どうぶつのこころ

動物の心について。サルとか類人猿とかにかたよる。個人的にフサオマキザルびいき。

チンパンジーが協力行動を学習する

2008-05-25 21:10:36 | 社会的知性
A42 Hirata, S. & Fuwa, K. (2007).
Chimpanzees (Pan troglodytes) learn to act with other individuals in a cooperative task.
Primates, 48, 13-21. [link]

チンパンジー(Pan troglodytes)は協力課題において他個体といっしょに行為することを学習する
われわれは、2個体のチンパンジーに、食物を支えるブロックを手の届くところまで引き寄せるために同時にロープの両端を引くことを求められる課題を呈示した。チンパンジーは、最初のテストでは成功しなかった。彼らは、協力に必要なことをすぐには理解せず、相手といっしょにはたらくように行動を調整しなかった。しかし、成功の頻度は、セッション数が増し、課題が変化するにつれ、徐々に増えていった。彼らは、よく相手を見るようになり、相手がロープをもっていないならば待つようになり、相手と同期してロープを引くようになった。しかし彼らは、行動を同期させるために相互作用行動ないしアイコンタクトを使用しなかった。それから、片方のチンパンジーは、同じ状況でヒトの相手と組まされた。最初の失敗のあと、そのチンパンジーはヒトの相手に協力を求めて誘いかけはじめた:顔を見あげる、発声する、相手の手を引く。このチンパンジーがふたたびチンパンジーの相手と組まされたとき、誘いかけ行動はまったく観察されなかった。かくして、チンパンジーは試行錯誤を通して行動を協調させることを学習できた。コミュニカティヴな行動は課題のあいだに現われたが、コミュニケーションは相手が誰かによって変化した。
キーワード チンパンジー(chimpanzee)・協力(cooperation)・誘いかけ(solicitation)

林原類人猿研究センターの平田聡、不破紅樹の論文。

以前にメリスらの論文を紹介したが(こちら)、その装置の元ネタとなったのが、本研究。メリスらの研究が出版されたときにはまだこの論文は出ていなかったので、メリスらは『発達』に掲載された日本語の論文を引用している。日本語が読めるかどうか以前に、海外だと『発達』そのものの入手が困難そうだ。

装置の見た目は違うが、基本的な構造は同じで、ひもを同時に引くことで装置が手前に寄ってきて食べものを獲得できる。ただし、ひとりで片方のひもを引くと、するするとひもが抜けてしまい、食べものは食べられない。なお、平田 & 不破の課題は、ひもの長さがメリスらの課題よりも短めで、ひとりでは確実に両方のひもが引けないようになっている。

上で述べたとおり、メリスらのものとは見た目は違うのだが、メリスらの研究を紹介したときに作成した図を再掲する。

論文のタイトルにはあらわれていないが、要旨にあるとおり、チンパンジーが、協力相手がヒトであるかチンパンジーであるかによって、誘いかけをおこなうかどうかが変わってくるとのこと。おもしろい点だと思う。

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