文にある「餌が集められているときと散らばっているとき」というのは、その2つのカップの接近程度のこと。2つのカップが近いほど、板が手前に寄ったときの競合が大きくなると予想できる。