ジョー・バターン来日記念、というワケで前回のベストCDに続いてオリジナル・アルバムをご紹介していきましょう。
Joe Bataan ; Gypsy Woman (FANIA RECORDS PCCY-00215)
- Gypsy Woman
- So Fine
- Fuego
- Campesino
- Chickie's Trombone
- Too Much Lovin'
- Sugar Guaguanco
- Figaro
- Ordinary Guy
1967
インプレッションズの名バラードを疾走ブガルーにカバーしたGypsy Womanからスタートするこのデビューアルバムは当時の他のブーガルー曲と比較してもかなり異色な仕上がりで、すでにジョー・バターンの独自な立ち位置がはっきりしている。
ジョー・バターンはフィリピン人の父親とアメリカ人の母親を両親に持った、所謂アフロ・フィリピー Afro-Filipino であるのだが、生まれ育ったニューヨークのスパニッシュ・ハーレム界隈の文化の中で育ったというワケでこうしたラテン的バックグラウンドを持った音楽性をもちつつ、当時は街の不良達のリーダー的な存在だったようで、とりわけ当時のヒップな音楽=R&B、特にドゥー・ワップ Doo Wop に影響を受けてきたのでしょう。
ジョー・バターン自身はほとんど英語の歌しか歌わない。バンドにはいつもスペイン語専門のシンガーを抱えており、事実このアルバムでもスペイン語の曲(3.4.7.8)はジョー・パガーン Joe Pagan というシンガーが歌っている(ちなみに次のアルバムで、下にも紹介している「Subway Joe」では後のTNTバンドのティト・ラモス Tito Ramos に代わっている。そのあとでもこのスパニッシュ・ボーカル・シンガーはころころ変わっています)。このあたりも他のブーガルー・シンガーとは決定的に異なっている。それだけR&Bにより深く関わりあっていき、やがて70年代に入るころには完全にサルサとは異なった路線に進んでいくことにもなったワケですね。
あと、トロンバンガというか、トロンボーンを中心としたアンサンブルも大きな特徴で、これが実にやさぐれた、ヤケッパチ感を増幅させおり、その背後からパーカッションの喧騒がますます不穏でかつ弾けた、無軌道な若者気分をあおる。
このアルバムのラストを締めくくるオーディナリー・ガイ Ordinary Guy はこの後ジョー自身が何度も再録している。この曲の録音はある意味ジョー・バターンの音楽性の軌跡をよくあらわしていると言える。この初演バージョンはドゥーワップ的なコーラスをところどころ挟まれるトロンボーンが黄昏の街の様子を映し出す。
Joe Bataan ; Subway Joe (FANIA RECORDS 773 130 113-2)
- Subway Joe
- Juanito
- Mujer Mia
- Nuevo Jala Jala
- Special Girl
- Ponte En Algo
- Triste
- Magic Rose
1968
この2枚目は僕にとっても、また思いれ深い1枚であることは前回お話しした通り。
このアルバムはまさに「バターン節」とでもいえる曲が多く、"Subway Joe","Special Girl","Magic Rose"などがまさにそれ。どれもジョー・バターンの代表曲と言える。
バンドの演奏も前作よりさらに勢いがある感じで、どの曲もパンクのような勢いがある。スペイン語の曲ではバターンは主にピアノを弾いているのだがこれもなかなかカッコ良くて好きだ。きっとテクニックとかではなくてどこかパンク的。2曲目の"Juanito"のような叩きつけるようなピアノや勢い1本のトロンボーン・ソロなどは素晴らしいです。
やはりこのアルバムはジョー・バタンの代表作であると同時に、永遠の名作です、よ。
で、やはり一番はSubway Joeですね。イントロのハンド・クラッピングの時点で脈拍アップ!
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北のFarmerさんも結構音楽好きなんですね。こんな(普通でいえば)ワケのわからない音楽ヨタ話にもお付き合いくださってうれしいですよ。
>サユールさんの説明もご自分の言葉で語っているから実に読みやすい
とは有り難いご指摘です。
僕の音楽ネタはあくまで僕の個人的な感想文で評論的なものではないのですが、だからなおさら自分の言葉で書きたいなぁ、と思っています。
ジョー・バターン特集、多分あと6回くらいは続きそうです(笑)。気長に付き合ってください。