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連句用語のやさしい解説

2006-08-02 15:05:50 | 連句関係
連句用語のやさしい解説

連句(れんく)(俳諧(はいかい)) 最初に五・七・五の句(長句(ちょうく))を出すと、他の者が七・七の句(短句(たんく))を連ね、さらに長句を連ねるという、長句・短句を交互に、創作と享受を繰り返しながら一つの作品を合作するもの。芭蕉の時代には「連句」とはいわず「俳諧」(「俳諧の連歌(れんが)」)といっていた。

歌仙(かせん) 連句の代表的な形式で長句と短句とが合わせて三十六句のものをいう。その半分のものを「半歌仙(はんかせん)」という。また、発句・脇句・第三による三句形式のものを「三つ物(み もの)」という。

発句(ほっく) 連句の一番目の句(長句)をいう。起句(たてく)(立句(たてく))ともいう。発句には季語が必須で、また、「や」・「かな」・「けり」等の切(きれ)字(じ)があった方が良いとされている。「客(きゃく)発句(ほっく)亭主(ていしゅ)脇(わき)」(客が発句を詠み、迎えた主人側が脇句を詠むのが礼儀)などともいわれている。

脇句(わきく) 連句の二番目の句(短句)をいう。発句と同季で詠み、発句に内容を添えるのが原則で、句末は体言(名詞)留めが普通。この脇句は単に「脇」ともいう。「脇(わき)起(おこ)り(脇(わき)起(おこ)し)」とは、発句に先人などの敬愛する句を借りて、脇句からその連句を始めることをいう。

第三(だいさん) 連句の三番目の句(長句)をいう。第三は変化の始まりで、発句・脇句の境地から別な境地へと転じ(てん)(一転)する場面である。その留字は、「に・て・にて・らん・もなし」留めなどが普通用いられている。

挙句(あげく) 連句の最後の句(短句)をいう。一巻の成就を喜び、あっさりと後に続くものがないような句作りが良いとされている。発句の作者とは別な人が詠むのが原則である。

平句(ひらく) 発句・脇句・第三・挙句以外の句の総称である。

月(つき)の句(く) 歌仙においては、「二(に)花(か)三月(さんげつ)」といって、月の句が三箇所、花の句が二箇所、一定の場所に出すというルール(式目)がある。この二花三月のルールを「月花の定座(じょうざ)」という。月の句は、表の五句目、裏の八句目、名残の表の十一句目が、その定座にあたる。定座より早く出すことを「引き上げる」といい、定座より後に出すことを「こぼす」という。月の句は「引き上げる」ことも「こぼす」ことも容易になされるのが一般的である。

花(はな)の句(く) 花の句は一巻の華やかさの象徴で特に大事にされている。裏(うら)の十一句目、名残(なごり)の裏(うら)の五句目が、その定座にあたる。花の句は「引き上げる」ことはできるが、「こぼす」ことは、その定座の位置(裏・十一句目の次は裏・折端(おりはし)、名残の裏・五句目の次は挙句)からいって、その例を見ない。花の句は原則として桜の花の句を詠むが、その場合、桜の用語を使わず花の用語で詠まないと、「正花(しょうか)」として認められない。

正花(しょうか) 花の都・餅(もち)花(ばな)・花嫁などは、実際の花と同様に花(正花)の句として認められている。

非正(ひしょう)花(か) 風花(かざばな)・花(はな)鰹(がつお)・火花(ひばな)などは、華やかさを賞玩する意を持たないとして、花の句としては認められず、「非正花」(にせもの花)として「正花」と区別される。

恋(こい)の句(く) 月と花とが自然(景物(けいぶつ))の美の代表的なものとして、その定座が決められているように、人間生活(人事(じんじ))の美の代表的なものとして、恋の句を、歌仙一巻のうち二箇所(一つ折に一箇所宛て)、二句以上(五句以内)続けて詠むこととされている。その出す場所は定まってはいないが、表には出さないのが原則である。恋(こい)の詞(ことば)(流し目・えくぼ・形見・指きりなど)がなくても、恋がテーマになっていれば良いとされている。

表(おもて)と裏(うら) 俳諧の時代に歌仙は懐紙(かいし)(奉書紙など)二枚に書かれ、その一枚目を初折(しょおり)(一の折)、その二枚目を名残(なごり)の折(おり)(二の折)といい、その初折の表の部分を表といい、歌仙の題目と六句を書き、この六句を表の六句という。表は「オ」で表示される。そして、その裏の部分を裏といい、十二句が書かれ、この十二句を裏の十二句という。裏は「ウ」で表示される。

名残(なごり)の表(おもて)と裏(うら) 懐紙二枚の、その二枚目の名残(なごり)の折(おり)(二の折)の表には十二句が書かれ、この十二句を名残の表の十二句といい、名残の表は「ナオ」で表示される。そして、その裏の部分を名残の裏といい、六句が書かれ、この六句を名残の裏の六句といい、名残の裏は「ナウ」で表示される。

折立(おりたて)と折端(おりはし) 裏・名残の表・名残の裏の最初の句折立(おりたて)(「おったて」とも読む)といい、表・裏・名残の表の最後の句を折端(おりはし)(「おっぱし」とも読む)という。

打越(うちこし)・三句(さんく)の転(てん)じ・観音(かんのん)開(びら)き・輪廻(りんね) 前句(まえく)の前の前々句(ぜんぜんく)を打越という。連句は打越――前句付句(つけく)――と続けられるが、この打越と付句とが転じ離れることを三句の転じといい、この三句の転じこそ一巻の変化と展開を現出する連句の基本とされている。この三句の転じの逆の打越と付句が同趣・同想になることを観音開きといい、打越になるといって、忌み嫌われる。この同趣・同想・同一の詞の繰り返しになることを輪廻ともいい、連句作品全体を見て、この輪廻に陥らないことが求められている。

人情(にんじょう)自(じ)・人情(にんじょう)他(た)・人情(にんじょう)無(む) 人情自(単に「自」と表示される場合もある)の句とは自分のことを述べた句のことをいい、人情他(単に「他」と表示される場合もある)の句とは他人を客観的に描いた句をいう(「人情(にんじょう)自他半(じたはん)」という区別もある)。人情無(「人情無し」)の句とは叙景(景気(けいき)・場・景)の句をいう。この人情自・人情他・人情無に配慮しながら、観音開き・輪廻に陥らないよう連衆の各自の配慮が求められている。

連(れん)衆(じゅう)・独吟(どくぎん)・両吟(りょうぎん)・三吟(さんぎん) 連句は複数でするのが原則で、連句に参加している仲間のことを連衆という。連衆が二人でする場合を両吟、三人でする場合を三吟といい、連衆が十人以上に及ぶ場合もあるが、人数が多い場合はグループ分けして行われる。なお、一人で連句を巻くことを独吟という。

付(つけ)勝(がち)(出(で)勝(がち))・順付(じゅんつ)け(膝送(ひざおく)り) 付勝は一定の出句順がなく捌き手(さばきて)(リーダ)が出句順を決めて進める方法である。発句は捌き手の句にするか、連衆の中から選んでするか(連衆の各人が発句を出し捌き手が選句する)、あるいは第三者の句にするか(脇起し)、その発句が定まると、連衆の各人が脇句を出し、捌き手がその中から最も良いものを選んで脇句を定め(これを治定(じじょう)(「ちてい」とも読む)するという)、その脇句に第三を同様にして付け、以下、その繰り返して進めるやり方である。捌き手が悪いところを直して(これを「一(いっ)直(ちょく)」という)進める場合もある。全部の連衆が一句ずつ付けた一巡の後は、連衆がいきおい競吟する形となるが、適宜、捌き手が、連衆の助言を入れての一直などをしながら、出来るだけ多くの個性的な付句を促していくのが捌き手の役割となってくる。順付けは一定の出句順を決めて進める方法である。両吟(A・B)の場合は「A・B~B・A~」、三吟(A・B・C)の場合は「A・B・C~A・B・C~」、「四吟」(A・B・C・D)の場合は「A・B・C・D~B・A・D・C~」と繰り返すのが基本である(そして、花の句・月の句・長句・短句とかが連衆各人に公平にいきわたるよう適宜調整する)。五吟・六吟・七吟以上については、三吟・四吟の進め方に準じて、花の句・月の句・長句・短句が連衆各人にいきわたるように調整して進められる(執筆(しゅひつ)がいる場合はその人の句を加えたりして進められる)。

捌き(さばき)(捌き手(さばきて))・執筆(しゅひつ) 捌きは一巻の連句を治定することで、その捌きをする人を捌き手という。執筆は捌き手の補助をする書記役の人である。

俳席(はいせき)(一座(いちざ))・文音(ぶんいん) 一同に会して連句を巻く場を俳席(一座)という。その俳席(一座)によらないで文通で順付けをすることを文音という。情報機器のファックス・メールによる順付けもこの文音の変形である。

一巡(いちじゅん)・一巡再篇(いちじゅんさいへん)・裏(うら)一巡(いちじゅん) 俳席に連なった者が、発句以下順に一句ずつ出句し、ひとわたり付けることを一巡(一順とも書く)という。その一巡のあともうひとわたり付けることを一巡再篇といい、名残の折になって連衆が各一句ずつ付けるのを裏一巡という。

季語(きご)・季句(きく)・雑句(ぞうく)・季移(きうつ)り 季語とは季節の言葉(季の詞)をいい、その季語のある句を季句(季の句)、季語無しの無季の句を雑句(雑(ぞう)の句)という。連句ではある季の句から他の季の句に移る場合、その間に雑の句を入れるのが基本なのであるが、それをしないで直接他の季へ移る場合を季移りという。

式目(しきもく)・指合(さしあい) 連句を進めたるためのルールを式目という。その式目は指合(差合)、(同字・同語・類語・類似表現などによって妨げられる障り)などを避けるためのもので、句数(くかず)・去(さり)嫌(ぎらい)がその中心をなしている。連句の中心はこの指合を嫌う変化して止まない前進にあり、このことをわきまえずに単純且つ形式的な式目に叶ってさえおれば良いというのみの捌きでは連句離れを起す要因ともなりがちである。

句数(くかず)・去(さり)嫌(ぎらい) 句数は句の続け方のルールである。春秋は同季五句去りで句数は三句~五句続ける。夏冬は同季二句去りで一句~三句(二句が普通)続ける。恋の句は一句(二句以上続けるのが普通)~五句続ける(この句数のルールはさらに人情自・人情他・人情無によるものもある)。去嫌とは去(さり)(同一・同義・同類の題材や語句について一定の句数を隔てて使用するルール)と嫌(きらい)(一句に詠み込まれている素材や語句が一巻の変化から見て好ましくない位置に出てくるのを嫌うというルール)の合成語である。この去嫌については様々なルールがあるが、連句会などでよく指摘されるものとしては、「表には地名・人名・神衹(じんぎ)・釈(しゃく)教(きょう)・恋・無常・病体を嫌う」・「片仮名・アルファベット・数字の打越を嫌う」・「竜・鬼・幽霊などの語句は一巻に一句。恋の文字も同じ」・「生類・植物・山類・水辺・居所等大部分は三句去(さんくさり)。但し同類にて木と草、鳥と獣の如く変われば二句去(にくさり)」・「月・夢・涙など特に印象の強い文字などは五句去(ごくさり)」などである。

進行(しんこう)順序表(じゅんじょひょう) 歌仙三十六句について、その発句から挙句までのそれぞれの句の季句、雑句、月・花の定座及び恋句の場所などを一覧にしたものを進行順序表などといい、連句会などではそれを目安として進められる。

物付(ものづ)け・心付(こころづ)け・匂い付(においづ)け 前句の中の物や言葉に着目しての付けを物付け、前句の全体の意味を考えての付けを心付け(「意味付(いみづ)け」)という。そして、前句の余情(よじょう)・余韻(よいん)」(匂(におい)・響(ひびき)・俤(おもかげ)・移り(うつり)・推量(すいりょう)などの形なきより起こる気分情趣)に余情・余韻をもって付けるのを匂い付け(「余情付(よじょうづ)け」)という。

四(し)道(どう)(添(そう)・随(したがう)・放(はなつ)・逆(さからう)) 俳諧(連句)以前の連歌の時代から言い伝えられているもので、前句に対する付句の態度・姿勢を四つの基本に分け、それを四道といい、その内容は、添(そう)(前句に連れ添う付け方)・随(したがう)(前句に連れ従う付け方)・放(はなつ)(前句を突き放しての付け方)・逆(さからう)(前句の逆のものをもってする付け方))の四つである。一般に、付き過ぎというのはこの極端な「添・随」の付け方を指し、離れ過ぎというのはこの極端な「放・逆」の付け方を指して使われる場合が多い。また、この逆(ぎゃく)付けは、脇(わき)五体(ごたい)の違付(ちがいづけ)、七名(しちみょう)八体(はったい)にいう向付(むかいづけ)と同一意義で用いられる場合が多い。

体付(たいづ)け・用付(ゆうづ)け 作用や属性的なものをよんでいる前句に本体的なもので付ける付け方を体付けという(例・「張る」という前句に「弓」と付ける)。物の本体をよんだ前句に対しその性質・作用を表わす詞で付ける付け方を用付け(「ようづけ」とも読む)という(例・「波」という前句に「なび〱」と付ける)。

脇(わき)五体(ごたい)(相対付(あいたいづ)け・打添(うちぞえ)付(づ)け・違(ちがい)付(づ)け・心付(こころづ)け・頃(ころ)留(どま)り) 発句に脇句を付けるときの基本的な付け方を脇五体という。その内容は、相対付け(対付(たいづ)けともいい、発句にある同類語などを用いての発句に相対する付け方)・打添付け(発句に添い従うような付け方で、発句に対する挨拶の意をもっとも表すものとされている)・違付け(発句と反対のことをいいながら、発句の意をよく受けてする付け方)・心付け(発句と同一の景を別の角度からその心を汲み取るような付け方)・頃留り(発句の時節に着目してその日・時刻などをもってする付け方)の五つである。

七名(しちみょう)(有(う)心(しん)・向付(むかいづ)け・起(き)情(じょう)・会釈(あしらい)・拍手(ひょうしゅ)・色(いろ)立(だて)・逃句(にげく)) 前句に対する付け心(付けの心・姿勢・態度)の分類の一つ(七区分に分類)である。その有心は前句の姿情を細かく見つくし一字一言に心を配ってする付け方。向付けは前句に出てくる人物などに別人をもって対立させる付け方。起情は前句が叙景句などの場合その中の言葉のあやなどから情を引き出しての叙情句をもってする付け方。会釈は前句に関係するものをもって程よくその場をあしらってする付け方。拍手は前句の句勢に応じてする付け方。色立は前句の色彩に着目しての色彩の取り合わせの付け方。逃句(遁句(にげく))・遺句(やりく)は難しい前句などに対してさらりと軽くあしらってする付け方。この七つである。この七名は、三法(さんぽう)七名(しちみょう)といって、有心・向付け・起情を有(う)心付(しんづ)け、会釈・拍手・色立を会釈(あしらい)、逃句を逃(にげ)句(く)の三法(三分類)に包括して使われている。

八体(はったい)(其人(そのひと)・其場(そのば)・時節(じせつ)・時分(じぶん)・天相(てんそう)・時宜(じぎ)・観相(かんそう)・面影(おもかげ)) 前句に対する着目の狙いどころによる分類の一つ(八区分に分類)である。その其人は前句の人の姿影を見定めてする付け方。其場は前句の場を見定めてする付け方。時節は前句の時節を見定めてする付け方。時分は前句の時刻などを見定めてする付け方。天相は前句の天候などを見定めてする付け方。時宜は前句の物事の状況などを見定めてする付け方。観相は前句の世相などを見定めてする付け方。面影は前句の故事・典拠などを見定め、それを直接的ではなく、間接的に表す付け方。この八体(付け所)は七名(付け心)と一緒になって、七名(しちみょう)八体(はったい)(説(せつ)」などといわれる。

執中(しっちゅう)の法(ほう) 執中の法とは前句のポイントを三文字程度の用語で把握し(執(と)る)、その把握した用語を直接使わずに、その用語からの派生するイメージによってする付け方で、意識・無意識を問わず、これによる付け方をする例が多い。

起首(きしゅ)・満尾(まんび)(首尾(しゅび)) 連句一巻の巻き始めること(また、その日)を起首といい、その一巻が完了をすること(また、その日)を満尾(首尾)」いう。


(註) 東明雅他編『連句辞典』(東京堂出版)・東明雅著『連句入門』(中公新書・中央公論社)・
今泉宇涯著『連句実作の道』(永田書房)を参考にした。また、「俳諧歌仙順序手引」(義仲寺編)・東明雅主宰「連句結社猫蓑」(ホームページ)の「猫蓑会式目」なども参考とした。項目の選定・組み合わせなどは、本書の各巻とその鑑賞にあわせ、独自の方法をとっている。なお、本書の鑑賞などの記述においては、ここに掲載されている「連句用語」そのものではなく「日常用語」を使っている場合もある。
〔 作製 江連 晴生 〕


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