【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ4-177 「笹の葉カプリチオ」(1)

2007-04-25 | 七夕ss

177 :21:2007/04/25(水) 11:33:53 ID:LwkvQAcG
こんな時間に何やってるんだ俺orz
昨日の妄想が形になったので投下します。
9レス予定。佐々キョン風味。


『笹の葉カプリチオ』

 東中に比べるとさらに雑な作りの校門を構えている我が母校は、その見た目通りセキュリティもおざなりであったらしい。
 南京錠すらかかってなく、閂だけというのはいかがなものか。
 まあだからこそこうして中に入れているわけなんだが……。
 「ほれ、開いたぞ」
 先に校門を乗り越えた俺が閂を外し、門をずらしてやる。
 「で、でもこんなことして大丈夫なの……?」
 2年後、4年後の姿に比べるといかにも頼りないその少女は夜中の不法侵入に戸惑いつつも、はっきりと拒絶はしない。
 伊達にこんな時間に学校に来ていたわけではないってことだろう。
 しかしあれだな。このオドオドした感じからはとてもじゃないが将来の様子は想像できない。
 口調も至って普通だし、ハルヒの対っていうより朝比奈さんの対って言う方がまだ分かるぜこれじゃ。
 まあそもそもハルヒと比べる時点でいろいろ間違ってはいる気がするが。
 こんな夜中に不審人物まっしぐらの人間が側にいて学校に不法侵入だ。動揺するなという方が酷だろう。
 だがそう遠くない未来には一人称は僕になり、古泉ばりの難解なトークを披露するようになるばかりか、
 異能の能力者にすら動じなくなるというのだから時間というのは残酷だね本当に。
 まだ幼さの残るそいつの顔を見ながら俺はそんなことを考えていた。
 しっかしまあ……、ハルヒの次は佐々木か。
 つくづく思うよ、俺の時間軸は古泉も真っ青なほどに捻くれているらしい。


178 :21:2007/04/25(水) 11:35:59 ID:LwkvQAcG

 去年の春先もいろいろな意味でいろいろなことがあり過ぎて、俺の人生観は大きくアクロバティック飛行を決めてしまったわけだが、
 今年の春先は春先でいろいろなことがあり過ぎた。
 長門の親玉に敵対する出来損ないの宇宙人が現れたと思ったら、SOS団に敵対している連中が徒党を組んで顔見せしてくれた上、
 何故かそこには中学時代のクラスメイト――佐々木曰く俺とあいつの関係は親友だそうだ――である佐々木まで混ざっていた。
 そう、問題なのは佐々木だ。古泉曰くあきらめの悪い出しゃばりな超能力者である橘が言うには、あいつはハルヒに対応する存在らしい。
 ハルヒといい佐々木といい、まだ人生16かそこらの俺に2人も神様の知り合いが居るってどうなんだろうね。
 幸いにも日本は元々多神教――八百万の神々なんていうくらいだからな――の国であるからして、
 今更神様が一人増えたところでどうということはないと思うのだが、
 俺以外の連中はどうにもそうは思わなかったらしい。
 古泉なんかは露骨に向こうの超能力者連中を敵対視し始めたし、長門ですら傍目には何とも無いが春先の事件以降ずっと燻った感じを瞳に浮かべている。
 人間に置き換えればイライラしている状態なんだろうか。 
 ハルヒも普段通りと見せかけて、佐々木の方から俺やSOS団にアプローチがある度に閉鎖空間を発生させているらしい。
 「春先に比べれば頻度も減っていますし、相変わらずぼうっと立っているだけの神人ですから、
  多少は楽になりましたけどね。それでもまだまだ楽観はできないというのが機関の見解です」
 とは我らが副団長殿の弁だ。
 一人相変わらずというのは失礼だが、去年と変わらず愛くるしいお姿と笑顔を振りまいている聖朝比奈さんが居なければ俺だって平静を保って居れたかどうか……。
 流石はSOS団専属マスコットにしてこの世で最高の精神安定剤たる朝比奈さんだ。今度から足を向けて寝れんなってどちらにお住まいなのか未だに知らないんだよな。
 などと、窓の外を流れるちぎれ雲を眺めながら考えている内にHRが終了したらしい。
 帰る者や部活に出る者の喧騒で途端に騒がしくなったことで我に返った俺なのだが、後ろを振り向けばそこにハルヒの姿はもう無く、
 一体今度は何をする気のかと頭を振ったところで黒板を視界に捉えそして理解した。
 黒板の隅には今日の日付を示す書き込みがされていて、その数字はゾロ目のラッキーナンバー。
 そう、七夕だ。


179 :21:2007/04/25(水) 11:37:35 ID:LwkvQAcG
 去年の七夕。あれはあれで俺としてはイベント盛りだくさんというか盛りすぎて器から溢れているというほどに記憶に焼きつく日付なわけだが、
 何よりも3年前……いや、もう4年前になるんだな。過去への時間遡行を抜きに俺の七夕の思いでは語れない。
 もしや今年も過去に跳ぶ羽目になるんじゃないだろうなと、朝比奈さんの一挙手一投足を注視していたのだが、
 「それじゃキョンくん、また明日」
 と着替える都合でいつも最後に部屋を後にする朝比奈さんに見送られて、ぶらぶらと帰宅の途に着くことになった。
 ああ、今年も5者5様というか、それぞれにらしさの溢れる短冊を部室には飾ったぜ?
 ハルヒの願い事が去年よりも大分イタくない願い事だったのは大きな進歩だと褒めるべきなのかとか、
 佐々木がどうのとブツブツ言いながら俺の視線に気づいて慌てて書き直したあれはなんだったんだとか、
 長門の短冊が『敵勢撲滅』『打倒天蓋』とか物騒な内容だったりとか、
 多少の問題はあったものの全体を通してみればいつものSOS団的な活動だったと言えるだろう。
 しかも、何事もなく平和に一日が終わろうとしているのだから俺に何の文句があるというのだろう。
 だというのにこの嫌な予感というか、まだ何かあるぞという感覚は一体どうしたことか。
 「フン、あんたの顔なんて見たくも無いがこっちにも都合があるんでね。一緒に来てもらおうか」
 唐突に路地から俺の前に現れ、唐突に無茶苦茶な要求をしてきやがった未来人野郎。
 いかにも偽名だが奴曰く藤原と名乗ったそいつは俺の進路を塞ぐように塀にもたれている。
 それにしても一緒に来てもらおうだと? 一体何様のつもりだ。それ以前に何の用だ。
 「あんたがどう思おうと別に構わないし関係ない。それにこれは既定事項だ」
 その既定事項とやらは誰にとってのだ?
 「……フン、少しは頭が回るじゃないか」
 じゃあやっぱり、お前達にとっての既定事項ってやつで朝比奈さん(大)達の既定事項じゃないわけだ。
 「これ以上は禁則事項だ」
 ますますもってお断りだ。周りを見渡しても他に他人の気配は無い。あいつ一人なら振り切れるか?
 「さっきも言ったがあんたがどう思おうと関係ない。別に力ずくでも構わないんだが、
  話の回りくどい女にあんたを傷つけるなと念を押されているんでね」
 誰のことだ? あの橘とかいう超能力者のことか。
 「佐々木といったか? あんたの昔のツレだよ。いつだかの喫茶店でしつこく食い下がられた」
 「佐々木だって?」
 そこでどうしてあいつの名が出てくる。まさかあいつに何かしたんじゃないだろうな。
 「別に僕は何もしやしない。するのはあんただ」
 「どういう意味だ」
 藤原は本当に憎らしいほどキザったらしい皮肉たっぷりの笑みを浮かべると、
 「ついて来れば分かる」
 ああもう、未来人てのはどうしてこうもっとストレートに言えんのか。大体どこに連れてこうってんだ。
 「4年前。あんたには過去で一仕事してもらう」
 どこって質問にいつって答えなのも未来人のお約束ネタなのかね。
 それにしてもまたか。どうやら今年の七夕も一筋縄では行かないらしい。


180 :21:2007/04/25(水) 11:40:43 ID:LwkvQAcG
 件の強烈な立ち眩みにふらつきながら辺りを見渡すと、夕方だったはずの周囲には夜の帳が下りていた。
 結局、佐々木の名前を出された俺はそれこそぐぅの音も出せずに藤原に言われるがまま目を瞑り、
 こうしてまたしても時の旅人と化しているわけである。俺は未来人の使い走りじゃないんだぞ。
 「この道をまっすぐ行くとあんたの母校だ。これぐらいは覚えているだろう?」
 なんだか話のオチが読めてきたんだが。
 「そこに一人の少女が居るはずだ。話しかけて、後はあんたが適当に相手をしろ」
 おい、いくらなんでも適当すぎやしないか。それに、今からでも断ったっていいんだぜ?
 なにせこの時代には頼もしい助っ人が2人もいるからな。
 「あんたがどうしようとも勝手だが、それで困るのは僕らだけじゃない。お互い様だ」
 どういうことだ。
 「フン、この道の先に誰が居るのかはもう想像がついているんだろう? TPDDで跳ぶ前に既定事項だと言った筈だ」
 この先にいるのは多分佐々木だ。何せ俺の母校――当然佐々木や国木田の母校でもある――だし、というかそうでないと話がつながらない。
 だがそれがどうして俺まで困ることに繋がるんだ。
 「チッ、これだから過去の人間は……。いちいち説明するのは面倒だから良く聞け。
  中学3年の時、そして高校2年で再開したときのあんたのツレにとってこれから起きることは
  既定事項だったというわけだ」
 なんということだ。この一年半で経験値を積みまくった俺の脳はどうやら奴の云わんとすることを理解してしまったらしい。
 2年前、偶然同じクラスで、偶然同じ塾になった筈の俺と佐々木はその前に出会っていたということじゃないか。
 もちろん当時の俺はそんなこと露とも思わなかったし、佐々木だってまさかそんなことになっていたとは思ってないだろう。
 だが、そこが大問題だ。本当にそうなのだろうか。俺のほうはともかく佐々木の方が気づいていたりしたら?
 もしそうでなくても藤原の言う既定事項とやらを消化しないせいで未来に
 ――この場合は俺や佐々木にとっては過去だが――影響が出てしまうかもしれないとしたら?
 いや、それどころか俺が佐々木と出会わないなんてことになったら……?
 考えるだに恐ろしいが、そんなのは全力で願い下げだし、仮にも俺のことを親友と呼んだあいつに迷惑をかけたくはない。
 これでは自分自身の過去とこの時間からすれば未来の佐々木とを人質に取られたようなものだ。
 「3時間後にこの場所で待つ。さっさと行ってこい」
 もはや反論の余地の無い俺は、藤原に促されかつての母校へと足を向けた。


181 :21:2007/04/25(水) 11:42:28 ID:LwkvQAcG
 しばらく歩くと校舎が見えてきた。照明は落とされているので夜の町並みにぽっかりと黒い四角を置いたような感じだ。
 懐かしの我が母校ではあるが、こんな時間だとまた景色も違って見えてあまり懐かしさを感じないな。
 藤原の話だとこの辺に佐々木がいるはずなんだが……っと、あれか。
 その少女は閉ざされている校門を前に呆然と立ち尽くしているように見えた。
 今よりも頭一つ分低い身長で、セミロングのその少女は校門の鉄柵を握ったまま虚空を見つめている。
 柵をよじ登ろうとしないあたり、ハルヒと違って常識人であるという証拠な気もするが、普通ならこんな時間に学校には来やしない。
 あの佐々木がこんな時間の学校に何の用があるのかとしばらく観察を続けた俺だったが、
 まだ幼さの残る佐々木の背中には何ともいえないアンニュイでじめっとした空気が漂っていて、
 得体の知れない不安に駆られた俺は思わず声を掛けていた。
 「おい」
 「えっ?」
 あからさまに挙動不審に振り返った佐々木の表情は周囲の暗さではっきりとはうかがいしれない。
 だがそこに浮かんでいるのは間違いなく驚きとそして不安の色だった。
 「あの、その、別にこれは何でもなくてえっと……」
 おまけに混乱の色をそこに加え始めている。
 まあ、そりゃそうだ。夜中の学校というだけでも場違いなシチュエーションな上に、
 見ず知らずの人間にいきなり声を掛けられれば誰だって驚く。
 その上、夜中に校門の前に佇んでたとくれば尚更だ。どこから見ても不審人物だからな。
 ここでもハルヒと佐々木の違いを実感しながらも、とにかく目の前のこいつを落ち着かせなければと、できる限り優しい声音で言った。
 「通報しようとかってわけじゃないから安心しろ」
 ……優しい声音の筈だったんだがなぁ。
 今度は目に見えて不安の色が濃くというかなんだか怖がられてないか、俺。
 いかん、今にもダッシュで逃げられそうだ。
 藤原の言っていた時間を考えるとそんなオチでは許されそうに無い。
 「校庭に落書きでもしに来たのか?」
 とっさに話しかけたまでは良かったが、我ながら他にネタはないのか。
 いくらなんでもこれは……。ああ、アドリブの聞かない自分が恨めしい。
 ん? 笑ってる……?
 下を向き俯いている佐々木の表情は分からなかったが、肩を震わせ、咽喉を鳴らしてくっくっというあの独特の笑い方は間違いなく佐々木のものだ。
 「へ、変なひと……お、かし……」
 そんなにつぼだったのか? 昔からイマイチ笑いのつぼが分からないやつだったが……。
 まあとにかく話はつなげそうだから結果オーライだ。
 しかしあれだね。過去に来てまで佐々木には小ばかにされる運命なのかね、俺は。


182 :21:2007/04/25(水) 11:43:59 ID:LwkvQAcG

 佐々木と共に校舎に侵入した俺だが、まさかここでも校庭に落書きというわけにもいかず
 ――少なくとも俺の記憶では中学時代にそんなオモシロ事件は起きていないはずだ――
 まさしく行き当たりばったりにうろうろと校舎内をぶらつくこととなった。
 さすがに手持ち無沙汰となった俺は、後から付いてくる
 ――キョロキョロとあたりを見回すさまはほんとに朝比奈さんを思わせる――
 中1佐々木に適当な話題を振ることにした。
 「いたずらをしに来たんじゃないのなら、一体こんな時間に何してたんだ。忘れ物でもあったか?」
 唐突に話題を振られ、ビクッとしながらも俺の質問に答える佐々木。
 「えと、そ、そういうわけじゃ」
 違うのか。じゃあ一体どういうわけだ。ハルヒと違って……いや、ハルヒの場合は成績は良いが遡行は悪いってやつで、
 こいつの場合はどちらも良い花丸優等生だろうに。こんな阿呆なことは谷口あたりで十分だぞ。
 「じゃあお兄さんはなんであんなところにいたの?」
 なぬ? 質問に質問で返すとは佐々木らしいと言えばらしいが……。
 「別に。ただなんとなく散歩してただけだ」
 まさか本当のことを言うわけにもいくまい。
 「じゃあ私もなんとなくです」
 ぬぅ……。やりづらいというか幼くても佐々木というか、過去でも俺は口ではこいつに勝てんのか。
 そのまましばらく無言のまま歩を進めていると、今度は佐々木の方から話しかけてきた。
 「あの、お兄さんはどうして私に声を掛けてきたんですか」
 ぐ、また答えづらい質問をしてくるなこいつは。はてさて、なんと答えたもんだろうか。
 俺がこの場に居るのは元はと言えば藤原のせいだ。
 だが校門の前に佇むこいつを見たとき、なんとも言えん感じがして思わず声を掛けてしまったのだ。
 妙にアンニュイな雰囲気というかなんというかその、
 「寂しそうだったから」
 そう、それだ。中3の頃、あいつと初めて出会って以降一度も感じたことのない感覚。
 あの佐々木から一人ぼっちの空気を感じてしまったからだ。
 しかし急に黙りこくってしまった佐々木を振り返った俺はさらにレアなものを拝むことになった。
 見開いた目。半開きの唇とそれを覆ったままピクリともしない両手。
 両手どころか全身が硬直してるなこりゃ。
 そうか、佐々木って驚くとこんな感じなのか。というか佐々木でもそんなに驚くことあるんだなぁ。
 本人に聞かれたら小一時間説教をくらいそうなことを考えつつ、
 新大陸を発見したコロンブスのような気持ちで佐々木の観察をしていた俺はようやく気づいた。
 中1の頃の佐々木は孤独だったのか?
 あの誰とでもそつなく打ち解ける佐々木が?
 そりゃまあ変人だなどと言われてはいたが、概ね好意的な解釈だったはずだ。
 そんなやつが寂しさを紛らわすために深夜の散歩とは……。


                                  「笹の葉カプリチオ」(2)に続く

佐々木スレ4-177 「笹の葉カプリチオ」(2)

2007-04-25 | 七夕ss

183 :21:2007/04/25(水) 11:45:11 ID:LwkvQAcG
 「お兄さんってエスパー? それとも正義の味方か何か?」
 いやいや待て待て。いきなり何を言い出すんだこいつは。
 「だって、そうでもないとおかしいよ。こんな夜にお兄さんみたいな人が声を掛けてくるだけでもありえないのに」
 なんだか散々な言われようだなおい。だがな、佐々木よ。人生経験を甘く見ない方がいいぞ。
 手始めの一年間お前と過ごして、さらにその後4者4様の奇人変人と一年間過ごした俺の洞察力は、
 今やお前に出会う前の俺からすればはるかに性能が上がっているのだ。
 「本当に超能力者とかじゃないの?」
 驚きの状態異常から回復した佐々木は何やら期待した面持ちで矢継ぎ早に訊ねてくる。
 「だから俺は超能力者じゃないよ」
 そういうのは俺ではなく古泉や橘のことを言うのさ。
 「宇宙人とかでも?」
 長門や喜緑さん、九曜の姿を思い浮かべながら
 「宇宙人でもない」
 「じゃあ……、神様とか?」
 それはお前やハルヒのことだろうに
 「まさか」
 そこまで聞くと先ほどの勢いは一転、佐々木はまたしても黙りこくってしまった。
 むぅ、なんだか俺が悪いことでもした気になってくるじゃないか。
 「そっか、そうだよね……」
 その上一人で何やら納得したようだ。そういやいつも論理的に喋るんであまり気にならなかったが、
 こいつって結構物分りがいいというか、少しあきらめが良すぎるように思えてきた。
 ははぁ、だんだん分かってきたぞ。
 そう、こいつはあきらめが良すぎたのだ。少しばかり他人より賢しいばっかりに。
 うまく友達が作れなくことも理論武装で心を守って、あきらめて、けどやっぱり寂しくて。
 んでもやもやを抱えてこんな夜に一人出歩いていたってわけなのだ。
 だがな、世の中にはえらくあきらめの悪い女だっているんだ。
 お前ももう少し図太く生きていいんだよ、佐々木。
 少しぐらいわがまま言ったっていいんだ。
 少なくとも2年後までには多少頼りないかもしれないが話し相手くらいは見つかる筈だから。
 「何がそうなんだ?」
 俺は分かっていてあえて聞いてみる。
 「え? あぁ……やっぱり超能力者なんていないよねってこと」
 「いるんじゃねーの」
 「え?」
 まあ、あんまり元気付けても将来あんなことになってしまうんだがなぁ……。
 佐々木はまたしても驚きのあまり一瞬フリーズして、それからまたしても矢継ぎ早に聞いてくる。
 「じゃあ宇宙人は?」
 「まあ、いてもおかしくはないな」
 長門や古泉の話じゃ結構な数のTFEIがいるらしいしな。
 「あ、なら未来人とかは?」
 「案外その辺にいたりしてな」
 今は俺自身が未来人だしな。
 「異世界人は?」
 「それはまだ知り合ってないな」
 それきりまた佐々木は黙ってしまった。
 なんだか以前にも似たようなやり取りをしたような気がするがまあいい。
 それよりもこの沈黙をどうにかしてくれ。俺何かヘタなことを言ってしまったんじゃないだろうな。


184 :21:2007/04/25(水) 11:46:32 ID:LwkvQAcG
 「ところでお兄さんは友達いる?」
 いやそりゃそれなりにいるがまた唐突だな。
 「まあいないわけではないな」
 須藤や中河、国木田に谷口、SOSの面々に……もちろん目の前のこいつもだ。
 「どんな人達?」
 「個性的……、かな」
 そうなんだよなぁ、俺の周囲にいるやつはどうしてこう奇矯なやつばかりなのか。
 「ふーん」
 佐々木は興味深げな面持ちでこちらを見ている。
 「ねぇ、お兄さん」
 しかし佐々木にそう呼ばれると違和感があるな。今や妹ですら呼んでくれないその呼び名。
 呼んでくれるのはミヨキチくらいか? そう思うと結構貴重な感じもしてくるな。
 とはいえ佐々木に呼ばれるのはどうにもむずがゆい。
 「そのお兄さんってのどうにかならないか?」
 「じゃあ、お兄さんの名前は?」
 ぐあ。藪蛇とはまさにこのことだ。く、今度からもっと考えて発言しなければ。
 「ジョン・スミス」
 「…………匿名希望ってこと?」
 ハルヒと違って物分りがいいねほんと。
 「まあそういうことだ」
 「ま、いっか」
 何がいいのか分からんがうまくごまかせたみたいで安堵する俺。
 しかし俺も他に思いつかんかったのか。またしてもジョン・スミスを名乗ってしまうとは。
 「ジョン」
 「……何だ?」
 「今日はありがとう。おかげで願い事がかないそうだ」
 一瞬見慣れたあの佐々木がダブって見えた。
 「ま、まあ今日は七夕だしな。それにしてもその日のうちに叶えてくれるなんて太っ腹な神様だな」
 俺は内心の動揺を隠しつつも話を続ける。
 「ああ、ベガとアルタイルの話だね。16光年と25光年だっけ」
 「なあ、なんで急に口調が変わってるんだ?」
 「うん。ジョンのお友達を見習って個性を出そうと思って」
 なんてこった。あいつの喋り方は俺が原因か?
 「その口調は相手を選ぶから気をつけたほうがいいぞ」
 「ジョンの話し方は実に興味深い。もちろん内容もね」
 ……そう言って微笑んだあいつの顔は、今日見た中で一番楽しそうな笑顔だった。


185 :21:2007/04/25(水) 11:47:38 ID:LwkvQAcG
 その後、3時間どころかたっぷり4時間は話し込んだ俺と佐々木は、
 さすがに夜遅い時間であることを心配した俺がまだ物足りなそうな顔の佐々木を促して解散した。
 常に向こうから逆行のポジションを取り続けた俺を誰か褒めて欲しいね。
 そして1時間も待ちぼうけをくらったにも関わらず、待ち合わせ場所にいた藤原の第一声は
 「光源氏だったか? 年端のいかないうちから口説こうなんて何を考えているんだか。
  全く、これだから過去の人間には品性がない」
 などとほざきやがった。ここでもめてまたしても長門や朝比奈さん(大)の手を煩わせるのあれなので、
 あえて反論はせずさっさと帰るぞと藤原を促す。
 藤原の方も早く帰りたいのは同じなようで、行きと同様に目を瞑れと言ってくる。
 これでようやくもとの時代に帰れるってわけだ。
 しかしあれだね、佐々木にとってのジョン・スミスはどんなやつになったのかね。
 ハルヒにとってのそれと同じ意味なのだとしたら正直俺の手にはあまるぞ。
 ジョーカーは一枚が普通であって、二枚も手札にあるなんて異常というほかない。
 世界は俺に何を望むってんだろうね?
 
 などと考え事をしていたのが悪かった。
 行きの時以上に強烈な立ち眩みに襲われた俺は、正常な状態に戻るのに数分を要した。
 その間に藤原のやつは影も形も見えなくなっていて、俺は道端に一人ぽつんと突っ立っていた。
 はぁ、ほんとどうなるんだろうねこれから。やれや……
 「やあキョン」
 「どぅわ!?」
 な、なんで佐々木がここに!?
 「驚かしてしまってすまないね、キョン。だが良ければ一つ聞かせてくれないか?
  どうして君がこんな時間に出歩いているのかを」
 佐々木の言葉にちらと腕時計を見つつ状況を必死で整理する。
 「まあ、散歩ってとこだな」
 「そうか、散歩か」
 偶然だと信じたい。
 たまたま過去から戻ってきた俺が突っ立っているところにこいつがやってきただけだと。
 「そういうお前こそ散歩か何かか?」
 「ふむ、なんと答えるのが適切かな。そうとも言えるし言えないかもしれない」
 佐々木にしちゃ歯切れの悪い応答だな。
 「キョン、君だけではなく僕の方だって多少なりとも驚いているんだよ」
 それもそうだ。こんな時間にばったり知り合いに出くわす確率はいかほどだ?
 「それにしてもお前がこんな時間に散歩とはな」
 「僕にだっていろいろと思うところはあるのだよ。今日は七夕だしね」
 むぅ。ハルヒもそうだったが、佐々木も七夕はメランコリーだったのか。
 まあ俺が気づいてなかっただけだろう。中3の時は七夕はちょうど休日で会わなかったしな。
 「それじゃキョン。今日はもう遅いお互いに早く帰ることをお奨めするよ」
 踵を返したその背中が、校門の前に張り付いていたあの背中に重なって――
 俺は気づけば佐々木の横に並んでいた。
 「キョン?」
 「バス停まで送るよ。もう遅いから歩いて帰るなんてやめとけ」
 「どういう風の吹き回しだい?」
 「俺にだっていろいろと思うところはあるんだよ」
 「そうか」
 「そうさ」
 その日の天の川のきらめきを俺はしばらく忘れないだろう。


186 :21:2007/04/25(水) 11:50:19 ID:LwkvQAcG
以上だ。
ど、どうだっただろうか?
読みやすさに関しては試行錯誤中で改行に苦心したんだが……。
ちなみに、カプリチオは狂想曲の意。
ラプソディの狂詩曲に対応?させてみた。

佐々木スレ4-149 「桜」

2007-04-25 | 中学卒業ss

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/25(水) 02:37:43 ID:7P01I8/I
「桜」

 散る桜は美しい。日本人に流れる遺伝的な何かがそう思わせるのか、それとも、卒業式を間近に
控えた俺にも、なにがしかのメランコリックな感性が働いているのか、まったくもって不明だったが、
風に舞い散る薄紅色の花びらは確かに俺の心に響いていた。

「綺麗---だな」

 だから、自然に賞賛が口からこぼれた。その言葉が聞こえたのだろう。
 佐々木は静かに振り返った。舞い散る花びらの中、
もうすぐ着納めになる中学の制服を着た佐々木は同意を込めて、微笑んだ。
「ん、そうだね。冬には冬の美しさがあるが、やはり僕は春の美しさが好きだな」
 俺は夏が好きなんだ。寒い時期は早く終わってくれればいいとしか思えないがね。
「キミも日本人なら四季折々の風情を、その時々でちゃんと楽しむぐらいの余裕を持ちたまえよ」
 この一年、そんな物を楽しめた記憶はないね。
こちとら、受験社会の底辺を青色吐息で生きてきたんだ、そんな余裕はなかったぜ。
「やめろよ、キョン。すべては終わったことじゃあないか、もう僕らは受験生なんかじゃない。
この春から高校生になる卒業間近の中学生なのだ。
今更、受験なんて言葉を僕の耳に届かせないでくれたまえ」
 両手を上げて降参し、心ばかりの謝罪を述べる。確かに、もう終わった話だ。
昼前まで惰眠をむさぼっても、何も言われない自由が俺の元には戻ってきたのだ。
願わくば、この自由を一日でも長く保っていたいもんだ。
「キミの友人として、忠告させて貰うが、そういう風に自堕落に時を浪費するのはあまりよい習慣
とはいえないぞ。諸行無常、世界を見回してみたまえよ。昨日と同じ今日なぞないのだ。キミが
惰眠をむさぼる間に、桜は花開き、散っていく。ふくらんでいくつぼみの持つ生命力も、花散った
後に分かる若葉の美しさも感じ取ろうとしなければ分からないものだ」
 うへぇ、ご説ごもっとも。肩をすくめ、両手を制服のポケットに突っ込む。
 佐々木にお説教されるのも、これが最後かもしれないからな。精々心に刻ませてもらうとするよ。
「そうだね、キミに投げる言葉もすべて最後かと思うと、とても大切に感じるよ」
 そう言って、佐々木は顔を伏せた。そうだった、コイツは市外の私立に行く。
俺の偏差値じゃ逆立ちしたって届かないような進学校。俺は北の方に見える山際の県立高校だ。
これから毎日、あのハイキングコースを行くのかと思うと、めまいがする。
そう、こんな毎日も、もうすぐ終わる。
 今日が先月なら佐々木を乗せて塾に自転車を走らせている時間だ。俺がコイツを自転車の荷台
に載せることももうないのだろう。そして、きっと俺はすぐに自転車の軽さに慣れてしまうのだ。
 その時、風が吹いた。佐々木が髪の毛を軽く押さえる。風にひるがえるスカート、桜の花びらが
俺の視界を閉ざす。俺はなぜだか、佐々木がそのまま風に消えてしまうのではないだろうか、
そんな気持ちになった。
 思わず、右手が伸びた。
「きゃっ」
 佐々木が可愛い悲鳴を上げてうろたえた。いや、うろたえているのは俺の方だ。
何で俺は佐々木の手をつかんでいるんだ。これが桜の魔力だろうか。
「どうしたんだい急に」
 佐々木はそう言って微笑みを返す。俺の手をふりほどいたりはしない。


151 :桜 2/2:2007/04/25(水) 02:39:46 ID:7P01I8/I
「自転車に乗ろう」
 は? 俺は何を言っているのだ。わけがわからない。ほら、佐々木が困っているじゃないか、
はやく取り消すんだ。
 佐々木は、唇の端を器用に曲げて、悪戯っぽい笑みを漏らした。
「いいね、こんな陽気と桜の中をサイクリングするのはとても気分がいいだろうね。ねぇキョン、
もちろんキミの自転車に僕を乗せてくれるのだよね」
 なぜだか、急に気恥ずかしくなり、俺は佐々木から視線と手を外し、ぶっきらぼうに承諾を告げた。
使い慣れた自転車を取って来るべく、もと来た道を戻る。その時、そっと左手に手が添えられた。
「僕も行くよ、キョン。一緒に」
 佐々木の手は小さく、俺の手のひらにすっぽりと包まれていた。ああ、そうだよな。
佐々木は女の子なんだよな。ずっと、分かっていていいはずのことが今更のように分かる。
だが、それももう遅い。
 もうすぐ、別れがやってくる。そして、それをどうにかすることはできなかった。
もちろん、俺たちの関係を破壊してしまえばそれは可能なのかもしれない。
いや、きっと可能なのだろう。
 だけど、そうしようとは思えないのだ、俺には。そして佐々木にとってもそうだと確信できた。
 自転車にまたがる。慣れたもので、佐々木は横座りでちょこんと荷台に座った。左手を腰に回してくる。
自転車を揺らさないようにゆっくりとペダルを踏み込んだ。
 舞い散る桜の中、ふたりで自転車を走らせた。桜の花びらが綺麗だった。そう、散る桜は美しい。
その時、背中にぎゅっと佐々木の頭が押しつけられた。
「すまない。しばらく、振り返らないで、声を掛けないで、背中を貸していて」
 その声には応えなかった。だけど、気持ちは伝わっている。佐々木とはそういう関係だ。
 ああ、いくらだってそうするよ。熱い物が胸の奥と背中に染み渡った。

 桜舞い散る春の日のことだった。

佐々木スレ4-118 「桜(試作品)」

2007-04-25 | その他

118 :桜(試作品):2007/04/25(水) 00:11:47 ID:8dBD2JNN


どうも最近世界の色が薄れているような。昔もこんな感じだったか?
少なくとも3週間前はここまで酷くは無かった気がする。我ながら曖昧な表現であるが、今日は一段とそれを実感してしまうのだから実際そうなんだろうな。

そろそろ桜も七部咲きといったところか。公共の場に咲いてる桜はきっと綺麗な色なんだろうね。
狭いとまでは言わないが、無理して詰め込んだ感が否めない公園を歩けば嫌でも春の風物詩が目に付くのだがこれは別にどうでもいい。
問題はそいつらの色彩が鉛筆でスケッチした絵のように洗い流されちまってることだ。
いつから――――記憶を掘り返してはみるが、はっきりとした境界がいつなのかは何度読み返してみてもさっぱりわからん。
気が付いたらこうだった、といった方が適切だろう。
日に日に色が抜け落ちていくのに、その変化が小さすぎてその時点では気付かない。そうやって知らず知らずのうちに積み上げた結果が今の俺。
うん、何の解決にもならん推理だった。

公園の散歩は俺の日課になっちまったようだ。今年の春休み限定だがな。
まったく、何が楽しくて灰色の桜を見に来てるんだか。
とはいっても、結局どこにいても同じ彩にしか見えないのだから家にいても同じわけで、じっとしていると正直気が参っちまう。
意味が無いことを理解してはいても、自然と俺の足が外に向かうのはそんな一種の防衛反応からきてるわけだが、実際には全く効果が無いな。どうやったら治るんだろうかね。
よく小説で「心ここに在らず」って心境にこんな表現を使ったりするが、俺もその口か?そんなに荒んでるつもりはないんだが。
ともかく、早いとここいつをどうにかせねばならん。高校入学の式典は明後日だというのにこんな心持でいるのは非常にまずい
。下手すると俺の評価に「内向的・非社交的」の烙印を押されかねん。勘弁だ。
ええい、落ち着いて思い出せ。因果を遡るんだ俺の思考!
無論そんなことできるわけがない。不毛な時間を過ごしちまった、やれやれだぜ。


こうも視覚を制限されると「わびさび」を体現する桜も魅力半減だ。
元々空が晴れてるのか曇ってるのかすらわからないのだから、花見なんていう行為も気晴らしにすらならなくなってきたぞ。
こういう時は佐々木の説法が無性に聞きたくなる。あいつならきっとこんな世界すら忘れさせるような話をしてくれるだろうな。
そう思うと佐々木と一緒にいた時間が恋しくなるが、残念ながら時間は過去に戻ってくれないのが現実だ。
あぁ佐々木、今だけでもいいからお前の講話を聞かせてくれないだろうかね。



続きません





「桜」難しい。というよりキョンのモノローグが難しい
どうやら俺は「キョンフィルターが書けない」というより、根本的に「キョン視点そのものが書けない」という致命的欠陥があるみたいだ。佐々木の視点でもまともに書けないけど



( ´・ω・) [職人の書いたSS&>>89]


(´・ω・`)


(´;ω;`)ブワッ

佐々木スレ4-85 「休み時間の雑談」

2007-04-25 | その他中学時代ss

85 :小ネタ 休み時間の雑談:2007/04/24(火) 22:28:36 ID:lqTvLrh+
「なあ佐々木よ」
「何か?」
「二次方程式の判別式ってあるよな」
「ああ、b^2-4acの事だね」
「そうそう。で、それが0より小さい時だっけ? 二次方程式には解が無いとか言ってたじゃねえか、さっきの授業で。あれって本当なのか?」
「まあ、中等教育の範囲ではイエスだね。解なしと言うのが出題者の意図した回答だろう。ただし――」
「お前のその言い方だと、何かあるんだな?」
「高等教育になると虚数単位という概念が出てきてね。二乗すると-1になるという変わり者だ」
「何だそりゃ? そんな数字存在しねえだろ」
「そう、存在しないのさ。だから虚数。イマジナリーユニット――概念上でしか存在しない数。数学的な定義はi^2=-1とされているね」
「へえ、i=√-1じゃないのか? 同じ事だろ?」
「定義の変形ではそうなるね、そのように覚えていればいいさ。まあ中等数学じゃ概念上ですら存在しない数だから、このiがなくても別に困る事は無いけどね」
「そういうもんかね――」


同級生(……さっきからあいつら甲斐なしとか愛が無くても困らないとか何の話をしてるんだ?)


108 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/24(火) 23:55:59 ID:Tn5wFCNL
>>85の才能に嫉妬!!!
上手いにも程があるだろ…でもこんな会話は絶対してる!多分、この2人の会話についてこれるのは国木田だけかな?中河とかは思い切り勘違いしてるな!
佐々木「ドイツの経済学者のアドルフ・ワーグナーについて説明しようか?」
キョン「ワーグナー?宰相ビスマルク時代のやつか?」
佐々木「そうワーグナーだ。彼の功績の一つに…」
他の人「ちょwww女性器連呼してんじゃねえよwww」
こうですか?わかりません
>>89
佐々木を待ち受けにしましたが文句は受け付けません。見た瞬間に自分の中の何かが弾け飛びました。せ、責任取ってよね!


117 :85:2007/04/25(水) 00:10:46 ID:pLDyg6bx
なんとなく>>85の2年後

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「まったく、勉強を教えてくれなどと言うから貴重な休日をキミの為に浪費していると言うのに
「キョン、僕から見てもこの数Bの小テストは酷過ぎるね。キミはiの存在を忘れ過ぎだ
「それに何だこの解答は。D=0なら重根だろう? 実根にiは要らないだろう
「だからD<0なら虚根なのだからiを付けろと何度言ったら判るんだ? 「……佐々木」
「何か?」
「ここ、一応図書館なんだけど」
「あ――ああ、すまない。ちょっと声が大きかったかな……」

(これは言わぬが花と言うやつだろうか――やれやれ)
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ちょっとオイラー先生に土下座してきますorz

佐々木スレ4-68 改札にて

2007-04-25 | その他佐々木×キョン

68 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/24(火) 21:20:30 ID:gGAjfg9m
駅の改札出ようと思ったら切符を落としてしまった佐々木さん
しかも切符は自販機の下に入り込んでしまい、人目が気になるから無くしたことにして
改札でお金払って出ようと思ったら、その分のお金さえなくって
結局は自販機に戻ってきて人が少なくなったところで屈みこんだ瞬間キョン登場

ってSSだれか書いてくれないか


113 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/25(水) 00:05:34 ID:TAXNkZ0u
「―――あ」

まるで自販機の紙幣投入口に吸い込まれていくお金のように、切符は券売機の隙間へスルリと潜り込んだ。
周りに人が多く、さすがにしゃがみ込んで取るのも人目が気になる。
(…仕方ないよね)
お金が勿体無いけど、私はそのまま改札口へと向かった。切符が無くても、手持ちのお金で外に出るしかない。
けど、私は失念していた。その日どれだけ自分が散財したのかを。つまり、財布の中はほとんど空だった。
それこそ、駅から出るためのお金が払えないほどに。
「ど、どうしよう…」
嫌な汗が額をすっ、と流れた。買ってよかったと思っていた袋に入っている物が、途端に恨めしく感じる。
私は仕方なく券売機がある場所に戻り、人が少なくなるのを待った。
人目がほとんど無くなった時、素早く迅速に冷静に正確に確実に切符を取り出そう。
待つこと約一時間、時間はそれなりに遅い時間になっていて、人もまばらになってきた。
そして、そのときがきた。周りには誰もいない…!
私は素早く屈み、迅速に手を伸ばし、冷静且つ正確に位置を確認し、確実に切符を――「もしかして佐々木か?」


ああ、なぜ君はこんなタイミングで僕の前に姿を現すのか。


そのあと、私はキョンに何を言っていたか憶えていなかった。口から思いつくままに話し続け、だけどキョンの呆けた表情だけは
憶えている。結果だけまとめると、キョンにお金を借りてその場は事なきを経た。
駅の外を出ると、私が駅の中で機会を窺っている間に日が暮れすっかり暗くなっていた。

その日、私達は久々の二人乗りをした。
…少し、得したのかもしれないね。彼の腰にしっかりと手を回し、私は頬の熱を風で冷ましていた。

>>68
こうですかっわかりませんっ><
即興なんで許してくださいorz