A28 Malaivijitnond, S., Lekprayoon, C., Tandavanittj, N., Panha, S., Cheewatham, C., & Hamada, Y. (2007).
Stone-tool usage by Thai long-tailed macaques (Macaca fascicularis).
American Journal of Primatology, 69, 227-233. [link]
タイのカニクイザル(Macaca fascicularis)による石器使用
2005年の1月および3月に、われわれはタイ南部に位置するラノーン県(Ranong Province)にあるラエム・ソン国立公園(Laem Son National Park)のピアク・ナム・ヤイ島(Piak Nam Yai Island)(北緯9°34-35´東経98°28´)で調査をおこなった。その島の3群のカニクイザル(long-tailed macaques)のうち2群で、斧型の石でロックオイスターや分離した腹足類(Thais tissoti, Petit, 1852)、二枚貝(Gafrarium divaricatum, Gmelin, 1791)、ワタリガニ(Thalamita danae, Stimpson, 1858)を割っているのが観察された。彼らは、左手か右手かに握った石で殻を割り、カキの肉を集めるのに逆の手を用いた。石を扱うのに両手を用いるサルもいた。Matsuzawa 1996の道具使用の階層分類(水準1-3)にしたがえば、タイのカニクイザルによる道具使用は、水準1(ロックオイスターを石で割る)あるいは水準2(動いている軟体動物やカニを岩のうえに置いてから石で割る)とみなされうる。タイのカニクイザルによる石器使用をわれわれが発見したことで、霊長類の道具使用や物質文化の進化にかかわる議論に新たな参照点が与えられる。
キーワード:カニクイザル(long-tailed macaques);カキ(oysters);殻割り行動(shell-cracking behavior);石器使用(stone-tool use)
チンパンジー(たとえば [Sugiyama & Koman 1979])、フサオマキザル(たとえば [Fragaszy et al. 2004])に続き、何かを割る道具使用行動、しかも水準2のものが見られたカニクイザル(Macaca fascicularis)。カニクイザルが道具を使ってカキを食べるそうです。
著者はチュラロンコーン大学(Chulalongkorn University)のスチンダ・マライヴィジトノンド(Suchinda Malaibijitnond)、チャリヤ・レクプラヨーン(Chariya Lakprayoon)、ノンティヴィチ・タンダヴァニットジ(Nontivich Tandavanittj)、ソムサク・パンハ(Somsak Panha)、ラエムソン国立公園のチェーワパプ・チェーワタム(Cheewapap Cheewatham)、京都大学霊長類研究所の濱田譲。
本文で道具使用の階層構造の参照元となっている松沢哲郎の著作はこれ。
なお、フサオマキザルもカキを捕食する事例があります [Fernandes 1991]。
Stone-tool usage by Thai long-tailed macaques (Macaca fascicularis).
American Journal of Primatology, 69, 227-233. [link]
タイのカニクイザル(Macaca fascicularis)による石器使用
2005年の1月および3月に、われわれはタイ南部に位置するラノーン県(Ranong Province)にあるラエム・ソン国立公園(Laem Son National Park)のピアク・ナム・ヤイ島(Piak Nam Yai Island)(北緯9°34-35´東経98°28´)で調査をおこなった。その島の3群のカニクイザル(long-tailed macaques)のうち2群で、斧型の石でロックオイスターや分離した腹足類(Thais tissoti, Petit, 1852)、二枚貝(Gafrarium divaricatum, Gmelin, 1791)、ワタリガニ(Thalamita danae, Stimpson, 1858)を割っているのが観察された。彼らは、左手か右手かに握った石で殻を割り、カキの肉を集めるのに逆の手を用いた。石を扱うのに両手を用いるサルもいた。Matsuzawa 1996の道具使用の階層分類(水準1-3)にしたがえば、タイのカニクイザルによる道具使用は、水準1(ロックオイスターを石で割る)あるいは水準2(動いている軟体動物やカニを岩のうえに置いてから石で割る)とみなされうる。タイのカニクイザルによる石器使用をわれわれが発見したことで、霊長類の道具使用や物質文化の進化にかかわる議論に新たな参照点が与えられる。
キーワード:カニクイザル(long-tailed macaques);カキ(oysters);殻割り行動(shell-cracking behavior);石器使用(stone-tool use)
チンパンジー(たとえば [Sugiyama & Koman 1979])、フサオマキザル(たとえば [Fragaszy et al. 2004])に続き、何かを割る道具使用行動、しかも水準2のものが見られたカニクイザル(Macaca fascicularis)。カニクイザルが道具を使ってカキを食べるそうです。
著者はチュラロンコーン大学(Chulalongkorn University)のスチンダ・マライヴィジトノンド(Suchinda Malaibijitnond)、チャリヤ・レクプラヨーン(Chariya Lakprayoon)、ノンティヴィチ・タンダヴァニットジ(Nontivich Tandavanittj)、ソムサク・パンハ(Somsak Panha)、ラエムソン国立公園のチェーワパプ・チェーワタム(Cheewapap Cheewatham)、京都大学霊長類研究所の濱田譲。
本文で道具使用の階層構造の参照元となっている松沢哲郎の著作はこれ。
なお、フサオマキザルもカキを捕食する事例があります [Fernandes 1991]。