【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ7-904 「こんなに近くで...佐々木ver.」

2007-05-15 | 中学卒業ss

904 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/15(火) 02:28:51 ID:qltrUJQm
>>893
 待ってました。すばらしい!! 最高です。GJ



 そんななか、歌ネタです。
 Crystal Kayの「こんなに近くで...」佐々木Ver.

 知ってる人も多いだろうけど、長門ver.のMADみちゃって、もうどうにも堪らなくて。
 佐々木版のSSかいちった。
 3レス予定。


905 :こんなに近くで...佐々木ver. 1/3:2007/05/15(火) 02:31:28 ID:qltrUJQm

 そのノイズが僕を襲うようになったのは何時のことだったろう。よく、覚えていない。
たぶん、それは彼に会ってから、彼と友達になってから、最初は小さくて、僕の耳に届いてい
なかった。だけど、それは、春を越えて、夏を過ぎ、秋を迎え、そして冬に至る頃にはよく聞こ
えていた。

 中学校の卒業を前にした最近の私は眠りが浅くなったような気がする。ひどく夢見が悪い
のだ。
 夢の中で私はいつもひとり、真白な部屋でひとり、彼が来るのを待っている。彼が来てくれ
ないかって泣いている。逢いたいって、声をききたいって、アイシテルって告げたいって。起き
たとたんにそんな夢は忘れる、忘れなきゃ……いけない。だけど、そんな時はなぜだか、私は
泣いているのだ。即座に自己嫌悪が襲ってくる。彼はずっと僕に友情をくれたではないか、私は
その締めくくりに彼を裏切るつもりなのか? 嫌だそんなのは嫌だ。別れ際くらいクールに行こう。
 うそつきな僕は、私のささやきを無視する。


 ノイズは毎日、僕を襲う。彼に挨拶をしている時、彼とちょっとした雑談をしている時、
彼と真面目に勉強をしている時、不意にそれは襲ってくる。
 こんなに近くで見つめているのに、どうして、ただの友達なの。
 くだらない繰り言だ。僕はこんなノイズに耳を貸したりはしない。彼は僕に好意を、持って
くれてる、でも、それは友人としてのものだ。僕にはそれが必要だった。僕にはそれで十分
だった。愛してるなんて言って何になる。それは僕が彼の笑顔を失うだけのことじゃないか。
 だけど、どうして、こんなに、毎日、毎日、胸が苦しくなるのだろう。こんなことなら、彼と
トモダチにならなければ……よかった?
 いや、そんなはずはない。そんな訳はない。もう一度、あの春の日に戻っても、僕は彼の
友達になりたい。


 卒業式もほど近いある日、久しぶりに彼の自転車の後ろに乗った。つい先月まで毎週二回
欠かさずに乗っていた場所だった。でも、ちょっとした間に、そこは知らない場所のように固く
私を迎えた。
 あと何回、この自転車に乗れるのかな?
「別に、こんなの乗りたきゃ、いつだって乗せてやるよ」
 彼はぶっきらぼうに、そう言って、いつもと同じように微笑んだ。いや、私には彼の背中しか
見えていないから、本当は違うのかもしれない。でも、彼とはもう一年も付き合っているのだ。
こんな時、彼は何時だって、困ったように微笑んだ。私の大好きな彼の表情を、私は何度も
見ていた。
 彼に確認を取った訳じゃない。でも、もうお互いわかっていた。もうすぐ卒業、こんな日は、
彼とふたりで彼の自転車に乗ることなんて、もう二度とないって。
 彼の声には応えず、あいまいに微笑んだ。たぶん、伝わっている。彼の背中からそう感じた。
こんなに微妙なものは伝わるのに、彼に伝えたいほんとの気持ちは伝わらない。
 ノイズが、耳触りな雑音が、聞こえてくる。
 もう止めて、こんなのもういや、どうして言わないの、私たちもうお別れなのよ。情けない
自分が心のどこかで悲鳴を上げた。
 大好きなのに、彼のことアイシテルのに。
 ほんとは、ほんとは、ずっと好きだった。
 いつでも、いつでも、愛し続けてた。
 こんな気持ちは意味のないノイズだ。卒業したからといって彼との友人関係がなくなる訳で
はないはずだ。それともこんなノイズに身を任せて彼との掛け替えのない絆、友情すらも失う
つもりなのか、僕は。
 二度と、彼の笑顔がまっすぐ見れないかもしれない。彼のそんな顔は見たくない。私のそん
な顔は見せたくない。でも、なぜ無視しきれないのだろう。


906 :こんなに近くで...佐々木ver. 2/3:2007/05/15(火) 02:33:26 ID:qltrUJQm
 卒業式。

 無事に式を終えた私たちは、何となく立ち去りがたく、体育館の前で、写真を撮ったり取ら
れたり、していた。部活動を行なっていた生徒は後輩と何かを喋っている。特に誰に声を掛
けられるわけでもないのに、桜の下、彼を待っていた。
「どうした、調子、悪いのか? それとも泣けちゃったとか?」
 巫山戯たように声を掛けてくる彼、欠伸をする振りを加えて、答える。
 単に寝不足なだけだよ、最近買った本が面白くてね、昨日遅くまで読み込んでしまった。
ほとんど、徹夜みたいなものだね、まったく今日がハレの日だってことぐらい知っていたのに
ね。この年になっても、押さえがたい気持ちというのはあるものだ。
 一番大事な人にも嘘ばかり、一番大事な事も告げずに、嘘ばかり。
 ヤメロ、ナニを言うつもりだ。ヤメロ。
 ほんとは、ほんとは、ずっと好きだった。いつでも、いつでも、愛し続けてた。
「……ありがとう……僕と友達になってくれて。……この一年、キミといられて、楽しかった、
充実していた。この中学での三年間を、キミと出会ってからの一年間を僕は忘れない、決して」
 こんなに、こんなに近くにいるのに、こんなに、こんなに強く思っているのに。どうして、
あなたには伝わらないのだろう。伝えられないのだろう。
 最後に彼に掛ける言葉が、自分の本当の気持ちで最高の嘘だなんて。
「ああ、俺もだ。ありがとう」
 向こうから級友が彼を呼んだ。なんども、なんども、彼を呼んだ。
 それじゃあね、手を振って別れた。
 卒業証書の入った筒を振って彼は背中を向けた。彼の背中が遠くなる。
 行かないで、行ってしまわないで。
 ほんとは、ほんとは、ずっと好きだったの。
 ずっと、ずっと、見ていたの、毎日、毎日、見ていたかったの、大好きなの、大好きだったの。
 いつでも、いつでも、愛していたの。
 いつでも、どこでも、なんどでも、告げたかったの。
 笑うことができない。
 頬がこわばる。
 喉から音が、漏れる。
 瞳が熱い。
 ……ダメだ。泣くな、彼が気づく。
 “僕”はそうじゃない。そうじゃないだろう。
 笑うんだ、唇を振るわせるな、平静を装うんだ。
 いつもしていることじゃないか、最高の笑顔を彼に刻むんだ、
私のことを彼が忘れてしまわないように。

 微笑んで、彼を見送った…………。

 アイシテル、空にささやく。
 I'm so in love with you.

 空を行く雲と散る桜だけがそれを聞いていた。


907 :こんなに近くで...佐々木ver. 3/3:2007/05/15(火) 02:34:17 ID:qltrUJQm
Epilog
一年後。

 自転車置き場にその背中を見つけた時、時間が止まったような気がした。
 あの春の日に戻れたような気がした。
 何度も、何度も夢見た背中。
 失ってしまった気持ちが耳に心地よいノイズを送り出す。もう、迷わない、もう、間違わない、
もう、見失わない。
 ほんとは、ほんとは、ずっと好きだった。いつでも、いつでも、愛し続けてた。
 彼のよく知っている僕の笑顔を浮かべる。
「やぁ、キョン」

佐々木スレ6-104 佐々木×キョン

2007-05-06 | 中学卒業ss

104 :18:2007/05/05(土) 23:14:44 ID:0RE1JwLp
桜が舞う・・・にはもう少しといった感じの、それでも肌寒さを感じない程度に
適度な暖かさを感じながら俺は中学の3年間を今日、終えた。
つまり、今日は中学の卒業式だ。

「これからは寂しくなるね。キミと会ってからの一年はまさに光陰矢の如く早かったように思えるよ。
僕の中学生生活においてもっとも輝かしい期間だったよ。」

感慨深くそう述べる佐々木だが、そこまで言われると逆に気味が悪い。
そんなに俺のことを持ち上げても何も出てきやしないぞ?

「くっくっ どうやら僕はこの一年でキミに図々しい女だと見なされていたらしいね。
同じ校舎で同じ時間を過ごせるのは今日が最後なんだ。
惜別の言葉くらい送ってもかまわないだろう?」

やれやれ、と口にしようとしたが佐々木の言った通りだ。
これで俺と佐々木の関係も終わる。いや、別に付き合ってたとかじゃなくてだな、
友人としての関係という意味であって・・・って俺は誰に弁解しているんだろうね。

「確かにな。お前みたいな奴とは二度とお目にかかれないだろうな。」
「だろうね。安易なトートロジーを述べるつもりはないのだが、僕は僕であって
僕以外の誰でもないのだからね。それに・・・キミもね。」

最後の言葉に変に熱がこもっていた気がしたが気のせいだろう。

それにしても、この小難しい話しも今日が最後かと思うと今更だが寂しくなるな。


106 :18:2007/05/05(土) 23:18:10 ID:0RE1JwLp
などと思っていると佐々木がポツリと呟いた。

「ねぇ、親友。僕のこと、忘れないでおくれよ?」





俺が佐々木に(でなくても他人に)キョンではなく親友と言われるのは初めてだ。
ついでに言うと俺の本名及び苗字はあだ名を知られて以来言われていない。

佐々木がなぜ俺を「親友」と呼んだのか。その心中はわからない。
だが、いくら俺でもこんな場合なんて答えなければならないかはわかっているつもりだ。


若干の気恥ずかしさを覚え、俺は頭を掻きながらこの一年間の佐々木との思い出を胸に秘めこう答えた。

「あぁ、当然だ親友。」

もし佐々木を忘れることのできる奴がいたとしたら俺はそいつを24時間体制で監視したいものだね。

「そうかい。くっくっ ありがとう。キョン」
いつも通りの独特に笑う佐々木の表情は、今まで見たことのないような綺麗な笑顔だった。


桜が舞うにはもう少し・・・と言ったが前言撤回だ。桜はここにさいていたんだな。




やっとSSが書けたのだが他の職人が神過ぎてなんか見劣り感が・・・orz

佐々木スレ4-149 「桜」

2007-04-25 | 中学卒業ss

149 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/25(水) 02:37:43 ID:7P01I8/I
「桜」

 散る桜は美しい。日本人に流れる遺伝的な何かがそう思わせるのか、それとも、卒業式を間近に
控えた俺にも、なにがしかのメランコリックな感性が働いているのか、まったくもって不明だったが、
風に舞い散る薄紅色の花びらは確かに俺の心に響いていた。

「綺麗---だな」

 だから、自然に賞賛が口からこぼれた。その言葉が聞こえたのだろう。
 佐々木は静かに振り返った。舞い散る花びらの中、
もうすぐ着納めになる中学の制服を着た佐々木は同意を込めて、微笑んだ。
「ん、そうだね。冬には冬の美しさがあるが、やはり僕は春の美しさが好きだな」
 俺は夏が好きなんだ。寒い時期は早く終わってくれればいいとしか思えないがね。
「キミも日本人なら四季折々の風情を、その時々でちゃんと楽しむぐらいの余裕を持ちたまえよ」
 この一年、そんな物を楽しめた記憶はないね。
こちとら、受験社会の底辺を青色吐息で生きてきたんだ、そんな余裕はなかったぜ。
「やめろよ、キョン。すべては終わったことじゃあないか、もう僕らは受験生なんかじゃない。
この春から高校生になる卒業間近の中学生なのだ。
今更、受験なんて言葉を僕の耳に届かせないでくれたまえ」
 両手を上げて降参し、心ばかりの謝罪を述べる。確かに、もう終わった話だ。
昼前まで惰眠をむさぼっても、何も言われない自由が俺の元には戻ってきたのだ。
願わくば、この自由を一日でも長く保っていたいもんだ。
「キミの友人として、忠告させて貰うが、そういう風に自堕落に時を浪費するのはあまりよい習慣
とはいえないぞ。諸行無常、世界を見回してみたまえよ。昨日と同じ今日なぞないのだ。キミが
惰眠をむさぼる間に、桜は花開き、散っていく。ふくらんでいくつぼみの持つ生命力も、花散った
後に分かる若葉の美しさも感じ取ろうとしなければ分からないものだ」
 うへぇ、ご説ごもっとも。肩をすくめ、両手を制服のポケットに突っ込む。
 佐々木にお説教されるのも、これが最後かもしれないからな。精々心に刻ませてもらうとするよ。
「そうだね、キミに投げる言葉もすべて最後かと思うと、とても大切に感じるよ」
 そう言って、佐々木は顔を伏せた。そうだった、コイツは市外の私立に行く。
俺の偏差値じゃ逆立ちしたって届かないような進学校。俺は北の方に見える山際の県立高校だ。
これから毎日、あのハイキングコースを行くのかと思うと、めまいがする。
そう、こんな毎日も、もうすぐ終わる。
 今日が先月なら佐々木を乗せて塾に自転車を走らせている時間だ。俺がコイツを自転車の荷台
に載せることももうないのだろう。そして、きっと俺はすぐに自転車の軽さに慣れてしまうのだ。
 その時、風が吹いた。佐々木が髪の毛を軽く押さえる。風にひるがえるスカート、桜の花びらが
俺の視界を閉ざす。俺はなぜだか、佐々木がそのまま風に消えてしまうのではないだろうか、
そんな気持ちになった。
 思わず、右手が伸びた。
「きゃっ」
 佐々木が可愛い悲鳴を上げてうろたえた。いや、うろたえているのは俺の方だ。
何で俺は佐々木の手をつかんでいるんだ。これが桜の魔力だろうか。
「どうしたんだい急に」
 佐々木はそう言って微笑みを返す。俺の手をふりほどいたりはしない。


151 :桜 2/2:2007/04/25(水) 02:39:46 ID:7P01I8/I
「自転車に乗ろう」
 は? 俺は何を言っているのだ。わけがわからない。ほら、佐々木が困っているじゃないか、
はやく取り消すんだ。
 佐々木は、唇の端を器用に曲げて、悪戯っぽい笑みを漏らした。
「いいね、こんな陽気と桜の中をサイクリングするのはとても気分がいいだろうね。ねぇキョン、
もちろんキミの自転車に僕を乗せてくれるのだよね」
 なぜだか、急に気恥ずかしくなり、俺は佐々木から視線と手を外し、ぶっきらぼうに承諾を告げた。
使い慣れた自転車を取って来るべく、もと来た道を戻る。その時、そっと左手に手が添えられた。
「僕も行くよ、キョン。一緒に」
 佐々木の手は小さく、俺の手のひらにすっぽりと包まれていた。ああ、そうだよな。
佐々木は女の子なんだよな。ずっと、分かっていていいはずのことが今更のように分かる。
だが、それももう遅い。
 もうすぐ、別れがやってくる。そして、それをどうにかすることはできなかった。
もちろん、俺たちの関係を破壊してしまえばそれは可能なのかもしれない。
いや、きっと可能なのだろう。
 だけど、そうしようとは思えないのだ、俺には。そして佐々木にとってもそうだと確信できた。
 自転車にまたがる。慣れたもので、佐々木は横座りでちょこんと荷台に座った。左手を腰に回してくる。
自転車を揺らさないようにゆっくりとペダルを踏み込んだ。
 舞い散る桜の中、ふたりで自転車を走らせた。桜の花びらが綺麗だった。そう、散る桜は美しい。
その時、背中にぎゅっと佐々木の頭が押しつけられた。
「すまない。しばらく、振り返らないで、声を掛けないで、背中を貸していて」
 その声には応えなかった。だけど、気持ちは伝わっている。佐々木とはそういう関係だ。
 ああ、いくらだってそうするよ。熱い物が胸の奥と背中に染み渡った。

 桜舞い散る春の日のことだった。

佐々木スレ2-891 佐々木×キョン

2007-04-16 | 中学卒業ss

891 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/16(月) 02:04:24 ID:iIVsEP39
小学六年生の頃、三年前といえばかなり昔のことだったのだが、
中学三年になった今、振り返ると三年前の入学式がつい最近のことのように思える。
誰が言っていたのか知らないが、年を取るごとに体感時間は短くなっていくらしい。
年を取るごとに月日の過ぎるのを早く感じることを考えると、人間二十で人生の半分は終わったようなものらしい。
「ほぅ、君も最初に出会ったときと比べればなかなか博識になったものだね。
 君は物事を理解できるほどの知識はあるのに、こっちの話を知らない程度に無知というのが僕の認識だったのだが、
 いつの間にか僕を感心させるほどの知識がついていたとは。今度から認識を改めなければならないな」
そりゃ一年間もお前と付き合っていればそれなりに博識にもなる。
って言うか、お前それは褒めてるのか貶してるのかどっちだ?
「褒めているのさ。僕にとって君は最高の聞き手だったからね。
 君という最高の聞き手を失うと考えると、やはり残念な気分だよ」
俺と佐々木は校庭の隅で卒業式の余韻に浸るみんなを眺めていた。
抱き合いながら涙を流す女子、部活の後輩に胴上げされる男子、
後輩に迫られて第二どころか袖口のボタンまでむしりとられている奴……羨ましくはないぞ。断じて。
桜舞い散る校庭で、それぞれ思い思いの時間を過ごしている。
今日が三年間過ごしてきたこの学校との、この仲間たちとの別れの日。
俺のこの学校最後の瞬間を佐々木とともに、桜舞う卒業風景を眺めて過ごしている。


892 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/16(月) 02:05:35 ID:iIVsEP39
「そういえばキョン。卒業文集は見たかい?」
卒業文集ってアレか? たしか須藤たちが中心になって作っていた奴。
「将来の夢を書け」と渡された原稿用紙には適当なことを書いて出した記憶しかないが。
「君の将来の夢というのもなかなか気になる案件だが、僕が気になったのは19ページのところだよ」
卒業記念品やその他いろいろが詰まった鞄の中から、卒業文集を引っ張り出す。
19ページね……ぺらぺらとめくった先は、クラスのアンケートを集計したものだった。
クラスで一番かっこいいのは?とか、無人島に連れられていって最後まで生き残りそうなのは?とか、
そういった類のアンケート結果ががずらりと並んでいる。
そういえばそんなアンケートもあったな。
俺の名前がどこかに入っていないかと、ペラペラ目を通していると、
「げ……」
まさか、と予想外のところに俺の名前が入っていた……佐々木の名前とともに。
「クラスのベストカップル!?」
「そうだ、惜しくも一位は逃したが、堂々の二位に輝いたみたいだ」
ちょっと待て。いつの間に俺と佐々木が付き合っていることになっているんだ?
確かにクラス内では佐々木と話す機会が多かったし、一番仲がいい女子といえば佐々木だろう。
だが、佐々木と俺がベストカップル? Why? 何故?
「この場合、当人同士が付き合っているかどうかは瑣末な問題だ。用は周りから見て、
 どれだけ二人がベストカップルに見えたかどうかを問う質問だろ?
 僕たちが周囲にどのように思われていたかを問う、実に興味深いアンケートじゃないか」
佐々木はいつものようにくっくっくと笑う。
おい、佐々木。この結果について不満には思わないのか? 当人の知らぬ間に、カップルにされてるんだぜ?
「では逆に聞くけど、キョン。僕と君が付き合ってると思われるのは、嫌かい?」
佐々木がついっと一歩踏み出て、俺の顔を下から覗き込む。
いつも意識していなかったから気づかなかったけれど、ほんのりと香る髪の香りは女の子のもの。
今まで気づかなかった佐々木の女の子らしさに、ドクッと鼓動が鳴る。
「キョンさえよければ、僕は……」
クラスの美人ランキングの方でも上位入賞していた整った顔が、俺の目の前にある。
すっと近づく顔、そのまま……
「なんてね」
ぴょん、と佐々木は一歩後ろに引いた。やわらかい髪の残り香を残して。
「確かに君と僕とは何の関係もない、ただの友達さ。だけれども、あまり男子に近づかない僕が珍しくキョンと仲良くしてるもんだから、

 周囲の気をひくのだろう。特に女子はそういった面が気になるからね」
お前も女子だろう、と言いかけた目の前を、ひらりと一枚の桜が舞う。
気がつけばまだ残っている生徒もまばらになり、在校生たちも教室に戻りはじめている。
そろそろ、ここにいるのも潮時だろう。
「さて、僕もそろそろおさらばするよ。君と次に出会えるのはいつになるか分からないが、
 できれば忘れないでいて欲しい。まあ町で見かけたら声でもかけてくれ」
「あ、ああ。もちろんさ。親友のことを忘れるわけないだろう」
佐々木は一瞬、畑を耕していたら古代の金印を発掘してしまった農家のように目を丸くし、
「くっくっくっ、そうか、その通りだ。君と僕の関係を示す最適な言葉が見つかったよ。ああ、そうか、親友か。悪くない」
いつものように喉の奥で笑った。
なかなかツボに入ったようで、目にはうっすら涙まで浮かんでいる。
おい、佐々木。そこまで笑うことじゃないだろ。
「いや、すまない。まさか君の口から親友って言葉を聞けるとは思わなくてね」
佐々木は制服の袖で涙を拭う。
袖で拭った佐々木の目は赤くなっていた。そこまで笑えることを言った覚えはないのだが……
「それじゃ、キョン。今度こそさよならだ」
コツンと卒業証書の筒を合わせて、佐々木はすたすたと歩き出した。
校門を通り抜け、佐々木が角を曲がり見えなくなるまで、
佐々木は一度も振り返らなかった。


893 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/16(月) 02:06:31 ID:iIVsEP39
「それ、誰?」
「ああ、こいつは俺の……」
「親友」
キョンが答える前に、僕が勝手に回答を出していた。
自分の回答権を僕に奪われてしまったキョンはビックリまなこで僕のことを見つめている。
君と最後に出会ったあの日を、まだ僕は鮮明に覚えているよ。
なんたって、僕は君の”親友”だからね。

佐々木スレ2-313 「恋人じゃなくて親友」

2007-04-12 | 中学卒業ss

313 :**恋人じゃなくて親友**:2007/04/10(火) 23:53:30 ID:286C73zC
「まさか、それほどまでとは」
古泉は眉間に中指を当て、
「まるで本当に無邪気な中学生同士のたわいも無い恋愛模様の1ページのようではありませんか」
恋愛という言葉に一瞬ピクリと反応してしまった俺を古泉が見逃すわけは無かった。
「…………どうやら彼女とあなたには、もっと深い想い出がありそうですね」
周りにはさぞ爽やかに見えるであろうこいつの微笑は、俺には悪党が人の弱みを握って
さぁどう脅迫してやろうかと考える時に見せるニヤケ面にしか見えなかった。
「何にもねーよ」
「さぁ、どうでしょうか。これは涼宮さんどうこうではなく、
 ただ単に僕自身が、あなたのこれまでの人生について興味があるだけなのですが」
強調するようにこう続けた。
「一般的な青春真っ盛りの高校生として」
思わずかなりの勢いで古泉のほうを振り向いてしてしまったため
椅子の背もたれに肘をぶつけてしまい非常に痛い思いをした。
「お、お前今青春っぽいことでもしてんのか、誰か気になるやつでもいんのか?」
「あなたの中学生時代の思い出を聞かせてくれたら……聞けるかもしれませんよ?」
古泉はニヤケ面を続けているが、俺はこいつの口車に簡単に乗せられるほど単細胞じゃないし
こいつがどういうやつかもそれなりには知ってるつもりだ。
まぁ………こいつの今までの恋愛経験とかにはかなり興味を注がれるが
自慢話を聞いたところで俺の気分がブルーになるのは必然の理だろう。
「仮にお前が期待するようなことが過去にあったとしても、
 俺はそのことを喜んで人に報告する趣味は無い」
俺は優男から目を離し、依然黙々と読書にふける長門に目をやった。
「それは残念です。……しかし、あなたは以前の会誌作成の際にそんな経験などないと
 頑なに否定し続けていませんでしたか?
 さらにあれほど追い込まれても、結局は妹さんの友達とのお遊び体験をお書きになりましたね。」
ミヨキチとのお出かけについてお遊びと称したことに多少反論したくなったが
おしゃべりマシーン古泉に勝てるとは思わなかったので聞き流した。
「あなたも本当に謎多き人だ。」
「……………」

そしてなんやかんやがあって新人部員募集イベントは何の収穫もなく終わった

その夜、久しぶりにあの日の事を思い出した


佐々木に告白されたあの日の事を


315 :**恋人じゃなくて親友**:2007/04/10(火) 23:55:45 ID:286C73zC
それは中学生として過ごす最後の日、これまで世話になった学校や教師、
別々の進路に進む同級生に別れを告げる日。
まぁ簡単に言えば卒業式だ。

式が終わり、夜に学年全員で大きな宴会場を貸し切り夕食。
その後はさらに仲のよいグループに別れて2次会、
各々好きな場所へ、別れる友とは最後の思い出を作りに。
PTAの保護者は宴会場までしか同伴してないのでそんなに遅い時間まではさすがに無理だったが。
しかし大半の人にとっては最高の時間を堪能することができるだろう。
男女交際をしているやつらが二人で会場を後にする姿もよく見かけた。

俺も最初は国木田や他の仲のよい男子グループと一緒に宴会場の外で写真を撮ったりバカ騒ぎをしていた。
佐々木含めた女子グループもその中に入り、談笑の輪を広げていた。
実に中学生らしい初々しい会話が繰り広げられていたことだろう、
…………と、今なら言えるね。

女子グループも混ざってからは、
相変わらず俺は佐々木と中学生生活について色々話していたわけだが。
佐々木と出会ったこと、塾のこと、俺の家で勉強をご教授してもらったこと。
どういう訳か、二人で盛り上がっているうちに他のやつらはどこかへそそくさと消えてしまったらしい。
「気を使ってくれたんだろう。みんなは先に近くのゲームセンターへ行ってるらしい、
 さっきメールが入っていたよ。相変わらず勘違いされてるらしいね。」
一体何の気を使ってくれたんだろうか、
先に行くなら直接誘ってくれればよかったのにと、その時の俺は思ってたなそういえば。


317 :**恋人じゃなくて親友**:2007/04/11(水) 00:00:33 ID:286C73zC
その後ふらふらとみんなのいるゲーセンへ向かう途中のことだ、
「こんな時間にキョンと二人とは、塾の帰りを思い出すね。」
何がおかしいのか独特の笑いと共に佐々木はつぶやいた。
「そうだな、お前ともうこうやって歩けなくなると思うと少し寂しいな」
「……僕もさ」
今思うと、この日の佐々木はいつもみたいな理論や理屈を用いて話すことが少なかったように思う。
それで俺の会話のペースも少し狂っちまったんだろう。
「………」
「………」
無言で歩くこと数分、佐々木が切り出した
「キョン、少し話があるんだがいいかい」
「ん、ああ構わんが」
そう言うと、ちょうど近くにあった公園のブランコに二人で腰掛けた。
少し神妙そうな佐々木の態度から、
高校生活への不安や勉強への悩み、もしくは家庭に何か問題でも生じたのかとすら思ったが。
「キョンは恋愛感情というものをどう思う?」
全く方向違いの質問に意表を付かれた俺は返事に少し時間がかかった。
「………キョン?」
「あ、あぁスマン。いやもっと重大な悩みでも打ち明けられるのかと思ってたもんだから」
「くく、今の僕にとっては中々に重大なんだよ。」
「恋愛感情か、そりゃ人間なら誰もが抱く素敵な感情なんだろうよ、
 というか以前にもこの話はしなかったか?
 お前は恋愛感情なんて抱いても得することはない、とか何とか言ってなかったか?」
確か中学3年のクリスマスの日だったか、クリスマスを塾の冬季講座で過ごした
俺と佐々木が塾帰りにも話した事だった。
「覚えていてくれたかい、キョンの事だからもう忘れてしまっているかと思っていたが」
「さすがの俺でも数ヶ月前の事を忘れたりはしねーよ」
「英単語は3日で忘れてしまうのに」
押し殺したような声で笑う佐々木、俺もつられて笑ってしまう。
「はは、そう言うな。最低でも受験までは覚えているつもりでいるんだ。
 ……で、恋愛感情がどうかしたのか、まさかついに好きなやつでもできたのか?」
ため息をつきながら佐々木は言う。
「キミは本当に困った人だな、
 いつも言ってるがもう少し他人の気持ちに敏感になったほうがいいと思う」
やれやれ、またそれか。いつも佐々木に説教をされた最後にはその言葉を言われる。
俺は空気は読めるほうだと思っていたのだが……

318 :**恋人じゃなくて親友**:2007/04/11(水) 00:02:07 ID:H9jYw7+0
「僕は今でも恋愛感情を抱いても得をすることは何一つないと思っている」
やけにキッパリと告げた佐々木、さらに続ける。
「他人のことを考えて時間を無駄に過ごし、自分自身でいられる時間が減るということは
 人生を過ごすにおいてこの上ない損害だと思っている」
「ああ、お前のその考えは何度も聞いたし俺にも共感する部分はある」
クリスマスの日やバレンタインデーにも聞いたな、
後は俺たちが付き合ってるとクラス中に噂になったときも聞かされた。
少し下を向いたまま佐々木がつぶやく。
「得することは無いと分かっているのに……」
ローテンションなのが少し心配だな、とか思っているとこう続けた。
「……分かっているのに心惹かれている自分がいることに気付いてしまった」
…それはつまり、恋をしても無意味だと思っていたのに好きな人ができた、
と俺の頭の中では理解できた。
「よ、良かったじゃないか、おめでとう」
少し戸惑いながら答える、仕方ないだろう?
佐々木からこんな言葉が出るとは1ミクロンも思わなかったんだ。
「おめでとう、か。相変わらずだね」
「相変わらず気の利いたことが言えませんね、ってことか?」
口下手なのは自分でも分かってる。ただ気になるのは
「誰なんだ?教えたくないなら教えてくれなくてもいいが、
 俺の知っているやつか?」
はぁ、とまた佐々木のため息。そして
「キミだよ、キョン」

319 :**恋人じゃなくて親友**:2007/04/11(水) 00:04:10 ID:H9jYw7+0
……すまん、何だって?
俺の聞き間違えでなければ佐々木は俺のことが好きということか?
まさかそんなこと言って俺の反応を見て実は国木田とかが隠れて覗いててお別れドッキリ大成功だなんて
呆然とこんなことを考えている俺に佐々木は言い続ける、
「僕が何故志望校を元の北高から変えたか知っているかい?」
そうだ、佐々木は2学期途中まで志望高校は俺と同じ北高だったのだ。
しかし佐々木の学力は北高のレベルよりさらに上空を飛んでる、だから俺は
「自分の学力に見合った高校にしたんじゃなかったのか?」
そう今でも思っていた。佐々木は相変わらず真正面を見て続ける、
「高校選択こそ全く無意味さ、大事なのは環境を変えることより自分自身がどう変わりどう行動するかだよ」
「じゃあ何で志望校を変えたん…」
そこまで言ったところで佐々木がこっちを振り向き割り込んできた、
「君の希望進路が北高だったからさ」
……うーむ、良くわからない。仮に佐々木が俺を好きだとしよう、
そうだとしたら俺と同じ北高に普通行きたいと思うんじゃないのか?
いや、俺が逆の立場だったらそうなっていただろう。
「僕はこれ以上キミに対する恋愛感情を育ててしまうわけにはいかない、これ以上一緒にいれない」
好き、なんて直接言われてしまったから佐々木と向き合って会話をしていると
顔が熱くなってくるのが分かる。まあ夜だからそんな気にはならないだろうが。
「高校でまで一緒にいたら、
 本当にキミの事しか考えられなくなりそうで怖い。………そんな自分は絶対に許せない……」


320 :**恋人じゃなくて親友**:2007/04/11(水) 00:05:20 ID:H9jYw7+0
俺は戸惑っていた。身近にいすぎたせいだろう、異性としてほとんど意識したことは無かった、
しかしルックスはおそらくかなりいいほう。性格も社交的で一般的には良い性格、だ。
佐々木のほうから友達感覚で話してくれるので、俺としてもとても付き合いやすい友人だった。
一緒にいると安心するのは確かだし、
……いや待て一緒にいて安心するというのはもしかして俺も佐々木のことを
「返事はいらないよ、もしキョンが僕と同じ気持ちだったとしてもまだ僕は拒否することができそうだから」
佐々木の震えている言葉で思考は遮られた。
「ただ知っておいて欲しかった、僕が好きになった唯一の人に………
 自分の気持ちだけ話してさようならなんてずるいけど、キョンならば理解してくれるよね?」
まっすぐに俺を見つめている瞳からは今にも涙が頬を伝わりそうだ。
俺の頭はやけに冷静になっていた。好きなんて言われた時は思考回路もだいぶ鈍っていたが、
恋をし始めてしまっている自分を矯正するべく、志望校を変えて、溜まった思いを吐き出してまで
新たなスタートを切ろうとしている佐々木独特の考え方。
その考え方は俺にとってとても心地よいもので、それこそが俺が佐々木に惹かれたところであると自覚した。
だから、
「もちろん理解してやるさ、これからのお前も応援してやる。」
佐々木の目から一筋の涙が流れた
ブランコで顔だけ向かい合っていたはずなのにいつの間にか立って手を取り合い向かい合っている
「ただお前にも知っておいてもらいたいことがある」
泣いていて言葉を返せないのか、佐々木は首をかしげるだけだ
「俺もお前のことが好きだった。返事はいらない、ただ知っておいて欲しい」
言った瞬間佐々木に全体重を預けられてよろけてしまった。
まぁなんだ、つまり抱き合ってんだよ。文句あるか。
こんな経験さすがにないから俺もうろたえたさ。

321 :**恋人じゃなくて親友**:2007/04/11(水) 00:06:52 ID:H9jYw7+0
「本当にいい親友と出会えた………これまで生きてきた中で一番の収穫だよ」
佐々木は俺の腕の中で言う、俺も返してやる。
「親友…か。そうだな、これから離れるがずっと親友でいようぜ」
くくっ、と独特の笑いのあと、
「もちろんだ」
見つめ合ってしまった。こんな状況で見つめ合ってしまったらする事は一つだが……
やけに冷静になっている自分の思考を褒めてやりたいくらいだぜ。
親友としてこれからの互いの出発を祝うキス、
おそらく佐々木とは最初で最後になるであろうキスをした後、俺たちは帰路についた。
そこにはいつも通りの親友同士の二人がいた。
結局ゲーセンへは行かなかったな。







そんなことを思い出していると、もう時計の針が0時を回っていた。
睡眠は1日6時間はとらないと体が持たない俺は早々に眠りへとついた。

佐々木が連れて来た橘京子と九曜周防が俺と会うのは次の土曜日のことだ。
一旦END


ひらめいたらまた何か書くかも。