どうぶつのこころ

動物の心について。サルとか類人猿とかにかたよる。個人的にフサオマキザルびいき。

ブロンドオマキザルの道具使用の可能性

2009-07-09 20:31:17 | 霊長類
A45 Ferrira, R. G., Jerusalinsky, L., Silva, T. C. F., de Souza Fialho, M., de Araújo Roque, A., Fernandes, A., & Arruda, F. (2009).
On the occurrence of Cebus flavius (Schreber 1774) in the Caatinga, and the use of semi-arid environments by Cebus species in the Brazilian state of Rio Grande do Norte.
Primates, online, DOI:10.1007/s10329-009-0156-z

カーティンガにおけるCebus flaviusの出現、およびブラジルのヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ州におけるCebus種による半乾燥環境の利用
Cebus flaviusは、近年再発見された種で、25のもっとも絶滅が危惧される種の一覧に加わる候補となっている。これまでの仮説によれば、C. flaviusの分布は大西洋岸森林にかぎられていた〔ヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ州のカーティンガ(ブラジル北東部の半乾燥地域)にはないとされていた〕。一方、C. libidinosusは、ヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ(RN)のカーティンガにも出現しているだろうと推測された。それは、その周囲の州に〔RN以外のカーティンガやセハード(ブラジル中央部の半乾燥地域〕にも〕出現しているからである。RNカーティンガのなかで10の地域を調査した結果、この論文で報告するのは、4つのCebus集団である。そこにはふくまれているC. flaviusは、カーティンガではじめて出現したものである。このおかげで、この種の分布の北限が広がった〔大西洋岸森林だけでなくカーティンガにも分布するということである〕。このC. flavius集団は、地理的に分布域が縮小していく過程を示す稀有な例だろう。そして、これはおそらくこの種のなかでももっとも絶滅に瀕している集団かもしれない。また、C. libidinosusの出現する新しい地域も記述する。両種がいるという報告と関連して、道具使用の地点が観察された。
キーワードCebus flavius・カーティンガ(Caatinga)・オマキザル(Capuchin monkeys)・半乾燥環境(Semi-arid environments)・道具使用(Tool use)


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やったー! ブロンドオマキザル(blond capuchin, Cebus flavius)の論文が初めて出たよ! ブロンドオマキザルについては、「新種ブロンドオマキザル」、「ブロンドオマキザルの再発見」で紹介したように、すでに論文が2本出ていますが、これらは標本の登録についての論文です。そのため、つまり本格的な調査はこれが初めてということです。

著者は、ブラジルの研究チーム。ヘナータ・G・フェヘーイラ(Renata G. Ferreira)(ヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ連邦大学 Universidade Federal do Rio Grande do Norte)、レアーンドロ・ジェルザリーンスキ(Leandro Jerusalinsky)(シッコ・メーンジス生物多様性保全研究所 Instituto Chico Mendes de Conservação da Biodiversidade、パライーバ連邦大学 Universidade Federal da Paraíba)、チアーゴ・セーザル・ファリーアス・シーウヴァ(Thiago César Farias Silva)(シッコ・メーンジス生物多様性保全研究所、パライーバ連邦大学)、マールコス・ジ・ソーザ・フィアーリョ(Marcos de Souza Fialho)(シッコ・メーンジス生物多様性保全研究所)、アラーン・ジ・アラウージョ・ロッケ(Alan de Araújo Roque)(ヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ連邦大学)、アダルベールト・フェルナーンジス(Adalberto Fernandes)(所属なし)、ファーティマ・アフーダ(Fátima Arruda)(ヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ連邦大学)。

今回の論文の大きな成果は、ヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ州のカーティンガ(Caatinga)で、ブロンドオマキザルとクロスジオマキザル(bearded capuchin, Cebus libidinosus)を発見したことです。ただ、それぞれの種にとってヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ州のカーティンガの位置づけが異なります。そのまえにいろいろなものの場所がわからないといけません。ブラジルの生物群系については、こちらの図 [Ache Tudo e Região] がわかりやすいです。ブラジル北東部(大西洋に向かって突き出たところ)に、カーティンガがあって、その横に細長く大西洋岸森林(Mata Atlântica)が並んでいます。また、ヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ州は、こちら [ウィキペディア] です。州内に、カーティンガと大西洋岸森林が、ともにあります。

クロスジオマキザルは、ブラジル北東部のカーティンガ、中央部のセハード(Cerrado)といった半乾燥地域に生息しています。ただ、ヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ州内に生息しているという公的な記録がなかっただけであるため、ヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ州内でもカーティンガを調べればクロスジオマキザルが生息しているだろうという予測は成りたちます。今回の研究では、しっかりとヒーオ・グラーンジ・ド・ノールチ州のカーティンガで発見することができました。

一方、ブロンドオマキザルは、これまで大西洋岸森林でしかみられませんでした。そのため、今回の研究で、半乾燥地域で発見されたのは、画期的なことのようです。

次に、もうひとつの話題の道具使用について。野生オマキザルの道具使用は、クロスジオマキザル [Fragaszy et al. 2004][Liu et al. 2009][Mannu & Ottoni 2009][Moura & Lee 2004][Ottoni & Izar 2008][Visalberghi et al.; Lee & Moura 2005][Visalberghi et al. 2007][Visalberghi et al. 2008][Visalberghi et al. 2009a][Visalberghi et al. 2009b][Waga et al. 2006] と、キバラオマキザル(golden-bellied capuchin, C. xanthosternos)[Canale et al. 2009] でみられています。キバラオマキザルの道具使用について報告したそのカナーリたちの論文では、クロスジオマキザルの道具使用についても報告しています。

今回の研究では、実際に道具使用の現場を見たわけではありませんが、どちらの種についても、道具使用の痕跡が1ヶ所ずつ発見されています。鎚となる石(ハンマー)と台石(アンヴィル)、残った実の殻から、クロスジオマキザルもブロンドオマキザルも、ここで道具使用をおこなっていることが示唆されます。過去の別の研究者によるクロスジオマキザルの研究では、実際に道具使用を目撃した地点の周辺で、このような痕跡を探すことにより、どこで道具使用をおこなっているのか調べたものがあります(e.g., [Visalberghi et al. 2007])。とくに今まで道具使用の証拠が皆無だったブロンドオマキザルについては、これは非常に大きな発見です。しかし、まだ実際の道具使用の観察はないので、今後の研究が楽しみです。

あとは、私的なコメント。

動物の種に言及するとき、この論文では学名しか使っていません。つまり、「blond capuhinsうんぬん」と書かれているのではなく、「Cebus flaviusうんぬん」と書かれています。そこだけ斜体になるので、かえってわかりやすいのですが、霊長類以外の哺乳類が出てくると、私の手には負えませんでした。マタコミツオビアルマジロ(Tolypeutes matacus)なんて学名だけで書かれてもわかりません。と思ったら、霊長類以外については、表3に通称までまとめられていました。親切です。目、科、種、通称と、この地域でどういう形で発見されたのかを記している表なのですが、通称としてなぜか英名だけでなくポルトガル語名も載っています。それでアルマジロのポルトガル語名が「タトゥ」であると知りました。アルマジロ(armadillo)という英名はアルマディージョ(armadillo)というスペイン語に由来するので、どうしてここまでポルトガル語と差があるのだろうと思ったら、やはりタトゥはグアラニー語(南米先住民の言語)でした。

グアラニー語は、あまり聞いたことがないかもしれませんが、ウィキペディア [Vikipetã] もあるくらいです。グアラニー語で名づけられた南米の地名も多いですし、ジャガーやカピバラなど、グアラニー語を語源とする動物名もあります。

この論文も、冒頭に "the genus Cebus (capuchin monkeys, macacos-prego, and caiararas)" と書いています。キャプチン・モンキー(capuchin monkey)が英語、マカッコ=プレーゴ(macaco-prego)がポルトガル語、カイアララ(caiarara)がグアラニー語です。著者は妙にグアラニー語を押してきますね。マカッコ=プレーゴは「釘のサル」の意味で、オスのペニスが釘に似ているかららしいです。

この論文にはelectronic supplementary materialというのがついていて、定期購読者はシュプリンガーのウェブサイトから補遺をダウンロードできるようになっています。通常は、論文には載せられなかった細かい手続きやデータ、図表を載せるところです。が、今回のものは、写真が6枚、ポンと置かれているだけ。フォトアルバムみたい。6枚中2枚については、論文本体に地元の人の飼っているペットであると説明がありますが、残りについてはありません。推測するに、そもそも写真すらも乏しい種なので、画像があるだけでもかなり貴重ということでしょう。でも、うち1枚の写真はサルも何も写ってないのですが、何のための写真なんでしょうか。謎。

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ナキガオオマキザル

2009-05-03 23:23:54 | 霊長類
前回の記事ではシロガオオマキザルでしたが、今回はナキガオオマキザルです。

中日新聞の記事「珍種『ナキガオオマキザル』仲間入り 大内山動物園」を見て、大内山動物園に行ってきました。


ナキガオオマキザル(Cebus olivaceus)のコボちゃんです。性別は訊ねるのを忘れていました。4ヶ月齢。この個体は、鼻筋に黒い線が下りているのが非常に特徴的でした。上の中日新聞の記事によると。森のウォーキングサファリのナキガオオマキザルの写真は、こちらのブログで見られます。


毛の色。シロガオオマキザルよりも暗く、ところどころ赤めの色が混じっています。毛並みの感じもシロガオオマキザルとはちがいます。



動画です。かわいいですね。でも私は断然フサオマキザル派です。

房毛なしオマキザル

2009-05-02 04:10:51 | 霊長類
こちらのブログで房毛なしオマキザルについて話題にあがっていることを知人に教えていただいたので、とりあえず2009年4月25日に日本モンキーセンターに行ってきました。

房毛なしオマキザルの前に房毛ありオマキザル(フサオマキザル)の写真を。

相変わらずフサオマキザルはかわいいとしかいいようがない。毛がちょっと変なのは雨天のせいです。


房毛なしオマキザルのシロガオオマキザル(white-fronted capuchin, Cebus albifrons)。この写真のように何度か怒られたのですが、どうやらすべて同じ個体だったようです。


このように黒い帽子の先が伸びている個体もいました。全体的な体色は、白と赤みのかかった褐色です。


排水管に頭を突っこんでいる子。もっと頭をズボッと差しこんでもいました。何がしたいのか。



シロガオオマキザルのケージのなかにいたのですが、顔が白くありません。ナキガオオマキザル(wedge-capped capuchin, Cebus olivaceus)のようにも見えました。飼育の方に訊ねたら、以前にはナキガオオマキザルとされていて、途中からシロガオオマキザルに直されたとのこと。シロガオオマキザルとの雑種である可能性はどうなのだろうか。この個体は、PINのナキガオオマキザルの写真に似ています。この毛のバッサバッサした感じもナキガオオマキザルの特徴です。種小名olivaceusはオリーヴ色という意味で、全体的な体色はほかの房毛なしオマキザルと比べても暗い褐色です。


翌26日も立ち寄ったのですが、クルミ(カリフォルニア産)をもらっていました。写真は、いっしょうけんめい割っているところ。その上の写真の私がナキガオオマキザルかもしれないと思ったのと同じ個体です。なお、クモザルも隣のケージにいたのですが、クルミをもらえませんでした。ちょっと悲しい。クモザルの手は、親指が退化して指が4本しかないという特徴があります。

最初にあげたブログや中日新聞の記事「珍種『ナキガオオマキザル』仲間入り 大内山動物園」(この記事も同じ知人に教えていただいたものです)にあるナキガオオマキザルをみると、上であげたナキガオオマキザルの写真とちがっているように見えますが、形態的にも種内変異が大きい種であるようです。現在は別種であるカアポルオマキザル(Ka'apor capuchin, Cebus kaapori)も、以前はナキガオオマキザルの亜種とされた種です。


2009-05-03追記
次回の記事ではナキガオオマキザルを見にいきました。

オマキザル属の分類(おまけ)

2009-02-21 13:35:20 | 霊長類
オマキザルの分類」のおまけ。

2009年2月15日、日本モンキーセンターのフサオマキザル(Cebus apella)のケージまえにて撮影しました。

かわいい……。日向ぼっこしているところです。フェンスのせいで写真が撮りづらいのが悩み。名前も知りたいところ。全部で少なくとも9個体はいました。2個体を除いて若者かそれ未満のようでした。


解説パネルです。分布域が南米の広い部分に及んでいることから、これは昔の分類の「フサオマキザル」であることがわかります。新しい分類のフサオマキザルだと、分布域はだいたいこれの北半分ほどになります。


右の大人個体の額の筋肉がすごい……? 房毛でなくて筋肉がすごそうです。ひょっとしてキバラオマキザル(C. xanthosternos)の血が混じっているのでは? と疑ってしまいます。そう疑う理由はもうひとつあって……。


それがこちら、解説パネルの顔写真の拡大です。この顔写真の個体はケージのなかにはいませんでした。この個体は、キバラオマキザルに見えます。たとえば、キバラオマキザルの写真はこちらで見ることができます。また、スティーヴン・ナッシュ(Stephen Nash)の描いた図式的な顔をこちら(最右列の上から2段目)で見ることができます。これもナッシュによるものでしょうか。キバラオマキザルは、額のあたりの筋肉が発達し、頭のうえにコブが2つできているように見えるのが特徴です。

ということで、もしこの顔写真の個体が園内で撮影されたものなら、現在日本モンキーセンターにいる個体には、ひょっとしたらキバラオマキザルの血が混じっているかも! それが園内で撮影されたものでないのなら、私の撮影した額のものすごい個体は、ただたんに額のあたりがものすごくなっているというだけ……なんだかおもしろくありませんが……。キバラオマキザルの血が入っているかもと思うと、ちょっと夢が膨らみます。

できるかぎり調べたうえで記事を書いているつもりですが、私は形態学の専門家でないので、とくにこのおまけにかんしてはでたらめを書いている可能性が高いです。「キバラオマキザル」が入っていたらおもしろいなあという希望的観測をこめて書いている部分が大きいです。また、この記事で「キバラオマキザル」と連発していますが、以前の記事で少し触れたとおり、このサルは一般的な和名をもっていません。

オマキザル属の分類

2009-02-21 09:36:17 | 霊長類
今年2009年に出版されたアンソニー・B・ライランズ(Anthony B. Rylands)とラッセル・A・ミッターマイアー(Russell A. Mittermeier)による分類の概説によると、オマキザル属は12種からなる。下にIUCN Red Listの評価とともに挙げる。今後の研究によって大きく変わる可能性があることに注意。和名は、定訳のないものは適当に訳した。なお、これは細かすぎるせいか、現在一般的なものは、この記事の下のほうで挙げる9種分類であるようだ。
- 房毛なしオマキザルグループ
(1) Cebus capucinus (Linnaeus, 1758) ノドジロオマキザル [least concern]
(2) Cebus albifrons (Humboldt, 1812) シロガオオマキザル [least concern]
(3) Cebus olivaceus Schomburgk, 1848 ナキガオオマキザル [least concern]
(4) Cebus kaapori Queiroz, 1992 カアポルオマキザル [critically endangered]
- 房毛ありオマキザルグループ
(5) Cebus apella (Linnaeus, 1758) フサオマキザル [least concern]
(6) Cebus macrocephalus Spix 1823 オオアタマオマキザル [least concern]
(7) Cebus flavius (Schreber, 1774) ブロンドオマキザル [critically endangered]
(8) Cebus libidinosus Spix, 1823 クロスジオマキザル [least concern]
(9) Cebus cay Illiger, 1815 ズキンオマキザル [least concern]
(10) Cebus nigritus (Goldfuss, 1809) クロオマキザル [near threatened]
(11) Cebus robustus Kuhl, 1820 トサカオマキザル [endangered]
(12) Cebus xanthosternos Wied, 1826 キバラオマキザル [critically endangered]
キバラオマキザルの和名については、前回の記事で少し触れた。

房毛ありオマキザルをひと括りに「フサオマキザル」と呼ぶことがある。これは、かつて房毛ありオマキザルをまとめてフサオマキザルCebus apella一種としていたことに関係があるかもしれない。たとえば、『NHKスペシャル 南米の驚異 道具を使うサル』でフサオマキザルが道具を使用するとしているが、この「フサオマキザル」はクロスジオマキザル(C. libidinosus)のことである。現在2009年2月まで、野生の房毛ありオマキザルのうち、少数の事例報告でなく、系統的な道具使用(打撃する石器の使用)が観察されているのは、クロスジオマキザル [Fragaszy, et al. 2004] [Moura, & Lee 2004] とキバラオマキザル(C. xanthosternos) [Canale, et al. 2009] のみである。フサオマキザル(C. apella)では観察されていない。もちろん、フサオマキザルも、飼育下や準自由遊動下では、系統的な道具使用を示している。

かつて房毛ありオマキザルをまとめて一種としていたことに関連して。日本の動物園で「フサオマキザル(Cebu apella)」とされているのは、ほとんどはこの古い時代の分類にもとづいていると思われる。つまり、上であげた房毛ありオマキザルグループのいずれかであるか、それらのあいだの雑種であるということである。欧米の動物園なども、事情は似たものらしい。

その概説からの又引きになるが、ホセー・ジ・ソウザ・エ・シーウヴァ・ジューニオル(José de Sousa e Silva Júnior)は、房毛のあるなしで属を別にしようとしているようだ。このとき、房毛なしオマキザルがCebus属、房毛ありオマキザルがSapajus属である。ただし、そのかわりというか、シーウヴァ・ジューニオルの分類は、亜種を設けていない。

なお、便宜のために、コリン・グローヴズ(Collin Groves)の分類への対応を示すと、オオアタマオマキザル(C. macrocephalus)は、フサオマキザル(C. apella)の亜種C. a. macrocephalus, C. a. peruanus、およびクロスジオマキザル(C. libidinosus)の亜種C. l. juruanusに対応している。また、ズキンオマキザル(C. cay)は、クロスジオマキザルの亜種C. l. paraguayanus, C. l. pallidusに対応している(ただし、C. l. pallidusとの対応は仮のもの)。さらに、トサカオマキザル(C. robustus)は、クロオマキザル(C. nigritus)の亜種C. n. robustusに対応している。この対応については、下の『オマキザル大全』による。

コリン・グローヴズの挙げる8種のオマキザル+ブロンドオマキザルの計9種の一覧は下のとおりである。この記事の冒頭で述べたように、冒頭の12種分類よりも、こちらのほうが一般的であるだろう。
- 房毛なしオマキザルグループ
(1) Cebus capucinus (Linnaeus, 1758) ノドジロオマキザル
(2) Cebus albifrons (Humboldt, 1812) シロガオオマキザル
(3) Cebus olivaceus Schomburgk, 1848 ナキガオオマキザル
(4) Cebus kaapori Queiroz, 1992 カアポルオマキザル
- 房毛ありオマキザルグループ
(5) Cebus apella (Linnaeus, 1758) フサオマキザル
(6) Cebus flavius (Schreber, 1774) ブロンドオマキザル
(7) Cebus libidinosus Spix, 1823 クロスジオマキザル
(8) Cebus nigritus (Goldfuss, 1809) クロオマキザル
(9) Cebus xanthosternos Wied, 1826 キバラオマキザル

上で触れた参考文献。
Rylands, A. B., & Mittermeier, R. A. (2009). The diversity of the New World primates (Platyrrhini): An annotated taxonomy. In P. A. Garber, A. Estrada, J. C. Bicca-Marques, E. W. Heymann, & K. B. Strier (Eds.), South American primates: Comparative perspectives in the study of behavior, ecology, and conservation (pp. 3-54). New York: Springer Science+Business Media.
ISBN0387787046
Groves, C. (2001). Primate taxonomy. Washington, DC: Smithonian Institution Press.
ISBN156098872X
Fragaszy, D. M., Visalberghi, E., & Fedigan, L. M. (with Rylands, A.). (2004). Taxonomy, distribution and conservation. Where and what are they and how did they get there? In D. M. Fragaszy, E. Visalberghi, and L. M. Fedigan, The complete capuchin: The biology of the genus Cebus (pp. 13-34). Cambridge, England: Cambridge University Press.
ISBN0521661161 [hdc] [pbk]

こちらにおまけ。

ドゥ・ヴァールの霊長類質問箱2

2008-05-15 00:45:55 | 霊長類
長いので前の記事からの続きです。

Dubner S. J. (2008, May 7, 2:10 pm).
Frans de Waal answers your primate questions.
The New York Times.
Retrieved May 14, 2008 JST from http://freakonomics.blogs.nytimes.com/2008/05/07/frans-de-waal-answers-your-primate-questions/
2008年5月7日午後2時10分
フランス・ドゥ・ヴァールが霊長類にかんしてあなたの質問にお答えします
スティーヴン・J・ダブナー

(続き)

Q7:おそらく愚問でしょうが:近親相姦をしている霊長類を観察したことはありますか.もしそうなら,その社会集団は,それを無視したのでしょうか,よいこととして報いたのでしょうか,それとも悪いこととして罰したのでしょうか.

A7:非常に折のよい質問です.彼らは多くの動物の配偶システム(優位のオスが自由に多くのメスと生殖できるように若いオスを送りだす)を模倣しているように思われたため,私はテキサスの一夫多妻の宗派を興味深くみますが,一方,すべての動物が近親交配を避ける何らかの方法をもっているため,オーストリアの近親相姦の男性は私が霊長類について知っている何ものにも当てはまりません.実際,娘が父親であるはずのオスといっしょのところで成長することの多い動物園においてさえ,近親交配はほとんど稀です.

霊長類の一般的な規則は,ある性かもう一方の性のどちらかが,成熟すると群れを離れるというものです.多くのサルでは,オスが群れを離れ,別の群れを求めます.類人猿にかんしては(また,驚くべきことにヒトの社会でも),群れを去るのはメスです.移入者が非血縁の異性メンバーに会うことのできる群れを見つけにいくということであるから,これが多くの近親交配の機会に配慮したものだと想像できるでしょう.

これに加えてさらに,動物はいわゆるウェスターマーク効果にしたがいますが,それはヒトにも当てはまると考えられています.その規則は,いっしょに成長したものどうしのあいだにはおたがいに性的回避が生じるというものです.兄弟姉妹や母親‐息子の組みあわせは,それだけで性行動をおこなう欲望をもちはしません.ウェスターマークは,ずっと昔にこの考えを定式化しており,それは多くの動物でテストされ,全般的に支持されてきました.ヒトでも,いっしょに成長したものどうしのあいだでは,たとえ非血縁間であっても,性的関係を回避するという〔イスラエルの〕キブツや中国の婚姻〔中国や台湾のシンプア〕といった証拠があります.


Q8:チンパンジーの群れのあいだで,文化はどれほど変わりますか.チンパンジーがある群れから別の群れに移籍したとき,その個体は新しい群れに前の文化の何がしかを教えるでしょうか.

A8:野外の事例には,女性のチンパンジーが新しい群れに外から加わって,自らとともに新しい知識をもたらしたものがあります.彼女らは劇的な変化をもたらしたわけではなく,たいていはゆるやかなステップであり,たとえば彼女の受けいれ先のコミュニティが触れようとしないある種のナッツが実は食べられると知っているというようなことなのです.


Q9:霊長類に,ビートを保ったまま10秒から1分のあいだ続き,リズムのある,重力の影響に従った動きを教えることはできますか.(速さは,1ステップあたり450から550ミリ秒の割合でなければなりません.)

たとえば:その場で跳びあがって降りてくる,その場で行進する,椅子のうえで2ステップ踏んで降りてまた2ステップ踏む.

霊長類には,新生児の状態で「歩行反射」を示すものはいますか.

A9:この質問は私が答えるのにじつにぴったりで,もちろん,リズムについての優れた感覚は移動様式の一部であるため,多くの動物がその感覚をもっています.

多くの鳥類(これについては,あるいはチョウ)の規則的な羽ばたきを見てください.ゾウのような大きな動物なら,4つの足のリズムを同調させても,リズムを必要とするため〔訳者が英文を解釈しきれていない箇所〕,それほどは優雅に動けないでしょう.

チンパンジーはドラムを叩きますし,じつにすてきにリズムよくそうすることができます.彼らはふだんそれほど長くはそうしませんが,ときおりそれにのめりこみ,みなが夢中になるまで何分も中空の物体を叩きつづけることがあります.

おそらく,鳥類がリズムのすばらしい感覚をもっていることを示す最高の動画は,オウムの雪玉〔このオウムの名前〕のもので,彼はリズムの非凡な感覚をもっているように思われます.跳ねたり弾んだりするトムソンガゼルも思いおこされます:彼らは,より捕まえやすい獲物を狙う潜在的な捕食者に自身の健康さを知らせていると信じられているディスプレイのさいに,何度も跳躍します.


Q10:あなたはデズモンド・モリスから何を学びましたか.

A10:すばらしい質問です.デズモンド・モリスは,その世代でもっとも過小評価されている行動生物学者(動物行動学者)です.彼の本のなかでは,私たちが社会生物学を得るまえに,すばらしいおかしみと眼識をもってヒトと動物とのつながりについて率直に論じられているため,多くの進化心理学見解やそれに類似したものが形づくられています.

彼はまた,ほかの研究者が彼を引用することなく採用(盗用?)した考え,たとえばヒトのおしゃべりはいくぶん霊長類の毛づくろいに似ているということや,ヒトの家族がオス間の競合を小さくするために生まれ,それにより家に帰ればそれぞれに配偶者がいるという知識のもとにいっしょに狩猟に出かけることができたということなどを定式化しました.

これらは非常におもしろい考えですが,ただしいくぶん検証不可能であるものの,大事な点は,モリスがヒトの起源やそれが動物の行動にどう関係しているのかについての議論を始めたということです.彼は,なべてこのことを,人々が理解できる方法で,また読みたくなる方法でなしとげました.

しかし,そのような大衆に「通俗化させるもの」になることは,実際の科学者はときに蔑みます.

彼の通俗性の歴史はおもしろいのです.彼の本を出している出版社から聞くところによると,モリスは,彼の1960年代の大ベストセラーである『裸のサル』(当時にしては非常に挑戦的な表題と表紙をもつ)以前にも多くの書物を著していました.しかし,それらの以前の本は,それほどよくは売れませんでした.

彼は,ヒトと動物との行動を通俗的な見解で比較することで,ロンドン動物園を訪れるものを楽しませていたのでしょう.みな,それがおもしろく教えられるところが大きいと考えていて,出版社の人が彼の話すのを聞き,「それこそあなたの本です」といったとのことです.

それがすでに頭のなかでできあがっていたため,彼は3ヶ月でそれを書きあげられたのだと,私は信じています.

それを書くには度胸を必要とするため,私はその人に感服します.教授が私たちにデズモンド・モリスを読むと注意を促したため,私は学生として彼の本について学びました.もちろん,その結果,私たちはそれを読まねばならないと思うようになりました.

私はこのようなことを学びました:どんなことであれ読者の興味を惹きつづけよ.真実を裏切らぬ限り.


Q11:私は最近,幼児が自己意識をもつかどうかを知る簡単でおもしろいテストがあると学びました;ただ鏡の前で鼻に赤い点を施し,子どもがそれを消そうとするかどうかを見るというものです〔「鏡の前で」の位置が異なっているように思われるが,原文儘〕.これでわかるのはもちろん,自己意識だけです;子どもがどのように他者を意識しているのか,どのように他者と自身との差異を意識しているのかについてはわかりません.ここで疑問に思ったのですが,霊長類はどれほど自己意識的なのですか.

A11:自己鏡映像認識はそのようにテストされます.子どもは18ヶ月から24ヶ月のあいだにこのテストに合格しますし,これまで合格した動物はといえば,4種の類人種(チンパンジーをふくむ),イルカ,ゾウのみです〔「類人」とは,大型類人猿と訳されていたもの〕.私たちは,ブロンクス動物園でジャンボサイズの鏡を用いてゾウのテストをおこないましたが,ウェブでこの実験の動画を見られるようにしてあります.


Q12:ヒトの進化にかんするいわゆる水生類人猿仮説について,個人的であれ専門的であれ,何か考えをもっていますか.(〔故〕アリスタ・ハーディ卿による投稿〔故人による「投稿」というのは洒落だろうか〕.)

A12:まさにその仮説を展開したあなたからこの質問を受けるとは光栄です.私は,その考えにはおおくの魅力的なおもしろい要素,たとえばヒトを特徴づける皮下脂肪層や潜水反射といったものがあると思います.しかし,ヒトの祖先が水際で生活していておもに水生植物や動物を食べて生き延びてきたという証拠が揃うまでは,それは仮説のままです.

水がヒトの起源のなかで主要な進化的な力となるためには,私は,一定の期間のあいだこれが私たちの祖先の生き延びる唯一の術だったということをわかる必要があるだろうと推測するため,実際のところ,ひとつないしふたつの合致点を見つけただけでは不十分でしょう.

いままでのところ,その証拠はありません.しかし,あなたは古生物学者がしかるべき場所を見てきていないと感じるでしょう.

ずっと昔(『仲直り戦術』,1989において),水生類人猿としてのボノボについてからかい半分で推測を述べました.彼らは,自発的に水に入り,それを楽しんでいるようにみえる唯一の類人猿です.その時代には彼らが浅い川なら2足で歩行できるのだという噂がありましたが,それは水面から頭を出す姿勢を維持してみるなら,論理的に辻褄のあうことです.

近年,私はそのような話が誇張して語られていると思われる話を聞くにおよびました.しかし,じつは,そのような行動はベルギー動物園でしかみられない光景なのです.

私にとって水生類人猿理論は,消滅してはいませんが,かなり証拠を欠いているものなのです.


Q13:動物は「非道徳的」でありうるのでしょうか,それとも「無道徳的」なのでしょうか.

A13:それは大きな問いであり,短い文章では答えられません.私たちがそうであるように,生物は,道徳という取り決められたシステムの部分であって,それを遵守しているかぎりにおいて,はじめて非道徳的であることができます.チンパンジーやほかのヒト以外の動物が私たちと同じ意味で道徳的な存在者であるのだとは,私は思いません.

しかし,彼らを無道徳的であると呼ぶことも正しくありません.無道徳的とは,完全に道徳を欠くことを意味しており,道徳の積み木(共感,同情,協力,社会的規則)が私たち以外の動物にも見出しうることは明らかです.

自然界が「無道徳的」であるとの見解は,チャールズ・ダーウィンの同時代人であるT. H. ハクスリに由来しますが,彼は自然がヒトの道徳性を産みだせないと思っていました.彼は自然を本質的に不潔なものと考えていました.

ダーウィン自身がそれに反対したように(『人間の由来』において),私はこの暗澹とした見解には絶対に与しませんが,ハクスリの見解は不幸にもまだ人口に膾炙したままです.私はその見解に反駁するために本を1冊著しました:『霊長類と哲学者』.

全訳してみました.リンクはすべて原文のもの.〔 〕は私の補足.QやAの番号も私の補足.1ヶ所英文を解釈しきれないところがありましたが,放ってあります.

2008-05-16追記

そういえば最後に紹介されている『霊長類と哲学者』にドゥ・ヴァールのサインをもらっていたのですが,途中で読むのをやめていたのに今日気づきました.この本は,上のドゥ・ヴァールの言葉から予想されるように,かなり理論的な内容になっていて,『仲直り戦術』や『あなたのなかのサル』ほどは一般向けではなさそうです.ドゥ・ヴァール→何人かのコメント→ドゥ・ヴァールの返答という構成になっていて,なぜかコメントのなかにピーター・シンガーがいます.なぜかAmazon.co.jpにない.
de Waal, F. B. M. (1994). Primates and philosophers: How morality evolved. Princeton, NJ: Princeton University Press.
ISBN0691124477[紀伊國屋書店]

ドゥ・ヴァールの霊長類質問箱1

2008-05-15 00:33:38 | 霊長類
Dubner S. J. (2008, May 7, 2:10 pm).
Frans de Waal answers your primate questions.
The New York Times.
Retrieved May 14, 2008 JST from http://freakonomics.blogs.nytimes.com/2008/05/07/frans-de-waal-answers-your-primate-questions/
2008年5月7日午後2時10分
フランス・ドゥ・ヴァールが霊長類にかんしてあなたの質問にお答えします
スティーヴン・J・ダブナー

霊長類学者フランス・ドゥ・ヴァール宛ての質問を近日募集していました.彼はさまざまな実績をもっておりますが,もっともすばらしい実績といえば,学問的な知見を幅広く一般向けにわかりやすく伝えることができるということです.それについて彼はこのように説得力のある助言を述べています:「どんなことであれ読者の興味を惹きつづけよ.真実を裏切らぬ限り」.

彼は以下の部分で,(なかんずく)一夫多妻制の宗派がどのように動物の配偶システムを模倣しているのか,またボノボがなぜ性行動のあと食事をするのかといったことについて,率直に論じており,さらに「神を問う壮語」について意見しているのだが,たしかにそれらは彼の哲学に悖っていません.また,サルがいかにして一部のヒトのように「不公平回避」――利得最大化が目標であるなら,不合理性のたしかな兆候です――を示すのかを論ずるとき,彼は経済学にたいする深い理解を披露しています.

フランスには魅力的な回答に感謝し,読者には価値ある質問に感謝する次第です.


Q1:ボノボというサル以外の霊長類種は,コミュニケーション/絆/親密を深める形式として性行動を用いますか,それとも純粋に子どもをつくる目的でそれを用いますか.

A1:ボノボは,非生殖的な性行動を示すもっともよい例です.たいていは社会的と思われる理由によって――喧嘩のあとの和解のさいや,食物をめぐる競合が起こりそうなとき――すぐさま性行動を使用します.彼らは,緊張を和らげるために性行動を用います:性行動のあとに食物を分配します.ボノボはチンパンジーとともにわれわれにもっとも近縁な動物の親戚なのです *〔この*印は下の注に続いている〕.

ボノボがチンパンジーとどれほど異なっているかに焦点を当てた近年の実験では,類人猿は,いっしょに協力することで引き寄せることのできる台を提示されました.食物が台のうえに載せられたとき,ボノボは,明らかにチンパンジーよりもよい成績で,それを獲得しました.

食物があると,ふつうは対立関係をもたらすものなのですが,ボノボは性的接触をおこない,いっしょに遊ぶことで,協力して食物を幸福に分配しました.チンパンジーは,対照的に,競合に打ち勝つことはできませんでした.

生殖が不可能な場合にさえ,たとえばメスが妊娠しているときでも,あるいはたとえば同性のメンバーのあいだでも性行動をおこなう動物は,ボノボのほかにもたくさんいます.そこでも同じように性というものは,絆をつくる機能のために,あるいは順位の優位を知らせるのに役だちます.そのため,性が生殖を志向するものであり,それゆえ排他的に生殖のために用いられるべきであるとの考え(カトリック教会がコンドーム使用に対抗して用いる論法)は,多くの動物について誤っており,そのことは私たち自身の種にも当てはまります.

* ボノボやチンパンジーは,サルではなく類人猿です.類人猿は,大きな脳をもち,尾のない,平らな胸と肩とをもつ大きな霊長類のことです.サルは,もっと小さく,尾があり,たいてい顔(鼻)がもっとつき出ています.ヒトは明らかに,サルではなく類人猿に似ています.


Q2:宗教を動機として進化が拒否されることがありますが(例,創造論),そういったことが研究の妨げになったことはありますか.

A2:科学では進化論が明らかに優勢なパラダイムであり,そのような抵抗の憂き目に遭ったことはありません.創造論者は,ときに多くの科学者が進化論に疑いをもっているかのように印象づけようとしますが,私がそのような科学者に会ったことは,いまだかつてありません.積極的な生物学研究者のうち0.1パーセント以上がそのような疑念をもっているとしたら,私は驚きます.

25年以上も前に私がこの国へ〔オランダからアメリカ合衆国へ〕来たとき,創造論がいまだ真剣に受けとめられていることに驚きましたが,創造論はじきに忘れ去られるだろうと思っていました.しかし現実には,そうではありませんでした.私にとってそれは,おびただしい反証を無下のこととする中世風の思考の残滓としか思えません.

同時に私は,近年高まりをみせている神を疑う壮語が役にたつとは思えないともいわなければなりません.そのようなやり方では問題を分裂さてしまいますが,私が思うに,宗教を集合的な価値体系とみて,科学を物理的な世界の動作の仕方を教えるものとみることは,大いに可能でしょう.私自身は信仰心をもってはいませんが,科学と宗教との葛藤というものは不要であり誇張であると思います.


Q3:あなたの研究室では,ブドウ/キュウリ研究をおこないましたか.サルが課題をおこなってブドウまたはキュウリを得て……

A3:はい,セイラ・ブロズナンとともに,私たちは単純な課題にたいしてオマキザルがブドウ片かキュウリ片を受けとる研究をおこないました.

2個体のサルが同じ報酬を得るなら,決して問題は生じませんでした.ブドウのほうをずっと好んでいますが(私たちのように実際の霊長類として,彼らは糖分を好みます),2個体ともがキュウリを受けとるのであれば,彼らはそのまま何度も課題を続けるでしょう.

しかし,〔同じ課題にたいして〕2個体が異なる報酬を受けとるようにすると,貧乏くじを引いた〔同じ課題にたいしてキュウリを受けとることになった〕ほうの個体の反応がぐらつきはじめ,すぐに課題を拒否したりキュウリを食べることを拒否したりして反抗を始めます.

利得最大化が生命(および経済学)の狙いであるなら,個体はそれが得られるものをつねにとるべきであるということになりますが,この研究でみられたものは,その意味で「不合理な」反応です.私たちがキュウリ片をサルに与えたとき,彼らはつねにそれを受けいれて食べるはずなのに,〔隣で同じ課題をこなしている〕パートナが自分よりもよいものを得ているときには,見たところそうしませんでした.ヒトでは,この反応は,「不公平回避」として知られています.

私は,実際のところその反応がまったく不合理であるとは思いませんが,協力システムにおいては,ある個体は,何を投資して何をかわりに得たのかを見極める必要があるという事実に関係しているとは思います.あなたのパートナがつねにあなたよりも大きな分け前をもらっていたら,このことはあなたが不利な立場に置かれているということを意味しています.そのため,そこですべき合理的なことは,報酬の分割が向上するまで協力を差し控えることです.

このことは,日ごとに公正でなくなりつつあるアメリカ社会にとって重要なメッセージをもっています.

ジニ指数〔係数〕(収入の不公平を測る)は上昇しつづけ,いまやほかの産業国家というよりはむしろ第3世界の国に連なるものとなっています.サルがすでに収入の不公平を受けいれることに困難を感じているのなら,それが私たちに何をもたらすのかは想像に難くないでしょう.それは社会のなかにひどい緊張を産みだしますが,私たちは,その緊張が心理学的また物質的幸福に影響することを知っています.アメリカの見るに堪えない統計(世界の長寿順位でいまや42番)の原因を不公平な社会の社会的軋轢に求めるものもいます(リチャード・ウィルキンソン,2005:『不公平の衝撃』を参照).


Q4:誰彼かまわず性交するゲイの男性とボノボとには,何か共通点はありますか.

A4:ボノボはたいてい同性の仲間と性行動をおこないますが,異性とも性行動をおこなう点でゲイではありません.彼らは「バイ」です.彼らはたいてい社会的な理由のために,つまり緊張を和らげたり,友情を形成するために性行動を求めます.私はこのことがヒトのゲイの乱交にも当てはまるとは思いませんし,ゲイの乱交というものが純粋に快楽を追求しているものかどうか私にはわかりません.


Q5:あなたやあなたの共同研究者が得た知見の多くは,実験者が野外でおこなったとしても,類似の知見を得られると思いますか.

A5:霊長類についての野外研究と飼育下研究との関係は重要なものです.

なるほど,野生ザルがヒトから食物をもらうのに馴れていないという単純な理由から,われわれのブドウ対キュウリテストは野生ザルでおこなうことはできません.しかし,私たちがみつけた印象的な心理学的メカニズムはサルに動揺を引きおこすことになりましたが,これが青天の霹靂でしかないとは考えられません.

すでに述べてきたように,私は,骨折りと同等の保証するために,それが協力の文脈で進化してきたものと考えています.そのため,私は,イヌやオオカミでも同じ不公平回避がみられるだろうと考えていますが,ネコ(単独の狩猟者で,他者の獲得したものにそれほど配慮しなくてもよい)ではみられないだろうと考えています.

協力は野生のオマキザルでも観察されてきました.彼らはときに,巨大なリスやハナグマの子どもをいっしょに協力して捕獲し(て食べ)ます.狩猟のあと,彼らは戦利品を楽しみます――そのとき報酬の分配がおこなわれるのです.

オマキザルが協力をおこなうことができるという事実から,不公平回避のためのまさに進化的な起動力が示唆されるのです.

実際,私の知るかぎり,訓練なしで発揮される能力については,野生の同じ種では決してみられないが飼育下でだけみられるといったものはありません.たとえば,道具使用ははじめ動物園の類人猿で知られており,みなそれは重要なものではないといっていました――もちろんそれは,野生の類人猿で道具使用がみつけられるまでのことでした.

あるいは,私が動物園のチンパンジーのコロニーで発見した和解行動を考えてみましょう――そのときみな,明らかに野生の霊長類はそのようなことはしていないといいました.しかし,私たちはいまや,30にも近い異なる霊長類(また,霊長類以外でもイルカやハイエナなど)が喧嘩のあとに和解をおこなっていることについてのデータをもっており,その証拠には野生のサルや類人猿がふくまれています.

しかし,私は,飼育下の研究が野生の研究にとってかわることはないと信じています.それらは,たとえばチンパンジー文化の研究のように,ただ異なった洞察を提供するものなのです.

アフリカにいる多くのチンパンジーの群れは,ナッツ割りや社会的慣習のようなそれぞれ独自の伝統をもっています.野外研究者は,彼らが模倣をとおしてたがいからこれらの行動を学習するのだと推測します.しかし,彼らはこれを証明することはできません.ここで飼育下研究が登場し,類人猿が何を学習できるのかを私たちがテストすることができるのです.私たちの研究は,類人猿がたがいから新しい技能を身につけることができると示したという点で,野外研究を強く支持しています.


Q6:赤ん坊のサルは,ヒトの赤ん坊と同じように寄る辺なきものであって,母親(やほかの大人)に頼らざるをえないものなのですか.

A6:すべての霊長類が長い期間の依存を特徴とします――マカク〔ニホンザルの仲間〕やヒヒなどのサルにおいては,ふつう生後の2年間です.しかし,このあとも,〔母親との〕絆は維持され,母親は支援や毛づくろいをおこないます.

類人猿においては,依存の期間はずっと長くなります.養育は4年間,とくに5年にわたり続き,母親は子どもを最初は腹にくっつけて,その後は背中に乗せて運びます.この子どもに相応する荷があるため,彼女はそれほど多くの子孫をもてません.そのため,いちどにひとりの赤ん坊をもち,野生での出産の間隔は4年ないし6年です.若いチンパンジーは8歳までに比較的独立するようになりますが,12歳をこえるまでは大人とみなされません.

(続く)

全訳してみました.リンクはすべて原文のもの.〔 〕は私の補足.QやAの番号も私の補足.長いので次の記事に続きます.

妙にマニアックな質問が多いのですが,いずれにしてもドゥ・ヴァールの主張に沿った解釈が提示されているということには注意しながら読まないといけなさそうです.

元のサイトでは書きこみも可能なので,英語の堪能な方はコメントなどしてみては.

ウォショウ逝く

2007-11-02 00:51:32 | 霊長類
ウォショウ(Washoe)について。

類人猿の言語研究で有名になったウォショウが亡くなりました。セントラル・ワシントン大学による逝去の広報はこちら(以下訳)。

ウォショウ――セントラル・ワシントン大学コミュニティの子どもが亡くなる
2007年10月31日。

ワシントン州エレンズバーグ――セントラル・ワシントン大学CWU)の愛すべきチンパンジーであるウォショウウォショウ・パーン・サテュルス〕が,昨夜(10月30日(火))42歳で自然な理由により亡くなった。その名前は,チンパンジーおよびヒトのコミュニケーション研究所CHCI)と同義〔の代名詞〕である.彼女は,ヒトの言語であるアメリカン・サイン・ランゲージを獲得した最初のヒト以外〔の動物〕だった.

「ウォショウは,われわれの家族のかけがえのない一員だった」と,ロジャーおよびデボラ・ファウツ夫妻は言う.彼らは,その研究所の共同設立者である.

ロジャー・ファウツ博士と彼の妻デボラは,1980年にCWUに来て,ウォショウと彼女の家族のためにサンクチュアリをつくった.ロジャーとデボラは,人道的な研究法を促進し,発達させる最前線にいる.ファウツ博士による著作『限りなく人類に近い隣人が教えてくれたこと』のなかでジェイン・グドールが述べていることには,「ロジャーは,ウォショウや彼女の大きな家族と会話を続けることで,チンパンジーの認知研究への窓を開いた.それにより,われわれの理解に新しい次元がつけ加わった」.

CHCIにいると,学生は,研究と世話とが思いやりのあるということを学び,自分の望みどおりの条件で近親者〔チンパンジー〕を見ることを学ぶ.研究所の訪問者は,ウォショウと彼女の家族とから,ヒトとわれわれの仲間〔チンパンジー〕とがおたがいにつながっていることを学び,あらゆる生命にたいして責任ある執事になることがいかに重要かを学ぶ.

その研究所の助所長のマリー・リー・ジェンズヴォルド博士は,今朝,「ウォショウは,私たちに自然への畏敬という伝言を伝える使者だった.彼女は,あまりに多くの人々にとって親愛なる友だった;われわれは彼女を失って非常に寂しい」と述べた.

1965年ごろアメリカで生まれたとき,ウォショウは,アメリカで生まれたCHCIの唯一のチンパンジーで,チンパンジー一家の家母長だった.彼女は,アレンおよびベアトリクス・ガードナー両博士とともに5歳まで住んでいたネヴァダ州ウォショウ郡にちなんで名づけられた.

ウォショウの仲間たちという非営利団体がウォショウの家族であるタトゥオクラホマ・タトゥ〕,ルーリスルーリス・ヤーキス〕,ダルダル・エス・サラーム〕の世話をしており,飼育下のチンパンジーや自由に生きている〔野生の〕チンパンジーを保護するためにはたらいている.

ウォショウの追悼会が2007年11月12日におこなわれる.関心のある方は,詳細のためウォショウの仲間たちのウェブサイトwww.friendsofwashoe.orgを訪れるとよい.2002年には,ウォショウの家族の別のひとりであるモジャモジャ・レンシプ〕が亡くなった.ファウツ夫妻の娘であるヒラリーがアフリカまで行き,モジャの散骨をした.

ウォショウは、ウォショー、ワショウ、ワショー、ワシュウ、ワシューといろいろと書かれますが、同じ個体Washoeです。

Fouts, R. & Mills, S. T. (1997). Next of kin: What chimpanzees have taught me about who we are. New York: William Morrow.
ISBN068814862X[hdc] [hdc] [pbk] [pbk] [lib]

ファウツ, R. & ミルズ, S. T. (2000). 限りなく人類に近い隣人が教えてくれたこと (高崎浩幸 & 高崎和美, 訳). 東京: 角川書店.
ISBN4047913375

ハツコ、動物園、環境エンリッチメント

2007-05-20 08:38:03 | 霊長類
ハツコについて。

京都市動物園のチンパンジーハツコ初子)が逝去されました。同動物園によるニュースはこちら。ハツコには先月はじめて会って、今月もう1度訪れたときには訃報が出ていました。先月は愛想よく笑顔を見せてくれましたが、あのときにも調子が悪かったそうですね。たいへん残念です。ご冥福をお祈りいたします。


日本で飼育されている大型類人猿について。

日本の動物園で飼育されている大型類人猿については、ナショナルバイオリソースプロジェクトの下位プロジェクトGAIN(Great Ape Information Network、ゲイン)が詳しい。

チンパンジーについては、京都大学霊長類研究所のウェブサイトのなかにあるチンパンジー・ワールドをみると、こちらに詳しいページがある。

動物園全般になってしまうが、東京動物園協会が『どうぶつと動物園』という雑誌(東京動物園友の会の会誌)を発行しており、カラーでおもしろい。


環境エンリッチメントについて。

動物園における動物の飼育ということでは、最近よく行動展示ということがいわれている。彼らがどんな行動をとるのかも含めて動物を展示する試みである。そのような行動を実現するため、できるかぎり野生に近い状態に飼育環境を整備しなければならない。それを環境エンリッチメント(環境の豊饒化、enviromental enrichment)と呼ぶ。

年に1度、市民ZOOネットワークにより、エンリッチメント大賞が選ばれている。京都市動物園の飼育員の方々も、エンリッチメント大賞2006で飼育担当者部門大賞を受賞。

エンリッチメント大賞の受賞者講演および大賞発表がおこなわれるのが、SAGA(大型類人猿を支援する集い、Support for African/Asian Great Apes、サガ)である。SAGAは、環境エンリッチメントのように飼育における福祉だけでなく、野生における保全も目指している。

参加者には、動物園や水族館のスタッフだけでなく、大学などの研究機関で動物の行動科学を研究している人々もいる。年度会合があり、大学と動物園とが組になって開催している。

一般にはあまり知られていないが、SAGAは、フジテレビの『CHIMPAN NEWS CHANNEL』や日本テレビの『天才!志村どうぶつ園』に、このように抗議文を出している。CHIMPAN NEWS CHANNELのほうは、現在レギュラー放送を終了した。

霊長類の特徴と分類

2006-02-10 07:12:13 | 霊長類
霊長目Order Primates霊長類)について。

霊長類は熱帯を中心に分布する哺乳類である。全般的な特徴を挙げる。すべての霊長類にあてはまるわけではない

特徴その1視覚:両眼が前を向いており、立体視が可能になっている。また、ほかの哺乳類が2種類の視物質しかもっていないのに対し、霊長類は3種類もっており、色覚に優れている。樹上を移動するのに立体視があれば微妙な距離感を得られるし、色覚の発達は果実が熟しているか知るのに向いている。

特徴その2:親指がほかの指と向き合うようになっていて(拇指対向性)、枝の把握が可能になっている。また、鉤爪でなく平爪であり、指紋掌紋が発達している。このような手の発達により樹上で身体を安定させることができ、最終的にチンパンジー、オランウータンなどのような巨大な種が現われることができた。逆に、上体を起こした姿勢を保つことができるようになって、手の自由が増すことになった。

特徴その3:霊長類が多様で柔軟な行動を示す基盤となるのが、脳(とくに大脳皮質)の巨大化である。大脳皮質は機能により大きく感覚野(外から入ってきた情報を処理する)、運動野(身体を動かす指令を出す)、連合野(それ以外)と分けられる。連合野ではさまざまな情報が組み合わせられたり、判断や期待といった高次のことがおこなわれたりする。ほかの動物に比べて霊長類ではこの連合野が発達している。また、上述した眼とのかかわりで、視覚野も発達している。

特徴その4音声コミュニケーション:でたらめに鳴いているのではなく、ちゃんと状況によって鳴き分ける規則がある。ベルベットモンキー(Cercopithecus aetiops)では、ワシ、ヒョウ、ヘビに対する警戒音声が異なる。その規則は若いころから備わっているのではなく、獲得には学習が必要である。また、鳴き声だけでそれが群れ内の誰なのかわかる(個体識別ができる)種がいることも知られている。

特徴その5複雑な社会:ただ仲間と一緒にいるだけでなく、社会的な駆け引きともいうべき社会的行動もおこなう。たとえば、ある仲間に攻撃されたら、相手の親類にやり返す。自分より順位の高い個体を威嚇するのに、相手よりさらに順位の高い個体を味方につける。仲間どうしが同盟を組むのを妨害する。争っていた仲間どうしのあいだをとりもつ。社会構造の複雑さ知能との関係については、複雑な社会関係に適応するなかで脳が、したがって高次の知能が発達したという説があり、社会脳仮説マキャヴェッリ的知能仮説)と呼ばれている。

霊長類には、頭胴長10cm強、体重100g未満のハイイロネズミキツネザルMicrocebus murinus)から、頭胴長1m、オスでは体重が150kgにもなるゴリラGorilla spp.)まで、多様な大きさの種がいる。大きさだけでなく、形態行動生態社会構造などについても多様である。

霊長目の分類学的な位置づけは次のとおり。Wikipedia等を参考にした。有胎盤区より下の分類は遺伝学的な研究にもとづく。
真核生物ドメイン Domain Eukarya
動物界 Kingdom Animalia
真正後生動物亜界 Subkingdom Eumetazoa
左右相称動物 (unranked) Bilateria
新口動物上門 Superphylum Deuterostomia
脊索動物門 Phylum Chordata
有頭動物 (unranked) Craniata
脊椎動物亜門 Subphylum Vertebrata
有顎動物下門 Infraphylum Gnathostomata
四肢動物上綱 Superclass Tetrapoda
有羊膜類 (unranked) Amniota
哺乳綱 Class Mammalia
獣形亜綱 Subclass Theriiformes
全獣下綱 Infraclass Holoteria
獣上区 Supercohort Theria
有胎盤区 Cohort Placentalia
北半球真正獣類 (unranked) Boreoeutheria
真主齧大目 Group III Euarchontoglires
真主獣上目 Superorder Euarchonta
霊長目 Order Primates

現生の霊長目を大きく分類すると次のようになる。リンク先はできるだけ日本語版Wikipedia。
亜目 下目 上科 の例 通称
曲鼻猿亜目
Suborder Strepsirrhini
キツネザル下目
Infraorder Lemuriformes
コビトキツネザル上科
Superfamily Cheirogaleoidea
グッドマンネズミキツネザル 原猿
prosimian
キツネザル上科
Superfamily Lemuroidea
ワオキツネザル
アイアイ下目
Infraorder Chiromyiformes
アイアイ
ロリス下目
Infraorder Lorisiformes
チャイロオオガラゴ
直鼻猿亜目
Suborder Haplorrhini
メガネザル下目
Infraorder Tarsiiformes
スラウェシメガネザル
広鼻下目
Infraorder Platyrrhini
フサオマキザル 真猿
simian
サル
monkey
狭鼻下目
Infraorder Catarrhini
オナガザル上科
Superfamily Cercopithecoidea
ニホンザル
ヒト上科
Superfamily Hominoidea
シロテテナガザル 類人猿
ape

さらに、ヒト上科ホミノイド)すなわち類人猿エイプ)のすべての種は次のとおり。しかし、種よりも下に亜種レベルでの分類があるものもある。また、分類の仕方によって種が変わることもある。リンク先はすべて英語版Wikipedia(ただ、ニシゴリラはニシローランドゴリラGorilla gorilla gorilla、ヒガシゴリラはマウンテンゴリラGorilla beringei beringeiにリンクした)。
亜科
テナガザル科
Family Hylobatidae
テナガザル属
Genus Hylobates
シロテテナガザル
Hylobates lar
アジルテナガザル
Hylobates agilis
ミューラーテナガザル
Hylobates muelleri
ワウワウテナガザル
Hylobates moloch
ボウシテナガザル
Hylobates pileatus
クロステナガザル
Hylobates klossi
フーロックテナガザル属
Genus Hoolock
ニシフーロックテナガザル
Hoolock hoolock
ヒガシフーロックテナガザル
Hoolock leuconedys
シャーマン属
Genus Symphalangus
シャーマン
Symphalangus syndactylus
クロテナガザル属
Genus Nomascus
クロテナガザル
Nomascus concolor
ヒガシクロテナガザル
Nomascus nasutus
ホオジロテナガザル
Nomascus leucogenys
キホオテナガザル
Nomascus gabriellae
ヒト科
Family Hominidae
オランウータン亜科
Subfamily Ponginae
オランウータン属
Genus Pongo
ボルネオオランウータン
Pongo pygmaeus
スマトラオランウータン
Pongo abelii
ヒト亜科
Subfamily Homininae
ゴリラ族
Tribe Gorillini
ゴリラ属
Genus Gorilla
ニシゴリラ
Gorilla gorilla
ヒガシゴリラ
Gorilla beringei
ヒト族
Tribe Hominini
チンパンジー属
Genus Pan
チンパンジー
Pan troglodytes
ボノボ
Pan paniscus
ヒト属
Genus Homo
ヒト
Homo sapiens

最後にヒトにまつわる似た言葉についての確認。
ヒト上科ホミノイドhominoid)=類人猿(エイプape)=テナガザル科+ヒト科
テナガザル科=小型類人猿(レッサーエイプlesser ape)=テナガザル(ギボンgibbon)
ヒト科ホミニドhominid)=大型類人猿(グレイトエイプgreat ape)=オランウータン亜科+ヒト亜科
オランウータン亜科=オランウータンorangutan
ヒト亜科ホミナインhominine)=ゴリラ族+ヒト族
ゴリラ族=ゴリラgorilla
ヒト族ホミニンhominin)=チンパンジー属+ヒト属
チンパンジー属=広義チンパンジーchimpanzee=チンパンジーchimpanzee+ボノボbonobo
ヒト属ホモHomo)=ヒトヒューマンhuman、ホモ・サピエンスHomo sapiens