【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ3-22 「バレンタインと鈍」

2007-04-16 | バレンタインss

22 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/16(月) 21:34:22 ID:aswHNgWc
2月、早いやつはすでに進学先を決め受験勉強から解放されてる奴もいるが
俺はというといまだ受験という地獄のまっただ中にいる
蜘蛛の糸でも垂らされたら真っ先に飛び付くぐらいに追い詰められてはいるが
そんな殊勝なことをしてくれる奴がいるはずもなく
この苦行が報われるのを信じて今は勉強という苦しみに耐えるしかない

午後のホームルームがそろそろ帰るかと教室を一瞥したが
しかし、何故か今日は空気の浮ついている奴と淀んでいる奴の落差が激しい
しかも今までと違い進学が決まっている奴とこの先試験が控えている奴といった
部類別に別れているわけではない
これはいったいなんだ?
「くっくっくっキョン、君らしいといえばそうだが。今日は何日だい?
いくら何でもこの質問の意図ぐらいわかるだろう?」
俺の前にはすでに進学を決めている組の佐々木がおかしそうに笑っている
「今日は2月14日…ああ、バレンタインデーか」
なるほどようやくクラスの雰囲気の謎が分かった
それにしても、まだ先が控えている奴もいるというのに
別のことに気が裂けれるとはな
「まぁ、年頃の男女はこういった恋愛関連のイベントには敏感なものだよ
特に意中の人がいる場合は卒業式前の大事な前哨戦といったところだろうね
その点キョンはバレンタインということすら忘れていたのだからね
そんなに余裕がないのかい?」
「ほっとけ」
もともと家族以外から貰えるなんて期待していない
それよりも試験を受けずに合格する方法が知りたい
「くっくっ、まったく君と言う奴は。
キョン、君のその怠け癖は早く矯正したほうがいい
おっせかいなその性格とその怠け癖は相性が悪い
近い将来しなくていい苦労をするだろう
まぁ、苦労は買ってでもしろと言ってる人もいるから
結果的にはキョンの為になるかな?」
佐々木よ、お前はいったい何がが言いたいんだ
いったい俺は苦労しない方がいいのかした方がいいのかどっちなんだ?
それに今俺は非常に苦労しているぞ
お前の言うとおり今日がバレンタインだということすら忘れるほどにな
いや別に貰えないから悔しいなどとは思ってないぞ
期待なんかこれっぽっちもしていないんだからな
「そんなに卑下することもないだろう
せこまで言われると渡しづらいではないか
一年近く一緒にいたんだから、僕だって形だけでも用意はしてあるよ」
そう言って佐々木はカバンからブツをとりだした
「さぁ、受け取ってくれ。これでも随分と苦労したんだよ」
「…佐々木さん?これはなんの冗談ですか?いったいこれはなんですか?」
「冗談とはひどいな。バレンタインプレゼントだよ
人の好意は素直に受け取ってほしいな」
よし、ちょっと待て
正直佐々木がバレンタインなんてイベントに参加するとは思わなかったがそれは百歩譲ろう
それにバレンタインプレゼントがチョコだけとは限らないからそこも譲ろう
「だがな、チョコの代わりが数学のテキストなのはどういうことなんだ?」
「なに、今のキョンに最も必要だろうものを用意したまでだよ
キョンの苦手箇所を補強するように作ったんだ
言っただろう一年近く一緒にいるって。それぐらい僕にも分かるさ
しっかり取り組めば試験が大分楽になるよ」
そう言われても俺はなかなか受け取る気がしない
佐々木は俺に渡すかわりに俺のカバンにブツを入れてしまった
他にもまだテキストがあったらしく
自分のカバンからなにやら取り出して俺のカバンに入れた
俺は早速余計な苦労を背負い込んだらしい


24 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/16(月) 21:36:56 ID:aswHNgWc
結局今年貰えるチョコは例年と同じく
家族からだけだと思っていたのだが…
「なんだ?」
家に帰って晩飯までの間佐々木からくれたテキストに取り組もうと
カバンを開けたら小包が入っていた
小包には『キョンへ』とだけ書かれカードと
簡素な飾り付けがされたチョコレートが入ってた
俺宛てなのは間違いないだろうが差出人が不明だ
佐々木か?いや、違うだろう
あいつのプレゼントはこのテキストだし
こんな真似するような奴ではない
では誰だろう?
カバンの一番上にあったから佐々木がテキストを入れたより後だろうが
はて?そんな時間があったのだろうか?
あの後佐々木とまだ少し喋っていたからその間にいれたのだろうか?
しかしそれだったら気付かない訳がないし
直接渡してくれても良かったのだが
「分からん」
まぁ、特に凝った作りではないから義理だろうと結論づけた

チョコの差出人は北高に通っている今現在も不明である


『バレンタインと鈍』

佐々木スレ1-661 佐々木×キョン

2007-04-11 | バレンタインss

661 :1:2007/04/07(土) 20:26:44 ID:VTQyrs5c
「ところでキョン。キミは今日が何の日か覚えているかね?」
 塾の帰り。いつもの如く佐々木と二人でバスを待っている時に、唐突にそんな問いかけをされた。
 今日?はて、今日は何かの記念日だっただろうか。
 学校にはいつもどおり通い、これまた塾のある日の定番で佐々木と自転車二人乗りで塾までやってきたのだから、
国民の休日とかで無いのは確実だ。
 だとすると休日とかとは関係の無いなんらかの記念日か何か。それも佐々木が話題を振ったからには、俺も知って
いる、俺達にカンケイのある何かだということになるわけだが。えーっと今日は確か二月の……何日だ?
 などと塾で疲れた頭を空転させている俺を見て、佐々木はくっくっと彼女独特の笑い声を漏らした。
 なんだよ。何かおかしかったか?俺。
「ああ、可笑しいね。世の中の平均的な男子中学生なら意識せずにはいられない日だろうと言うのに即座に出てこな
い辺りが特に、ね。――まあ、実にキミらしい、とは言えるのかも知れないが。」
 なんだそれは。
 平均的な男子中学生が意識せずにいられない日だって?
 二月のそういうイベントというと、えーっと確か今日の日付は十――あ。
「――バレンタインか。」
「そのとおり。セントバレンタインズデーだ。諸外国ではどうあれ、この日本では女性が好きな男性にチョコレートを贈
る日とされているようだ。」
 なんてこった、塾で入試当日までのカウントダウンばかりを刷り込まれていたせいかすっかり忘れていた。
 確かに今日は妙にそわそわしている奴がいるかと思えば、靴箱を緊張した面持ちで開けて直後にがっくり肩を落と
す奴がいたりと変な行動をとっている奴が多いなと思ってはいたのだが……。
「気にしている様子が無いのは気が付いていたが、まさか忘れているとまでは思っていなかったよ。キョン。キミは以
前、僕に“振る舞いを改めれば異性にモテるようになる”などと禄でもない事を言ったが、それをそのままキミにお返
しするよ。キミがモテたければ、もう少しその鈍感さを改善したほうがいい。」
 余計なお世話だ。


662 :2:2007/04/07(土) 20:28:54 ID:VTQyrs5c
 大体バレンタインなんて毎年母親と妹がチョコを買ってきて二人で半分以上平らげてしまうのが定番のイベント
なんで、覚えとく価値すらなかったのさ。
 製菓業界の陰謀にのっかるのも癪だし、バレンタインとかいうおっさんの記念日をキリスト教徒でも無い俺がわ
ざわざ覚えておかなきゃいけない理由もないだろうが。
「聖ウァレンティヌス。キリスト教の司祭で、兵士の婚姻を禁止したローマ帝国皇帝の命令に逆らって兵士を結婚
させたことで2月14日に処刑された……なんてことになってはいるがね。実際にはクリスマスと同じで、もとはキ
リスト教が浸透する以前からあった他宗教の祭を取り込むための方便に使われたというのが正確なとこなんだ
ろう。ま、覚える必要が無いという点に関しては同感だが。ただ、製菓業界の陰謀、というのは正確ではないね。
バレンタインの贈り物にチョコレート、というのは日本だけではなくて外国でも定番だ。日本が特殊なのは、その
贈り物がチョコレートに限定されている点と、女性から男性に、という縛りだ。女性の社会進出が叫ばれて久しい
というのに、この習慣が改められないのは何故なんだろうね?」
 そんなこと俺に聞かれても困る。
 いや、そもそもなんで俺達はバレンタインについて真面目に語り合ってるんだ。
 確かに忘れてたのは迂闊だったが、もとより関係ないのだからそれでかまわないんじゃないか。
「個人的には同意見だね。ただ、クラスの皆は異なる見解をもっているようだ。特に女子達はね。まあ、同意はで
きないが理解はできる。僕達は中学三年生で、もうすぐ卒業だ。中学校最後のイベントとして良い思い出が欲しい
というのは誰しもが思うところだ。意中の相手が違う高校を志望している者は最後の機会に、ということもあるのだ
ろう。――実は先日来女子のグループの中ではバレンタインの話題ばかりなんだ。」
 そうだろうな。
 そういう気持ちは俺もわからんでもない。
 これでこの話題を振ってきたのが他の誰かならもうちょっと思うところもあるだろう。
 だが目の前にいる奴は恋愛感情は精神的な病の一種などと言い切るような奴なのだ。
 この手のイベントを好むとも、ましてや参加しようなどと思うとは思えん。
 俺がそう言うと、佐々木は何故かまた喉の奥でくっくっと笑い声をあげた。
「そのとおりだよ、キョン。キミが僕の事を理解してくれているのは実にうれしい。確かに僕はこの手のイベントには
何の興味も無いし、参加したいとも思わない。だがね、人生というのは往々にして個々人の意のままになるとは限
らないものなんだよ。その証左が――これだ。」
 妙に芝居がかった口調でそう言うと、佐々木は俺の鼻先に手を突き出した。


663 :3:2007/04/07(土) 20:30:07 ID:VTQyrs5c
 その手の先にははたして小さな箱が吊り下げられていた。
 可愛らしい包装紙と可愛らしいリボンでデコレーションされた、小さな小箱。
 なんだ?これは。
「……キョン。キミが本気でこの箱の中身が解らないというのなら、友人として一度医者にでも診てもらうことを
進めるが?」
 いや、すまん。わかってる。わかってるとも。
 さっきからの話の内容から考えるまでも無く、この可愛らしい装飾の小箱の中身がバレンタインのチョコレート
であることには微塵も疑いの余地も無い。
 だが、一体どういう風の吹き回しなんだ、これは。
「うん。さっきも言ったように、僕はバレンタインなんかにはなんの興味もないし。参加したいとも思わない。だが
ね、そのことを友人達に話したらね、それでは駄目だ、と言われたんだよ。何が駄目なのか理解できなくて聞き
返したんだが……どうやら彼女達は僕がキミにチョコレートをあげるものと思い込んでいたらしい。」
「はあ?」
 なんでそうなるんだ。
 思わず素っ頓狂な声をあげた俺の反応に、佐々木は爆笑をこらえるような表情で喉を鳴らした。
「いやいや、キミならそう言うと思ったよ。予想したとおりだ。――怒るなよ。別に馬鹿にしている訳じゃないんだ。
僕のキミに対する理解が間違っていなかった事が立証されたのが愉快だった。ただそれだけのことなんだ。
……話を戻すよ。そんな訳で僕は彼女達にキミにチョコレートを渡すように迫られたんだ。無論、断ったさ。でも
ね、一緒に買いに言ってあげる、とまで言われて否と言えるほど僕も空気の読めない人間ではないつもりなの
でね。まったく。他人の事情にどうしてあそこまで必死になれるのか理解に苦しむよ。……ところで僕はいつま
でこれをぶら下げていればいいのかな?そろそろ手がだるくなってきたのだが。よもや受け取り拒否などとは言
うまいね。バレンタインに贈り物の受け取りを拒めるルールがあったなどとは寡聞にして知らないのだが。」
 いや、受け取る。受け取るともさ。
 どんな相手からのものであったとしてもバレンタインにチョコを貰ってうれしくない、なんて思うわけもないし、
それが佐々木からのものならなおさらだ。
 もし受け取りを拒むような奴がいるとしたら連れて来い。小一時間説教してやる。


664 :4:2007/04/07(土) 20:32:08 ID:VTQyrs5c
「喜んでくれてなによりだ。正直肩の荷が下りた様な気分だよ。さして意味のあるものではないと思ってはいても、
実際贈るとなると中々気を使う。これでも色々と悩んだんだよ。どれにするか、とかいつ渡すか、とかね。製菓業
界もここぞとばかりに多彩なチョコレートを売り出しているし、正直参ったよ。慣れない事はするもんじゃないね。
一緒に来た友人は手作りを勧めてくるし。ああ、もちろん丁重にお断りしたよ。技術もないし、正直文字なんて何
を書けばいいものやら。まあ、とりあえず無難なものを選んどいたつもりなんで、早めに食べてくれたまえ。」
 ああ、喜んでいただかせてもらうさ。
「うん。そうしてくれ。……と、バスが来たな。それじゃあ、キョン。また明日。――ああ、そうだ。言い忘れていた。」
 バスの中に入りかけた佐々木は振り返って言った。
「なんだ?」
「一ヵ月後のイベントだが。忘れてしまって構わない。いや、むしろ忘れてしまってくれるほうがありがたいね。バレ
ンタインだけでも十分理解しがたいのに、ホワイトデーなんて奇怪なものにつき合わされるのは勘弁願いたい。」
 まあ、そういうなよ。
 毒喰らわば皿までって言うだろ。
 せっかく佐々木が意に沿わないながらもバレンタインのチョコをくれたんだ。
 せいぜい俺も慣れないホワイトデーのお返しを考えるさ。
「バレンタインを忘れていたキミの言葉にあまり信用がおけるとも思えないね。まあ、期待して待ってるよ。――ど
ちらかといえば忘れてくれてるほうをね。それじゃあ、キョン。こんどこそ、また明日。」
 ああ、また明日。
 挨拶もそこそこにバスのドアは閉まり、佐々木を乗せたバスは夜の向こうへと走っていった。


665 :5:2007/04/07(土) 20:33:43 ID:VTQyrs5c
 後日。
 そのチョコレートの包みを開けたのは俺ではなかった。
 親に見つかるのも気恥ずかしかったので、とりあえず机の引き出しにしまったのだが、食べる機会の無い
うちに遠慮という言葉を知らないうちの妹に見つかって八割がた食べられてしまったのだ。
 よって俺が見たのは、おそらく元はハート型だったのではないかと思われるチョコレートのかけらと、そこに
ホワイトチョコで書かれた“L”の文字。
 それと『今後ともよろしく』なんて年賀状か季節の挨拶かと勘違いしそうな言葉が描かれたメッセージカード
だけだった。

 さらに後日。
 佐々木の予想通りホワイトデーの事をすっかり失念していた俺は、よりにもよって当日の朝に母親に指摘
され、あわてて買いに行くハメになった。
 それを佐々木に言うと『それは残念』と一言だけ言われた。
 しかし、まあ。ちゃんと受け取ってはくれたし、機嫌は良さそうにしていたので俺にしては上出来とでも考えて
おくことにしよう。
 やれやれ。

佐々木スレ1-446 佐々木×キョン

2007-04-11 | バレンタインss

446 :1/4:2007/04/06(金) 02:30:07 ID:hr2ujpZ/
4枚。佐々キです

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あれは2月半ばの登校日だっただろうか。
当時中学3年生の三学期などと言うほとんど学校へ行く事もない時期を過ごしていた俺は、
1月前半辺りまでこそ件の塾へ冬期講習なんぞに参加していたものだが、
その講習も終了すると共だって参加していた佐々木にもパタリと会わなくなり、
家に篭って受験生らしく受験勉強に励む日々が続いていた。
そんな中での久々の登校日で、気分転換にはちょうど良かった。
しばらく会ってなかった奴らとも話したくなってきた頃合だ、
なんて事を思いながら教室を覗けば、何のことはない、同じような事を考えてる連中は
多いようで、その喧騒で教室内はかなりの盛況ぶりを見せていた。
「やあ、キョン」
声を掛けながら近付いてきたのは佐々木だった。既に本命の私立に合格決定し、
どことなく余裕が感じられる。この時期に手すきとは実に羨ましい事だ。
「ところがそうでも無いのさ、高校の予習が中々面倒でね。
 まったく、受験が終われば4月までは勉強しなくてもいいと思ってたんだが、ね」
おどけた調子でぼやいてみせる佐々木。
そんなものかね。本命の試験が控えている俺にとっては、
既にこのプレッシャーから解放されているというだけで十分な羨望の理由になるぜ。
「そうか、キョンは市立だったね。今までの首尾はどうだ?」
「とりあえず安全圏の私立に仮内定ってとこかな。
 金が掛かるから、あまり行く気はしてないけどな」
「ほう? キミがそんな殊勝な事を考えていたとはね」
佐々木が喉の奥でくっくっと笑う。
「そんなんじゃねえよ」
何しろ私立へ行く事になった場合は小遣いが増えないのだ。
遊び盛りの年頃なのに自由になる金が少ないのは侘し過ぎる。
「くく、なるほど。ではそんな殊勝なキミにプレゼントを賜ろう」


447 :2/4:2007/04/06(金) 02:32:48 ID:hr2ujpZ/
プレゼント? 何だそりゃ。
「これだ」
鞄の中から取り出されたのは、綺麗な包装紙に包まれた小さな箱。
「最近ちょっと煮詰まっててね、気晴らしを兼ねて試作してみたんだ」
中に入っていたのは、これまた小さくて、黒い菓子。
「へえ? お前、菓子作りの趣味なんてあったのか」
ひとつを摘み、口へ放る。
にがい。
「ぐお……」
思わず絶句する俺。見れば、佐々木の奴は体をくの字に曲げて笑っている。
こいつ、知っててやりがったな。いやしかし、それよりこの口の中のこれを何とかしなければ……苦い。
「ふ、くく、すまない。そんなに見事なリアクションを貰うとは予想外だったよ、ふふ」
あのなあ。思わず頭を抱える。
「いや、悪かった、くく。しかし、それを作ってみて解った事もある」
何だ、それは。
「僕の進路から、少なくともパティシエとか、そういうのは無くなったわけだ。
 他にも色々とやってみたが、どれもどうにも上手くいかない。何せその」
俺の手の中にある箱を指差して
「チョコレートですら、多少はまともにできたかと思えばその有様だ。
 作ってる時は中々楽しめるんだがね」
そういうもんかね。まあ佐々木的には楽しめてるのでオッケーと言うことらしいし、
気分転換の手段の一つとしては合っているのかもしれん。
俺の場合はどうだろうか、などと漠然と考えながら、無意識にもう一つ。
何だろうね、この苦さは。


448 :3/4:2007/04/06(金) 02:33:55 ID:hr2ujpZ/
それから一月ほど経って、俺たちも卒業式を迎えた。
俺はと言えば北高への入学手続も終わり、今や晴れて自由の身だ。
長いようで実際長かった3年という期間も、終わってしまえば正にあっという間であり、
高校での3年はどうなるものかと脳裏を過ぎったが、まさかあんな連中と遭遇するとは
この時は夢にも思っていなかった。まあそれはいい。
校長やら何やらの長い話を前日遅くまで起きてたせいで胡乱な頭で流しつつ、
卒業式が終わる頃には眠さから来るだるさもあってか、すっかり体が冷えていた。
暖房もろくに効かない講堂に何時間も詰めさせられてりゃ当然だ。
「佐々木」
講堂から教室へ戻る道すがら、佐々木に声を掛けた。
「キョン。何か?」
「お前、打ち上げまでどうする?」
打ち上げというのは卒業式の後、卒業生が集まって行うパーティのようなものの事だ。
うちの中学では定例化していて、俺も佐々木も一応出ることになっていた。
「いや、特に考えてないな……なんだ、何か振舞ってくれるのか?」
くく、といつもの笑い。
「こないだお前にキッツイやつをお見舞いされただろう、あれのお返しさ」
「謹んで遠慮しておこう」
すまし顔で返答されてしまった。
「……と言いたいところだが、キミが何を作ったのかは興味をかき立てられる。
 いいだろう、その挑戦、受けて立とうじゃないか」
不敵な笑顔。挑戦て、お前ね。


449 :4/4:2007/04/06(金) 02:35:44 ID:hr2ujpZ/
その後。学校が終わり、俺は佐々木と自宅へ帰ってきた。
「また随分とユニークなものを作るものだね」
得体の知れないものを見るような目で佐々木は差し出された皿の上のそれを観察している。
あまり見てるなよ、観察したところでぼたもちなんぞに観測選択効果が働くわけも無く、
したがって美味くも不味くもなったりすまい。それより何より、
うちの余り食材でこしらえたもんだからな、あまり期待されても困る。
佐々木が箸を取り、含みやすく分けたそれを口へ運ぶ。跳ねた鼓動が一度。
「……うーむ」
佐々木は何やら納得のいかない顔をしている。
「和菓子よりと言うのは僕の思考には無かったな……」
どういう感想だよ、そりゃ。よくわからん奴だ。
「なに、予想以上だったんで驚いているところさ。
 キミの隠れた特技とでもいったものを知った気分だよ」
何言ってやがる、そんなもんじゃねえよ。俺も「気分転換」をしたくなっただけさ。
「はは、そうか」
佐々木はなぜか嬉しそうに笑っていたが、やがてそれが例のくつくつ笑いに変わり、
「しかし余り食材にもち米があるとは、キミの家は変わってるな」
悪戯っぽい笑みを浮かべた、佐々木の黒い瞳が俺を見つめていた。
……観測選択効果っていうのは、人間の心理にも有効なのかね。
---

連投引っ掛かってしまった...失礼しました
時候恋愛イベントを意識しないように意識している風の2人のつもりですk
つーかどこの世界にホワイトデーで手作りぼたもちを返す男がおるのかと小一時間

あとやっぱりというか、バレンタインは倍率高いですね
プリンの例の読んで相当効いた

佐々木スレ1-261 佐々木×キョン

2007-04-11 | バレンタインss

261 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/04(水) 23:22:16 ID:qu4yOazI

 キョン、世間一般の動向を鑑みるに、今日は親しい男性に贈り物をする日らしいね。

 僕は製菓業者の策略にほいほいと嵌るような素朴なな人間じゃないつもりだったんだけど、

 君という友人が出来たのも何かの縁だ、一つ連中の掌で踊ってみようと考えてね、

 試しにバレンタインデーとやらに参加してみることにしたのさ。殊勝だとは思わないか?

 もっとも、このチョコが君の口に合うとは保障出来ないがね。くっくっ。