どうぶつのこころ

動物の心について。サルとか類人猿とかにかたよる。個人的にフサオマキザルびいき。

ヒト、チンパンジーが利他的に他者を手助けする

2006-03-15 14:10:18 | 社会的知性
A8 Warneken, F. & Tomasello, M. (2006).
Altruistic helping in human infants and young chimpanzees.
Science, 311, 1301-1303. [link]

ヒトの幼児および若いチンパンジーにおける利他的手助け
他者が目標を達成するのを手助けすることは、ヒトではふつうのことである。手助けするものがその場で利益を受けとらない場合でさえ、そうするものである。(非血縁者にたいする)そのような利他的行動は、進化的にはきわめて稀であり、それら〔利他的行動〕がヒトに特有であると提案しさえする理論家もいるほどである。ここでわれわれは、18ヶ月(言葉を話せない、もしくはちょうど話しはじめるころ)のヒトの子どもが、さまざまに異なる状況で他者が目標を達成するのをじつに進んで手助けすることを示す。このこと〔手助け〕は、他者の目標の理解および手助けしようという利他的な動機づけを必要とする。加えてわれわれの研究では、3個体の若いチンパンジーが〔ヒトの幼児の場合と〕類似した技能と動機づけとを示しているが、〔ヒトの幼児と比べると〕それほどはしっかりとしたものではない

マクス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)のフェリクス・ヴァルネケン(Felix Warneken)とマイケル・トマセロ(Michael Tomasello)。前回紹介した『サイエンス』の論文のすぐ後ろに掲載された研究。

社会的認知、それも進化的には維持されにくいとされる見返りのない利他的行動にかんする研究である。

[1] ヒトHomo sapiens):24人。およそ18ヶ月齢

どうやって手助けを見るかというと、実験者(幼児にとって非血縁者である成人)が困っている状況で、幼児が自発的にどう行動するかを調べる。菓子や褒め言葉などの報酬はない。たとえば、実験者が物を誤って落として手を伸ばしているが届かないとき(もちろん演技ということになるが)と物をわざと落として手を伸ばしていないときとで、手助けの頻度に差があるかを調べた。差があれば、手助けしたとみなす。

課題は10個あったが、それらは4カテゴリに分けられた。実験者が (i) 手が届かないから、(ii) 手がふさがって障害物をどけられないから、(iii) 結果的に失敗してしまったから、(iv) 手段が間違っているから困っている場合の、4カテゴリである。4カテゴリそれぞれに複数の課題があり、課題の合計数が10ということである。幼児全員の結果を併せると、それぞれのカテゴリで少なくとも1つの課題で、幼児は手助けした。

幼児さまざまな状況利他的手助けをすることが示された。

[2] チンパンジーPan troglodytes):3個体。アレクス(Alex)36ヶ月齢、アレクサンドラ(Alexandra)54ヶ月齢、アネット(Annet)54ヶ月齢ヒトに養育されてきた。

ヒトでは4カテゴリのすべてわたって手助けが見られたが、チンパンジーでは1カテゴリだけしか見られなかった。つまり実験者が (i) 手が届かないから困っている場合のみだった。

ヒトの子どもチンパンジーの子どもも、他者を手助けしようという動機づけをもっている。しかし、ヒトの子どもとチンパンジーの子どもとでは、状況によっては、他者の目標の理解に違いが出てくるのだろうと、著者らは述べる。

この研究でチンパンジーでそれなりに実験がうまくいったのは、食物のような報酬がないからと、著者らは考えている。報酬がかかわってくるとチンパンジーが他者の状況に無関心になるという研究は、キース・ジェンセンら([link])や、ジョウン・B・シルクら([link])によっておこなわれている。

この研究と前回紹介した研究とについて、ジョウン・B・シルクが『サイエンス』の同じ号にコメントを書いている([link])。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2011-10-16 19:25:38
利他的行動ぐらい昆虫でもするぞ
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