【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ9-856 「佐々キョンバカップル『夜食』」

2007-06-18 | その他中学時代ss

856 :佐々キョンバカップル『夜食』①:2007/05/28(月) 23:45:17 ID:41eGe99t
「キョン、起きてくれ。キミの高校の期末考査がどの程度のものなのか…僕には知る由もないが、少なくとも、キミが余裕を持って挑む事のできるレベルではないだろう?」

「………」

まったく、キミが明日の考査を乗り切る為に1日家庭教師に就任してくれ、と頼み込んできたじゃないか。
なのに開始一時間で夢の世界へ旅立つとは一体どういう了見なのだい?

「さあ、学習を再開しよう。キミにとって運命の時間まで既に半日をきっているのだからね」

そう言いながらキョンの肩を揺する僕。

「………」

だけど、起きる気配すら感じられない。
ベッド上のシャミ君が欠伸をするのが視界に入った。

「はぁ…」

深夜に年頃の、更に言わせてもらえば恋愛関係である男女が2人きりだと言うのに…
更に、更に言わせてもらうと、僕の装いはいくら7月とはいえ少々肌を露出し過ぎているはずだ。
ちょ、ちょっとだけ上乳もチラリとしてるんだよ?
だけどキミは見向きもせず、テーブルに突っ伏したままだ。
せっかく夜食としておにぎりまで用意してきているのに。

「キョン、目を覚ましてくれ。キミの顔を見なければ淋しさでどうにかなりそうだ…」

「………」


857 :佐々キョンバカップル『夜食』②:2007/05/28(月) 23:46:38 ID:41eGe99t
耳元で囁いてみても効果はない。
さすがの僕も頭にくる。怒気を放出し背中に般若を象ったオーラでも顕現させてしまいそうだ。

「仏の顔も三度、と言うが果たして僕の顔はいったい何度までだろうね。
今までの事も加味すれば優に百は越えているだろう?
さすがの僕にも我慢の限界、くらいは存在するのだよ」

「…ん……」

ほぅ…やっと起きてくれるのかい?

「…お……」

お?

「ぱい……」

プチンッ

はぁぁ?お、おおおっぱいだってぇ!?そ、そうか!それは胸の厚みを気にするぼ、ぼぼ僕に対しての当てつけかぁ!
もう我慢の限界だ!堪忍袋の緒もとうの昔に切れてるさ!
いい!僕にだって考えがあるんだよ!

バッ!

僕のカバンの中の一品、今夜の学習が一段落したら使用する事も考えた例の物…

ジャーン!

『中学時代のセーラー服』

そして僕はシャープペンシルを握り締め、天井へとかざした…

「変身…」

ヌギヌギヌギ…
ハキハキハキ…
シャキーン!!


858 :佐々キョンバカップル『夜食』③:2007/05/28(月) 23:47:42 ID:41eGe99t
「たぁ!『プリティささき』!只今参上!」

「説明しよう!『プリティささき』とは、一女子高生に過ぎない少女『佐々木』の乙女の怒りが臨界点を突破した時に誕生する、セーラー服美少女戦士である!
腕力は通常の①倍、羞恥心は通常の⑩倍という理不尽な能力を秘めているのがプリティささきだ!
彼女の乙女の証は猫である我が寝ているフリをしている際に彼の者に奪われてはいるが、それはまた別の話だ!」

「おや?シャミ君、いきなりにゃーにゃーどうしたんだい?」

「にゃぁ(あぶねぇあぶねぇ…)」

「…?」

シャミ君の様子が変なのはまぁいいとして…現在、最大の懸案事項であるキョンだ!
くっくっくっ、さぁキョン!覚悟はできてるんだろうね!?
いっくよぉぉ!

「ささきぱぁんち!」

プルプルプル…
ペチッ

ペチッペチッ
・・・・・・
ポコポコポコポコ…

「Zzz…」

「はぁっ…はぁっ…」

相当な量のエネルギーを消費したのに…さすが僕のキョンだ。一筋縄じゃいかないみたいだ…
起きる気配すら感じられないキョン。彼の神経の鈍さが感じられる。
それに「無視されてるのかな」とも思う。するとなんだか胸の奥がジュンとしてくる…


859 :佐々キョンバカップル『夜食』④:2007/05/28(月) 23:49:05 ID:41eGe99t
うふふ…

ハァハァ…

「あぁっ…」

ハァハァ…

てヘヘ…

・・・

はっ!?

「って僕はどんな変態なんだよ…」

まったく、キョンのせいだ。いつも焦らす等して早く来てくれないキミが悪いんだ。
僕の攻撃がこれで終わりだなんて思っちゃイケないよ!
必殺技を使っちゃうからねっ!

「ささきぃっく!」

テヤァァァァ!

ポコッ…

・・・

アチョォォォ!

ペコッ…

「Zzz…」

「はぁ…はぁ…」

疲れた…凄く激しい動きだったよ…
僕の息の上がり具合とは反比例して、キョンの寝息は平穏そのものだ。まるで普段の喧騒から逃れているみたいに。

それにしても…なんで起きないの?キョン、淋しいよぉ…
キョンが起きないんなら勝手に抱きついちゃうんだからぁ…

キョンの背中は広くて大好き。彼の首筋に縋るように両腕を絡ませる。
背中に押し付けた体の全面からキョンの体温がフルに感じられる。
鼻先に触れるキョンの髪の毛が擽ったいけど彼の匂いを独り占めできるからもう少しこのままで…

でも、今キョンが起きたらなんて言い訳しよう…

「超必の『ささきチョークスリーパー』をかけてたんだ」


860 :佐々キョンバカップル『夜食』⑤:2007/05/28(月) 23:50:10 ID:41eGe99t
うん、声に出して言ってみたけど完璧な返答だ。
決して「ムラムラしたから」なんて事はないんだ、うん。
それにしてもキョンって良い匂いだなー。

クンクン…

ハァハァ

クンクン…

てへへ

クンクン…

「あぁぁっ…んっ!」

・・・

あれっ?いつの間にか時計が5分ほど進んでいる…なるほど!これが時間移動か!
彼に時間移動の感想を求めたときに「頭がフラフラして、形容し難い吐き気に襲われる」と言っていたが…
確かに頭はまだ重い感じがして、焦点が定まらない。キョンの頭がメトロノームの様に揺れている。
僕の息が荒いのはご愛嬌。

・・・
いくら起こそうとしてもまったく起きないキョン、まるで眠り姫みたいだ。

「はっ!まさか!?」

眠り姫…

つまりはキスで目が覚めると…そういうワケか!
そうと決まれば話は早い。

キョンの頭を持ち上げる。
キョンの両頬をガッチリとホールド。
そして僕は宣言する。

「奥義、ささきっす…」
唇を尖らせる僕。


861 :佐々キョンバカップル『夜食』⑥:2007/05/28(月) 23:51:14 ID:41eGe99t
「うぅぅ…」

キョンの顔が近付く。

「んぅぅ…」

あと10センチ…

「んぅぅぅ…」

あと5センチ…

「んんぅぅ…」

あと3センチ…

「んんんぅぅぅ…!」

あと1センt

「起きてるぜ」

くぁうせldfふ・じ・こ!!!

・・・

「さて、僕はいくつかキミに質問しなければならない事項があるんだ」

「どうぞどうぞ」

「…いつから起きていた?」

「正直に言えば『変身』の瞬間は横目で見てた」

・・・

orz

「佐々木、その体勢だとスカート全開だぜ?」

・・・

OFZ

「いや、右手で押さえても大して変わらんが…」


862 :佐々キョンバカップル『夜食』⑦:2007/05/28(月) 23:52:13 ID:41eGe99t
「うぅ…ヒドい…ヒドい…」

うわ言のように「ヒドい」と繰り返す佐々木を俺は見守る事しかできなかった。
俺は楽しめたが佐々木は真剣だったもんな。だからお返しの意味を込めて佐々木にご奉仕する事にしたのさ。

「キョンチョークスリーパーぁぁ!」

「えっぐ…いきなりどうしたのさ…」

そんな佐々木を無視して回り込み、後ろから抱きしめる。その時に「きゃっ」なんて可愛らしい声も聞こえた。

「佐々木は温かいな」

「…ありがとう」

俺はあぐら、その中に佐々木の腰を沈め左腕で逃がさないように抱きしめる。右手は可愛い彼女の手櫛さ。

「いい匂いがする」

「……ありがとう」

先ほどより体温が上がった様な感じだが気のせいではないだろう。目の前の首筋もほんのり桃色に染まっているしな。

だからその可愛い首筋に口付けを落とす。

「ひゃんっ…き、キョン、不意打ちは、卑怯、じゃないか…」

佐々木の言葉がたどたどしいのは、彼女の首筋を執拗に舐めているせいだったりする。


863 :佐々キョンバカップル『夜食』⑧:2007/05/28(月) 23:53:11 ID:41eGe99t
・・・

「俺の胸の音、聞こえるか?」

「…うん、もちろんだ。僕の大好きなキョンの音。ただ、いつもよりは鼓動が激しいようだね」

「お前の音も聞こえるぞ」

「そうかい?流石にキョンを誤魔化すことはできないか」

心地よい、2人の心音だけが支配する空間。俺はこの空間が好きだ。

「…腹すかないか?」

「夜食におにぎりを作ってきたよ」

「俺の腕の中にもある」

・・・

「ええっと…このセーラー服だけは汚さないようにしてくれよ?」

「さあな?」

そして困った顔をする佐々木との距離がゼロになった。



その後の事を詳しく語るつもりはない。佐々木が再び泣いた事や、夜食が佐々木と相成っために、おにぎりが朝飯になってしまった事くらいを追記しておく。

「それとセーラー服をクリーニングに出す羽目になった事も…だね。くっくっ…」

「…そうだな」

一晩中勉強できなかったために考査がボロボロだった事なんか、それこそ言うまでもないことだ。

END


864 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/28(月) 23:54:43 ID:41eGe99t
以上でした。バカップルってか佐々木一人がバカみたいな…OFZ


877 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 00:25:37 ID:KGoxEG9d
俺もささきスリーパーで萌え殺されたい


878 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 00:30:34 ID:0jl7++J5
佐々木繋がりで、ノーザンライトささきボムとかいかが?
関節技のささきングルホールドもあるぞ


880 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 00:40:38 ID:OC52u9yl
>>878
サンダーファイヤーパワーボム
↓改変
ササキーファイヤーパワーボム
ってのは考えてたが…
ネーミングセンス皆無だし、
「ぅぅぅぅうう…キョンが持ち上がらないよぉっ」
ってなりそうで…
むしろアリか?アリなのか?


881 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 00:44:52 ID:0jl7++J5
>>880
それ寧ろキョンが嬉しい状況じゃないかw
可愛いけど…それのあとに俺がささきングウィザードを食らわせてやる


898 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 11:25:05 ID:OC52u9yl
放課後は毎日キョンに寝技をかけられています。自然と格闘技も身に付きました。地上最強の嫁なのでは、と自負しております。
痴漢はキョンが踵落としで沈めてくれるので問題ではありません。最近は彼に対する痴女が多いみたいです。彼は嫌がる素振りを見せず光悦の表情すら浮かべます。
その痴女がクラスメートなので撃退できません。どうすればいいでしょう?


899 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 11:26:06 ID:OC52u9yl
午後は〇〇おもいっきりテレビより


900 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/29(火) 12:47:24 ID:RMLo5N3E
>>898
なんのこっちゃwww


佐々木スレ9-716 「いつもどおり」

2007-06-18 | その他中学時代ss

716 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/27(日) 21:12:35 ID:SwafWn3o
たまには独占欲丸出しなキョンも見てみたいな。


719 :いつもどおり:2007/05/27(日) 21:37:05 ID:4yv7eKBC
>>716

「実は今日の昼休み、本人の名誉の為に名前は言えないが、告白されてしまってね」

 いつもの塾の帰り道、何となく話題が途絶えた時に、彼にそう言ってみた。

「…、そうか」
 答える彼はいつもよりも少しだけ長く考えて、いつもより少し眉を顰めた。
「勉強もスポーツもルックスもいいのに、何で僕なんかに告白をしてきたのか」
 お前だからだろ、と彼はいつもより小さな声で、いつもより少しだけ向こうを向いた。
「…恋愛は精神病の一種じゃなかったのか?」
 いつもより少しだけ拗ねているように聞こえるのは、僕の気のせいじゃなければいいと思った。

「そうは言っても、とても情熱的に口説かれたからね。いや、口説くなんて比喩は彼にとって失礼だな。
 彼はとても真面目で、真摯だったよ」

 彼はいつもより余計にこちらを向いて、いつもより少しだけ焦った声で言った
「まさか、付き合うことになった、なんて言わないだろうな」
 彼はいつもより長く僕の目を見て、いつもよりもずっと僕の言葉を待っている。

 多分、ここが「いつも」と「いつもじゃない」の境界だから。

「もちろん断ったさ。受験生で、しかも進学先が違うんだ。まあ、それが無くても、僕は断ってただろうけどね」

「そうか、…そうだろうな」
 漏れる溜息はいつもの通り。いつの間にか、彼と僕の間はいつも通りに戻っていた。

喉元までせり上がってきた問いを何とか押さえつける。
この冬が終われば、いつもどおりは、前にあったことになってしまうから。
せめて、もうすこしだけこのままで。

桜が咲く頃に言ってみようか。彼と僕の距離が変わってしまう前に。
「もし、君が告白してきたなら、僕は何と答えるんだろうね」

佐々木スレ9-512 自習室の彼女

2007-06-18 | その他中学時代ss

512 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/26(土) 02:33:28 ID:JTXXjDxr
――偶然だった。
その時たまたま通りかかっただけの、たまたま覗き込んだだけの自習室だった。
机に伏して眠っている彼女が、ただ独りそこに居た。

同じ教室の中の女子連中の中で、彼女は際立って輝いていた。
同室男子の受講生で彼女の事を誰もが狙っていた。何も容姿がずば抜けているってだけじゃない。
講師からの質問にもエレガントと言える受け答えをし、模試の成績はいつも上位。
知識をてらう様な持って回った喋り方も彼女の学才の深さを感じさせて魅力的だ。
そして――目映いばかりの彼女の笑顔。きっとアイツにしか見せない、極上のスマイル。
あの笑顔を向けられたら、僕はどうなってしまうのだろう。
死んでもいいとさえ思ってしまうかもしれない。
しかし、そんな事は僕が模試の成績で彼女の上位に付ける事くらい、有り得ないのだ。
アイツが一緒に居る限りは。

――今、アイツは居ない。アイツ以外の誰かも居ない。
居るのは彼女と僕だけだ。
彼女はどうやら本格的に寝入っているようだった。可愛らしい寝息が僕の耳にも伝わる。
今なら、彼女の傍に寄っても――いや、そんな事。卑怯だ。考えるまでも無い。
でも――今しか。きっとこの機会しか――
気が付けば彼女の寝顔が目の前にあった。何か寝言を呟いていたが、よく聞き取れなかった。
ああ――なんて可愛いんだろう。
きっと今なら誰も気付かない。彼女自身も――

「よ」
突然肩を叩かれて、心臓が胸を突き破って飛び出すのではないかと言うくらいに驚いた。
息ができない。呼吸ってのは一体どうやればいいんだったっけ――
振り返った先に、困ったように頭を掻いているアイツが居た。
彼女に『キョン』と呼ばれてるアイツが。
なんて事だ、よりにもよって――
「――悪いな、寝かしといてやってくれよ。いつも遅くまで根詰めてるみたいだからさ」
「――え? あ、ああ……」
アイツを睨み付けようと顔面の筋肉が動くか動かないかのところでそんな風に言われた。
――怒らないのかよ?
毒気を抜かれるとは正にこの事だ。途端に自分の卑劣な行為を自覚し、嫌悪感に駆られる。
「……悪かった。じゃあな」
「おう」
敵う筈も無い――どうしたらあんなに優しい目をして彼女を見つめられるんだろう?


「ん……キョン?」
目覚めたばかりの眼を擦りながら佐々木が起き上がる。
やれやれ、寝ぼすけ姫様の御起床か。
「悪かったな、講師の野郎が中々離してくれなくてさ。すっかり遅くなっちまった」
「キミの性格の問題だろう、因果応報だよ。磨けば光る原石が掌中にありながらも、
 その原石自体は磨かれる気も光る気も無いのだからね。講師殿方のやるせない気持ちも
 僕にも判らないでもない」
ほっとけよ、身分不相応な事はしない主義なのさ、俺は。
「――そう言やさ。眠り姫の童話ってあるじゃねえか」
「スリーピングビューティとか白雪姫の事かい?」
うむ、まあその辺だ。
「あの姫さんって、きっと口が臭かったから長い事誰からもキスされなかったんだぜ。
 きっとそうに違いねえよ」
――この直後に無言の佐々木に張り飛ばされる事を、俺は身をもって知る事となる。

---

>>472を見て発作的に思いついた。通りすがりがちょっと病んでる感だけど中坊と言う事で御容赦
と言うか>>472GJだよ>>472。駄文で申し訳ない

佐々木スレ9-391 ラブレター

2007-06-08 | その他中学時代ss

391 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/25(金) 00:20:35 ID:NVUkIAv4
ちょwwwもしかしてオンドゥル語ですかwww

短いSS落とします



「先輩、これ、渡してもらえますか」
と、可愛らしい便箋を渡された。
いわゆるラブレターだ。宛先は―――キョン。

「キョン、はい、これ。」
と、国木田がピンクの便箋をキョンに手渡した。
「国木田………お前………」
キョンの顔が引きつっている。
明らかにラブレターと分かるそれを男から貰うなど誰だって遠慮したいからな。
「勘違いしているようだけど、僕からのわけないよ。以前キョンが―――」

「ほう、キョンにラブレターだと?」
中河君の驚いた声がした。なにやら男子が騒がしい。
どうやらキョン君にラブレターが届いたみたい。
キョン君意外ともてるんだなあ。ねぇ、佐々木さん。
「………そうみたいね」
気にならない?
「なんで私に聞くの?」
さて、どうしてでしょうね?

「私には関係ない」
そんなこと言ってもムダムダ。佐々木いつもキョン君見てるくせに。

「ほらほら、正直になっちゃいなさい」
岡本が佐々木に詰め寄っている。
そうだ。佐々木といい、ラブレターの主といいなんでキョンなんだ?
「須藤、勘違いするな。佐々木とはそんなのではないぞ」
その言葉は聞き飽きた。では、その子と付き合うのか?

「悪い今日はちょっと野暮用がある」
放課後、いつものごとくキョンと共に帰宅の徒に誘ったが断られた。
十中八九、野暮用というのは件のラブレターの子に関することだろう。
私はおとなしく引き下がった。
私が彼に何かを強制出来ることなど何もない。
だから彼の自転車の後ろに乗れることはもうないかもしれない。

「早かったね。もういいのかい?」
交際を申し込まれたが、断ってしまった。
受験生たる我が身にはそんな余裕はないからな。
しかし……なんでまだ佐々木がいるんだ?先に帰っていいと伝えたはずだが。
「………未練………だろうね」
未練?ふむ、質問の答えになってないぞ。
「くっくっ、分からないならそれでいいさ。キミはそのままでいてくれ」
いつにも増して分から。
俺は理解する努力を放棄した。
それより佐々木に言うべき言葉がある。
「一緒に帰るか」


おわり



めちゃくちゃテキトーにやってしまった

佐々木スレ8-245 「夏の思い出」

2007-05-16 | その他中学時代ss

245 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 05:17:55 ID:mg6XZbu0
夏の思い出

・・・暑い。マジで暑い。時間は夜の10時をまわったというのに、記録的な猛暑となった今日は、塾から歩いて帰っている俺と佐々木の体力を容赦なく奪っていた。
『暑い暑い言わないでほしいな。心頭滅却すれば火もまた涼し、要は気の持ちようだよ。』
汗ダラダラで、首にタオル巻いて、うちわを扇ぎながら歩いている状態で言っても、説得力ないぞ佐々木。
『くっくっ、それもそうだね。キョンに説教する格好をしていなかったね僕は。実際、この暑さは異常だよ。』
そうだろそうだろ。暑いもんは暑いんだ。もう1Mも歩きたくない。

そんな時、小学校が通り道に見えてきた。こんな日はプールとかに飛び込んだら、さぞ気持ちいいだろうな。
『それだよキョン!』おわっ、何だよ急に?佐々木が声を大にして叫んでいた。
『あの学校のプールに忍び込もうじゃないか。ここらへんは人通りも少ない。余程見つからない筈だ!このままでは僕らは熱中症で倒れてしまうよ。』
正直、いい提案だと思った。余程暑いのか、佐々木がこんなことを言うのも珍しいし、素直にその案に賛成し、プールへ向かった。ただこの時は、暑さで脳がやられていたのか、大事なことを忘れていたんだ。


246 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 06:25:14 ID:mg6XZbu0
・・俺、水着持ってないぞ、佐々木。
『迂闊だったね。当然僕も持ってない。
こんな、ほんの先の事が予測出来なかったなんて、僕も暑さで頭がやられてたとしか思えない。』
まあしょうがないな。せっかくプールサイドまで来たが、引き返すしかないだろ。・・
ガサガサ、バサッ
佐々木は全裸になっていた。そして頭からプールへ飛び込んでいった。その、なんだ、びっくりした。
『キョンも早くおいでよ、これは最高だ!』
なんか凄いことを言ってらっしゃる。
そりゃ辺りは真っ暗だが、健全な男子中学生には躊躇してしまうシチュエーションだ。欧米じゃないんだぞ欧米じゃ。
欧米が大胆な感じなのかは実際知らないが。ああ何考えてんだ俺?

ただ、気持ち良さそうに泳ぐ佐々木は、微かに月明かりを浴びて凄く綺麗に見えた。
気が付けば俺も飛び込んでいた。もちろん服は着てない。
子供の頃は風呂とか男女関係なく入ったりしただろ?あんな感じの気持ちになったんだ、本当に。
『キョン、僕は君とじゃなければこんな事は出来ないと思う。それは素晴らしいことじゃないと思わないか?』
そう言った佐々木は微笑み、反転してクロールで泳いで行ってしまった。
俺もそう思うよ佐々木。しかし本当に気持ちが良い。あんなに恨めしかった『暑さ』に、今は逆に感謝している。どこか神秘的な、聖域というか、そんな時間だった。

そんな夏の思い出だった。だから佐々木は「親友」で間違いないだろう。
まあ俺は、それ以上の気持ちもあるんだけどね。

END


247 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 06:27:22 ID:mg6XZbu0
駄文スマン。次はうまくやります!


248 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 06:48:36 ID:4oHxEKfY
>>247
GJ!
ササッキーなにしてんだww


249 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 08:20:56 ID:kIvGmoyW
その日、俺たちは初めて繋がった。


ごめん、妄想しすぎた。


250 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 08:23:57 ID:fRTdgmzd
キョン「タオルねぇじゃん」
佐々木「正直暑さで頭をやられていたとしか…」


251 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 08:32:57 ID:ciZpqS3q
ワロタwwwww


252 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 09:35:37 ID:zR2qGeKi
>>250
「無い訳じゃない。この僕から分泌された水分と体臭をふんだんに染み込ませたタオルならね」
 また使い辛くなる表現しやがってコイツは……。
「でも使うんだろう? くっくっ……」


253 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 10:41:55 ID:AcXhff5I
お前ら朝っぱらから……超GJなことを!


254 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 11:34:29 ID:ciZpqS3q
佐々木はそれを持ちかえってあんなことや(ryをするんですね!

佐々木スレ7-769 佐々キョンバカップル 「じゃがりこゲーム」

2007-05-15 | その他中学時代ss

769 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 02:35:35 ID:TudowRG3
佐々キョン バカップル
『テイクアウト』

先週の日曜日、佐々木と図書館に行くために待ち合わせしていたのだったが、案の定遅刻した。
その日の彼女は虫の居所が悪かったらしく、後日、俺に恐怖の罰ゲームを科した。

『じゃがりこゲーム』

「…なんだ?その『じゃがりこゲーム』というのは…」

「なんだ、とはなんだ?勿論ポッキーゲームの改良版じゃないか」

改良版?どこがだよ。むしろ短くなってる分、劣化版と称すべきじゃないのか?

「これを両端から食べて行く、ただそれだけの事だろう?何も恥ずかしがることはないじゃないか」

そうだな。お前は気にしないかも知れんが、今は昼休みでしかも教室だ。当然クラスメートも大勢いるぜ。
男子の妬みの声がウザったいし、女子の爛々とした目が気になるな。

「さあキョン、始めようじゃないか」

そして佐々木はじゃがりこの5分の4を口に含んだ。
…5分の4?ほぼ全部じゃねぇかよ。

「ひょん、はやふひてふれ」

「わかった、わかったから落ち着け。このままだとお前の唇を食べかねん」

「はまわない」

こっちが構うんだよ、と…俺はジト目で佐々木を睨む。
しかし、効果が無いことは百も承知だ。


770 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 02:36:37 ID:TudowRG3
…もう、なるようになれ。
俺は覚悟を決め、じゃがりこをくわえている佐々木の唇に近付く。目の前の少女の瞼はトロンとしており頬も赤みがかっている…
って待てよ、コレってほぼ『キス』じゃねぇか。
教室の中、クラスメートが見ている目の前で淫行に及ぶなんてバカップルもいいとこだぜ。
…まあ、もうやめる気もないがな。

チュッ…

「んむっ!!」

だから俺はじゃがりこを無視し、佐々木の唇に直接食らいついた。
じゃがりこをくわえているためか、唇は普段より強張っているがそんな佐々木も可愛いぜ。

ペロッ…

「んんっ!」

さらに佐々木の唇を舐めた。
佐々木は抗議するかのように大きく目を見開き、その視線で俺を射抜くが…お前の体をがっちりと抱き締めてるんだ。俺の腕からは逃れられないぜ。
そして佐々木の背に回し拘束する手を右手のみにし、左手は脇腹を攻め、

「あぁ…」

吐息がこぼれたその隙に舌をねじ込んだ。

「ん…はぁ…」

それにしても…じゃがりこが邪魔だな。
逃げる佐々木の舌を追うといつも奴が居やがる。
・・・
教室で深いキスをする二人。
これ以上は自分自身、火が付きそうだなと思い佐々木を解放した。

「…酷い……」

教室での淫行、がか?
言うまでもないが、彼女の呼吸は荒い。

「酷いの公衆の面前で羞恥プレイを強要したお前じゃないか」

「…そうじゃない。あの様に熱いキス…なのに寸止めなんて、年頃の、か弱き乙女にする事じゃないんだと思うのだよ」

そう言いながら佐々木は俺の体に絡みついてきた。
どこがか弱いんだよ、などという無粋な反論はしない。
俺は火が付く寸前で止めたつもりだったが、どうやら手遅れだったらしい。

昼休みが終わり教師が入ってくる。
そこで俺たちは『具合が悪い』旨を伝え早退した。勿論、建て前だ。

『佐々木に火が付いたので持ち帰ります』
なんて言えるわけないだろう?

END


777 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/14(月) 04:30:40 ID:7eZK9XZW
>>769
  /           / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 / 罰ゲーム♪.    |  キョン 仕方ないよ やろう
/  バツゲーム♪  |  全部かじらなくてもいいと言ってくれてる
 ポ・ッ・キーィ.      \___  ____________
      /     , -‐- 、   |/   ,. ‐-ー- 、
.    /      ,'. /  ト、 ヽ     ノ /    ヽ
  /       i. ((从ソ 从〉     ノハハハハハ !
          l. (|┳ ┳i!l      !|─ ─ ,iリ)!
       .   ハNiヘ  ー ノハ!     ’ 、~ ,ノル´ ヤレヤレ
           ⊂)"ー'゛iつ.  ━━─と}゛|†'|´{'>  オレタチ ガ ラス トハ ナ
            /ュュュュゝ        .i´T `i
            〈__八_,〉        〈_,八__〉


.   / キョーン!!
  / サイゴ マデ.    , -‐- 、.     ,. ‐-ー- 、
  / ヤッタッテ     .,'. /  ト、 ヽ.  ノ /    ヽ  フタクチ クライ
. / イーンダゾー    i. ((从ソ 从〉 .ノハハハハハ !  クエバ イインジャネエ?
/      /    l. (|┳ ┳i!l.  !|─ ─ ,iリ)!
     /       ハNiヘ  ヮ ノハ!.━┯‐(  ノル´ ホレ
   /      .  ⊂')"ー'゛iつ. パク 〈}゛|†'|´{>
              /ュュュュゝ     i´T `i
              〈__八_,〉     /_,/ヽ_,〉


      / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
      |  すまないけどね キョン
      |  僕はチョコレートが苦手なんだ 僕がそっちをくわえるよ
      \________  ______________
             , -‐- 、. |/  ,. ‐-ー- 、
            ,'. /  ト、 ヽ   ノ /    ヽ
.           i. ((从ソ 从〉.Σノハハハハハ !
           l. (|┳ ┳i!l.  !|─ ─;iリ)!
.           ハNiヘ  (━∩ 彡 ’ 、っ ノル´ ナッ?
.            ⊂')"ー'゛iソ ヒョイ 〈}゛|†'|´{>
             /ュュュュゝ パク  .i´T `i
             〈__八_,〉     〈_,八__〉


    ヒュー
  /   ヒュー
 / #           , -‐- 、       ,. ‐-ー- 、
/  ♪ ♭       ,'. /  ト、 ヽ.  ノ /  u  ヽ
      /       i. ((从ソ 从〉  .ノハハハハハ !
.   /.       l. (|┳ ┳i!l   !|─ ─;iリ)!
  .          ハNiヘ ''' )━┿   .’ 、 - ,ノル´
.             <')"ー'゛i⊃     {i'つ´{つ
             /ュュュュゝ       i´T `i
             〈__八_,〉.     〈_,/.ヽ__〉

佐々木スレ7-541 キョンのお見舞い

2007-05-15 | その他中学時代ss

541 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 00:16:59 ID:HbxzNqgB
佐々木って中学の時は風邪を引いたりしなかったのかな?
あったらキョンがお見舞いに行ってそう


544 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 01:30:24 ID:ADELmy2g
>>541
佐々木がハイテンションになるなw


545 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 01:34:48 ID:1kAXlC7p
>>544
アレだな、部屋に入ってきたのが母親だと勘違いしてキョンに普通に接しちゃうみたいな


549 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:00:46 ID:Y8zP0S0k
>>541
佐「やあ、キョン。来てくれたのかい。なかなかいい心がけだが早く帰ることを進めるよ。
  僕が罹ったのは流行性感冒、通称インフルエンザだ。薬を飲んでだいぶ楽にはなったが、
  症状が軽快後2日程度経つまでは感染を招く恐れがあるんだ。だが、君の心配してる顔を
  見ることが出来とは、病気を患うのも満更悪くもない物だね。とにかく僕は大丈夫だ。」

キ「テディベアに話しかけてどうするんだ。俺がいるのは反対側だぞ。」
  (こいつ、タミフル飲んだな・・・)


・・・いまいちだな


551 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:06:25 ID:9wkm+CLF
>>554
このテディベアの名はきょんなのだよ


552 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:12:47 ID:pFXih8gL
>>549
「ふむ、なんだか君と話していたら良くなったらしい
今なら、ほら。そこの窓から飛ぶことだってできそうだ」
 などといいつつ窓から大きく身を乗り出そうとする…ってまて
まさか佐々木の奴、本気でタミフルでも飲んでやがるのか!?

「な、まて佐々木、やめろっ!!」





「すまない、さすがに今回はおいたが過ぎたようだ
心の底から謝るよキョン、本当にすまなかった」
「ったく、マジで心臓止まるかと思ったじゃねえか」
「だが、抱きとめて止めてくれるとはいささか予想外ではあったがね、くっくっ」


553 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:21:16 ID:jhquuS6J
キョン「佐々木~、大丈夫か?」
佐々木「……ん~、まだちょっとダルいかも……」
キョン「そうか。まぁ、アレだ、無理するなよ。長引くと大変だからな」
佐々木「わかってるよぅ……」
キョン「わかってるよぅ……か」
佐々木「……?ん??……この声……まさか……」
キョン「その、まさかだぜ」
佐々木「えええええええっ!何で?どうして?」
キョン「いやぁ、今日の塾のプリント渡すの頼まれてな持ってきたんだよ」
佐々木「だからって……」
キョン「そしたらお袋さんに上がっていくように言われてな。まぁ、お見舞いだよ。
手ぶらだけどな。ははは」
佐々木「アーナルホドネー、ハハ、ハハハハ(お母さん……一言くらい頂戴よ……)」
キョン「あんまり長居するのも悪いし今日は帰るよ。じゃあな。」
佐々木「えっ、あ、あぁ、気をつけて。お見舞いありがとう(あ~キョン帰っちゃう~)」


554 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:21:42 ID:rib7i+QD
佐「きょーんーきょんきょんきょーーんーーー
  もーちょっと私の気持ちにきずいてもいーんじゃないのー?」

風邪でハイになっているササッキー
抱きしめられるテディベア(名前きょん)
見舞いに来て部屋に入ったものの気づかれないキョン
キ「(どうする?どうするよオレ!?)」


555 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:33:12 ID:i0IT1o4z
>>554

ライフカードを手に悩んでそうだなw

    |┃三             _________
    |┃              /
    |┃ ≡    _、_   < 話は全部聞かせて貰ったぞ!
____.|ミ\___( <_,` ) _ \     |┃ ≡   )   人 \ ガラッ


この続きを希望


556 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:34:30 ID:66WQTfR4
続きが読みたいものだな,と.
キョンの手にはどんなカードを持たせるべきだろうね


557 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:41:14 ID:wnx368h5
スルー、フラクラ、帰るの三択


558 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:47:32 ID:8CH+Jzl8
>>554
キョン「(俺は佐々木に圧迫死させたいと思うほど酷いことをしたのか!? 
お前がそんなにイラついてる気持ちに気づかなかった。すまん、佐々木!)」

フラクラってみた


559 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 02:50:29 ID:jhquuS6J
>>553の続き

母「調子はどう?」
佐々木「ん。だいぶマシになったよ。明日は行けそう」
母「そう、良かったわ。風邪は人にうつすと治るって本当ね~」
佐々木「ああああたし達はそんな事しししてないわよ!(そそそれって、キキキスって事?)」
母「あら、調子良くなったんでしょ?」
佐々木「でもでも、何もしてないよ!(でもキョンとだったら……)」
母「そうなの」
佐々木「そうよ」




母「ところで、私は風邪をうつす、と言っただけよ?何だと思ったのかしら?」
佐々木「なななな何でもななないわよ!おおやすみなさい!(またやってしまったああああぁ)」
母「おやすみなさ~い」ニヤニヤ

佐々木スレ7-409 キョンは僕をオカズにすることはあるのかい?

2007-05-11 | その他中学時代ss

409 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 06:53:42 ID:SO3UJtEK
「流れぶった切りで済まないが、キョンは僕をオカズにすることはあるのかい?」


410 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 07:34:15 ID:WHbIruiZ
「無ぇよ。つーか俺は親友に手を出すようなヤツに見られてるのか?
 だったらお前とは一度ジックリ話し合う必要性を感じるぜ。 
 それこそ一晩かけて俺の無害さと無実を証明してやる」


412 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 08:14:45 ID:5Sx8sZqF
>>409
「ボク?どんな食べ物なんだ?」


416 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 09:04:37 ID:6OwZ19Up
「女の子がそんなこと口にしちゃいけません!」
てな感じのどっかで聞いたことのある言葉を吐いた俺だったが、それでも取りすがって
くる佐々木のしつこさは、なんだろうね?
「その行為自体を非難するほど、僕は理解が無いわけでもないし、自分の容姿に
自覚が無いわけではないよ?ただね、君がどうしているかという、ちょっとした知的
好奇心という奴がむくむくと頭をもたげてきてね。もちろん、こんなことを他の男子
生徒に聞いたりはしないよ。君だからこそ、聞けるわけだしね、くっくっ」
あたりまえだ。情熱と妄想をもてあます男子中学生にそんな質問なんかしてみろ?
お前みたいな奴は、速効で暗がりに引きずり込まれかねないんだぞ?
「どうなんだい、キョン?君は僕や、あるいは他のクラスメイトでしたことがあるのかい?」
なんでこんな会話の流れになっているのか、誰かに説明して欲しいところだが、佐々木
の表情には冗談だけではない、幾分かの真剣さ覗いている。笑い話にさせながら、
できれば聞き出したいと思っているんだろうか?
「しない」
短く、簡潔に答えた。これで必用十分のはずだ。
「どうしてだい?」
じっと俺の目を見て聞いて来た。
だから、なんだよその幼馴染みの本心を今日こそ聞き出そうとするような表情は?
「・・・初恋の親戚の姉ちゃんの話はしたよな?」
佐々木が無言で頷く。
「その姉ちゃんで、その、してた。そしたら、姉ちゃんはろくでもない男と駆け落ちした。まったく
関係ないはずなんだが、俺がそれをしたからバチが当たったような気がした」
佐々木は無言だった。てっきり「それは非論理的だよ」ぐらい言うと思ったんだがな。
「で、まあ、しばらく時間がかかったが俺も気を取り直した。そのうち、クラスの中にちょっと可
愛いなと思えるような女の子が居た。別に告白するつもりなんてなかったんだが、その子で
したんだ。・・・そしたら、その子はある日突然に転校しちまった」
偶然だと思いたい。
が、二度も続けば俺の心に心理ブロックをかけるには十分だった。
「で、俺は身近な女性の使用を禁じたわけだ。好きかどうかも関係なくな。もし俺がすることが
原因だったら悪いからな。ま、そのうち、そもそも妄想の中で知り合いをどうこうすることが、人間
としてどうか?と思うようにもなったしな」
だから、しない。
「なるほど、君の過剰なまでの紳士ぶりには、そんな背景があったのか。くっくっ、なるほど」



こうですか?><


418 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 09:27:48 ID:krGEqPcB
「うん。キミの前歴については理解したよ。でもね、誤魔化さなくたっていいんだよ?キミ
も僕も健康な肉体を持つ若者なんだし、医学的にも正常な性的行為として認められるものだ
からね。自己申告に基づく統計だから正確な数値とは言いがたいが、男性の九割以上、女性
の八割程度が経験していると推測されている…つ、つまり僕も例外じゃないっっって考える
方が妥当であると言えない事もないと言うべきである方が妥当で…それに、行為に罪悪感を
持ったり抑圧を抱えることは、人格形成や性機能にも悪い影響を与え、より激しい性的倒錯
に至らしめる可能性も考えられる。キョン、僕はキミに、そういう人間になって欲しいとは
思わないんだよ。ほらほら、溜まっちゃったものはさ、どんどん解放しちゃったほうが、机
に向かう集中力も得られるってものだよね。というわけで僕としては、必要とあらばキミの
そういう対象になることには吝かではないと思っていて…も、もちろん僕のいないところで
お願いしたいとは思うけど、あのね、い、いいんだよ?え、逆効果?」

「…あのな、お前な、何もこんな場所でそんなこと力説しなくても…」

いくら小声で話してても図書館の中じゃ丸聞こえだろがいっ。


419 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 10:03:38 ID:Pbs3jzgz
>>416
>>418

「っつーか、そういうお前はどうなんだ?」
我ながら親友の女の子に何ということを聞いてるのかとも思ったが
そこは俺のプライベートを聞き出した代金の代わりということ許容されるだろう。
それに、その何だ。
別に俺も本気で佐々木が…その、一人でアレコレしてるのを聞いきたいワケじゃなく(本当だぞ)
ほんのイタズラ心で、佐々木の赤面したり焦ったりする女の子らしい、そんな一面を
見てやろうかなとかいう、本当にくだらない軽い気持ちだったわけだ。
「ほぅ…先ほどキミのことは紳士だと言ったが
 どうやら僕のその評価は改めなければならないらしいね。」
そういって喉の奥で殺したような独特な笑いを見せた。
「くっく…しかし、そうは言ってもキミから聞き出した手前
 僕だけ語らないというのはフェアーじゃない。」
あの、ササキさん、何を答えるか解ってるんですか?
っつか、ナンデソンナニ答エル気満々ナンデスカ?
「さっきも言ったように、僕はそういった行為自体を非難する気は無いし
 それに僕だって年頃の女だ、欲求不満に駆られることだってあるさ。」
少しは恥じらう姿を見れたりするかと思ったが完全に想定外だ。
できるなら今すぐ数分前に戻って俺の口を塞ぎたい気分だ。


続く…かどうか解らない。
中途半端なところでぶった切って反応を待ってみる。


420 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 10:07:05 ID:Y3+ki4yw
続けてくれる方が俺は嬉しいぜ(´・ω・`)


422 :419:2007/05/12(土) 10:33:38 ID:Pbs3jzgz
それじゃ、少し書いてみる。


423 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 10:48:09 ID:iq1XjJR8
ビーンボールの応酬は時として友情にヒビをいれかねない、と忠告しておくよ。くっくっく。
いや、僕としてはほんの牽制球のつもりだったのだが、手元が狂ってしまったようだ。すまない。若気の至りだ、謝っておく。
え、逃げたな、だって?心外だな。そもそも危険球ごときで謝罪をするのは日本独自の、NPBの慣習に過ぎないんであって(以下佐々木のメジャーオタクっぷりと日本の野球文化についての考察と批評)
・・・というわけで松坂のジャイロボールとはそもそも、ん?何を話してたんだっけ?
なっ、うまくごまかしたな、だって?・・・直球で来い、というわけか。
・・・いいよ。
君こそ逃げるなよ。
投げてもいいのかい?本当に?


426 :419:2007/05/12(土) 11:00:27 ID:Pbs3jzgz
「ところで、キョン。
 キミは僕に性的な意味でのパートナーは居ると思うかい?」
突然、恥じらいもなく答え始めたかと思えば急になんて事を質問してきやがる。
「でも、僕のことを聞きたいと言ったのはキョン、キミだよ。」
うぐ、そう言われてしまうと反論できん。
「それともなにかい、キミは僕がこの手の話題を話すことが出来ないと仮定した上で
 僕が恥じらったりする姿を見てみたいとか、そういう事を考えていたのかい?」
流石は佐々木、鋭い。
「もし、キミがそう考えたなら…世間的にはあまり誉められた趣味じゃないから
 可及的速やかに改めるべきだと進言しておこう。」
「そ、そんな事は考えてない。
 単純に聞かれたから聞き返してやっただけだ。」
少し声がうわずってしまったが、俺が答えたんだから的な
軽い気持ちで聞いたのは事実なので、この返答も100%嘘にはならない…よな。
「くっくっ…そうかい。」
対する佐々木はいつもの笑いをして短く返事をしただけだった。
「さて、話が脱線してしまったね。
 で、キョン、僕に性的な意味でのパートナーは居ると思ってるのかい?」
さっきの質問を繰り返してきた。
「恋愛は精神病とか公言する、お前のことだし…
 そんな男は居ないんじゃないのか?」
そう言う俺は答えながら妙にモヤモヤした気分になる。
「ご名答。」
佐々木の、その返事を聞いて妙に安心した気持ちになる。
一体どうしたっていうだろうね、今日の俺は。
「しかし、補足しておくと“恋愛”とかを抜きにして
 “性的な”意味でのパートナーの事を僕は言ったつもりだよ。
 俗に言われているセックスフレンドというヤツだね。」
随分とストレートに単語が出てきたな…。
「キミなら、そのくらいストレートに言わないと伝わらないだろう?」
に、してもだな、仮にも年頃の女の子なんだから
もう少しオブラートに包んだ言い方をしたらどうなんだ。
「くっくっ、善処しよう。
 さて話は逸れたが、どちらにせよ僕にそんな相手は居ない。
 なら欲求不満になったらどうする?」
「どうするって…お前……」
その先は言うのが流石に憚られる。
別に男友達と話している分には気にも止めないことなのだろうが
今、俺の目の前の相手は口調はどうあれ女の子だ。
だから、この言いにくいってのは何となくわかるだろ?
「くっくっ…いや失礼。
 答えにくい質問だったね。」
俺の心情を知ってか知らずか、佐々木は涼しい顔で答える。
「性犯罪に走るわけにもいかないからね。
 そうなると一人で荒ぶる気持ちを鎮めるしかない。」
そう聞いた途端、思わずよからぬ妄想をしてしまった。
「顔が赤いが、大丈夫かいキョン?」
「あ、いや…大丈夫だ。」
平常心だ、心を無にするんだ、俺。


とりあえず、書けたところまで。
PCからだと、人大杉とか言われて弾かれる…(´・ω・`)


431 :419:2007/05/12(土) 12:12:38 ID:/p6kVfx2
426の続き、行きます。
3レスほどで終わるかと。


432 :419:2007/05/12(土) 12:14:37 ID:/p6kVfx2
「流石に具体的に、どうやってるか迄は話さないが
 そこら辺はキミだって、健全な男子中学生だと思うし
 異性がどうやって一人でしているか全く知らないわけじゃないだろう?
 なので、ご想像にお任せするとしよう、くっくっ。」
そう言って小悪魔的に目を細めた佐々木は口を歪め、いつもの笑いを漏らした。
人のまばらな図書館の片隅のテーブル席で、俺の正面に座っていた佐々木は
疲れたのだろうか椅子と身体を真横に向けると大胆に足を組み直し上半身だけを俺の方に向けた。
「そして、いよいよ本題だね。」
片手で頬杖を付いた佐々木が俺の瞳を覗き込むように言う。
「そもそも、僕は何かを想像しながらする事はあまり無い方だ。
 だから、クラスメイトや知っている男子を想像することも殆ど無い。」
「…ん、今、殆どって……?」
思わず漏れた言葉。
佐々木でも誰かを考えながらすることはあるということなのだろうか。
「鋭いね、キョン。
 僕が敢えて無いと断言しなかったところに、よく気が付いたね。」
これでも俺は人の話は真面目に聞く方だからな。
「くっくっ、だからキミは最高の聞き手なんだよ、僕にとってね。」
「…いや、それより…」
俺は佐々木に性的な対象にする人物が居ることに驚くと同時に、さっきのモヤモヤが再び溢れてくるのを感じた。
「…誰だか気になるかい?
 でも、それは流石に秘密だよ。」
そういって頬杖を崩し、その手の人差し指を唇に当てた。
絶対に答える気はないということだろう。
「でも、そうだね…僕の近くにいる人物、とだけ言っておこうか。」
「え…」


433 :419:2007/05/12(土) 12:18:18 ID:/p6kVfx2
「あぁ、勿論、ちゃんと人間の男の子だ。
 僕に特殊な趣味はないよ。」
何を勘違いしてるのか佐々木が補足してきた。
別に俺はノーマルだし佐々木の事もノーマルだと思ってる。
余計な補足だ。
それよりも気になることがある。
「でも、それって、お前…そいつのことが」
何となく、言葉が途切れ途切れになってしまう。
「どうだろうね?
 単に性的な対象としてみているだけなのかも知れないし
 もしかしたら、彼に好意を寄せてるのかも知れない。」
「でも、恋愛は精神病の一種とか言ってなかったか?」
「そうだね、恋愛は精神病の一種って考えは変わらないよ。
 だから、僕自身にも何で時たま彼が頭に浮かぶのかが解らない。
 もしかしたら、心の底では彼と結ばれることを僕は望んでいて
 表層では否定している恋愛という精神病に既に冒されているかも知れない。」
俺は何も答えることは出来ない。
「でもね、恐らく彼は気付いてないし、僕もそれを望んでる。」
そういう佐々木の顔は、どこか淋しい影を落としているようだった。
「お前…告白しちまえば良いのに。」
なんで、そんな言葉が出たんだろうね。
「そんなつもりはないさ。
 今の僕は恋愛なんて精神病に冒されている暇はないしね。
 それに僕と彼との距離は今くらいが丁度いい。
 告白によって今の彼との関係を崩したくはないんだよ。」
そんなもんなのか。
「そんなもんだよ。
 …くっくっ、要らぬ事まで喋ってしまったようだね。」
「……。」
知ってはいけない佐々木の秘密を知ってしまったみたいで
俺はというと何も言うことが出来ず、ただただ閉口するしかなかった。
「安心したまえ、僕が今すぐ誰かと駆け落ちしたり
 キョン、キミの前から消えてしまったりすることはないさ。
 僕としてもキミという最高の聞き手であり、親友と離れるのは辛い。」
「安心って、何のだよ…」
「くっくっくっくっ…さぁて、何だろうね。」
そう答える佐々木の顔は、まるでイタズラに成功した子供のように
どこまでも屈託のない笑顔だった。


434 :419:2007/05/12(土) 12:18:58 ID:/p6kVfx2
図書館を出ると、辺りは既に一面闇夜に包まれていた。
閉館時間まで図書館に居た俺と佐々木は、あの後
当初の目的であった勉強に戻り、俺はといえば
相変わらず佐々木に付きっきりで難解な数字と文字が
延々と続いている数学を教えて貰っていた。
「…真っ暗だな。」
自転車を自転車置き場から取ってきた俺は図書館の出口で
待っていた佐々木に声を掛けた。
「そうだね。」
「自宅まで送るから、後ろ乗ってけよ。」
そういって、自転車の後部を指しながら佐々木に言った。
「くっくっ…助かるよ。」

「なぁ、佐々木よ…」
帰り道、自転車に佐々木を乗せた俺は夜道を快走しながら
後ろに居る佐々木に声を掛けた。
「なんだい?」
「図書館の話…他の男の前では言うなよ。
 お前は無防備すぎだ。
 お前、自分の話で欲情した輩に襲われるかも知れないぞ。」
「それは僕のことを心配してくれているのかい?」
「当たり前だろ、親友なんだから。」
何故だろうか、俺の腰に回す佐々木の腕に一瞬力がこもった気がした。
「…安心したまえ。
 あんな赤裸々告白、キミ以外の前では話すつもりは無い。」
「そうか。」
「あぁ。」
そういうと佐々木は額を俺の背中に押しつけてきた。
「いや、すまない。
 少し疲れてしまったようだ、寄りかからせてもらうよ。」
「好きにしろ。」
俺は佐々木を自宅に送り届けるためにペダルを踏み
月明かりと街灯に照らされる住宅街の道を駆け抜けた。


436 :419:2007/05/12(土) 12:24:17 ID:/p6kVfx2
以上です。
先に謝っておきます、色々とごめんなさい。
特にえろぃの期待してた方、ごめんなさい。

120%、ノリと勢いだけで書きました。
数年ぶりにSSなんて書いたし、しかもハルヒシリーズのは始めてだし…。
あー、しかもこれ、佐々木SIDEを書かないと佐々木が可哀想に思えてきた。
ぐぁ…何か投稿した後で、スゲェ後悔してきたわw

ネタを提供して戴いた>>409、>>410、>>416、>>418
それから読んで頂いた皆さんに最大限の感謝を。

ども、失礼しました。


576 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 09:22:53 ID:H+JYrN0J
あああああ何であんなことを言ってしまったんだろうか。ちょっと興味が先走ってしまっ
たとはいえ、結局はまたしても私に対する「変な女」の称号に箔をつけてしまっただけで
はないか。彼が比較的冷静な聞き手でいてくれたことには、何しろ感謝しなければならな
い。それでも本当は、私はもう少し別の展開を期待していたような気が…ってどんな展開
をだよ、私。などというとりとめのない考えがストレンジアトラクタに囚われ、結局抜け
出せなくなってしまう。いや、そんなことをしてる場合か。するとさっきから格闘してい
た数式の中に、気がつくと妙な変数が紛れ込んでいる。彼の名を持つその謎の変数を見つ
けて愕然とした私は、筆記具を投げ出し、机に突っ伏した。っだああー、こんな場所にま
でキミが顔を出してくるなんて、よほど僕は重症のようだね。こんなの、解けるわけがな
いだろうが。なんとなれば、全てはキミのせいだよ。キミのせいだ。今すぐ解決を求める。
解決。一時的に役割を失った指先は、しばらく机の上でタップダンスなどを踊っていたが、
すぐに新しい役割を求めて腿の間に滑り込んで来た。うぅ。僕にこんなことまでさせると
は、キミはやはり許しがたい男だ。そして普段の私に似つかわしくない思い付く限りの彼
に対する罵り言葉を動員し、罪悪感のスパイスとしてたっぷりふりかけると、指先の動き
がさらに別の意味を帯び始めた。私ってやっぱり、変態。うわ。自分で自分を言葉攻めか
よ。きゃー。このド変態。等々。もちろん自室には私以外の誰もいはしないけど、上気し
た顔を誰かに見られてしまうような気がして、机に臥せた頭を上げることができない。ゆ、
許せ~。今、僕はキミのイメージと格闘している。むしろキミの前でなら、見事散ってみ
せよう。って、あれちょっと待ていくらなんでも、散るの早いよ私。すぐに私の大好きな
瞬間がやってくるけど、慌てて爆発を小規模に抑えることで、第二第三の波を待つ態勢に
入る。なーんか、こう見えても私、この道6,7年くらいかなー。ちょっと早いんじゃな
い? ってクラスメイトに笑われたりもしたけど、そんな、あんたみたいに月に何回もし
ないのよっっ、ていうか、そんなことを聞いて来るなんて、あいつらどういう了見? あ
っ、でもそれって、さっきの私? わわわわー!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさ
いこの際だから何でもするから、こう? それともこんな感じ? んもうっ。キミも悪い
子なんだからっ☆じゃ今日は特別

コンコン

ドザッ

「あれ? 寝ちゃったの? もー、電気ぐらい消しなさいよね」

カチ バタム

…お、俺の屍を…越えて…ゆけ orz


>>436

佐々木スレ7-399 「カミナリさま」

2007-05-11 | その他中学時代ss

399 :カミナリさま 1/5:2007/05/12(土) 03:43:17 ID:e3JPxhor
 9月、暦の上では秋なれど、残暑は未だに厳しい。あまりの暑さに机に突っ伏す中学三年の
俺だった。机の輻射熱で返って暑いな、こりゃ。
「キョン、英語では今日のように暑い日をドックデイズと言うそうだ。キミの態度を見るに、
それは極めて妥当な表現なようだね」
 隣に座る佐々木はいつものようなすまし顔、考えてみれば、この夏、こいつが暑さでへばっ
ている所など見たことはなかった。こいつ一体どんな身体構造をしているんだ。もしかしたら、
宇宙産のアンドロイドか何か何じゃないだろうな。
「キミは夏は好きなのではなかったのかな? そんなことでは夏好きが廃るとは思わないのかね」
 残念でした。暦の上ではもう秋だ。
「うむ、確かに。立秋から立冬の前日までが秋だね、だから今年の秋は8月7日から11月6日
までだ」
 そりゃほとんど夏の盛りからじゃないか。
「うむ、だから、立秋以降に出すのは暑中見舞いではなく、残暑見舞いだ。間違えないように
しなければいけないよ。まぁもう今年は暑中見舞いも残暑見舞いも出すことはないだろうが、
来年以降の時のためにも覚えておきたまえ」
 俺は一生そんなモノを出す機会はないように思うがな。しかし、暦ってのは実感とは離れて
いるもんなんだな。
「言いえて妙だね、さすがはキョンだ」
 もういっそのこと、セミが鳴いている間は、夏ってことにすりゃいいんだ。
「それもまた、風流な暦法だね、悪くはないね。だが、生活する場所や時期に左右されすぎる
のが問題だね」
 まじめに返すなよ。また、暑くなってきた。
「僕はいつだって、どこだって、キミの言葉はきちんと聞いているつもりさ。キョン、キミと
の会話は僕にとってインタレスティングだ。そして君の言葉はサジェスチョンにあふれている、
一言たりともおろそかにはできないさ」
 そういう俺は、お前が何をいいたいのかすらわからんのだがね。
「気にしないでくれたまえ。僕の言葉なんて、小難しいだけの戯言の類さ。もちろん、キミに
対して虚言を弄するつもりはないから、その点は安心してほしい」
 日本語で言えば、わかるとでも思ってるな、お前は。
「おやおや、英語も日本語も通じないなら、僕はキミにどんな言葉で話しかければいいんだろ
う。もしかして、ドイツ語かスワヒリ語ならOKかな? それとも、僕は今、遠まわしに絶交
されてしまったのだろうか。これは、正直、悲しいね」
 泣きまねかよ、俺に対する周囲の目が冷える。
「はいはい、ごめんなさい。意地悪言いました」
 半ば自棄になりつつ、声高にそういった。返答はくつくつといういつもの笑い。
「やや、失敬。意地が悪いのは僕の方だったね、まったく僕という人間は基本的に卑怯にでき
ているからね、申し訳ない」
 言われてみれば、そうかもしれないな。
「キミ、ねぇ、今のは否定する所だよ。友達甲斐のないことこの上ないね」
 その切り返しの早さは一体どこの通信教育で学んだんだ。
「そりゃあ、キミからさ。キミのリアクション能力の高さを僕は評価しているのだ。尊敬して
いるとすらいってもよい」
 そういって、佐々木は止めのように、微笑を返した。
 犬のように舌を出して、暑さを耐え忍ぶ俺なのだった。


401 :カミナリさま 2/5:2007/05/12(土) 03:46:33 ID:e3JPxhor
 その舌を一陣の風が通りすぎる。湿った空気の中に雨の匂いを嗅いだ俺は、教室の窓を振り
仰いだ。すると、一天にわかにかき曇り、ゴロゴロと雷様がやってくるではないか。おお、なんと
見事な積乱雲か。これは一雨来るね、通り雨であってくれよ。俺は今日は傘持ってきてねえの
だ。置き傘はこの前の雨の時に使ってしまい、未だに補充を怠っていたのだった。
 その時、笛を鳴らすような音が聞こえた。思わず、振り返る。珍しく佐々木が顔色を失い、
強ばった表情を見せていた。どした?
「い、いや、なんでもないのだ。気にしないでくれたまえ、あ、ほら、先生がいらっしゃったよ」
 汗を拭き拭き、担任の教師がやってきて、帰りのHRがはじまった。


 放課後になり、雨は本格的に降り始めた。遠くの空では一条の光。はい、1、2、3、4、
ゴッシャーン。おお、なかなか近くなってないかな、これは。
「ひゃああああああ」
 情けない悲鳴と、木箱をひっくり返すような音。振り返ると、佐々木が下駄箱で転んでいた。
何をしているんだ、お前は。パンツ見えてるぞ。もちろん、そんなセクハラまがいのセリフは
おくびにも出さずに、明朗に声を掛ける俺である。
「おお、佐々木、探したんだぜ。須藤も国木田もあっという間に帰っちまってな、ちょっと難
儀してたんだ」
 バタバタと立ち上がり、スカートを直して、平静を取り戻す佐々木である。もちろん、俺は
さっきの風景など、すでに脳みそのゴミ箱に叩き込んでいる。
「な、なんのことだろうか、さ、さっぱりわからないね。しかし、今日は塾の講義のある曜日
ではないはずだが、どうした風の吹き回しかね」
 確かに今日は塾の日ではない。よって、別段、佐々木と一緒に下校する必要はないわけだが。
「なるほど。目当ては僕のこの折りたたみ傘だね。キミは傘を持っていないというわけだ」
 うむ、持つべきは、カンの良い友人であることよ。悪いが、家まで入れてくれんか? 何なら、
我が家で一時の憩いの時間を提供するのもやぶさかではない。
「ふむ、それは魅力的なお誘いだね、いいだろう。僕の傘は折りたたみで多少狭いが、僕らの
頭くらいなら多少は保護できるだろう。ここでキミを見捨てて、キミが風邪を引くような事があっ
ては、寝覚めが悪いしね」
 では、契約成立だな。家にて、バスタオルと、コーヒーを提供しよう。俺はそう言いながら、
佐々木に右手を差し出した。佐々木はそっと、傘を差し出す。言っておくが別に強奪している
わけではないぞ。俺の方が身長は高いのだ。俺が傘を持つ方が効率的というものだ。

 降りしきる雨の中を佐々木と共に歩く。
「これだけ激しいと、止むのを待った方が早かったかもしれないね」
 佐々木が声を掛けてきた。どことなく、声が震えているようにも感じる。
 佐々木、身体の調子が悪かったりするか?
「いやいや、僕は至って、普段通りだよ、何ら不調は、ない」
 そうか?
 佐々木が傘の柄を押した、押し返す。
「キョン。キミが優しいのは知っている。ただね、僕に気遣いは無用だよ。傘はちゃんと直立
させたまえ、キミのシャツはもう濡れているじゃないか」
 風のせいだよ、そんで、雨粒が俺の方に吹き込んでくるのだ。
 そう答えた、瞬間。すっと、自然に傘を持った俺の左腕に佐々木の右腕が絡みつく。瞬間、
肘に寄せられた感触に俺の左腕は総毛立った。い、今のは……もしや。
「キミは素直でないなぁ。これなら傘を直立させざるを得ないだろう。この体勢なら、
僕もキミも傘の恩恵を享受できるというものだ」
 いや、そうは言ってもだな、佐々木よ、さっきから俺は動きが固くなっているのが自分でも
解ってしまうくらいなのだがね。その、男の本能を……持て余す。
「気にするな、僕は気にしない。それに、キミは紳士だろう、キョン」
 佐々木はそういって、舌を出した。
 おいおい、お前さん、俺が気が付かないとでも思ってるのか、佐々木の右腕は、ほんのかす
かに震えていた。夏服が半袖でなければ、気づかないであろうほど微細に。


402 :カミナリさま 3/5:2007/05/12(土) 03:49:17 ID:e3JPxhor
 そんな俺の困惑を余所に、俺たちは我が家に向けて順調に移動していった。あと、数分で到
着、そんな時に事件は起こった。

 ドン!!

 爆発したような、音が響き、視界が真っ白になる。うおお、あぶねー、至近弾かよ。
その瞬間だ、左を歩く佐々木が鞄を落とし、腰からふらついた。腕を組んでいるのだ、俺も引
きずられ半ば転びそうなところで、やっと踏みとどまった。
「おい、大丈夫か、佐々木。おい」
 佐々木に声を掛ける。
「ふぇぇええ、こわいよ、雷こわい」
 なんということか。佐々木は泣いていた。腕を解いて、濡れたアスファルトの上にびしゃり
と尻餅をついて、マジ泣きである。
「おいおい、こんなとこで座り込むなよ」
 泣きじゃくるだけで、答えない佐々木。マジに雷、怖がっているのか、何事にも動じない、
自制心と冷静さの化身が。
「ほら、行くぞ。早く家に帰ろう」
 ふえ、とばかりに涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げる佐々木である。
 こんなところじゃ危なくて仕方がない、歩けるか、そう問いかけると、ぶんぶんと勢いよく首を振った。
 こりゃだめだ。天を仰いで、嘆息する俺なのさ。本当に仕方ねぇな。
 佐々木に傘を渡し、その前にしゃがみ込む。ほら、オンブしてやるよ、傘は、お前持て。
そう、声を掛ける。
 しばしの逡巡の後、首に佐々木の両手が回り、背中に佐々木の決して重くはないが、羽根の
ように軽いとも言えない体重が掛かる。それを確認して、鞄の持ち手を口にくわえこむ。教科書、
机に入れっぱなしで助かった。
「ほが、いくご(じゃあ、いくぞ)」
 鞄に歯を食い込ませつつ、立ち上がる。もはや、ふたりとも全身びしょぬれである。傘が何
の役の立つのかとも思ったが、背の佐々木は律儀に、俺の頭の上に傘を広げていた。
 さて、歩き始めて、俺は再び男の本能を持て余すことになる。……仕方ないだろ、なぁ。
両手には佐々木の太ももの感覚が、背には押しつけられた佐々木の上半身の感触が、
濡れた薄いYシャツとブラウス越しにほとんどダイレクトに響いてくるのだ。
 これで、何も感じないなら、俺はチベットの高僧の生まれ変わりに違いない。もちろん、そ
んなことはないのだ。俺は平々凡々たる男子中学三年生、14歳。異性のアレやらコレやらが気
になるお年頃なのである。おまけに首筋当たりからは佐々木のつけているデオドラントスプレー
かコロンか、さわやかな、シトラス系の香りが漂ってくる。あーー、やばい、細かく描写して
る場合じゃないかもしれない。
 口がふさがってしゃべれないのをいいことに、前屈みに(オンブしているからだぞ)早足に
なる俺なのだ。


 あまりにも、甘美な拷問の時間が通り過ぎ、俺は玄関前の三和土にゆっくりと佐々木を降ろ
した。鞄を口から落とし、玄関の鍵を取り出す。どうやら、お袋も妹も帰ってはいないらしい。
助かったという気分が七割、困ったなが三割だ。
 もう、大分落ち着いたのか、佐々木は折りたたみ傘を畳みながら、俺の手元を見ていた。
 くしゅん、小さなくしゃみが、佐々木から漏れた。やばいな、風邪引いたか?
 玄関のドアを開け、佐々木を我が家に招き入れる。濡らしては不味いと思っているのだろう、
佐々木の動きは玄関の中でぴたりと止まった。…………どうしよう、やっぱ不味いよな。だが
なぁ、これは仕方のないことだ。


403 :カミナリさま 4/5:2007/05/12(土) 03:53:02 ID:e3JPxhor
「佐々木、いまバスタオル取ってくる。そしたら、お前、シャワー浴びてこい。そのままでは
風邪を引いてしまう」
 さすがに、この展開は予想しなかったのだろう、佐々木は顔を上気させ、「いや、お構いな
く、そこまでキミに甘える訳にはいかないよ」手振りコミで、大げさに断わる。
 何言ってるんだ。俺を送って貰って、お前に風邪でも引かれようものなら、俺の寝覚めが悪
くなる。それに俺もさっさとシャワーを浴びたいのだ。お前を放っておいて、そんな事をする
わけにもいかない、俺は着替えられるが、お前は濡れ鼠のままになってしまうのだからな。
 な、結局のところ、これは俺のためなのだ。だから、遠慮しなくていい。
 俺は佐々木の返事を聞かずに、廊下を濡らしながら、洗面所に駆け込んだ。タオル入れから、
清潔なバスタオルを3枚取り出し、1枚は頭から被った。湿った音を立てる靴下を脱ぎ、この
間、お袋が大枚はたいて買った、斜めドラム型全自動洗濯機に叩き込む。
 なにをぼーっとしてるんだ。早くあがれよ。
 玄関先にしょんぼりと佇んだままの佐々木にバスタオルを2枚渡す。佐々木は1枚を俺と同
じように頭から被り、もう1枚で手足を拭いた。
「いや、濡れた足で歩いて、廊下を傷めてはいけない。あと、古い新聞紙を持ってきてくれな
いか、靴を乾かしたい」
 居間にとって返して、古新聞を1部持ってくる。俺がやって置くから、お前はシャワーを浴
びてこい、そこを左に曲がったら洗面台と風呂場だから。
「何から、何まで、すまないね、本当に」
 いいよ、言いっこなしのお互い様だ。ばわっくしょい、くしゃみが俺の口からも漏れた。
やばい、俺も早く着替えないと。
「キョン、早く着替えて来たまえ、それから、僕はキミを信頼しているからね。不埒なことを
してはいけないぞ」
 しねぇよ、さっさと行け。
「少しは悩みたまえよ。友達甲斐のないことこの上ないね、そんなに僕は女性としての魅力に
欠けているかね」
 な゛っ……絶句する俺の視界から、艶やかな微笑を浮かべた佐々木が消えた。な、何を考え
ているんだ……わからない。ぶわくしょい、やばい。身体冷えてきた。乱暴に新聞紙で俺と
佐々木の靴を包むと、俺は自分も着替えるべく、自室に戻った。


 上から下まで、乾いた衣服に着替え、俺はやっと人心地着いていた。乱暴に頭をこすり、
気分を切り替える。タンスをひっくり返して、冬用のスウェットの上下を取り出した。下着は、
どうしたモノだろうか、妹のではサイズは合わないだろう。お袋……さすがにお袋のタンスを
ごそごそとやって下着を取り出すというのは、俺の羞恥心を超えた行為だ。まぁ、その点は
我慢して貰うより他はない。
 そう、決意して、脱いだ制服ひとまとめと、スウェットをもって、風呂場へと向かった。
「おい、佐々木~、着替え持ってきた。今、中に入っても大丈夫か?」
 洗面台の前の引き戸は閉じていた。辺りに漂うお湯の匂いとシャワーの水音からから、佐々木
が風呂場の中にいるのは解っている。
「あ、ああ、キョン。やっぱり、覗きに来てしまったのかい。まったく、いけない男(ひと)だね」
 覗かねえよ、目を閉じるよ。
「いまなら、大丈夫さ。すまないね、本当に」
 もう、いいよ。冬用のスウェットで悪いんだけど、確実に洗濯していて、俺が手を通してい
ないのがこれしかなかった。出口の所に置いておく。
「ありがとう、恩に着るよ」
 中には、佐々木の匂いがお湯の匂いに混じって漂っていた。きれいに畳まれた、佐々木の
制服が目に付いた。スカート、ブラウス、リボン、靴下という順番で積み重ねられている。
いや、なんか、その、ドキドキするな。その隣に、スウェットとを置く。持ってきた自分の制服
その他はそのまま洗濯機に叩き込んだ。


404 :カミナリさま 5/5:2007/05/12(土) 03:55:32 ID:e3JPxhor
 さて用も済んだ。コーヒーでも淹れよう。そう思って、立ち去ろうとしたその時だ。
「ねぇ、キョン」
 呼びかけられて、ついそっちを向いてしまった。……心臓が、高鳴る。
 磨りガラスには、佐々木のシルエットがはっきりと映っていた。細身ながら、奇麗なライン
を描く肉体が……。
 慌てて目をそらす。な、なんだよ。シャワーの水音が扇情的に耳を叩いた。なぜだか、喉が
渇く、舌が口蓋に張り付きそう……だ。
「ねぇ、キョン。だらしのない所を見せて、すまなかったね。僕は、その……」

 ガラピッシャーン!!

「きゃあああ!!」
 がちゃ? ってぎゃああああaaaa!!!11!!1!

 俺は風呂場から、飛び出してきた佐々木に抱きしめられていた。もちろん、佐々木は、その、
すっぽんぽん、生まれたままの姿である。
 ……正直、堪りません。

「も、もうやだあ」
 そう言いたいのは、俺の方です、佐々木さん。天井を見上げ、両手をゾンビのように宙ぶら
りんにしながら、俺は日本史の年号を暗記していた。ナクヨウグイスヘイジョウキョウ。

「す、ぅぅぅ、すまない、キョン。す、すぐに退く。だから、目を閉じてくれたまえ」
 わかっている、わかっているから、早く自分を取り戻せ、佐々木。それからお願いだから、
それ以上は腕に力を込めないで。

 ドンガラピッシャーン!!

 はい、来た。三度目の正直。

 佐々木はぎゅうっと、俺に身体を押しつけてくる。その胸の下辺りに、柔らかい感触が、
ああ~~~~。お父さん、お母さん、ごめんなさい。あなた達の息子は、今、人であることを
止めようとしています。

 …………だけど。
 佐々木はガタガタと子供のように震えていた。本当に、怖いんだな。
 それに気が付いた。

 俺はそっと、両腕を佐々木の背中に回して、ぽんぽんとあやすようにゆっくりとさすった。
大丈夫だから、俺はここにいるから。そういう気持ちを込めて。
 ゆっくりと、ゆっくりと、不思議と俺は平静を取り戻していた。しばらくそうしていると。
「今日は、本当に、なんというか、だらしのない姿ばかりを見せてしまっているね。申し訳な
いが、今日のことは忘れてくれたまえ」
 ゆっくりと、頷く。これはお前の見せたい、お前じゃない、まぁそのくらいは分かるさ。
忘れろというなら、そうする。ちょっと、惜しいけどな。
「すまないが、もう少しだけ、こうしていて欲しい。もう少しで、落ち着くから、いつもの……
キミの知っている“僕”に戻るから」

 ああ、大丈夫。こんな役得なら、もう少しどころか、ずっとでもいいくら?

 ガチャリ、たっだいまーーー。ひゃ~~い、びっしょぬれだよう。シャワー、シャワー。

 しまった、く、来るなー、マイシスターーーー!! さ、佐々木ぃい。
「いや、すまない。まだ、腰が、抜けていて。その、動けない」


 その後の悲劇については、語る必要はないだろう。妹を口止めするために、俺のなけなしの
小遣いが月初めにほとんど木っ端微塵に吹き飛んだことだけはお知らせしておこう。


405 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 03:56:18 ID:e3JPxhor
これでおしまい。
ふぅ、あぶなく地下スレにいくとこだったぜ。ありがとう、妹ちゃん。それからこれ以上はやばいって、佐々木さん。

ああ、佐々木、可愛いよ佐々木。

佐々木スレ7-327 黄金のスペクトル

2007-05-11 | その他中学時代ss

327 :黄金のスペクトル・1:2007/05/11(金) 19:31:05 ID:rnBsWygv
人間てのは単純に出来てるもんで、とりあえず皆でわっしょいと運ぶ神輿があれば
それに一も二もなくとびついてしまう性質のようだ。
給食が終わった昼休みの教室、俺のような健康優良男児はことごとくが眠りについているころ、
寝る間も惜しんで四方山話に花を咲かせる物好きな面々にはなんというかいろいろな意味で
尊敬の念を禁じえないが、その話題のトピックスはというとこれが驚いた事にまだ一週間も先の、
しかも体育祭なんて暑っ苦しいモンだというからビックリだ。
何だってそんな夢中になれるのかね。それも女子連中まで。
「それはきっと、例のジンクスのせいだろうね。」
なんだ、いたのか佐々木。なんだ、ジンクスって。
「いたのか、とはひどい言い種だねキョン。
格言にもあるように、特定の外国人から見れば他人行儀に過ぎるのではないか、と
少なからず思われるほどの礼儀を尽くすのがこの国のスタンダードであるのではないかな。
それがたとえば親兄弟、ひいては恋人関係にある異性に対しても、だ。 
くっくっ、言葉は時に残酷だと覚えておきたまえ」
なんだそりゃ。ジャーナリスト宣言か。
……いつになく礼儀に関して滾々と語る佐々木に多少気圧された俺だったが、話が中世ヨーロッパの宮中愛にまで及びかけたところで
佐々木には悪いが話題の軌道修正を図る事にした。
「しかし、いったい体育祭のどこに女子連中が喜びそうなネタがあるってんだ」
女子の話題といえば大体がJ-POPとか、服とか菓子とか、
じゃなかったら誰と誰がくっついたとかいう色恋話じゃないのか? 
そういうと、佐々木は片方の眉だけを皮肉げに持ち上げて
「くっくっ、キミはどうやらひどくたちの悪い偏見に取り付かれているようだ。
彼女らに言ってみたらさぞ気分を害する事だろうね」
そうなのか? まあ俺も話題が豊富なのかって言われたら答えはYESと言いにくいからな…
それに良く考えたら、ここに話題が豊富なうえ、少なくとも色恋にはとんと興味のないやつがいたんだった。
「…そうだね。ところでさっきキミのことを偏見に毒されているといったが、
実はさっきのキミの推論は相当いい線をいっていたといえる。
僕らぐらいの年の少女がするであろう会話の内容についてだ」
なんだよ、やっぱり俺の見立ても100%ハズレってわけじゃなかったんじゃねえか。
「そう、そのとおりさ。しかしそこかしこで女子生徒たちが噂しているものだから、
少しくらいはキミの耳に入っているかと思ったんだがね。本当に男子の間ではマイナーなジンクスのようだ」
「…なんかさっき俺が言ったことと結びついてこないんだがなぁ。
体育祭のBGMは放送委員会が早々と決めちまってるし、服なんかみんなジャージだろ。
菓子を持ってくるのは……そりゃ遠足だしな」
「くっくっ、キミは本当にナチュラルボーン・エンターテイナーだな。いやはや、狙ってやっているとしてもたいしたものだ」
「…なんか、バカにされてないか俺」
「さあて、ね。ところで、当初の話は体育祭のことなんじゃなかったかな?」
そうそう、そうだった。いったいそりゃなんの話なんだよ。
「答えは当然、最後に残った恋愛の話さ。時にキョン、キミはフォークダンスの存在を覚えているかな?」
あ~…そういえばそんなのがあった気がするな。
昼飯が終わったころに、確か学年ごとに分かれて、抽選で当たった奴が好きな曲をかけて…
去年は三年生でスラッシュメタルをかけた大馬鹿者がいたとか何とか。
「そう、キミの若年性痴呆を疑ったのはどうやら杞憂のようでなによりだ。
しかしそのBGM云々のところはさして重要ではないのだよ」
じゃあなにが大切なんだよ。なぜか今日の佐々木はいつもにも増して話が回りくどい気がする。
「陳腐な言い方をすれば、縁結びってやつだよ」


328 :黄金のスペクトル・2:2007/05/11(金) 19:34:28 ID:rnBsWygv
「縁結び?あの、お守りとかのか?」
「そう。何でも古くから伝わるうわさで、ちょうどフォークダンスの音楽が止まったときに踊っていたパートナーとは、
恋愛関係に発展するというひどく難解極まりない内容だ」
なんじゃそりゃ。音楽終了のときって、ピンポイント狙撃もいいとこだろ。
スイス銀行に振込みの容易をしなきゃならんのじゃないか? そんなどこぞの怪しい集団結婚式もどきを学校でやるってのか。
俺がなんとコメントをしたら良いか迷っていると、佐々木は本日何回目かわからない笑いを洩らして、
「くっくっ、別に学校側がそんなデマゴーグを流布して回っているわけではないさ。
まあ、噂の存在自体は把握しているだろうが」
と、本当におかしそうに言った。しかしなんとまぁ、樹齢ウン十年の古木の下で告白するとか、
葉っぱが落ちるまでとか、オカルトな札に願い事を書くとかそういうのなら正直わからないでもないが、
泥臭いフォークダンスとはね。これはちょっとばっかしムードに欠けるんじゃないか? 
ロマンスという言葉の意味を辞書で引いてみろってんだ。
「キミがロマンとは、これはまたなんとも似合わない言葉もあったもんだね」
ほっとけ。元はといえばお前が『恋のおまじない』なんて話をするからだろ。
そっちこそ似合ってないなんてもんじゃないぞ。
「辛辣なもんだね。思いやるのも円滑な人間関係を築くのには大切な事さ」
どうした事か、佐々木はわずかに、本当にわずかに眉をしかめて薄い唇を突き出していた。
「大体俺にはあんまり関わりのないことだしな。あれは任意参加だろ」
「キョン、キミは出ないつもりなのか?」
「ん? そりゃそうだろ」
出てどうなるもんでもないしな。そう思って俺は適当な返事をした。
しかしなんだって、佐々木はこの話題をこんなに引っ張るんだろうか。
俺が真面目に聞いてないと、早々に話を切り上げてしまう奴なのに。
「おやおや、無欲な事だね。キミにはここぞとばかりにアプローチしてみたい相手はいないのかな?」
「そういうのは信じないようにしてるんだ」
呪い占朴の類は、宇宙人や未来人と一緒に、幼きころの日々に置いてきてしまったんでね。
「それにうかつにしゃしゃり出て、恋愛に興味のないどこかの誰かさんとでも組んだりしようもんなら、
一生結婚できない呪いとかかかりそうだしな」
「……キミはもう少し、行間と感情の機微を読むという事をしたほうがいいな」
佐々木はなにやらかみ合わない言葉を投げかけると、なぜか怒ったような顔をして向こう側をむいてしまった。
おーい、目あわせて話しろって。
その日佐々木は珍しく用事があるとかで塾へ行くときも帰るときも、俺とは別行動だった。



そしてついに体育祭当日。
俺の所属する組は敵と抜きつ抜かれつのデッドヒートを繰り返していたが、俺にはさほど興味はなかった。
いやもちろん、自分が出場する種目に関して手を抜くという事は決してなかったが、
他の連中のようにチームの勝ちイコール自分の勝ちだなんて単純には考えられず、そのため積極的に競技を見ようとも思わなかった。
応援に声を嗄らすクラスメイトの中で揺られながらそれとなく佐々木のほうを見てみると、一瞬視線が交錯した後、向こうがあわてて逸らした。
……こっちをみてたのか? どうも先週、正確に言えばあのフォークダンスの話をしてからあいつの様子が変だ。
しかもほぼ時を同じくしてクラスの女子連中は揃って俺を親の敵でも見るかのような目で見てくるしな。
やれやれ、いったい俺がなにをしたっていうんだろうね。
そして2度の出場、無数の居眠り(未遂)を経て、昼休みがやってきた。


329 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 19:38:17 ID:rnBsWygv
おそらく件の噂に関してだろう、所かまわずキャーキャーと黄色い声で騒ぐ女子一同を尻目に、俺は裏庭へと歩いていった。
何でそうしたのかはよくわからない。
お手手つないで踊るのにそれぞれ違った形で過剰に反応する男子と女子両方が気に入らなかったか、
あるいはその中にあるはずのひとつの顔が昼休みになったとたん見えなくなったからかもしれない。
仲良く並ぶ体育館とプール、その裏側をずんずんと俺は進んでいった。
そして、ずいぶん喧騒が遠ざかったように感じられるようになったところ、もう誰も手入れするものがいなくなっているらしい
ボロボロの学級菜園の縁に、そいつは、いた。

「…きょん?」

間の抜けたとしか言いようのない、まったく持って似つかわしくない声をそいつは発した。

「ダンスはやめにしたのか?」

話しながら隣に座り込むと、佐々木はわずかに身をよじって俺との間をあけた。
おいおい、そんなに露骨に避けなくてもいいんじゃないか佐々木さん?

「…はじめから、出るなんていってないよ。あれは任意参加だしね。
僕が入って男子のささやかな夢をつぶしてしまうより、女子枠に余裕を持たせたほうがいいんじゃないかと思ってね」

笑いなのかなんなのかよくわからない妙な形に口元をゆがめる佐々木の、
そのいつになく一本筋の通っていない言葉をそれ以上聴いていられず、
俺はやおら立ち上がると正面に回りこみ、ゆっくりと手を差し伸べた。

「…それは何の冗談だい、キョン?」
「冗談なんかじゃない」

おい、ちょっと待て俺。いったいなにしてるんだ。

「踊ろう、佐々木」
「…は?」

怪訝そうに眉根を寄せる佐々木。うん、気持ちはよくわかるぞ。
俺だって自分の言葉にドッペルゲンガーを目撃したゲーテのように驚いているところだ。

「キミの意図がどこにあるか知らないが、丁重にお断りさせてもらうよ。
なにやら重大な勘違いをしているようだからね…僕は気を使ってもらうような筋合いはないし、そもそも」「違う」「えっ?」

佐々木が目を丸くする。そりゃそうだ。俺が話しに割り込むなんてめったになかったことだしな。

「これは俺の我侭だ。なんとなく踊りたくなったから、踊りたいってだけだ」

なんて支離滅裂な誘い文句だ。我ながら、もうちょっとロジカルな、佐々木までは行かないにしても
ミドルティーンなりに筋の通った論理展開を出来ないものなのか? と思ってしまう。
佐々木は数秒間ほどあっけに取られていたようだったが、すぐに気を取り直したようで言葉を重ねてくる。

「なんだい、それは。キミがそれでいいかもしれないが、僕の意見は無視かい」

ごもっとも。ましてや俺は、一度蹴った身だしな。

「それは今から『おねがい』するんだよ」

なにやら急に調子を取り戻してきたらしい佐々木に、精一杯真面目な視線を照射する。
佐々木の、そのダークブラウンの大きな瞳に俺の姿が映りこむまで。

「これは大真面目な話だ。今まで散々ダンスはサボっていた俺だけど、最後ぐらいは参加してもいい。だとしたら、相手はお前以外にいない」


330 :黄金のスペクトル・4:2007/05/11(金) 19:43:12 ID:rnBsWygv
「なっ…」

みるみるうちに真っ赤になっていく佐々木。ああ、俺も今こんな感じなんだろうな。
こいつがこういう表情をするとこれはこれで絵になるが、俺の面じゃあ間抜けもいいとこだ。

「そ、そんな、キョン、わたし、その…」
「もし、嫌だってんなら、無理強いはしないぞ」
「い、いやだなんてそんな!」

あ~なんか相当恥ずかしい事いってんなぁ俺…。ほんとになにやってんだろーな。

「いや、それにな、よく考えたら俺、お前以外に仲いい女子っていないんだよな。ほら、流石に男同士ってのはアレだろ」

フォローなんだか言い訳なんだかわからない事を俺がまくし立てていると、佐々木は大袈裟にがっくりと肩を落として深いため息をついた。

「結局、わた…僕は、消去法を行ったうえでのセレクションという事か…」
「? どうした?」
「なんでもないよ、まあ今回は収穫もあったし、この辺で手打ちにしておく」

気にはなったが詳しく聞くのは後回しににする事にした。なぜかって? 
今日一番の思い出になる事は確実の、思い出のダンスに乗せる曲が流る時間になったからさ。
なにやらわけのわからない事をいう佐々木のことは置いておいて、とりあえず佐々木の左側、やや後ろに立つ。
グラウンドのほうでは音量調整が始まっている。という事はスタートまでもうそろそろだ。

『どこから説明しましょうか~…変わり行く現実の中で~』

……なにやらやたら甘ったるくてムーディーな雰囲気の曲が流れてきた。おいおい、こんなノリの悪い曲にあわせて踊れるのか? 誰だよ選曲したの。それになんか尻の穴周辺がムズムズするぞ。

「なんというか…個性的な曲だね」
「ほんとに他の奴ら、これに合わせて踊ってんのかよ?」
「確かに気になるね。戻ってみる?」
「バカいうなっての」
「くっくっ」
いつもの妙な笑い声とともに、わざとらしい大仰な動作で後方の俺に手を差し伸べる佐々木。
それをこれまた芝居気たっぷりに(見えてないだろうけど)受ける俺。
そう、これでいいんだ。変な噂になんかまどわされず、俺たちはいつもの俺たちでいるのが一番だ。
終わったとき手をつないでた奴が恋人だって?そんなの信じたい奴だけ信じればいい。
男と女で、恋愛関係なしの組み合わせってのはそれなりに珍しいだろうし、
これまでそうだったようにこれからも色々妙な勘ぐりもされるだろうな。
俺自身、佐々木をどう思ってるのか実際よくわかっていないのだけれど、
今はこいつが中学時代を通して俺の一番の親友であるという事実、それだけで十分だ。
「佐々木」
「ん?」
「やっぱり、お前に会えてよかったよ」


331 :黄金のスペクトル・ラスト:2007/05/11(金) 19:45:20 ID:rnBsWygv
「…ッ! ほ、ほんとにキミはいつも不意打ちだな…」
「? 不意打ち? あ、今足蹴っ飛ばしたことか?」
「…キョン…いってはなんだが、もう少し美しく踊れないのかい?
これではダンスというより乱取り合戦でもしてる気分だ」

しょうがないだろ、知識経験、一切ないんだから。

「まあ、この曲では無理もないがね。これならまだビッグバンドのほうがマシかな
……そうだね、ワルツなんてのも悪くない」
「ワルツってあのズンチャッチャ、ってやつか? 2001年に使われてるような」
「そう、あれはヨハン・シュトラウス二世だったかな」
「あんな堅っ苦しいのは嫌だぞ」
「なにを言うんだい。流行していた当時、ワルツなんてのは頭が悪くなる低俗音楽だと
保守的な音楽家たちには言われていたんだ。ショパンだってワルツは死ぬほど嫌いだったけど
生活のために皇帝円舞曲を書いたくらいだからね。
極端な話、それこそ今で言うところのヘヴィ・メタルみたいなものかな」
「……去年メタルを流した奴ってのは、そこまで考えてやったのかね?」
「そうだとしたら、相当なギミック巧者だね。誰もそこまで掘り下げて考えたりはしなかっただろうけれども。……ん」
「どうした? また俺足蹴ったか?」
「いや、こういうときでも僕らのスタンス、ポジションは変わりないんだと思ってね」
「いいんじゃねえか? 変わりもん二人が群れを外れてしょっぱい思い出作りだ。噂とか、そういうのは一切なしの方向で行こうぜ」
「…僕はこれでもそれなりに楽しんでいるんだから、あまり水を注さないでもらえるかな」
そうだったのか?それは失敬。







「キョン」
「どうした?」
「ありがとう」






その後気色悪い男の歌が終わってからも惰性で踊り続けた結果、
競技開始時間に十五分ほど遅刻した俺たちだったが、教師どもはともかく、クラスの連中は怒りもせず暖かく、
というか妙に生暖かい態度で迎えてくれた。
近々俺の家に打ちこわしにでも来るんじゃないかと思えるほどに殺気立っていた女子一同は
なにやら輝くような微笑を向けてくるようになったし、
男子は男子で一部の連中が恨めしそうな顔で見つめてくるので気味が悪い事この上ない。
国木田や中川に相談してみても呆れた顔をされただけだったし、どうしたもんかね。
人類皆兄弟とは言うけれども、兄弟でも考えてる事ってのはまったくわからんもんだ。



おわり

佐々木スレ7-230 「サプライズ・ダンス」(1)

2007-05-11 | その他中学時代ss

230 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 01:26:18 ID:jLpe43Sa
後夜祭も滞りなく進み、天を焦がすように燃え上がる炎を中心に大勢の男女が流れる曲に合わせて踊る。
そうして一定のリズムを刻む音楽が終わり、また最初から流れ出すと、今まで踊っていた女子が俺から離れて
次の女子が―――俺の『親友』が前に現れる。

「なんだキョン、思っていたより全然踊れてるじゃないか、緊張で失敗するんじゃないかと心配して損をしたよ。まぁ失敗する姿も見てみ

たかったけどね」

そうして今まで踊った相手と同じように俺は彼女の前に立つ。

「どっかの誰かさんに散々鍛えられたからな」

「ふふ、そう言わないでくれ、全てはキョンを想えばこそだよ。しかし些か期待外れだったかな。いや嬉しくはあるんだが」

そう言ってくっくっと笑う親友を見つめる。佐々木よ、笑っていられるのも今の内だぜ?


231 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 01:26:57 ID:jLpe43Sa
風邪を引いて一日学校を休み、次の日になとケロッと治った身体で学校に行き、担任から呼び出された瞬間、俺は嫌な予感をヒシヒシと感

じたしたね。
何でも俺が風邪で一日休んだ日に「来月にある文化祭の最後の余興でフォークダンスがあり各学年のクラス数名の男子を選出する」という

話になり、フォークダンスの男子役が俺に決まったんだそうだ。
ダンス役なんて冗談じゃないし、記録係にでも立候補してカメラ片手に文化祭をブラブラしてた方がよっぽど建設的だ。
俺は断固として抗議した。
そもそも俺はフォークダンスなんて踊れないし、そんな面倒な役は勘弁して欲しいと抗議したが「休んだお前が悪い、まぁ運が悪かったと

諦めろ」と教育者とは思えない発言で俺はフォークダンスを踊る羽目になってしまった。
さっきも言ったが俺はフォークダンスなんて踊れない。そうして途方に暮れていると佐々木が声をかけてきた。

「やぁキョン、どうやら災難な目にあったようだね」

「おかげさんでな」

というかお前も決める時に反対しろよ。

「おいおい、無茶を言わないでくれ。男子が厄介払い出来ると全会一致で賛成してるのに僕が一人だけ反対したって結果は知れてるさ」

あーそうだな、すまん。その通りだ。
しかしどうするか、フォークダンスなんて本当に踊った事無いんだぜ?

「そもそもフォークダンスというのは世界各地で踊られる土着の踊りの総称さ。日本における盆踊りや各種神事、祭事において踊られるも

のも言い換えれば全てフォークダンスと言える。
 一般的には外国から紹介された踊りを指すことが多いみたいだけどね。民族、民俗、舞踊、舞踏と様々に訳される。
 特に現地でのオリジナルに拘る場合にはフォークロアダンスという呼称が用いられるみたいだけどこの場合は気にしないでも大丈夫だろ

う」

つまりどういう事だ。

「つまり踊る本人達が楽しければそれでいいのさ。別に格式ばったワルツを踊る訳じゃないんだし、気楽に楽しむ事だよキョン」

「それが出来ないからこうして悩んでる」

ため息を付いてうな垂れる。

「せめてまともなフォークダンスが踊れれば相手に恥じもかかせないで済むんだが……」

「ふむ、それじゃあ僕が教えてあげようか?」

なに!? マジか!

「家の方針で簡単なワルツくらいは踊れる様にと習ったからね、基礎的なステップくらいは教えてあげられると思うよ」

あぁ! 微笑む佐々木が神さまに見えるぜ! 神様、女神様、佐々木様!

「すまん、頼む!」


232 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 01:28:43 ID:jLpe43Sa
そうして俺と佐々木の踊りの特訓が始まった訳なんだが塾の無い日は放課後に。塾がある日は塾の帰りに公園に寄って簡単なステップだけ

を徹底的に教わる。
基本は佐々木が習ったワルツのテンポをアレンジしてフォークダンスの曲テンポ―――オクラホマ・ミキサー、まぁフォークダンスと
聞いて一番最初に思い浮かべる曲を思い出してくれ―――にしたステップを教えてくれた。
短い時間での練習も二週間も続けていればステップも大方頭に入り、ほぼ完璧に覚える事が出来た。
夜の公園で一回通しで踊ってみたが大きなミスも無く、キチンと踊る事が出来た。

「ふむ、流石というかキョンは勉強や頭を使ってモノを覚えるのは苦手みたいだが、身体を使ってモノを覚えるのは得意みたいだね」

後半の賛辞はありがたく受け取るが前半の嫌味は要らんぞ。

「いやいやそう拗ねないでくれ」

そうさせたのはお前だろうが。

「しかしここまであっさりと覚えてしまうとはね……ふ~む……よし、ついでだキョン。ワルツのステップも覚えてしまおう」

「なに?」

おい佐々木よ。自慢じゃないが俺の脳みそには実用性の無い余分な事柄をずっと記憶しておけるほど優秀じゃないぜ?

「記憶はそうかもしれないけどね。一度身体が覚えた技術というのは記憶―――というより脳が忘れても身体が覚え続けるものなんだ。
 言い換えれば身体が覚えた技術は決して君を裏切らないし忘れない。例えキョン自身が忘れてしまったとしてもね」

「そんなもんなのか?」

「君は自転車に乗れるだろう? でも最初は補助輪で、次に何度も何度も転びながらやがて補助輪無しで自転車に乗れる様になった。
 では逆に今の君に自転車に乗る前の君に戻れ、と言って戻れるかい?」

「それは……無理だろうな」

わざと転んでも自分が痛いだけだし、人間は特に『痛み』を恐れる生き物だ。
どんなにわざと下手糞に運転しようと転ぶ=痛みを伴う事を身体が拒否して普通に運転してしまうだろう。

「そうだろう。それは君が『自転車に乗る』という技術を身体が覚えてしまったからだ。
 例え記憶喪失―――正確には記憶障害だけどね、それになっても君は自転車に乗れる筈だ。記憶が無くても身体がそれを覚えているのだ

から」

つまりどういう事だ。

「つまりいつか君が社会に出た時にワルツを踊らない可能性は決してゼロではない。何かの接待でダンスパーティーに行くかもしれないん

だ」

……まぁ、それはそうかもな


233 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 01:30:01 ID:jLpe43Sa
「その時にワルツを『全く知らない』のと『知ってはいるが覚えていない』というのはスタート地点が全く違うんだ。そして後者は必ず君

を有利にしてくれるはずさ」

悔しいが佐々木の言う通りだろうな。
まぁコイツは教え方も上手いし、そんなスパルタにもならんだろう。

「では決まりだね。じゃあまずはステップの前に『型』の練習をしようか」

「型?」

型ってなんだ?

「フォークダンスと違ってワルツは踊る相手をリード、エスコートしなくちゃいけないからね」

リードにエスコートね……俺に出来そうもない単語ばかりだ。
そこは慣れと本人のやる気次第だよ。と言いながら佐々木は喉の奥でくっくっと笑い声を立てた。

「TVとかでも見た事あるだろう? 男性と女性が踊るシーンを。あんな風に抱き合って踊るのがワルツさ」

あー、待て待て。そういえばTVで見た洋画だと息も感じ取れそうなほど近付いた男女が踊ってるシーンを見た事あるが……
あんな風にせにゃイカンのか?

「それが基本的な型だからね、さぁ練習だ。まずは左手を合わせて……そうそう」

佐々木の右手に俺の左手を合わせる。彼女の手はひんやりとしていて逆に俺は緊張で少し手が汗ばむ。

そんな俺の緊張を知ってか知らずか佐々木は微かに微笑むと、

「うん、じゃあ次はキョンの右手を僕の腰に回してくれ」

「―――――」

「? どうしたんだキョン」

「あ、あぁ、すまん」

解ってはいたが改めて、しかも本人の口から言われると心拍数が跳ね上がるな。
……平常心、平常心。コイツは俺の大事な親友だ。
そう自分に言い聞かせて静かに、優しく佐々木の腰に手を回す為に腕を伸ばす。落ち着け俺の心臓!

「う~ん……キョン、もうちょっと力を込めて自分の方に引き寄せないと踊ってる最中に振り解けてしまうよ」

あ、あのなぁ、俺だって若い男だぜ? 年頃の娘さんの腰をなんの躊躇いも無く引き寄せるなんて事出来る訳ないだろう。

そう言うと佐々木は一瞬だけ目をパチクリとさせたかと思うと、何が可笑しいのか爆笑をこらえるような表情になった。
何が可笑しい! 失礼なヤツめ。

「く、くくく……いやいや、すまない。君がそんなに紳士に接してくれるとは思わなかったのでね」

俺はいつだって紳士で優しいって評判なんだよ。
妹とその友達の女の子限定だけどな。


234 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 01:31:25 ID:jLpe43Sa
「そうかそうか、いや、君の新たな面を見れただけでも僥倖だ。しかしワルツは結構動きが大きな踊りだからね。この際それは忘れてくれ

て構わないよ」

まぁ本人がそう言うなら良いのかね。そうして俺は彼女の腰に腕を回す。
いや、色んな意味で驚いた。女の子の腰ってのはこんなにも細い物なんのか?それともコイツだけが特別なんだろうか?
そんな軽い思い、右腕に力を込めて佐々木を自分の方にグッと引き寄せる。

「きゃっ」

「うぉっと」

俺としてはそんなに力を込めた覚えはないのだが、佐々木にとってはそうでもなかったのか力に負けて俺の方に倒れ込んで来たので俺は
俺は彼女を自分の身体で受け止める。その姿は傍から見れば俺が佐々木を抱き締めてしるように映っている、と気が付いたのは大分後にな

ってからだ。

「すまん。そんなに力を込めたつもりはなかったんだが……」

「――――」

だが佐々木は俺の胸に顔を埋めたまま一向に離れようとしない。

「おい、佐々木? 大丈夫か」

「―――あ、あぁ。すまない。ちょっとビックリしてしまった。僕としては踏ん張っていたつもりだったんだけどね。
 やはり男子と女子では基本的な筋力に絶対的な差があるみたいだ」

そう言って俺を見上げる佐々木の頬はほんのりと赤みを帯びていた。
いかん、流石に夜は冷えるからな。後で暖かい飲み物でも奢ってやらねば。

「コホン……それじゃあ始めよう。基本的にはこの型で一貫して踊り続けるんだが、いきなりワルツを踊ってもキョンも混乱するだろうし
 まずはこの型でフォークダンスを踊ってみようか」

「了解だ」


235 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 01:32:24 ID:jLpe43Sa
そうしてフォークダンスの練習の合間にワルツの練習をしていたのだが、始めの内は8:2くらいの割合が文化祭翌日には1:9くらいの割合になっていた。
実際フォークダンスはほぼ完璧にマスターしてしまったし、なによりもワルツの方が楽しかった。
佐々木の教え方も丁寧だったしな。いや、いつも勉強教えてもらってて感じるがこいつは教師とかそういう人にモノを教える仕事が天職だと思うね。

「いや、フォークダンス役に任命された時はどうなるかと思ったがこれでどうにかなりそうだ、ありがとう佐々木」

お前のお陰で命拾いしたぜ。今度メシでも奢らせてくれ。

「……いや、それはありがたい……が、どうせなら明日の本番で僕と踊る番になったら僕を驚かせてくれないか?」

驚かせるってどうやって?
大声でお前をビビらせればいいのか? ワケが解らんぞ。

「いや、そういう驚かせ方じゃない。解り易く言えば『サプライズ』さ。明日は中学最後の文化祭だからね。
 僕の記憶に―――想い出に残るようなサプライズが欲しいんだ。方法は君が考えてくれ、なんでも良いんだ。君と僕の『想い出』に残る

モノなら……なんでもね」

そう言って少しだけ寂しそうに微笑む彼女は「それじゃあ僕は先に帰るよ」と先に帰ってしまった。

いつものように「バス停まで送くる」と言ったのだが「いや、今日はいいんだ。歩いて行きたい気分だから」とさっさと行ってしまった。

―――明日を楽しみにしている。

という言葉を残して。


236 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 01:33:41 ID:jLpe43Sa
いやはや悩んだ悩んだ。悩みまくったね。ここ数年で一番脳みそをフル回転させたと思う。

―――服装を変える?
いや、そんな時間は無いし、服では佐々木の順番になる前に既にバレてしまうからダメだ。

―――曲を全くの別物にする?
却下だ。そんな時間も隙も無いし普通に踊っている連中が踊れなくなってしまう。

佐々木は『思い出』に残るモノが欲しいと言った。
だったら大事なのはインパクトだ。そして他には無い思い出が欲しい。

そこで一つの妙案が浮かんだ。
俺自身が恥ずかしい思いもするし、佐々木にも迷惑がかかるがそれは思い出料として諦めてもらおう。
インパクトは十分、多少の根回しは必要だが、まぁなんとかなるだろう。



そうして冒頭のシーンに至る訳なのだ。

「ふふ、そう言わないでくれ、全てはキョンを想えばこそだよ。しかし些か期待外れだったかな。いや嬉しくはあるんだが」

―――結果的に言えば俺が選んだのは服装だった。

「まぁそういうな。俺だって一生懸命考えたんだぜ?」

服装をどうするか散々なやんだが末、家のタンスを家捜しするしかなかった。
本来は学生服で踊るのだが中から何の冗談だかお袋が洒落で買ったオヤジのタキシードが入っていたのでそれにした。
試しに着てみたが何とか着れたのが幸いだった。妹みは「キョンくんカッコイイー」と抱き付かれたのを適当にあしらっておいた。
いや、佐々木の番になるまで恥ずかしさで死ぬかと思ったね。相手の女子が変わる度にクスクス笑われるし。


237 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/11(金) 01:35:02 ID:jLpe43Sa
「さて、それじゃあ踊ろうかキョン……? キョン?」

そういって手を差し出す佐々木を真っ直ぐと見つめ返しながら今までの相手にはしなかった―――佐々木の為にだけに考え、彼女の為だけ

に用意した仕草をする。


彼女の前にで恭しく腰を折り



右手を心臓の上に持っていき、左手を彼女の前に差し出す。



そうして息を吸い





「Shall we danced?」





決して上手ではない英語でそう伝える。
意味は確か「出来うることならば、私と踊っていただけませんでしょうか?」とかそんな感じの意味だったと思う。

下を向いていても佐々木が息を呑むのが解ったし、俺の前後で踊ってる連中もポカンとしているだろう。
まぁおかげで俺の佐々木に対するサプライズは成功したと言っていいんだろけどな。

俺は十五年間生きて来た中で最高に恥ずかしい思いをしている訳だが……まぁ俺の親友たっての願いだ、喜んで恥をかくね。

何秒その体勢でいただろうか、

「『私』でよろしければ、喜んで」

そう柔らかく応える声が返ってきた。しかも男の俺相手に佐々木が『僕』を使わず『私』って女言葉使ってるってのはよほど驚いてるのか

ね?
それに安堵して顔を上げると今度は俺が息を呑んだよ。なんてったって今までに見た事がない笑顔で佐々木が笑ってるんだぜ?
いや、あの笑顔を俺は一生忘れないと思う。


                                  「サプライズ・ダンス」(2)に続く

佐々木スレ7-230 「サプライズ・ダンス」(2)

2007-05-11 | その他中学時代ss

242 :ボスケテ:2007/05/11(金) 02:02:21 ID:jLpe43Sa
だがしかし! 佐々木よ、まだ俺のサプライズは終わらないぜ。

「せっかくだし、フォークダンスの輪を抜けて、ワルツを踊ろうぜ」

「え? いや、しかし君が抜けたら人数が……」

珍しく……というより混乱している佐々木は初めてみるな。うむ、今日は初めて尽くしだ。

「俺と佐々木、男女が一人づつ抜けるんだ、半端な数にはならねぇよ。まぁお前がどうしてもフォークダンスを踊りたいってならそれでもいいが」

「―――いや、ぜひワルツを踊ろう。」

「あぁ」

そうしてフォークダンスの輪を抜けて炎の前で佐々木とワルツをゆっくりと踊る。

流石に昨日まで一緒に練習していただけ合って息はピッタリだ。
時折周りの女子から「佐々木さん、綺麗」と呟く声や「キョン! テメーキザ過ぎるぞ!」という声が聞こえてくるが気にしない。

「しかし相手がタキシードなのに僕が制服ってのは締まらないね」

「まぁそう言うなよ、お前のドレスなんざ用意した日にゃ勘の良いお前の事だ。俺の目論見に気が付いてサプライズもクソもあったもんじゃないからな」

そう。つまりこのタキシードはダミーだった訳なのだ。
俺一人で用意出来るサプライズなどたかが知れてるし物を用意したとしても渡すタイミングが難しい。
たっだら残された方法は気持ち―――言葉だ。
タキシードをダミーとして佐々木を一旦ビックリ……まぁ予想通りというか残念がってたが、そこで油断させた処でさっきの態度と言葉って訳さ。

「しかしキョンも随分と思い切った事をするね。今度はクラスどころ学校中から僕たちの関係を誤解する人間が増えるよ」

佐々木は低く笑い続けながらそんな事を言うが、

「まぁそこはサプライズの料金請求だと思って諦めてくれ」

それともこんなサプライズは不要だったか?

「とんでもない! 僕に取ってはまさに忘れられないサプライズだったよ。キョンからあんな風にダンスに誘われるとは夢にも思ってなかったからね」


244 :ボスケテ:2007/05/11(金) 02:03:48 ID:jLpe43Sa
そりゃあ嬉しいね、悩んだかいと恥を捨てたかいがあるってもんだ。

そう言って佐々木に笑いかけると佐々木は俺の事をジッを見つめて

「この―――が――――えば――――のに」

と何かを呟くように口にした。

「ん? すまん。よく聞こえなかった」

そう言うと

「なんでも無いさ。それよりもキョン、右腕の力が少し抜けて来ているよ、もっと力を込めたまえ」

ん、そうか? 自分としてはそんな意識は無かったんだが……

「君は僕の前に大勢の女子と踊っているからね、疲れが溜まって無意識に力が抜けてしまっているんだろう。」

まぁそれもそうか。
佐々木の言い分ももっともだったので右腕に意識して力を入れ、佐々木の腰を引き寄せる。
当然佐々木の身体も俺の方に寄るのだが佐々木はそれに逆らわず、まるで俺に寄り添うかの様に体重を預けてきた。
練習のおかげかそこまで意識しないで済むようになっていたが、それがなければ大変だったぜ……色々な意味でな。

そうしてフォークダンスが終わるまで俺と佐々木は二人っきりのワルツを存分に楽しんだ。
佐々木は踊りに関する様々な話を聞かせてくれたし、時には学校の思い出を話したりして二人で笑いあった。

そうしてフォークダンスの曲も終わり、後夜祭も終わりを告げると残っていた生徒もパラパラと帰り支度を始める。

それでも俺と佐々木はワルツを踊る体勢のまま固まった様に動かなかった―――いや動けなかった。
佐々木が俺の胸に頭を押し付けたまま動かず、俺を離してくれないのだ。

「おい、佐々木。曲はもう終わったぜ? 帰り支度もしなきゃならんからそろそろ離してくれないか」

そう言うと佐々木はハッとした様に顔を上げ

「キョン、君は底抜けに優しくて―――とても残酷な人だね」

優しいはともかく、残酷なんて言われるとは心外ですな。

「そうかい? まぁそれも君の良さかもしれないね。さて、それじゃあ帰るとしようかキョン」

そう言って歩き出す佐々木を「少し待て」と、呼び止める。

「?」

そう不思議そうな顔をするな、すぐに帰れるさ。
えーっとどこだ。あ、いたいた。


245 :ボスケテ:2007/05/11(金) 02:05:12 ID:jLpe43Sa
「おい中河、頼んだヤツは撮れてるか?」

記録係の中河を呼び止める。

「はいはい、出来てますよー。ったく、見せつけやがって」

そう言って中河は一枚のポラロイド写真を手渡してくる。

「数枚撮ったけどな、それが一番上手く撮れてるはずだ」

サンキュ、今度何か奢るぜ。
そう言って写真を受け取とると、笑顔で笑い合っている俺と佐々木の二人がそこに写っていた。
うむ、なんと言うかこう……さっきとはまた違った恥ずかしさがあるな。
まぁ俺を持つのは俺じゃなくて、コイツだしな。

「ほいよ佐々木」

「えっ?」

佐々木にその写真を差し出す。

「俺からの最後のサプライズ。さっき踊ってる所を撮ってもらうように学校に来てすぐの内に頼んでおいたんだ。
 お前からのオーダーは『記憶に残るサプライズ』だったがな、どうせだから写真にも残しておこうと思ってやった」

彼女は少しだけ震える手でそれを受け取り自分と俺が踊っている写真を見つめ続けている。

「まぁお前は写真とか半永久的に残る物は嫌いかもしれんがな、せっかくの記念なんだ。もらってくれると嬉しい」

「いや、ありがとう。喜んで受け取らせてもらうよ。さっきのサプライズといいこの写真といい、今日という日は僕にとって宝物になりそ

うだ」

そう言って笑う笑顔は写真の中で笑う彼女のように綺麗で美しかった。

「すまない中河、何か書く物を持ってないか?」

「ん? サインペンで良けりゃあるが」

構わない。と言ってペンを受け取ると写真の裏に何やら書き込みを始めた。

「ありがとう中河。助かった」

どういたしまして。と言ってペンを受け取るとヤツはそのまま去って行った。

「なぁ佐々木よ、一体何を書いたんだ?」

気になった俺は聞いてみる。

「ん? コレかい? ……まぁキョンなら構わないか」

そう言って写真を裏にして差し出す。
え~っと何々?

『I wish time won't pass 』


246 :ボスケテ:2007/05/11(金) 02:06:00 ID:jLpe43Sa
……おい佐々木よ、お前は日本人なんだから日本語で書けよ。
これじゃあ頭の良いお前はともかく俺にはサッパリだぞ。

「おや、そうかい? まぁキョンならきっと読めないと思って見せたのだけどね」

佐々木は唇の端だけを歪ませると偽悪的な微笑で楽しそうにくっくっと笑っている。
あーはいはい。どうせ俺は頭が良くありませんよ。

「そう拗ねないでくれキョン。今日のお礼も兼ねて晩御飯でも奢るよ」

「お、マジでいいのか?」

「勿論さ、僕は今日という日に、そして君に感謝したい気持ちで一杯だからね」

そう言って佐々木は歩き出し、俺もタキシードの首元を緩めて佐々木の横に並ぶ。

「なぁキョン」

歩いていると佐々木が静かな声で

「いつか……いつか機会があれば、また僕と踊ってくれるかい?」

そんな事を聞いてくる。
全くなにを言うかと思えば。

「そうだな。佐々木のドレス姿ってのも拝んでみたいしな。機会があったらこっちからお願いしたいよ」

「ふふ……そうかい? その時はまた今日みたいに誘ってくれるのかな」

それはまた今日みたいな恥ずかしい思いをしろって事ですか、佐々木さん。

「おや、駄目だったかな」

そう言って下から俺の顔を覗き込む親友に俺はこう言い返すのさ。

「俺でよければ、喜んで」


~Fin~


247 :ボスケテ:2007/05/11(金) 02:07:19 ID:jLpe43Sa
はい、お終いDEATH。
正直書いてて「誰だよこいつ……ねぇ、こいつ誰!!?」な状態でした。キョンがキザ過ぎるよ(だがそれが良い!)
キョン×佐々木の甘ぁーーーーーーーーいっ!!ストーリーを目指した筈が巡り巡ってこんなワケワカメな話に……
元々原作を持っていない自分は新刊出ると友人から借りて読むと言った具合でして手元に佐々木に関する資料が一回読んで頭に残ってると

いう駄目っぷりなので……
基本的にはスレのSSを読みながら自分なりの佐々木像を思い浮かべてるんですがな佐々木のイメージが原作と違ってもその辺はどうかご容

赦願いたい。
あと妙に区切りの良い所で蓮投規制マジで勘弁な!!

前スレからキーホルダーネタ等々をちょこちょこ書いてはみる物の会話だけだとイマイチ誰が誰だか解らない。
しかし描写を入れるとただでさえ遅筆が更に遅くなるという悪循環……ボスケテ

勘の鋭い住人なら気が付いたでしょうが、スレで助けを求めた日本語文が
「この――――が――――――えば――のに」にそのまま入り、
「このまま時間が止まってしまえばいいのに」となる訳ですな、マジ解り難い。

EDの踊りから一人歩きしてフォークダンスにネタが来た瞬間このShall we danced?ネタが舞い降りました。
本来ならタイトルにShall we danced?を使いたかったんですが、流石にオチがバレバレになる事間違いなしと思って回避。

しかし即興SSでこんなに時間を食うとは思わんかった。
書きかけの佐々木SSがあと2本もあると言うのに!!
誤字脱字に気が付いたら報告ヨロ。 
んじゃスレのお目汚し失礼。
英文考えてくれた同士に百万ドルの感謝を


佐々木可愛いよ佐々木

佐々木スレ7-194 「キョンデレ」

2007-05-11 | その他中学時代ss

194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/10(木) 23:37:13 ID:vMASDHLB
「キョンデレ」


中学の卒業式から数日が過ぎた。
俺は学業から解放された他のクラスメイト達と連日遊びに出かけている。


だがそこには佐々木はいない。

「キョン、勘違いしているのであれば忠告しておこう。
確かに僕たちは中学の学業は修了した。だがそれはつまり高校の学業の始まりでもあるのだよ。
ということはこの間に中学時代の復習かこれからの予習をするべきだと僕は思うのだが。」
とは佐々木の弁だ。

そんなわけで俺は今に至る。
一緒に勉強しないか、という佐々木の誘いを断った俺を誰が責められようか?
確かに罪悪感はある。が、しかしせっかく勉強の義務を解かれた身であるにもかかわらず
勉強をせねばならんのだ?どちらにせよモチベーションは10分も持たないだろう。

などと理論武装した俺は今日もチャリで友人達が待つ場所へ向かっていたのだが、
俺はここ数日、何故かチャリに違和感を感じていた。故障でもしたのか?

そう思いながらゆっくりチャリを止め、後ろを振り向い・・・






「!」






・・・あぁ、そうか。


197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/10(木) 23:41:46 ID:vMASDHLB
俺の後ろに佐々木がいないんだ。



いつも後ろに乗せていたので、居るのが当たり前だと思っていた。
いつも隣同士で話をしていたからそれが普通だと思っていた。
いつも一緒にいた。だからいつまでもこんな風にしているのだろうと思ってた。


「馬鹿野郎」

そんなわけがなかったんだ。俺と佐々木は来月から通う学校が違う。
そして俺たちが集う中学校と塾にももはや通う理由など微塵もないのだ。

そう、それはつまりそういうことであって、俺はもう佐々木と・・・。



俺はチャリを180度回転させた。
なに、待たせているアイツらだったら俺が行かなくても勝手に行っちまってるさ。
いや、一応断りのメールは入れたが。
そのまま俺は久々に全力でチャリを漕ぎ坂道を駆け上がっていった。
明日は筋肉痛かねこれは。


爆走したおかげで10数分しかかからなかった。
そいつの家に着いて俺はインターホンを押す。数十秒の間を置いてそいつが出てきた。

「やぁキョン、どうしたんだい?君は今日も彼等と」

そんなことはどうでもいい。早く後ろに乗れ。また二人乗りしよう。

「?・・・意味はわからないが、そうさせてもらおうか。くっくっ。
もちろん急に僕を誘った理由は後で話してくれるんだろうね?」



あぁもちろんだとも、親友よ。










終了です。

>>187

阻止

佐々木スレ6-871 Gネタ

2007-05-09 | その他中学時代ss

871 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 01:42:13 ID:9AnzX+Ad
>>866
わくてか

キョン「佐々木、弁当にしようぜ」
佐々木「うん」
キョン「いただきまーす」
佐々木「いただきます」
キョン「…ん」
佐々木「もぐもぐ」
キョン「あ」
佐々木「どうしたんだいキョン」
キョン「んいやいや今お前の食ってる黒豆見てたらさ」
佐々木「ん?」
キョン「きのう俺の部屋にいたゴキブリ思い出しちゃってさ」
佐々木「もぐ…」
キョン「もうそんな季節になっちまったんだなーそういえば最近あったかく」
佐々木「ちょっとキョン!食事中だよ?そんな話はやめてほしい」
キョン「なんだ?最近あったかくなったって話か?」
佐々木「そっちじゃなくて…そ、その…ゴキ…」
キョン「あ、ゴキブリのはなしか」
佐々木「そ、そうだよ。あまりその名前を出さないでくれ…」
キョン「それより佐々木知ってるか、ゴキブリを食った人間の話!!」
佐々木「!……お、お願い、やめて…」
キョン「そいつの腹の中からちっさいゴキブリがうじゃうじゃ出てきたんだってよ!」
佐々木「……や、やだ…」
キョン「一説によるとそのチビゴキブリたちは宿主の腹を食い破って」
佐々木「わ、分かったよ!降参だよ!!もうやめてよぉ!」
キョン「じゃあお前のたまご焼きもらい♪」

佐々木スレ6-860 「湯煙@佐々木」

2007-05-09 | その他中学時代ss

860 :湯煙@佐々木vol.1 1/?:2007/05/09(水) 01:25:17 ID:U6wNMc1S
古泉属する機関とやらがどれだけのコネと力を持っているかは
知らないし知りたくも無いが、それでも信じていいことが一つだけある訳で、
それはSOS団創設後に行われたであろう俺の身辺調査の結果である。
これ以上ないというほどに平凡な中流家庭で、
これ以上ないというほどに平凡な人生を(あくまで高校生になるまではだが)
送ってきた俺は間違いなく普通の人間だということだ。
普通。
今となってはどれだけ懐かしく、
郷愁を覚えずにはいられない響きだろう。
灰色空間やらタイムトラベルやら様々な経験を積んだ俺には
最早遠いところにある言葉であり、
しかしこうして見ると自分の経験値もどうってことなかったのだと
自責の念に駆られることも無いわけではない。
いやいや、よく考えてみろ俺。
俺の経験値において大半を占めているのはあくまで
非日常的冒険活劇チープ版であり、
鶴屋さんの別荘にしても夏の孤島にしても豪華ではあっても
それが威圧感となることはなかった。
だからこれは初体験となる。
山奥に佇み、奥ゆかしさと風流さすら威圧感へと変えるほどに一般人とは縁の
無い高級旅館に泊まるというのは。


862 :湯煙@佐々木vol.1 2/?:2007/05/09(水) 01:27:27 ID:U6wNMc1S
「という割にはいつもの君と変わりが無いように思えるよ、キョン」
どうやら俺のような一般人には近づくことさえ憚られるようなこの
高級旅館も、佐々木と俺の顔には何ら影響を及ぼさないらしい。
ちなみにこの旅館、本館に部屋がない。
風呂もない。
どうしてかと言えば、本館を囲むように存在する部屋という名の
簡素ながらもしっかりとした家屋に必要なものが全て揃っているからだ。
いや、どう考えても金と土地の無駄遣いである。
俺には到底理解できないというかしたくない。
分不相応もいいところだぜこれは。
「妙な経験だけなら随分と積んだんでな。その賜物だろう。」
「君がそういうのならそうなのだろう。
とはいえ、君の気持ちも理解できなくはない。
実際ここは著名人や政治家もお忍びで利用するほどの隠れ宿というやつで、
言い換えれば変なところで我侭だったり意地を張ったりする人間が
来るのであれば必然、無駄なところに贅を尽くすようになるというものだよ。
それでもキョン、この渡り廊下からの景色は中々のものだと思うけれどね。
来訪者の傾向故に案内人である女中さんがいなくてよかったと思わないか?
深緑を味わいながらゆっくりと部屋に向かおうじゃないか。」
たしかに、しっかりと手入れされた日本庭園が視界に広がっている。
審美眼じみたものがないことは重々承知だが、それでもこれがどれだけすごいか多少は
解るというものだ。
「不均一的、あるいは非左右対称的な美というのかな。
そもそも花道や枯山水、陶芸にも見られるように日本の伝統では微妙な歪みと
それに伴う不完全性をこそ愛でる訳だが、
人間の顔だって左右対称とはいかないことを考えればそれこそ自然なのだろうね。
西洋的な左右対称は人為的で僕は好かない。
ありのままを受け入れるというのは日本の美徳の中でも最上のものに違いない。」
「枯山水ってのはアレか。京都の寺やらにあるようなのだろう。」
「そうだね。
まぁ、これは学者、あるいは識者閣員によって意見が分かれるものだと思うけれど、
基本日常に関連するカタチで美を表す傾向にある日本においてあれだけ緊張感のある
芸術というのも珍しいだろう。
………うーん、やっぱり芸術に関しては僕は口を閉じている方がいいのかもしれないな。
いつもの調子で口が回らない。」
「そんなに気にする必要はないだろう。
こういうのはきっと、評したりするもんじゃなくて体で感じ取るもんなんだろうさ。」
口にしてからちょっとしまったと思った。
語りモードに入った佐々木に対する言葉としてはあまりに直情的で観念的だ。
きっと手痛いしっぺ返しが帰ってくるんだろうと身構えていたが、
どうしたことだろうね。
佐々木はぽかんとした無防備な顔で俺を見ていた。
あ、笑い出した。
「くっくっくっくっく……いや、その通りだよ。
確かに、言葉が不粋となる時もある。
言語だけで全ての情報が遣り取りできるとか限らないのだからね……
だめだ、お腹いたい…くっくっく……やはり君は最高だよ、キョン」
そうかい。お褒めいただい光栄さ。
「いや、すまない。嘲っているつもりなどまったくないよ。
むしろ今までで一番高い評価を下している最中だよ。」
「ま、何だって構わんさ。さて、お部屋についたぜお姫様。」
扉を開け、去年の夏の出来事から反省を学んだ俺は佐々木をしっかりエスコートする。
畳の香りがほどよく嗅覚を刺激し、俺と佐々木は部屋の趣味の良さと
窓からの景色に圧巻されているうちにちょっと回想モードに入ろうじゃないか。


863 :湯煙@佐々木vol.1 3/?:2007/05/09(水) 01:28:59 ID:U6wNMc1S
「キョン、折角の休みだ。ここは一つ、長旅と洒落込むのはいかがかな?」
事の発端は佐々木のその一言に由来する。
まぁ、俺たちも高校二年になる訳で、
前には絶海の無人島に行ったりもしたから
今更長旅に怖気づくなんてこともなく俺は佐々木の誘いにあっさりと乗った。
「そうかい、それはありがたい。ところで、君は行きたいところがあるのかな?
もし構わないなら、僕に決めさせてもらいたい。」
全然構わない。
佐々木なら絶海の孤島やら吹雪の雪山に行ったりはしないだろうという確信があるからな。
あんな心身共に疲れる旅行は年に一回か二回で十分であり、
それも古泉プロデュースの茶番劇があること前提の時だけだ。
「ちなみにキョン、君は行き先不明のサプライズ旅行と予定が100%判明している
観光旅行のどちらがお好みかな。」
言うまでも無いことだろうに。
旅行ってのはゆっくり楽しむためにあるというのが凡人たる俺の信念である。
「くっくっくっ、確かにその通りだ。ではキョン、楽しみにしているよ。」
さて、皆さんなら気付いていただけるものと思うが一応言っておこう。
俺はこのとき、旅行に参加する人数を聞いていなかった。どうせ佐々木団の面子
の、そうだな、橘あたりも参加するだろうと思っていたのだ。
これもSOS団雑用係にして連絡が来るのは一番最後という俺の立場に由来する
に違いない。本当、習慣というのは恐ろしいものだね。

メールで送られてきた旅行の予定は佐々木らしく綿密なのに無理がないものとなっており、
こいつ将来旅行代理店にでも就職すれば高給取りになれるだろうという幻想が浮かばない
こともないほどのものであった。
何ていっても、こちらの起床時間まで指定してきてるんだからな。
どうやら中学三年における一年の付き合いは俺の生活リズムが把握できるほど
のものだったらしく、しかし俺が佐々木の生活リズムを把握できていないのは
さて、何でだろうね。
「キョン、それは僕の生活リズムを知りたいということかい?
無論、君になら教えるのもやぶさかではないが、他人に伝えることは社会的タブーに相当する
旨は言っておこうじゃないか。
それとも、君は知り合いの行動は悉く把握していないと心配になるのかな。
僕の記憶が正しいと仮定した上ではそのような奇矯な趣味を君が持ち合わせていた
覚えはないのだがね」
「どんな趣味だそれは。というか、他の連中は来てないのか?」
「ああ、言い忘れていたよ。僕と君以外に参加者は無し。所謂二人旅というやつだ。」
そうかい、そりゃびっくりだ。どれくらいびっくりかというと、
コペルニクス的なんたらってぐらいびっくりだぜ。
表情が変わらないのは高校になってから積んだ非常識経験値の賜物だ、というか
「集合地点をここにした時点でそれに気付くべきだった…とでも考えているのだろう。」
俺の脳内をスキミングのごとく読み取らないでいただきたい。
そりゃあ、集合地点が俺達が通っていた塾に近い懐かしい公園であったのに
そこまで考えが及ばなかった俺の脳なら、簡単な機器で内容を読み取れそうだが。
「まぁ、いいか…というか、さっさと行こうぜ。
時間ギリギリになって走るなんて御免だからな。」
お互い荷物は小さめのトランクと肩掛けバック。
三泊四日の旅行な訳で、さて、せいぜい楽しもうじゃないか。


864 :湯煙@佐々木vol.1 4/?:2007/05/09(水) 01:30:23 ID:U6wNMc1S
はい、回想終了。
ってうお、佐々木と二人旅って気付いた時点で色々ピンチなことに
考えが及ばない俺をどうしたらいいのだろうか。
いやいや待て待て。
佐々木の指定してきた起床時間は俺にしてみればあり得ない早起きは三文の得
的日の出タイムであり、新幹線と電車を乗り継いでこの隠れ宿に一番近い
駅に着くまで頭の中に眠気が沈殿していたのだから早朝の俺に冷静
かつ正常な判断を下す力などあろうはずもなく、つまりこれは不可抗力で
あって誰に文句を言われる筋合いもないのだ。
あとは、健全なままこの旅行を終えれば万々歳である。
うん、すばらしいじゃないか俺。自分に対する言い訳は完璧だ。
「絶景と評していいのではないかな、これは。キョン、どう思う?」
「いいんじゃないか。
俺はこんな景色を見るの初めてみたいなもんだからどう言ったらいいか考えてたところだ。」
部屋の中がどうなっているのかちと調べ、荷物もおいて一休みする午後五時。
簡単な台所もついていることに驚愕したり座布団を出したりと色々したが、
今は佐々木が淹れてくれたお茶で二人揃ってのんびりしている。
…本当に今更だが、こんなとこに一介の高校生が来て、しかも自分は宿泊費を一銭も
払っていないことに我ながらどっきりだ。
佐々木曰く、母親の親戚に作家筋で著名な方がいるらしく、
ここに二人分予約を入れたはいいが締め切りの関係でいきなり来られなくなったらしい。
キャンセルするのも面倒なので、誰か行かないかと話を回したところ、
新幹線でもかなり時間のかかるここまで来たがる人間はいなかったらしく、佐々木にまで
お鉢が回ってきたらしい。
加えて佐々木の両親は仕事で忙しいらしく、お友達と行って来なさいの一言だったとのこと。
いいんだろうか、そんなことで。
俺がそんな招待される側としてはいささか不謹慎な思考に埋没していたので、
佐々木がいつ動き始めたのに気付かなかった。
荷物をごそごそとしては、押入れから何か取り出している。
ためつがめつして俺をチラッと見ては、また荷物をごそごそ。
「………どうしたんだ、佐々木。というか、何をしている?」
ギクっというような擬音を伴うような動作で佐々木が止まった。
こいつに限ってないと思うが、何かやましいことでもあるのだろうか。
「いやいやいやいや、気にしないでくれ。というか、電車での長旅で
疲れも溜まっているだろう?
六時には夕食が運ばれてくるはずだから、君から先にお風呂に入ってはいかがかな。」
招待された側としてそれはちょっといただけないな。
一番風呂は佐々木に譲るぜ。
「な、何を言っているんだ君は。誘ったのは僕で、むしろ君が僕の我侭に付き合って
くれているのだから君から入ってくれ。」
風呂が二つあればよかったのだが、どうやらそこまで無意味に豪華という訳ではなく、
それでも露天風呂つきなのだが、残念ながら体を洗うスペースが一つしかない以上
どちらかが先に入るしかない。
まぁ、よくよく考えてみれば佐々木も女だし、自分が入ったあとの風呂に
男が入るのは嫌なのかもしれない。
では男が入った後の風呂はいいのかという疑問もあるが、
それはきっと優先順位の問題なのだろう。
じゃ、すまんが先に風呂いただくぜ。
「ああ、ゆっくりと寛いできてくれたまえ、キョン」


865 :湯煙@佐々木vol.1 5/?:2007/05/09(水) 01:32:09 ID:U6wNMc1S
色々あったが、計画通り。
今キョンはお風呂で体を洗っているところだろうから、今のうちに必要な準備を
全て済ます必要がある。
まずはお布団。
これも自分で引かねばならないというのはつらいが、この宿の特性を鑑みれば
仕方の無いことだろう。
食事を持ってくることと、午前中の掃除の時間以外はほとんどノータッチであり、
だからこそここを選んだのだから。
…話が逸れた。とにかく、先ずはお布団だ。
一組では、彼のことだ、俺は居間で寝るからなどと言いかねないので、二組敷く。
ぴったりとくっつけた状態にして。
次、財布や携帯電話を入れているハンドバックを枕の近くにおいておく。
一応中を見て、禁則事項がしっかり入っているか確認する。
うん、完璧。
あと最後に一つ。備え付けの今時貴重な黒電話で本館に連絡。
……彼には内緒だが、宿泊者名簿の私と彼の年齢は実年齢+三となっている。
頼みごとは二つ。どちらも言うまでも無いことだが、用心に越したことはない。
くっくっく、これで外堀は埋めたも同然。
あとは……最終段階。
高鳴る心臓に落ち着くよう指令を下し、私は必要なものを持って立ち上がった。




「キョン、失礼するよ」
いたって呑気に人生初の檜風呂を楽しもうと体の汚れを洗い落としていた俺を
停止させるに十分なことをしてくれました、佐々木さんは。
カラカラと扉が動き、温まった体には寒く感じる空気と一緒に佐々木が入ってきたのだ。
丁度背中を洗おうとしていた手はもちろん停止し、
強靭だと思われた我が理性はあっけなく混戦状態に陥った。
「さ、佐々木!ちょっと待ておま」
「背中はまだ洗ってないようだね、キョン。それでは僕が洗ってあげよう。」
いや、一応バスタオルを身に着けてはいるんだけどね。
むしろなんか色々とそのお姿は危険過ぎですよ佐々木サン。
「そうかな?隠すべきところを隠しているのだから構わないと思うが。」
そんな問題ではなくてだな、何というか、その、
嫁入り前の娘さんが男が入ってる風呂にくるなんてそりゃよろしくない訳で

ええい、これ以上は禁則事項だ。何があったかは各自の妄想力にお任せしようじゃないか。
という訳で、テレビの不味いシーンが生放送中にあった時のように
「しばらくお待ちください」をテロップとして流しながらお花畑で夕食まで時間を飛ばさせていただく。


866 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 01:34:14 ID:U6wNMc1S
以上vol.1は尻切れで終了。
書き終え次第vol2も投下するが、
皆さんには気長に待っていただきたい。
待つほどのものであればいいのだが……。

ああ、他の神職人さんのようなスキルが欲しい!


880 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/09(水) 02:31:42 ID:AKMBQJtN
>>866
「ねぇ、キョン。次のシーンは夕食のようだ。この先は読者諸賢のご想像にお任せします、
ということなのだが、これはいわゆる生殺しというものだと思うんだが、キミはどう思う」
 どうやら、俺の貞操は守られるらしいね。いいことだ。
「僕らがもっと、親密になって夕食を食べている、とはいかないかねぇ。それこそ、僕の
望み通りに」
 い、一体、お前は何を考えているんだ。一体全体どういうつもりなんだ?
「くつくつ、そりゃあ、キョン。キミのことを考えているに決まっているじゃあないか」

 こうですか、妄想しながら待ってます(><)
 ごめん、俺の頭の中の佐々木シミュレータが暴走を……。


                                  「湯煙@佐々木vol.2」に続く