【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ9-289 小ネタ

2007-06-08 | 佐々木×キョン×ハルヒ

289 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 20:31:41 ID:O24zZlp/
俺がこないだ幻視したエンドの一つとしては


30ぐらいの佐々木とハルヒがキョンの墓参りでばったり再会して
そのまんま、高校時代の関係者で年末の忙しい時期に宴会を
するというものだった。


国木田「いやはや、キョンも罪な男だよ。こんな美人を二人、いや
もっと居るかもしれないけど、行かず後家にしちゃうんだからね・・・・」


331 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 21:30:35 ID:bYLUo7ZR
>>289
似たようなネタを考えてた。

 大型連休に入ったばかりの土曜、私は彼に電話で中学時代によく立ち寄った公園に呼び出された。

「色々考えたが、佐々木、お前の話を受けてもいい。ただし、俺のやり方で、という条件付きなんだが」
 彼が中学時代にそうしていたように公園のベンチに腰を下ろしたままそう口にしたとき、私は自分の耳を疑った。
 橘さんにけしかけられてはみたものの、これまでの彼~キョンの行動からすれば、
 涼宮さんの力を私に移すなどということは考えられなかった。
 正直、嬉しかった。恋人にではないとしても、私を選んでくれたことにはかわりない。
 努めて普段と変わらない態度を取ろうと試みたが、成功していたかどうかはわからない。
 心拍数は普段の二割り増しだった。顔に出ていなければいいが。

 だが、いつになく穏やかで優しい眼をしたキョンの話を聞くにつれ、
 一度は顔に集まった血液が地の底に吸い込まれるのを感じた。
 間違いなく真っ青になっていただろう。
「急性骨髄性白血病だそうだ、俺は」
 晴れ渡った五月の午前の空を見上げてキョンは確かにそう口にした。
 言葉が無かった。いや、それが現実に言われたことだと認識できなかったのかもしれない。
「このところ、嫌に疲れやすくてな。病院にいって検査を受けて、昨日そう伝えられたんだ」
 そこでキョンは私の方を見た。私の好きな瞳に真剣な光を宿して。
 それで私は否応なくそれが事実であることを理解させられた。
 キョンの言葉がどんなニュアンスを含むのか、中学時代から手に取るようにわかっていた。
 昔は誇らしかったそのことが今このときには憎くてならない。
「ハルヒがこのことを知ったら、またぞろ無意識にでも世界改変をおっぱじめるかもしれん。
 ……だから佐々木、万一の時にはお前にハルヒの世界改変を止めてもらいたいんだ」
 キョンはなんでもないようにそう続けた。

「キョン!」
 悲鳴のように私の口から漏れた声に、キョンは困ったような笑みを浮かべた。
「佐々木、頼む。話は最後まで聞いてくれ」
 キョンの手が私の方を包む。キョンはいる、ここにいるとても病気には見えない。そう自分に言い聞かせる。
 キョンの手を感じることで、わずかに脳に血液が戻ってきた。
「俺はハルヒにあいつの力のことを話そうと思うんだ。あいつだってバカじゃない。
 話せばわかってくれる。何だかんだ言って俺はそう信じてる」
 そこでキョンは照れたように頭をかいて表情を改めた。
「だが、あいつだって人間だ。時には思い違いもする、馬鹿なことだってやるだろう。だから」
 ──お前が支えてやってくれ。あいつの友達になって馬鹿なことをしでかそうとしたら止めてやってくれ。

 キョンは真剣な顔でそう言った。
「……なぜ、僕に……?」
 ようやく私はそれだけを口から絞り出した。
「他の奴らじゃダメだしな。それに」
 ──お前ならハルヒの親友になれるし、それはお前にとっても、ハルヒにとってもいいことだと思う。
 キョンはそう口にした。

「いきなり変なことを頼んで悪かったな。悪いが、これから他の奴のところ
 ──ああ、SOS団の面子なんだが──の所を回らなきゃならん」
 ──真っ先にお前の所に来たからな。
 何一つ口に出来ないままの私にそう言い置いて去っていくキョンを私はベンチに根が生えたように見送った。

……ここまで書いて鬱になって没にした。
世界改変しないでハルヒと佐々木が親友として生きる。
最後のセリフだけは考えてある。

「残念ながら、私たちは恋愛という名の精神病には免疫ができてしまったらしいね」

佐々木スレ9-205 「パーティ」(1)

2007-05-19 | 佐々木×キョン×ハルヒ

205 :パーティ 1/12:2007/05/24(木) 03:52:21 ID:Zr/Vl4CQ
「今日はキミをパーティに誘おうと思っているのだ」
 佐々木は電話口でそう言った。なぜだか、意地悪げに微笑む中学時代の佐々木を思い出した。
 一体、どういう風の吹き回しだ。
「どういうとはどういう意味だい?」
 中学時代のお前は、他の人間と連んで騒ぐということはあまり好んではいなかった。誘われ
て、お義理に参加することはあっても、自分で主催するようなタマじゃなかったはずだ。お前は
理性的な人間だ。すべてが打算だとまではいわないが、何の理由もなしにそんなことをすると
は思えない。何か、反論あるか?
「ないね、まったくない。もちろん、僕は理由があって僕には似合わない行為をしているのさ。
キミの僕に関する見方はまったくもって正しい、中学時代より1年以上が経過して、親友に正確
に僕が把握されているというこの事実を僕は喜んでいいのだろうか、それとも悲しむべきなのか、
なんとも、名状し難い気分だね」
 では、聞かせて貰えるか、何が狙いだ。その狙い如何によっては協力することもやぶさかで
はない。
「ん? これは聞き捨てならないね、キョン。それは僕に理があるのなら、涼宮さんではなく、
僕の味方になってくれるということなのかな? もし、そうなら嬉しいね。天にも昇ろうとはこうい
う気分を言うのかな」
 俺が態度を決めるのは、お前が理由を話してからだ。話は聞こうじゃないか、すべてはそれ
からだ。それと、言っておくが、俺は橘や藤原、そしてあの九曜など、お前を取り巻く怪しい
連中をこれっぽっちも信用していない。お前の言動の陰に奴らの姿を感じ取ったら、俺はそん
な企てにまったく協力する気はない。
 俺のありったけの不信感を込めた発言に、佐々木は、こらえきれないようにくくくと声を漏らした。
「僕の話を聞く前に、そんなことを言っては僕が彼らの存在を隠蔽するとはキミは思わないの
か、まったく人がいいのか、悪いのか、判断が付きかねるね」
 思わねえな。ちょっと、気に障ったので、声に力を込める。
 お前が俺を騙して担ごうというんなら、もうお前は、もっともらしい理由を告げている。
そしたら、俺はほいほいと騙されて、中学時代の掛け替えのない友人をひとり永遠に失い、
中学時代の思い出の多くを失うことになる。それでお前がいいんなら、もう、それでいいよ。
……それだけの話だろ。
「……すまない、調子に乗ってしまったようだ。そして誓うよ、僕はキミを裏切らない、僕は
キミとの間の友情を失うようなことをしない、僕の意志と責任の及ぶ範囲で、僕はそれを守る。
そして、件のパーティのことなのだが、僕はキミを含めたSOS団の面々ともっと深く友誼を
結びたいのだ。キミに小細工を仕掛けても仕方がないのではっきりというが、僕は涼宮さんに
興味がある」
 佐々木、お前が男に興味がないのは知っていたが、もしかして……。
「キョン、キミは今、僕の性的嗜好に関して、極めて失礼な想像を持ったね。もちろん、それは
間違った感想であるのは理解しているね。僕は異性愛者(ヘテロ)だ。それはキミが一番知っ
ていると思っていたのだが……ん、いやいい。話を戻そう。とにかく、僕はキミたちSOS団と
もっとコミュニケーションを取りたいのだ。そのためには、一緒に行動する機会を持つのが最
善手だと僕は結論した。こういう時にどうするのか、いろいろ考えてみたのだが、ここは、やは
りスタンダードにいこうと思う。それで、パーティだ」
 なるほど、理には適っている。だが、大きな問題がひとつある。
「なんだい、よければ教えてくれないだろうか。対処できるかどうかは聞いてからでなければ、
確約はできないが」
 面子だよ、面子。あんまり、こういう事を言いたくはないんだが、お前ひとりなのか? 
橘たちとは俺は友情を結びたいとは正直思っていない。
「むむむ、それは問題だね、できれば彼女たちも、と考えていたのだが、それではキミの協力
が得られないということなのかな」
 正直、あいつらとの付き合いは考えた方がいいと思うぞ。頭のいいお前のことだから、騙さ
れるとか、そういうのはあまり心配していないが、少なくとも俺の気持ちはすでに伝えた通りだ。
「それでは、手始めに今回は僕ひとりがキミたちのイベントに参加させて貰う形を取った方が
いいのかな? それならばキョン、キミは僕に協力してくれるね」


206 :パーティ 2/12:2007/05/24(木) 03:56:35 ID:Zr/Vl4CQ
 ああ。一応は、な。お前との友情も大事なことだ。お前がハルヒと仲良くしたいというのなら、
俺もその方がいいと思う。ハルヒがお前に興味を持つかどうかは知らんが、まぁ多分、大丈
夫だろう。
「それでは、僕のデビューについてキミの知恵を借りたい。さ、何をしようか……」


「それで、まず僕に相談してくれるというわけですね、これは光栄だ。あなたに対し、僕が友
情を示し続けていた甲斐もあったというものです」
 大仰な身振り手振りで感謝を示す、二枚目役者の前に俺は自販機で買ったコーヒーの紙
コップを置いた。
 お前の友情云々は横に置いておいてだな。大意はその通りだ、お前の知恵を借りたい。
ちなみに、そのコーヒーは奢りだ。
「いただきましょう。佐々木さんが涼宮さんと交流を持ちたがっている。それは、『機関』と
して頭が痛いでしょうが、僕個人としては歓迎すべきかもしれません。協力しましょう。
腹案もないわけではありませんし」
 やけに話が早いな。『機関』はダメでお前はいいという。
その理由、聞かせて貰っても構わんか?
「そうですね、もとより『機関』の僕が所属する派閥は“障らぬ神には祟りなし”というポリ
シーであるのは、すでにご存じかと思います。いろいろ内部闘争もあるのですが、その
辺りは、あなたも興味はないでしょう。どちらにせよ『機関』の大勢は現状の維持を最優
先にしています。この点については長門さん、朝比奈さんとのコンセンサスも恐らくは取
れていますので、SOS団の周辺を固める各勢力の統一見解、そのように捉えて頂いて
結構でしょう」
 曖昧に肯く。どこまで本当だかはわかりはしない。親が心変わりすることはある。それは
これまで、長門やこの古泉が何かにつけて仄めかしている。だが、今はまだそうではない。
今はまだその言葉を信じるしか仕方がないのだ。
「そして、ここに新たなる異分子として佐々木さんが登場です。新入生相手の部活説明会
の時にも言いましたが、依然涼宮さんは彼女に対する態度を決めかねています。もちろん、
もう二度と会うことはないかもしれませんしね。だが、彼女自身が接触を求めているのなら
話は別です。僕やあなたの介在しない所で、彼女たちが二次的接触を行なうという可能性
はある。それくらいなら、こちらのお膳立ての上で、接触して貰った方がずっと安心できる、
そうではありませんか」
 確かに、その通りである。同意を示す。
「僕たちは佐々木さんと涼宮さんとが接触したところで、世界が滅んでしまったりはしない。
そう、確信しています。まぁ涼宮さんを信じている、そう言ってもいいでしょう。ですが、『機
関』は、そこまで彼女に信頼を置いているわけではありません。よって、波風を立ててくれ
るな、というのが本音でしょう。『機関』は歓迎しかねるというのはそういうことです」
 理に適っているな、納得するしかないようだ。それで、お前の腹案とやらはなんだ。
「親交を深めるのなら、同じ物を食べるのが古今からの習わしです。我々もそれに習うとしましょう」
 だから、結論を言えよ、結論を。
「野外でのバーベキューパーティはいかがですか。季節は初夏、野外で過ごすには丁度いい
時期と言えます。悪くないアイデアであると、自負する所なのですが」
 なるほどな、本当に悪くないアイデアだな、それは。
「日本にはホームパーティという習慣が根付いているとは言えません。よって誰かの自宅では、
その家の方に大きな迷惑を掛けてしまいます。鶴屋さんのように、それを迷惑とは考えない方
も多くいらっしゃいますが、誰かのテリトリーといえる場所で、対等の友好というのも考え物です」
 そこで、誰の場所でもない、野外というわけか。
「ええ、ちょっとお金を出せば、網や鉄板、炭などの用具を貸し出してくれる所も多いですし、
現にほら、以前に幽霊探索に行った河原、あの辺りにも公営のそのような施設があったはずです」
 そうだな、いいんじゃないか。よし、その路線で企画を立てよう。用具の手配は任せてもいいか。
佐々木と連絡を取って問題なければ、ハルヒに通してみよう。
「仰せのままに」
 そう言って、古泉は新川さんに弟子入りしたかのように慇懃に礼をした。そういうの板に付
きすぎだぜ。将来はホテルマンにでもなったらどうだ?
「それも、視野に入れていますよ。もちろん」
 それには答えず、俺は携帯を開いて、佐々木の番号を押した。佐々木の反応はすばやく
ワンコールの内に電話は繋がった。


207 :パーティ 3/12:2007/05/24(木) 03:59:02 ID:Zr/Vl4CQ
 ……と、まぁこういう訳なんだが、お前の意見を聞かせて欲しい。
「……すばらしいね、よいアイデアだと思うよ、さすがはキョンだ。それで、僕は何をすれば
よいのだろう」
 いや、アイデアの出所は古泉なんだがな。うん、それでだな。お前は……。
 佐々木のスケジュールを押さえ、当日の下準備について簡単に打ち合わせをする。
 さて、残るは大本命、涼宮ハルヒの攻略だ。

 ひとつ、企画があるのだが、俺はそう切り出した。
 そして、それこそが最大の失敗だった。
「ふぅん、一応聞くだけは聞いてあげるわ。ただし、もし、つまらないこと言ったら、罰ゲーム
だからね」
 あ、やばいとは思ったんだよ、これは。俺の言うことをハルヒがまともに聞くはずがねぇっ
てことに、俺はもう少し、思い至るべきだった。
「……へぇ、キョン、あんたにしてはなかなかいいアイデアじゃないの。それで、何でそんな
ことするの?」
 へ? いや、そのやってみたくはないか。
「うん、悪くはないわ。だから、なんであんたがそんな事言い出すのか、あたしはそれを聞い
てんのよ。あんたが、ただ思いついて、それをこんな風に理路整然とあたしに説明できるな
んて、あたしは信じないわよ。狙いをいいなさい」
 そういって、ハルヒは、おもちゃを見つけた猫のような目つきをした。
 ああ、話したさ。話して何が悪いってんだ、中学時代の旧友が、お前と友誼を結びたがって
いるってな。佐々木の名前を出した所で、ハルヒは口をアヒルのようにひん曲げた。
「なに、それ。なんで、あたしがあんたの昔の女に紹介されなくちゃなんないわけ」
 佐々木と俺はそんな関係じゃない。中学高校と俺は何度、このセリフを言ったんだろうな。
そして、これから何回言うんだろう。
「……………………あたし、トイレ」
 俺の言葉は聞き流し、ハルヒはがたりと席を立った。
 ハルヒが席を外した途端に、部室の隅でおろおろしていた朝比奈さんが、お茶を持ってやっ
て来た。
「キョンくん。ダメですよ、あんな言い方しちゃ」
 じゃあ、どんな言い方すりゃいいんです? 朝比奈さんの煎れてくれたお茶をいただきながら、
俺はそういった。いや、八つ当たりだな、こりゃ。
「すいません。ハルヒがあんな反応をするとは思わなかったもんで」
 まったく、なんで、あんなに苛立ってるんだ、あいつは。もしかして、アレかアレなのか?
 朝比奈さんは、可愛らしくため息をついて、言った。
「別の女の子の名前出して、デートに誘われて、喜ぶ女の子なんていません」
 俺はデートになんか誘っていませんがね。
「キョンくん企画のイベントなんですから、涼宮さんからすればデートも同じです。まったく、
長門さんの時といい……」
 部屋の隅、いつもの場所に座っていた長門から、季節外れのブリザードが吹いた……ような
気がした。いや、気のせいではないかもしれない。朝比奈さんも背中に氷を入れられたように
びくりと、背をのけぞらせる。
「……ひゃい。と、とにかく、キョンくん。その佐々木さんが涼宮さんと」
 ああ、それは本当だし、本気だと思います。
 はぁ、朝比奈さんは、ため息をつき、何度説明しても足し算がわからない生徒を見る家庭教
師のような表情で俺を見た。なんだ、この居心地の悪さは。
 俺は歩き慣れた道が、いつの間にか地雷原に変わってしまったかのように、部室の中で立ち
往生していた。

 十分後、ハルヒはトイレから戻り、ひどく不機嫌な顔で、俺にバーベキューパーティ企画の
了承と進行を告げた。


208 :パーティ 4/12:2007/05/24(木) 04:01:41 ID:Zr/Vl4CQ
 団長のOKが出たのなら、後は粛々と進行させるだけだ。スケジュールを確定し、会場とな
る河原までの移動経路や当日の手続きを確かめ、その近所で食材や飲み物などが購入で
きるスーパーマーケットやコンビニを探しておく。IT技術の進歩ってのはすごいね。地図付き
で、ここらへんの店のマップを作るなんてあっという間だ。そんなわけで、前日までは特筆す
べきイベントは発生しなかった。
 ああ、ちなみにハルヒはなんとなくずっと不機嫌だった。ただ、その不機嫌さは、俺が古泉
にイヤミをいわれるほどじゃなかった、とだけ記しておこう。

 懇親会兼バーベキューパーティ前日。
 明日に備えて、本日は食材その他の買い出しである。買い出し担当は俺、ハルヒ、長門、
佐々木。ちなみに内訳を正確に記すならばこうだ。

荷物持ち担当:俺
サイフ兼食材選択担当:ハルヒ
食材管理および貯蔵担当:長門
オブザーバー:佐々木

 そう、俺たちはいつもの北口公園で学校帰りの佐々木と合流し、一緒にスーパーマーケット
へと向かっていた。
 待ち合わせ場所に現われた佐々木は完璧な微笑を顔に湛えて、明朗快活に俺たちに向かって
挨拶した。
「皆さん、キョンから話は聞きました。部外者である私のために無理を言ってごめんなさい」
 先手を取られた以上、ハルヒも黙り込むしかないわけで。
「いいのよ、佐々木さんとはまた会ってみたかったの」
 ハルヒは、いつもの8割程度の笑顔を見せた。なるほど、佐々木への態度を決め兼ねている
というのはこういうことなのか。
「涼宮さんにそう言ってもらえると助かります。もちろん、今日は私の方でも軍資金を用意し
てきました。え~と、会計担当はどなたなのかしら」
 ハルヒは、苦笑して、
「佐々木さんはゲストなんだから気にしなくていいわ。新学期はじまったばかりで、団の活動
費には余裕があるから、普通にワリカンで払って貰えれば十分」
 ゲストだっつぅんなら、普通ロハじゃねぇのか?
「バッカねぇ、あんた。自分が言い出したイベントで、そんなことまでされて、遠慮しないで
いられるわけないじゃない」
 そりゃまぁそうか。ワリカンなら払った分は喰わないと損になるからな。
「そうよ、佐々木さんとは同い年なんだし、あたしは貸し借りのない関係を築きたいのよ」
 ハルヒにしてはまともなことを言った。花マルをやろう。
「いらないわよ、そんなの。……あ、けど、そうね。代金代わりに、佐々木さんに昔のキョン話
でもしてもらおうかしら。コイツに言うことを聞かせられるような、恥っずかしいヤツがベストね」
 残念でした。お前じゃないんだ。俺にはそんな弱みになるような過去はありません。
「ほう、キョン、そうなのか。それは僕の記憶と少し、食い違うような気がするね」
「それよっ! あたしが知りたいのは、そういうネタ」
「止めろ、佐々木ぃ」
 佐々木はそんなやり取りを見ながら、くくくと細い笑みを漏らした。なんというか二匹の
子猫がじゃれ合っているのを偶然見たというような瞳で。


                                       「パーティ」(2)に続く

佐々木スレ9-205 「パーティ」(2)

2007-05-19 | 佐々木×キョン×ハルヒ

209 :パーティ 5/12:2007/05/24(木) 04:04:01 ID:Zr/Vl4CQ
 そんな、こんなでスーパーマーケットに到着である。とりあえず、カートを繰り出す。
向かうはもちろん精肉売り場だ。こちとら、万年欠食少年少女だぜ。
「佐々木さんは、何か食べられないものってあるの」
 ハルヒは佐々木の食の好みを聞いていた。なんとまぁ、殊勝なこともあるもんだ。
「特に、これといって食べられないもの、苦手な物はないわ、いえ、これから出会う苦手な
食材もあるかもしれないから、断言はできないのだけれど」
 まあ、佐々木が何かの食物アレルギーがあるとは聞いていないしな。給食の時はなんでも
よく食ってたしな。
「あんたには聞いてないわよ」
 牙をむき出しにして、ハルヒは噛みつくように言った。ったく、なんなんだ。
 まぁ、俺の意見が自動的に却下されるのにはこの一年でとうに慣れたがね。
「それじゃ、何にしようかしらね」
 そう言って、ハルヒは辺りを見回した。焼いて料理する物なら、何でもいいだろう。とりあ
えず、牛肉だな。目に付いたパックをひとつ取り上げる。
「バッカね、何やってんのよ」
 肉を見てるんだが?
 答える俺を無視して、ハルヒはその牛肉パックを俺の手から奪い取って元あった場所に置いた。
「そんなの、見りゃわかるわよ、このスカポンタン」
 なんなんだ、一体。
「キョン、どうやら、涼宮さんはタイムサービスを狙っているようだね。周囲の奥様たちを見
てみるといい」
 たしかに、買い物カゴやら、エコバックやらを提げた奥様、おばさまたちが手持ちぶたさに
辺りをうろついている。時刻は直に19:00を回る、このスーパーマーケットの閉店時間が確か
20:00だから、そろそろということなのか。
 しばらくすると、店員がやって来て、値段を打ち直していく。あ、さっきのパックが100円下
がった。その瞬間、ハルヒが動いた。即座に先ほどのパックと、焼き肉用の大盛りパック、
牛カルビ、豚ロース、Pトロ、焼き肉用の加工肉辺りをかき集めてきた。奥様たちも、ハルヒ
の動きを契機にショーケースに群がりだした。
「大漁、大漁。見なさい、キョン。これだけ買って、あんたが最初に取った牛肉パック分以上
は出てるわよ」
 え~と、こっちが100円引き、あっちが150円引き、こっちが200円引き、こっちが……
なるほど。これが奥様お買い物術か。
「すごい、涼宮さんは買い物上手なのね」
 佐々木が感心したようにそう言った。
「私だと、逆にタイムサービスは避けちゃうかもしれない、あんな風に殺気立っている場所に
なんか、踏み込めない」
 褒められてるんだか、どうなんだか、ハルヒはいつものように仁王立ちになって胸を張った。
「あたしは、勝負事に負けるのが、大嫌いなの。どれを買うかはさっき、ざっと見て決めてた
しね。目当てのヤツが全部買えてよかったわ」
 とはいっても、肉だけじゃ味気ない。次は野菜か、魚か、それともソーセージとかの加工品
に行くか?
「そうね、魚なら、ホイル焼きにするのがいいかもね。タラの切り身か鮭の切り身でいいのが
あったら、買いましょ」
 ふむふむ、長門はなんか欲しい物あるのか?
「…………………」
 特に意見はないようだな、じゃあ任させてもらうぞ。
「…………………」
 ん、了解だ。なら、肉はもういいな。
「キョン、キミは今ので、コミュニケーションが取れたのか」
 驚いたように、佐々木が俺に声をかけてきた。
 こう見えても、俺は長門の表情を読むことにかけては、北高一を自負してるんだ。
「ほう、何であれそれだけの自信がもてるのなら、大したものだ。ところで、キョン。
その長門さんだが、彼女もかなりストレインジな感触を受けるのだが……」
 まぁ、あんまり大きな声じゃいえないが、宇宙産だよ、九曜とは別口だがな。



210 :パーティ 6/12:2007/05/24(木) 04:06:12 ID:Zr/Vl4CQ
「なるほど、ね。これが宇宙人的感覚か、覚えておくとしよう。なるほど、やはりSOS団は
僕にとって、とても有為な集団であることがわかった」
「キョン、何やってんの!!」ハルヒが、目を三角形にして俺を呼ぶ。その両手には、魚の切り
身やら、野菜やらが満載だ。がらがらとカートを押して、ハルヒの所へ向かう。
 そんなに野菜を買い込んで、カレーでも作るつもりなのか?
「それも悪くはないけれど、バーベキューとカレーじゃちょっとヘヴィじゃないかな」
 佐々木が俺の気持ちを代弁した。
「なに、あんたカレー食べたかったの? 鉄板焼きならニンジン、キャベツ、タマネギ、
ジャガイモってとこでしょ。串焼きならピーマンにパプリカもほしいわね」
 佐々木が得心したかのように肯く。心なしか瞳に尊敬の色が浮かんでいるように見えた。
「なるほど、カレー粉を入れればカレーになってしまいそうだ」
 ここで反応したのはハルヒだ。
「佐々木さんの家ってカレーにパプリカ入れるの?」
 パプリカと赤ピーマンってよく似てるな。何が違うんだろう。
「手元にある時は使ったりするみたいね。必須というわけじゃないみたい。甘くて、ちょっと
面白い触感だったけど、カレーには合わないように思うわね。やっぱり、ピクルスにして付け
合わせがいいんじゃないかしら。あ、串焼きにして焼くのは賛成」
 そのまま、佐々木は、野菜コーナーに置かれている大きな赤ピーマンを指さした。
「ちなみにキョン、パプリカというのはアレのことだ」
 知ってるよ。そのくらいは。
「ピーマンとパプリカはどちらもナス科、トウガラシ属の植物で、キミの考えていた赤ピーマ
ンは、青ピーマン、いわゆるピーマンをよく熟成させたもので、本質的には同じものだ。パプ
リカもピーマンの仲間だがより大型で肉厚だ。加熱調理すると色鮮やかになること、酢に合
わせても退色しにくい事から、サラダや炒め物の色合いとして、あるいはピクルスにもよく使
用される」
 なるほど、赤ピーマンとパプリカの違いについてはよくわかった。ところで、なんで、俺が
そんなことを考えているとわかった?
「そりゃあ、キミがきょとんとした顔をしていたからさ。まったく、キミは変わらないな。覚えて
いないか、それとも理解していなかったのかな。数学の例題を前にして、キミはさっきのよう
な顔をしていたのだ。そんな顔の後にキミの言う“うん、わかった”は大概、“よくわからん、
聞いてなかった”という意味だった。そこで、僕は考えた。キミはおそらくパプリカという野菜
が何であるのかは知っているだろう。だとすると、パプリカについて考えた時に連想したこと
を取りとめもなく考えているのだろう、そう僕は結論した。そこで、赤ピーマンとパプリカの違
いについて話してみたということさ。どうやら、当たっていたようだね。一年のブランクがあっ
たが、僕のキョン観察技能はそれほど衰えてはいないようだ」
 そういって、佐々木は悪戯小僧が種明かしをするような、得意げな顔でくっくっと笑った。
「キミが長門さんのエキスパートであるように、キミの表情を読むことにかけては、僕もエキ
スパートである自負があるのだよ。ああ、もっともプロフェッショナルであるキミのお母様に
は敵わないだろうけどね」
 くそ、なんか恥ずかしいぜ。
「ちょっと、早く来なさいよ!」
 ハルヒがまた、俺を呼んだ。今度は調味料売り場に行くらしい。追いつく途中で、ハルヒが
ハタと気が付いたというように、ぽんと両手を打ち鳴らして振り向いた。
「今日は有希んトコで、みんなで夕食食べましょう。野菜や肉の下ごしらえもしたいし、その
ついでに夕食も作っちゃいましょ」
 ほう、ハルヒにしちゃ悪くないアイデアだ。佐々木、どうだ?
「親交を深めるのは明日だと思っていたけど、予定の前倒しというのも悪くはないね」
 長門? 大丈夫か?
「…………いい」
 よし、決まりだ。ハルヒ、メニューどうするんだ?


211 :パーティ 7/12:2007/05/24(木) 04:08:57 ID:Zr/Vl4CQ
「そうね、さっきの春キャベツがいい感じだから、もう半球買って、ポトフ風野菜煮込み
スープを作って、メインは……そうねぇ。肉は明日食べるから今日はお魚かしら。さっきは
エビとイカのいいのがあったからスルーしたけど、タラで、ホイル包み焼きがいいかもしれ
ないわね。そうなると、エノキとエリンギも買っておきましょう。ううっ話してたらお腹減ってき
たわ」
 一体、どんな物を買うとそれができるのか、さっぱりだ。お前さんに任すよ。
「見栄えがして、格好つけられるわりに、簡単な料理だから、この機会に覚えておくといいわよ」
 ハルヒは燃えすぎた蝋燭の炎のように瞳を輝かせていた。きっと、すばらしい出来映えの
料理を幻視して舌なめずりをしているに違いない。
「油と調味料も買うけど、どうせ使い切れないんだから、少し使っておきましょ。明日使って
さらに余った分は有希んトコに置いておけばいいし。あんたは知らないだろうけど、この娘
の台所って包丁とまな板くらいしかないんだから」
 まぁ確かに、カレー皿と鍋、レトルトのカレーと米くらいしかなかったな。あ、そうかキャベツ
の千切りしてたから、包丁とまな板はあるのか。
「ひとつ、聞いてもいいかな、キョン。会話の流れを見るに、長門さんはひとり暮らしのようだ。
うむ、それはまぁいい。問題はだね、ひとり暮らしの女性の台所のことをキミはどうして、そん
なにくわしく知っているのかな? これは大いに疑問だよ、そうは思わないか、キョン」
 ちょ、佐々木さん、目が怖いんスけど。
「そりゃ、何度か長門の部屋にはお邪魔しているからな、この一年」
 一年どころか四年前から去年の七月まで、俺は長門宅で三年寝太郎だったわけだが、それ
は朝比奈さんと俺、そして長門だけの秘密だ。
「ほう。まぁそれはそうだろうね」
 佐々木は未だに怖い目をしたままだった。なるほど、これが信用されてない目というヤツか。
「有希、ご飯ある? じゃあ、パンとかは買わなくてもいいわね」
 ハルヒは長門と会話しながら、夕食のメニューのための買い物に移ったようだ。
「ブラックペッパーと、オリーブオイルとサラダ油、塩はあったっけ? ないの? あとは、
コンソメと焼き肉のタレも買わないとね。あ、そうだ脂身も買わないと、有希、バターは?
ないのね」
 ぽいぽいぽいと、調味料の類がカートに投げ入れられる。その後、精肉売り場にとって返し
て、脂身をいくつか、加工品売り場で、ソーセージ、チーズをいくつか、バターなどを迷いなく
カゴに投入する。明日って鶴屋さん来るんだっけ?
「とりあえず食材は、こんなもんね、ソフトドリンクとかも買っておきましょうか」
 そう言って、ハルヒはドリンク売り場に直行する。さすがに制服でビールは買えないので、
酒類売り場は……って白ワインなんか、どうするんだ。
「料理の味付けに使うのよ」(※未成年の飲酒は法律で禁止されています)
 買えるかな? 多分大丈夫でしょ。なんて言いながら、一瓶忍ばせる。
「ウーロン茶に、ミネラルウォーターと、佐々木さん、飲み物の好みある?」
「そうね、100%果汁のオレンジか、アップルをお願い」
 ハルヒは我が意を得たりとばかりに、アップルジュースとオレンジジュースをカゴに入れる。
おい、ハルヒ。そ、そろそろ限界だぞ。カートがえらく重くなってきた。これを俺ひとりで運ぶの
かと思うと気が遠くなるぜ。
「情っさけないことをいってんじゃないわよ、キリキリ運ぶ!」
 発破を掛けるハルヒとは対照的に、佐々木は気を利かせて、カートを一緒に押してくれる。
「飲み物とかは僕が持つよ」
 助かるぜ、やはり持つべき物は頼りになる友人だな。
「ほら、まだお菓子とか乾き物も買うんだからね」
 まぁパーティには乾き物も必要だしな、適当にスナック菓子もカゴに乗せる。
「あ、そうだ。ゴミ袋とビニール袋も買わないと」
 言い捨てて、ハルヒはぴゅーと尻に帆を掛けてどっかに行った。いつもの事ながら、
超小型の台風みたいなヤツだな。
「涼宮さんはまさに嵐のようなという比喩表現を用いる的確な対象だね」
 佐々木がこれまた的確な相づちを打った。ハルヒがいなくなったことにより、周囲の空気
がまったりするのがわかる。ちなみに長門は俺たちの後方1.5m~2mの位置を的確に
キープしており、店内を流れる音楽に耳を傾けているように見えた。


212 :パーティ 8/12:2007/05/24(木) 04:12:58 ID:Zr/Vl4CQ
「今の内に言っておく……我々はあなたおよびあなたの友人に害意を持っていない。あなたの
友人は我々にとっても、重要な観測対象であり、不測の事態の発生はこれを歓迎しない。
……この決定は情報統合思念体においての現在の共通認識であり、わたしはその認識に従う」
 うお、長門がこんな長ゼリフを。
「キョン。これは、僕が長門さんに仲間として容認された、ということかな? 観測対象という
表現に多少引っかかりを感じるが、大意は伝わったし、その意志を僕は歓迎するよ」
 まぁ、そういうことなんだろう、多分、きっと。その上で、そのセリフは長門に言ってやれ、
その方がいい。
「そうだね、長門さん、ありがとう」
 そう言って、佐々木は長門を軽くハグした、って何してんだ?
「いや、言葉では伝えきれないだろうと思って、肉体的接触を併用してみた」
 そういや、言葉による情報の伝達には齟齬が発生するって言ったのは長門だったか。一年前
のこと、長門が初めて俺に対して一行以上の言葉を伝えた日のことを思い出しながら、そう言った。
 そんな俺の言葉を聞き、振り向いた佐々木の眉はハルヒもかくやというようにつり上がっていた。
 な、なんで怒っているんだ?
「ちょっと、待ちたまえ。この会話の流れで、キミがそう言ったということはアレか、キミが夢中に
なっているのは涼宮さんだとばかりに思っていたが、それは僕の早合点だったということかな?」
 な、なんでそうなる?
「そうだね……女のカンさ、とりあえずはそう言っておこう。ちなみに僕は怒ってなどいない。
どちらかと言えば悲しんでいるのだ。それでは、キョン。キミの誠意ある返答を期待したい」
 まず、言っておくが、俺とハルヒは別に付き合ってなどいない。それは中学三年時の我らが
クラスメイトたち並みに的はずれであると指摘しておこう。続いて、長門と俺は……仲間だ。
少なくとも、お前がいま邪推しているような関係ではない。……一瞬、口ごもってしまった。
 それだけ俺が長門との間に抱えてしまった秘密は大きく、そして多かった。だが、佐々木に
詰め寄られている時に、この沈黙は致命的だ。
「……残念だ、キョン。残念だ……本当に残念だ」
 悔しそうに、心底悔しそうに、佐々木はつぶやいた。
「はいはい、お待たっせ、どしたの?」
 ハルヒがゴミ袋とビニール袋、アルミホイルなどを抱えてやって来た。
 いや、何でもないんだ、別に、な。
 無事に会計を済ませ、俺たちは長門のマンションを目指した。つうか、マジ重いぞ、これ。
俺の両手は完全に買い物袋に占領され、その一部は佐々木の手にあった。ちなみに、俺の
名誉のために言っておくが、一番軽い袋だからな。俺の荷物であった学校指定のバッグは、
長門が抱えるようにして持っている。ん、ハルヒか? 自分の鞄だけ持って、先頭でのっしのっ
しと歩いているよ。
 スーパーマーケットを出てから、俺と佐々木の間に荷物の受け渡しに関する物以外に会話は
なかった。今も俺の、後方1mほどを佐々木は歩いている。
 トホホ、なんでこんなことに。だが佐々木にだって話せないことはある。そして、俺は俺の不思
議ライフを佐々木にすべて打ち明けられるほどには、佐々木を未だに信用してはいないのだ。
……仕方ないだろ、俺たちは去年一年間を共有していないんだから。佐々木も俺の気持ちは理
解しているだろう。あいつは賢いヤツだ。それを認められないほどじゃあないはずだ。
 そんな風に、気分をブルーにしながら、俺たちは長門のマンションについた。

 さて、久しぶりの長門邸訪問である。とは言っても、前回と別に何も変わっていない。殺風
景は、この部屋の不変の属性らしく、その感想はいささかも揺らいでいなかった。荷物を玄関
に降ろす。即座に、ハルヒの叱咤が飛んだ。
「ほら、キョン。そんな所に店広げてどうするのよ。こっち、持ってきなさい」
 ひいこらいいながら、荷物を台所に持ち込む。
 ハルヒは俺の置いた荷物から、手際よく、肉やら何やらを取り出し、それぞれ所定の場所に
詰めていく。野菜はいいのか?
「野菜はこれから洗って切るからいいのよ。佐々木さん、飲み物持ってきて……うん、ありがとう」
 なんで、お前は佐々木にはちゃんと礼が言えて、俺には命令と叱責しか与えられんのだ。
「そりゃあんたがグズでのろまな亀だからよ」
 教官、俺は別にCAを目指すつもりはないんだがな。
「うっさいわね、さっさと残りの荷物も持ってきなさい! 二秒で!!」
 はいはいっと、佐々木、何を笑っているんだ。何か面白いものでも在ったのか?


                                       「パーティ」(3)に続く

佐々木スレ9-205 「パーティ」(3)

2007-05-19 | 佐々木×キョン×ハルヒ

214 :パーティ 9/12:2007/05/24(木) 04:15:31 ID:Zr/Vl4CQ
「いや、想像以上にキミらのコンビが決まっているからさ。嫉妬していた」
 はあ? お前は友人が奴隷のように扱われているのを見て、そんなことを言うのか?
 俺は悲しいぜ。佐々木は俺の軽口には付き合わず、シンクに野菜を並べ、まな板と
包丁の準備を始めた。
「涼宮さん、何から始めようか?」
 どうやら、カンのいい佐々木はもうハルヒの扱い方を覚えつつあるようだ。
「そうね、野菜の下ごしらえを先にやって、夕食の準備と肉の下ごしらえは並行で進め
ましょ。じゃ、キョン」
 なんだ、今度は何を買ってくるんだ?
「邪魔だから、居間に行ってなさい」
 はいはい。

 居間に行くと、長門が黙ってお茶を出してくれた。
む、うまい。長門、腕を上げたな。
「そう」
 まったく無反応にそう言って、ビデオを逆再生するかのようにちゃぶ台の向こうに戻った
長門は、ビスクドールのような凍った瞳で、俺の手元をじっと見つめていた。いやいや、そう
謙遜することもない。朝比奈さんほどではないが、俺のお袋はとうに超えている。
「…………そう」
 む、やはりお袋に例えたのはまずかったか?
「いい」
 そうか。もう一杯貰えるか?
「……どうぞ」
 ありがとう。
「有希、あなた普段何を食べてるの? 冷蔵庫ほとんど空っぽじゃない。コンピ研の部長じゃ
ないんだから、サプリメントと水だけで十分とか言うんじゃないでしょうね」
 ハルヒが長門に台所から話しかけていた。
「ダメよ、そんなんじゃ、今は成長期なんだから、ちゃんと栄養取らないと。エンゲル係数
低すぎるんじゃないの?」
 長門は答えない。答えているのかもしれないが、俺の視界には入っていなかった。なんと
なく、リモコンを取り寄せてテレビを点けた。
 テレビでは、タイミング良く天気予報をやっている。奇麗な気象予報士のおねーさんによれ
ば、この週末の天気は問題なく晴れるらしい。よいことだ。さすがにバーベキューパーティの
日に雨ではこれはもうどうしようもない。
 台所からはリズミカルな包丁の音が響いてくる。
 なんか、眠くなってきたな。夕食ができるまで、一眠りしておくか…………。

 うぼっ!!

「団長を働かせて、ヒラ団員が居眠りなんかすんなっ!!」
 脇腹に奇麗に入ったつま先と、「キミってヤツは……まったく、キョンは……まったく」
佐々木の呆れた声によって俺は起こされた。
 無機質な柔らかさを持った枕から……え~と、もしかして、膝枕されてました。今? 
身体を覆っていた、タオルケットが床にだらりと落ちた。
「いい」
 片づけようとした俺から、長門はタオルケットを取り上げ、奇麗に畳んだ。
「ほら、早く退きなさいよ」
 ハルヒにけり出されるようにして、家具調コタツ(いまはタダのちゃぶ台だ)から逃れる。
ハルヒは、ちゃぶ台の真ん中に寸胴をゴンと置き、佐々木は手に持った盆からアルミホ
イルの塊の乗った焼き魚用の皿を面に合わせて4つ置いた。手早く箸、ご飯が山盛りに
なった茶碗、スープ皿が同じように配膳される。
 それを待って、俺は席に着いた。右隣には佐々木、左隣は長門、向かいにハルヒである。
ちなみに、ハルヒが上座に座ったのは説明するまでもないだろう。
 佐々木が膝立ちになって、各人のスープ皿に野菜スープを取り分けていく。コンソメ
スープにいい匂いがした。野菜もほどよく煮込まれてて旨そうだ。


215 :パーティ 10/12:2007/05/24(木) 04:18:03 ID:Zr/Vl4CQ
 いただきます。という唱和とともにスープに手を付ける。おお、野菜のうまみがシンプルに
出ているな。
「あ、そうだ。ホイル焼き大丈夫だと思うけど、あんまり火が通ってなかったら言ってね、
焼き直すから」
 ハルヒがそんなことを言った。まぁ多少レアでも食えるだろう。
「いやいや、タラにはアニサキスが付いていることがあるからね、生食は危険だよ。60℃
以上で死んでしまうから、良く火が通っていれば安心だ。逆に、-20℃以下でも死ぬらし
いから、冷凍してもOKということだね。ちなみに胃酸に負けないことからも分かるとおり、
酸には強く、酢で締めたサバにもいることがあるから気をつけたまえ」
 これから食う物につく寄生虫の話なんかするなよ。怖いじゃねぇか。
「だから、火が通っていれば安心なのさ」
 アルミホイルを切り出すと、中からいい香りがしていた。チーズが溶けていて、かなり旨
そうだ。こりゃいいな。具材はタラとシメジ、エリンギ、タマネギ、チーズってとこか。
「ちなみに、ワインをふりかけて電子レンジに掛けたタラをアルミホイルの船に入れて20分
くらい焼くだけの簡単料理よ。一緒に入れる野菜はタマネギとキノコが基本だけど、まぁ何
でもいいわ。今回はチーズも入れてるけど、これは好みで決めていいわね」
 ほお、なるほどな。今度お袋にも聞いてみよう。
「こっちのスープもいい味でてるね、さすが涼宮さん」
 佐々木もスープを一口すくってそう評価する。
「こっちは、下ごしらえしたジャガイモとニンジンとタマネギとキャベツとベーコンを適当に
切って、適当に煮込んで、コンソメと塩コショウで味を調えたらできあがりの簡単料理
パート2よ。もっと野菜と鶏肉とかソーセージとか、豚バラとかを入れると、コンソメ仕立て
の洋風野菜鍋になるわね」
 さりげなく、こっちにも刻んだエリンギとシメジが入っている。なるほど、材料も一緒にして
効率アップというわけか。主婦的な料理術だなぁ。
「この料理ってお母様、直伝なの?」
 佐々木はさりげなく、ハルヒが喋るように何かと水を向けている。
「ま、ね。ウチの母は簡単料理の権威なのよ、手を抜くことばっかり考えているんだから。
ちなみにウチだったら、ホイル焼きにはならないわね。ホイルの船を人数分作るの面倒く
さがるから。多分、大皿に人数分の切り身を並べて、オーブンレンジで焼いて、後から
ホワイトソースにチーズを混ぜて乗っけて、もうひと焼きして、グラタン風に仕上げて終
わりよ。あ、そこまでやんないかなぁ、焦げたホワイトソースって洗うの面倒だから」
 それはそれで旨そうだな。俺はそんなことを考えながら、ハルヒと佐々木の料理に舌鼓を打った。
 会食は滞りなく済んだ。俺たちの食事が終わるのを見計らったかのように、長門が各人に
お茶を入れた。つうか、四人分の食器と湯飲みがあったことが驚きだ。
 いや、もしかしたら、ここにいないふたりの分くらいは食器に余裕があるのかもしれなかった。
長門は、なんというかそういうヤツだ。
「ほら、なにのんびりしてんのよ、食器くらい片づけて洗いなさいよ。あんた、食っただけな
んだから」
 はいはい。ったく、お前は俺のお袋か。
「何いってんのよ、あたしがあんたのお母さんだったら、こんなことは言わなくても済むように
ガキの頃から教育してるわ」
 まったく人のやる気を削ぐ発言をさせたら天下一品だな、お前は。悪態を付きつつも何もし
ていないのは確かであるので、食器を集めて、立ち上がった。
「キョン、僕も手伝うよ」
 佐々木も湯飲みを置いて、立ち上がった。

 ふたりで、食器を洗う。なんとなく機械的に手を動かしつつ、佐々木に尋ねた。
ハルヒとふたりで何か話せたのか、と。
「ああ、なかなか有意義な時間であったよ。涼宮さんは本当に魅力的な人だ。多少、変人では
あるが、それは僕が言えたものではないだろう」
 ああ、まぁ変人具合じゃあ、大差はないな。もっとも、奇矯な振る舞いをしない分、お前の方が
よっぽどまともだが。


216 :パーティ 11/12:2007/05/24(木) 04:21:41 ID:Zr/Vl4CQ
「連れないね、キョン。もうちょっと、フォローしてくれてもよいだろうに。だが、まぁ確か
にね、宇宙だの、未来だの、超能力だのといった戯言を半ば信じた僕は相当なものだ」
 俺の洗った皿をキュッキュと布巾でぬぐいながら、佐々木は苦笑する。
「キョン、キミに謝らなければならないな」
 ん、俺がお前にじゃなくて、お前が俺に? そんな謝るようなことがあったか?
「ふ、さすがの大人物だね。かつて僕らが同じクラスにいた時だ。不思議なことがあって
もいい、キミはそう言った。僕はそれを真っ向から否定したじゃないか」
 ああ、エンターテインメント症候群だっけ? 覚えてるよ。
「僕らが今おかれている状況を考えてみたまえよ」
 思わず、吹き出した。
「まったく、宇宙人と同じ釜の飯を食べるなんて想像すらしたことはなかったよ」
 友達に宇宙人と未来人と超能力者のいる高校生になれるなんて、中学生だった俺たちは
想像すらしていなかった。あの頃の俺たちが今の俺たちを見たら、どんな顔をするんだろう
か。俺たちふたりは声を上げて笑った。やばい、さっきのキノコはワライタケだったんじゃな
いかというくらいツボに入った。
「ちょいと、おふたりさん。手がお留守よ」
 何事があったのかと様子を見に来たハルヒが怒り出すくらい俺たちは笑い続けていた。


「明日遅れるんじゃないわよ」
 長門邸を辞した俺たちはいつもの北口まで戻っていた。ハルヒは命令口調でいい捨てて、
駅へと歩いて行く。
「さて、僕らも家路へと向かおうじゃないか」
 佐々木と俺はこれまたいつもの駐輪場である。
「その自転車、まだ使っていたんだね」
 佐々木が俺のママチャリを見ながら、そう言った。ああ、大分ガタ来てるけど、まだ乗れる
からな。
「懐かしいな、一年前までその自転車の荷台は僕の場所だった。去年は誰か、たとえば、涼宮
さんや長門さんを乗せたのかな?」
 どうだったかな、ああ、長門、ハルヒで三人乗りしたっけな。
「……む、それは予想外だね。そうか、ふたりともか……。ふふ、柄にもなく妬けてしまうね。
僕は大概の欲望が希薄な性質なのだがね、その分、自分の物に対する執着は……それな
りにあるのだよ」
 なんだよ、また乗りたいのか? だけど、今日はお前もチャリだからなぁ。
「キョン、どうしたんだい?」
 なにがだ。俺を見上げる佐々木の黒い瞳は、街灯の光を反射して、夏の星空のように輝い
ていた。
「僕の自転車のことなど気にするな、僕は月極でここを借りているのだ。一日二日駐めっぱな
しでも文句は言われまい。というわけで、キミの自転車に僕を乗せてくれたまえ。それにしても、
キミが僕の遠回しな要求に即座に応えてくれるなんて、天気予報では快晴だったが、雪でも降
るのではないかな」
 そう言って、佐々木は俺の自転車の荷台に慣れた仕草で横座りに乗った。お互い制服は
替わったが、そうしていると、中三の頃を思い出してしまうな。
 ったく、本気かよ。まぁ、いいか、最初っからお前の家まで送っていくつもりだったしな。
この程度の負荷荷重は食後の腹ごなしには丁度いいというもんだ。
「失礼だね、キミは。僕の体重は、高校二年生女子としては平均的なものだ。決して、
……荷重として厳しい物だとは……思わないぞ」
 その声には応えず、ペダルを強く踏み込んだ。


 佐々木の家までの道のりは覚えている。何度かこうやって、家まで送り届けたものだ。
たしか、小説だか何だかを買って、お前がバス代を食いつぶした時があったよな。
「ん、覚えていたのか……ああ、時効だから言ってしまうがね、あれは嘘だ」
 はぁ?
 佐々木は俺の背中の向こうでくつくつといつもの皮肉っぽい笑いを上げた。
「僕もね、可愛かったものだとね、思うよ。キミの自転車に乗りたいばっかりにそんな嘘をつ
いたんだからね」
 そんなに、いいもんか? 俺はあんまり記憶にないが、荷台が尻に食い込んで痛いんだよな。
背中で佐々木が溜息を漏らした。俺の腰に回された腕に力が籠もる。


217 :パーティ 12/12:2007/05/24(木) 04:25:11 ID:Zr/Vl4CQ
「こうしてね。腕で、キミの体温を感じて、キミの匂いを嗅ぐとね、僕はとても、そうとても
安らぐのさ」
 人の匂いを嗅ぐなよ、恥ずかしいな、おい。そんな告白をされては、自然に体温が上がる。
佐々木が後ろで助かった。今、俺はゆでダコのようになっているに違いない。こんな顔を知り
合いのしかも女の子に見られたくはない。
「いいじゃないか、僕はキミの匂いが好きなのだ。知っているかい。好意や恋する気持ちは、
大体二年で、その神経接続が断たれて終わってしまうのだそうだ。多くの恋や結婚生活に
とって三年目がキーになるのは最初に始まった恋が終わっているからなのだ。言い方が悪
いかもしれないが動物としての人間にとって、同じ雌雄でつがいでいられるのは二年で十分
だということなのかもしれないね」
 いきなり、なんだよ。例の本能と精神的な疾病の一種の話か。
「そうだよ。例の本能と精神的な疾病の一種の話、さ。恋とは、特定の人物、嗜好のことを
記憶した大脳が快楽物質を放出する作用のことだ。この作用は永続的なものではないし、
個々人によって、強かったり弱かったりするだろう。僕は、知りたかったんだ。僕のこの気持
ちがどんなふうに変化するのか、知りたかった。キミと触れ合わなければ、キミのことを忘れ
れば、僕はキミと出会う前の僕に戻れるのではないかと、そう思ったんだよ」
 何だよ、俺のことを忘れたかったのか? 連れないな、親友なんだろ。
「忘れることができたのならこんなことは言いはしないさ。……キョン、キミはいま酷いことを
言ったのだぞ。僕は大いに傷ついたからな。この精神的な慰謝料は後ほど、一年分のツケ
を加えて払って貰う」
 なんだよ、怖いこと言うなよ、お前はハルヒか。
「……今の発言も、きっちり加算するからな。キミには遠回しに言っても通じないから言って
おくがね。僕との会話の中で涼宮さんや長門さんや朝比奈さんや橘さんや周防さんや、
妹さんや、この間の先輩や、妹さんの親友、とにかく僕とキミとの間の共通の知り合いの女性
を引き合いに出してはいけない。その度にペナルティを課すからな」
 じゃあ、何を言えばいいんだ。俺は半ば自棄になってそう言った。
「キョン、僕といる時は僕のことだけ見て、僕のことだけ話しておくれよ、それでいいんだ」
 俺は、ペダルを動かす足を止めた。街灯の中、自転車は自然に停車する。
 ……すまん、佐々木。さっきから聞いていると、何やら話の焦点が致命的にずれているよう
な気がするんだが。
 軽い溜息と共に、佐々木は自転車から降りた。そのまま前に回ってくる。ハンドルを握る俺
の手の上に佐々木は自分の手を置いて、強く握った。佐々木の肩口で切りそろえられた髪
から、シトラス系の香りが漂っていた。正面から見上げる瞳はしっとりと濡れ、輝いていた、
淡いピンクのリップがなんとも艶めかしい。佐々木は俺を見つめながら、口を開いた。
「キョン、大事な話なんだ。黙って、聞いてくれ。僕とキミが出会って、二年が経った。初めて
キミを見て、知ってしまった感情は、僕の脳からは、もう薄れて消えてしまったはずだ。だけど、
こうしてキミを見ていると、変わらぬその感情が僕を支配しようとする。僕は……キョン、僕は
キミに恋している、恋し続けている。毎朝、毎昼、毎夜、僕はキミに恋している、恋し続けてい
る。この気持ちはここまで来るともう精神の病のひとつ、そう断言しても構わないだろう。一年
離れても、僕の病は治らなかった。だったら、離れることに意味なんかない。キミに触れたい。
僕がそう思った時に、キミがそばにいないのはね。正直、つらいんだ」
 時間が止まったように、感じた。何時も静かに理知的で落ち着いた雰囲気を持っていた少女
は、炎のような情熱をその身に宿していた。俺はそれに気がつかなかった……いいや、これは
言い訳だな。二年前、気がつこうと思えば、多分いつでも気が付けたはずだった。だけど、俺は、
彼女とのぬるま湯のような関係が気持ちよくて、気分が良くて、その隠された炎を見つめようと
はしなかっただけのことなのだ。
「だからといって、僕はキミに何かしてほしいと思っている訳じゃないのだ。熱烈にキミに何か
したいのでもないのだ。だけど、こんな僕を、こんなさもしい気持ちでいる僕を、キミが嫌悪し
ないというなら……僕は」

 初夏の風の中、俺と佐々木は静かに口づけを交わした。



218 :パーティ 13/12:2007/05/24(木) 04:26:04 ID:Zr/Vl4CQ
「ありがとう、一年分のツケからさっきのペナルティまですべて帳消しだよ」
 俺から離れた佐々木はそんなダイナシな事を言った。
 おい、コラ。俺とキスして、最初の一言がそれか。
 そう言った、瞬間、佐々木は顔を真っ赤に染めた。慌てて俺に背中を向ける。
「し、仕方がないじゃないか。僕の中の気持ちを逆なでするような事ばかり言うキミが悪いの
だ。い、言っておくけどね、こうなった以上、僕は相手が誰でも引く気はないからね。そりゃあ、
キミの気持ちは最大限尊重するが、それはキミが、僕のことしか見えないようにするだけの
話なのだ。そのためのプランはこの一年でずいぶんと溜まっているのだ」
 そう言って、再び振り返り、挑み掛かるように俺を見た。……女って……スゲエ。
 そして、佐々木は幸せそうに微笑んだ。

「ねぇ、キョン」
 なんだよ。
「……大好き」

佐々木スレ8-374 転入生

2007-05-17 | 佐々木×キョン×ハルヒ

374 :1/2:2007/05/18(金) 02:05:00 ID:TyMv+TvN
――今日、転入生が来る。
二日前に機関の上から聞かされた話だ。転入生が来る事自体は完全にどうでもいい事で、
それだけならば僕が気を病む事など無かっただろう。
連休明け直後でもない、一学期の中間試験も終わっていない、この五月半ばと言う中途半端
な時期に転入してくると、ただそれだけのちょっと変わった転入生であるだけだ。もっとも
僕自身がその変わった転入生であったので、他人の事を言えた立場ではないだろうが――
まあ、そんな事は何の問題でもない。もっと別のところに問題はあった。
始業のチャイムが鳴り、思索が中断される。それと同時に担任の教師がドアを開けて教室へ
と入ってきた。一人の女生徒を伴って。

来てしまったか――

「――から転入してきた佐々木さんです。仲良くしてあげて下さい――」

――そう、問題は彼女がただの転入生などでは無いと言う事だ。

「席は……古泉君の後ろが空いていますね。古泉君?」
「はい」
「よろしくお願いしましょう。休み時間にでも校内を案内してあげて下さい」
「判りました」
――やれやれ、これは何の因果だ? 涼宮ハルヒの面倒を見ているだけでも手一杯なのに、
まさかもう一人似たような厄介なのを見ていなければならなくなるとは――
「よろしく、古泉君」
いつの間にか僕の後ろの席まで来ていた彼女からそう声が掛かる。僕はそんなに長い時間を
呆けていたのだろうか――
「――そんな怖い目で見ないで欲しいな、知らない仲と言う訳でもないのだから」
彼女のそんな言葉にはっとして、僕は表情を検めた。いけないいけない、学校内では営業
スマイルを絶やさず続けなければ。例え相手が彼女であっても、だ。
「――失礼しました。改めまして、古泉一樹です。どうぞよろしく。お久し振りですね」
「あれ、古泉君って佐々木さんと知り合いなんだ?」
隣席の女子から、そんな問い掛け。
「ええ、春先にお会いしましてね。涼宮さん絡みで」
「ふーん、涼宮さんの知り合いなんだ――あ、よろしくね、佐々木さん。私は――」
彼女らが始める自己紹介。別段、興味など無い。
――やはり、彼らには面通ししておかねばならないのだろうな。次の休み時間にでもお邪魔
する事としようか。

「古泉君も去年のこの時期に転入してきたのだってね?」
休み時間、五組教室への移動中に掛けられた、彼女からのそんな問い。
「ええ、そうです――家の事情がありましてね。中途半端な時期での転入だったので色々と
 苦労しましたよ。特に中間試験の対策には悩まされましたね、どこまで何をやっているのか、
 全然判らなかったものですから」
「なるほど。申し訳ないけれど、後で試験範囲を教えて貰えないかな? 授業の進捗に
 ついてはあまり心配していないのだけれど、範囲を正確に把握しておく事は試験対策の
 基本だからね」
「了解しました。どうぞお構いなく――着きましたよ、ここです」
五組の教室の入口で、彼の友人へと、彼を呼んでくれるように頼む。
「やあ、国木田じゃないか。久方振りだね」
「あれ、佐々木さん? 久し振り――そっか、九組の転入生って君の事だったんだ」
「キミも相変わらず飄々としているようだね、マイペースと言うべきか」
「そうかな? ああゴメン、キョン達に用なんだよね。ちょっと待ってて」


375 :2/2:2007/05/18(金) 02:07:12 ID:TyMv+TvN
「キョン聞いた? 九組に転入生が来たって」
ああ、何か周りが噂してるのは耳に挟んだが、それがどうした? と言うか九組はこの時期
に転入生を迎えるのが趣味なのだろうか? 去年にしたって古泉のヤツが確か今頃転入して
きたものだと思ったが――って何だハルヒ、またお前転入生をSOS団に?
「面白いヤツならそうしたいけどね。見てみないと判らないじゃない?」
ははあ、なるほど? 今から見に行ってみようかと、そういう訳か。
まったくこいつの物好きさ加減にも呆れるを通り越して感心を覚えないでもないね。
「キョン、お客さんだよ」
そう話し掛けてきた国木田の示した先を見れば、噂をすれば影と言うべきか、古泉がいつも
の営業スマイルを浮かべて立っている。あいつはお客さんって感じはしないがな。
「何だ、向こうから来たみたいだぜ」
「あらホント、古泉君じゃない。丁度良いわ、聞いてみましょうよキョン」
「わ、こら――」
言い切らない内にハルヒは俺の手首を掴み、ぐいぐいと引っ張りながら教室出口へと歩き
出す。ったくこいつは本当に他人の都合などおかまいなしだな。
「おはよう古泉君、九組って転入生来たんでしょ? どんな人なの? 男? 女? 人類?
 宇宙人? それとも異世界人?」
「落ち着けハルヒ、そんなけったいな連中が転入してくるわけ無いだろう」
――まあ古泉は超能力者だった訳だが、それはこの際棚に上げておこう。
と言うか何だ古泉、近くでよく見たらお前の営業スマイル、今日はイマイチ冴えないな。
「――ええ、その転入生の事でここまで来た次第でして――」
どこと無く困ったような様子で古泉は廊下を振り返った。誰かを促す。
「やあ、お久し振り。キミ達はいつもそうやって一緒なのかい?」
くっくっと喉の奥で笑う声がした。
げ。まさか――
「佐々木さん?!」
俺より先に声を上げたのはハルヒの方だった。ありゃま珍しい、あのハルヒが鳩が豆鉄砲を
喰らったような顔をしてやがる。いや今はそれどころじゃない。殊と次第によっちゃ宇宙人
や未来人や超能力者や異世界人よりもよっぽど厄介なヤツが来ちまいやがった。
「何で、お前がここに?」
「何でって、僕がその転入生だからだよ。つれないね、キョン」
いやそうじゃない、質問を変えよう。
「何でお前が北高へ転入なんてして来なけりゃならんのか、それが判らない」
俺がそう聞くと、ふわりと花の様な笑みを浮かべた佐々木は、俺にこんな風に返してきた。
「――自分の気持ちに嘘はつけないのだと、そう気付いたからさ。今後ともよろしく、キョン」
佐々木、古泉、それにハルヒの視線が一箇所に集中した。

――え、俺?


やれやれ、何と言う事だろう――これで僕の生活はあの頃のスクランブル体制に逆戻りか。
涼宮ハルヒと佐々木、それに彼が上手くやってくれればいいのだが――
まったく、困ったものだ。

ーーー

マッガーレ↓を聞いてたらつい受信してしまって書いてしまった。
あんまり古泉と絡められなくて反省している。

佐々木スレ8-324 「キョンと佐々木」

2007-05-16 | 佐々木×キョン×ハルヒ

324 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 22:43:26 ID:ptlyyfnQ
北高の中を吹き抜ける風が
いつもより冷たく感じられます。

古泉一樹に朝比奈みくる・・・
長門有希までいなくなってしまい
残る勇者はキョンとハルヒだけです。

佐々木の時空改変能力を
止められるかどうかは
彼等の手にかかっています。

一体どんな結末が
彼等をまちうけているのでしょうか。

短い髪を揺らし走るハルヒ・・・
佐々木がいる最後の教室は
もうすぐです・・・


ステージ8-4
『キョンと佐々木』

佐々木スレ8-307 ハルヒの正体

2007-05-16 | 佐々木×キョン×ハルヒ

307 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 21:51:57 ID:5kxaHDP6
実はハルヒこそ佐々木の力が産み出したダミーだったんだよ!

佐々木「さあキョン、涼宮さんとの思い出を消去して僕のもとへ還るんだ」
キョン「そ、そんなこと俺にできるはずないじゃないかっ!俺のハルヒを返せっ」
佐々木「ぐっ、そ、そんな、統合したはずのダミーが?うぐっ!」
ハルヒ「ここは?キョン?キョン!会いたかった!」
キョン「ハルヒ!やっと会えた!俺は、俺はお前を選んだんだ!」
佐々木「・・・フッ・・どうやら僕の負けだな・・・これが『愛』か・・・さよなら、キョン、涼宮さんとお幸せに」
キョン「佐々木、お前とはもっと語り合いたかった・・・最高の強敵(とも)だったぜ・・・」


END

谷川先生の次回作にご期待ください!


310 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/17(木) 22:02:20 ID:ptlyyfnQ
>>307
 lヽ,,lヽ
|(    )もうやめて!佐々キョンENDを望んでいる人達のライフはゼロよ!
と   i
 しーJ

佐々木スレ8-205 「流様が見ている」(1)

2007-05-16 | 佐々木×キョン×ハルヒ

205 :流様が見ている :2007/05/16(水) 23:43:49 ID:AhNWzt6b
さて、男性諸氏よ。質問がある。
ある朝、自分の息子がきれいさっぱりなくなってたらどうだ。
この場合の息子とは一親等ではなく自分の体二親等付属する分身だ。
男のシンボルである。それがなくなっているのだ。
これは恐怖以外のなにものではない。
人によっては喜ぶ奴もいるかもしれない。性同一性障害なんてのもあるしな。
しかし俺は健常な男だ。どノーマルだ。
モロッコに行ってもないのに性転換される覚えはない。
こんなことをする奴はあいつしかいない。
ハルヒだ。



『流様が見ている』



「おっき………!キョン………ん」
なんだか甲高い声が頭の上に降り注ぐ。もう少し寝かせてくれ。
昨日は本当にいろいろ大変だったんだ。そして今日の危険値も絶賛上昇中なのは確実なんだ。
少しは兄の苦労も察しておくれ。
「キョ………てー」タッタッタ
ふう、飽きたみたいだな。
朝の惰眠はなにものにもまさる。勝利を噛みしめながらまた、寝ようとしたら
「キョン子ちゃーーーん!」
ハッ! ドサッ!
ベッドから転がり落ちて緊急回避した。
妹よ。フライングボディプレスはないんじゃないかな?
そんな起こし方では逆に永眠しかねないぞ。もっと優しい起こし方にしてくれ。
「にゃははははー。起きたよー」
聞いちゃいねー。
はあ、とにかく起きるか。
ベッドから転がり落ちた体制から立ち上がった。
「?」
変だ。自分の部屋に違和感を感じる。
なんだか全てが大きく感じる。なぜだ?
頭と肩も重いし。まだ寝ぼけているようだ。顔を洗って目を覚まそう。

洗面台まで来た俺の目の前には見たことのない長髪の美少女がいる。
おかしい。俺は同居イベントなんてフラグを立てた覚えはないぞ。
それに今俺は洗面台の前に立っているんだ。だから洗面台の鏡には俺が映っているはずなのに見知らぬ美少
女が俺と同じ寝間着を着てこっちを見つめている。
寝間着のサイズが合っていないからいわゆるダボダボパジャマ状態だ。
なんか萌えるなと思ったら少女の頬が赤くなった。
とりあえず右手をあげて挨拶だ。
「よう」
同時に少女も左手をあげた。
「…………」
ラジオ体操第二ー。
ちゃんちゃららー
「うるさいわよー。暴れてないで早くしなさい!」
しまった。やりすぎた。
うん、トイレ行こうトイレ。






206 :流様が見ている :2007/05/16(水) 23:46:01 ID:AhNWzt6b




「…………………………………………………………………………………………」
せーの
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁーーーーー!!!!!」
「さっきからうるさいわよー!」
落ち着け俺!
もう一度確認するんだ。

おっぱい、ボイーン!
マイサン、ナイーン(涙

ぐ、これはどういうことだ。俺の身に何が起きた。
俺は過去最大の混乱の中にいる。いったいどうすればいいんだ?
「早くしなさーい。遅刻するわよー」
まずい。お袋が呼んでる。
息子がいきなり娘になったなんてどう説明する。いや、説明したって理解づきないぞ。
そもそも俺も何が何だか分からん。
混乱していると。
「キョン子ちゃん、早くー」
妹がヒョコッと顔を出し俺の手を引いて居間に連れられた。
キョン子ちゃん?俺のことか?
「やっときた。早く食べなさい」
お袋も妹も普通にしている。どういうことだ?
さっきから俺の頭の上にクエスチョンマークが量産されている。

グーー

ああ、もう!腹が減っているのは確かだ。目の前の朝食をかたづけよう。

朝食を終えて自室に戻った俺は違和感の原因が分かった。
背が縮んだからまわりが大きく見えるのだ。
そして本来ブレザーが架かっているハンガーには北高のセーラー服が架かっていた。
俺にあれを着ろと言うのか?しかし、探してもブレザーは出てこない。
私服で学校に行くわけにはいくまい。
やむなく俺はセーラー服に袖を通した。

「いってきます」
足がスースーする。なんだか心許ないな。
家を出ようとしたところ
「ちょっと待ちなさい。髪止めしてないでしょ」
お袋に呼び止められた。
「後ろ向きなさい」
言われるままにする。
髪をいじられてなんだか背中がこそばゆい。
「よし!いってらっしゃい」

通学途中なんだかチラチラ視線を感じる。恥ずかしいな。
やっぱり変なのだろうか?
くそ!なんでこんな目に遭うんだ。なんだか腹が立ってきた。
長門か古泉ならなにか知っているだろう。北高に行ってあいつらに話しを聞かなければ。
俺は坂を駆け上がろうとしたところ
「よーっす!おはようキョン子」
谷口に声を掛けられた。やはりこいつも俺が女になったのになんの反応も示さず
「今日もお前は可愛いな」と言ってきた。


207 :流様が見ている :2007/05/16(水) 23:48:15 ID:AhNWzt6b
ゾワワワワーッと全身に鳥肌が立った。
やめろ。お前にそんなこと言われても気持ち悪いだけだ。
「俺は本来のことを言ったまでさ」
だからやめろって。歯を輝かせてもお前じゃ無駄だ。
様にならん。
「相変わらずのツンぶりだなー。いつになったらデレるんだ?」
なんで俺がデレなきゃいかんのだ。そういうのはハルヒ担当だろ。
「またハルヒか。お前らおかしいぞ女同士で」
う!谷口から負のオーラが出始めた。
ええい!今の谷口は危険だ。いや、前から危険だったが今や俺の身が危うい。
とにかく逃げるぞ。俺は脱兎の如く走りだした。
「ああ!待ってくれキョン子ーー」

教室にはすでにハルヒがいた。いつものごとくハルヒの前に座る
「おはようキョン子」
やっぱりお前もかハルヒ。
しかしハルヒがこの異常に気付いていないのは不幸中の幸いか。
「おはよう」
挨拶だけは返してこれからのことを考える。
長門と古泉と話し合わねば。
「あんたってポニー好きよねー」
ハルヒが俺の髪をいじりながら言ってきた。
「………まあ、否定はしないが」
「あたしにもポニー勧めたもんねー。でもやっぱりあんたの方が似合ってるわよ」
なんか複雑だ。自分がポニーが似合うようになるとはな。
ハルヒはホームルームが始まるやで俺の髪をいじっていた。

昼休み
俺はすぐに文芸部室に行った。そこにはハルヒ以外のSOS団員が揃っていた。
「来ましたね」
なんでこいつらはもう既にいるんだ。俺だって授業が終わったらすぐにすっ飛んできたのに。
それよりも
「お前らはわかるのか」
まずは確認だ。
古泉は朝比奈さんに目配せして、朝比奈さんがうなずいた。
朝比奈さんが手鏡を俺の前に差し出した。
鏡の中にはポニーテールの美少女がいる。間違いなく俺だ。
「あなたが男性から女性に変わったということですね。もちろん理解に及んでいます」
他の奴らは普通にしていたぞ。
「おそらく僕達以外は気付くことは出来ないでしょう。夏の時と同じです。」
「原因はやっぱり……」
「涼宮さんでしょう」
なんであいつは次から次へと問題を起こす。
俺を女にして何がしたい。
「涼宮さんだけが原因ではありませんよ。佐々木さんも原因です。昨日のことを思い出してください」





209 :流様が見ている :2007/05/16(水) 23:51:18 ID:AhNWzt6b
「僕はキョンが好きだ」

休日のいつものSOS団不思議探索の途中現われた佐々木は話しがあると言うのでハルヒは探索を中止し、
みんなを駅前の喫茶店に集めた。
そこで佐々木は爆弾を落とした。
ちなみに今日は佐々木は一人だ。無機物宇宙人やいけすかない未来人や誘拐超能力者はいない。
「な、なんですって?」
「聞こえなかった?私はキョンが好きだと言ったの。」
佐々木のいきなりの告白にハルヒは驚愕している。ポカーンと口を開けている。顎でも外れたか。
古泉は青ざめている。冷や汗なんかも垂らしているな。
朝比奈さんはおろおろしている。俺とハルヒと佐々木の間に視線を行ったり来たりだ。
長門は佐々木を見つめ続けている。無表情ではない、俺でも読み取れない感情を表している。
佐々木はいたって冷静だ。告白したと言うのに顔を赤らめることもない。
俺は仮にも、いやいや、大多数に可愛いと評される女の子から告白されたんだから普通は嬉しいと思うはず
なんだが、今ここから逃げ出したい気分だ。
なんだ、この空気は生きた心地がしない。
「そ、そんなのダメよSOS団員はね、恋愛禁止なのよ。風紀乱すような真似は見逃せないわ!」
「そうなのかい?」
なんでそこで俺に聞く。そんなこと俺は初耳だぞ。
それに佐々木よ、お前は恋愛感情なんて精神病とか言ってなかったか。
「言ってたよ。確かに精神病だ。なんせ寝ても覚めてもキミのことばかり思ってしまう。キミのことが頭か
ら離れないんだ。これはもはや病気と言う以外ないだろう」
臆面もなく言い切った。
「病気なら治さないといけない。この症状は成就させるにしても失恋させるにしても感情の昇華が最も効果
的らしい。そして有効な手段が直接の告白だと僕は結論づけた」
だからってなんでみんながいるこの場でするんだよ。普通は呼び出したりして二人きりにしたりするだろ。
「この問題は僕とキョンの二人だけでのものではないと判断したからね。」
どういう意味だよそれは。
「つまり結果は問わず告白することが目的だったわけね」
ハルヒが割り込んできた。
お前さっきから反応しすぎだぞ。
「当たり前でしょう。団長として団内の風紀が乱れようとしているのは見逃せないわよ」
なんだよ。さっきからその風紀の乱れっていうは。
「冷静を装っているがこれでもあまり余裕がなくてね、妙なことを口走ってしまうかもしれないよ」
佐々木、お前もいきなり割り込んでくるのか。


210 :流様が見ている :2007/05/16(水) 23:52:24 ID:AhNWzt6b
「例えばそうだね。キョンとキスがしたいとか」
ブッ!
「二人きりで睦言を囁きあったりね。」

………………………………………………………………………………………………………………………………

完全に空気が凍り付いた。
なんてことを言ってくれるんだ。本来なら嬉しいはずなのに今は針のむしろだ。
「だから…そんなの認められないわ!」
「なんで?風紀が乱れるから?」
「そうよ」
ふむ、と佐々木は間をあけてハルヒを見据える。
「それはキョンが信用できないというわけね」
「そんなこと言ってないわよ!」
ヤバイ、さらに悪い方向に行きそうだ。
「私にはそのように聞こえる。仮に僕とキョンが交際関係になったとしてもSOS団の活動にはたいした影
響はないはず。私とキョンは学校が違うから平日会うなんてことはなかなか出来ないし。私は塾に通ってい
る。休日もたまにしか会うことしか出来ない。それにキョンの性格からして誰かと交際関係だとしても相手
がいない時は通常と変わらないはず。違う?」
「それは……そうだろうけど」
佐々木は一気にまくし立てハルヒは気圧された。
「あんたはどうなのよ」
俺か?
「そうよ。あんたは佐々木さんと付き合いたいの?」
「そうだね。一番肝心なのはキョンの気持ちだ。僕達が議論してもキョンにその気がなかったら一人相撲だ」
いや、俺はだな。
佐々木のことは嫌いではない。どちらかというと好きだ。
でもそれは恋愛感情かと言われると分からん。親友としての好意はあるがそれ以上は自分でも判断つかん。
自分でも情けないと思っているさ。でもいきなり答えを出すことなんて出来ないぞ。
「ふむ、確かにいきなりすぎた。今ここで結論を出そうとしてもろくな結果はでないだろう。ここは時間を
置くのが懸命だ」
佐々木は立ち上がってハルヒに
「ここは私が払うから。涼宮さん寛大な判断を期待するね。キョン、僕にとっては一大事だよく考えた上で
答えを出してくれ。そうすればどんな結果だろうと僕は受け止められる」
そう言った後他の三人を見回して
「失礼するよ」
長門はぼーっと、朝比奈さんは「あ、どうも」と、古泉は会釈を、三者三様の見送りをした。
ハルヒと俺は黙っているしかできなかった。



はい、回想終了。


212 :流様が見ている :2007/05/16(水) 23:54:22 ID:AhNWzt6b
「もしかしてあの佐々木の告白が俺を女にした原因だとでもいうのか」
「そうとしか考えられません」
んなアホな。どうして告白されたから女にならんといけないんだ。
「おそらくは涼宮さんはあなたが女性であれば佐々木さんと交際することはないと判断したのでしょう」
どうしてそうなるんだ、ハルヒ。
「それにちょっと待て、それだったら中川の時には長門が男になっていないとおかしいぞ」
「本気で言っているんですか?」
なぜか古泉は驚いた様子だ。的外れなことは言ってないはずたが。
「長門さんの時とは状況が全く違います。涼宮さんにとって昨日のことは非常にストレスとなりました。昨
日は閉鎖空間が大量発生しました。この意味が分かりますね」
いや、分からん。何が言いたい。
「はぁ」と三人がため息をついた。
「まさかこれほどまでとは」
「キョン君、いくらなんでもひどすぎます」
「鈍感」
なんなんだ。揃いも揃って。意味が分からん。
「自業自得と言ったところです」
ハルヒがやったことだろ。俺は何もしていないぞ。
「その何もしないということが問題なのですが」
わけの分からんことを言って。
とにかく俺は元に戻れるのか。
「それは大丈夫でしょう。おそらく一時的なものだと思われます」
そうか良かった。で、どれくらいなんだ。
「分かりません」
「はあ?分かりませんって」
「涼宮ハルヒは混乱している。涼宮ハルヒの精神が安定するまでと推測する」
つまりハルヒが落ち着くまでってことか。
「そう」
「まあ、早く戻りたいなら佐々木さんとのことをすぐに決着をつけることですね。涼宮さんは断って欲しい
と思っていますが、こんなことをしてまで交際を認めないことはないでしょう。あなたが出した結論ならど
んな結果でも涼宮さんはあなたの意志を尊重しますよ。それに僕にとってはあなたが男性か女性かはどちら
でもいいことですから」
おま、最後のは余計だ。俺にとっては一大事だ。男の尊厳がかかっているんだ。
「でも今は女の子なんですよね。キョン君…じゃなくて今はキョン子ちゃんですね。うふ、とっても可愛い
ですよ。」
「ユニーク」
長門、朝比奈さん、あなたたちも他人事ですか。
ガクリ


213 :流様が見ている :2007/05/16(水) 23:56:20 ID:AhNWzt6b
放課後
俺はハルヒによって強制的にチャイナに着替えさせられた。どうやら朝比奈さんと並ぶコスプレ要員らしい。
朝比奈さんはいつものメイド服で給仕をしてくださる。長門もいつものごとく本の虫。ハルヒはネットサー
フィン。俺は古泉と軍艦ゲーム。
俺が女という以外は変化の特にないいつものSOS団だった。

パタンと長門のいつもの帰る合図。
「よし、帰るわよ」
ハルヒの威勢のいい掛け声とともに俺はいつものごとく朝比奈さんの着替えを目撃しないよう部室を出よう
としたら
「ちょっとキョン子、どこ行くの。そのままの格好で帰るの?」
あ、そうだった。チャイナのままだった。朝比奈さん先に着替えて下さい。俺はその後で。
「何言ってんの。一緒に着替えちゃいなさい。時間がもったいないでしょ」
なんてことを言う。俺と朝比奈さんが一緒は問題あるだろう。
「わけ分かんないこと言うわね。女同士問題なんてあるわけないじゃない。ほら、さっさと着替えちゃいな
さい」
うわ!止めろ!自分でやるから!
ハルヒは俺に絡み付いてきた。

結局、俺がハルヒのセクハラと格闘している間に朝比奈さんは着替え終えていた。
俺はハルヒの相手に必死で見ることは出来なかった。いや、別に見たかったわけではないぞ。
帰り道、俺はハルヒと一緒だった。
ハルヒやけに俺にベタついてくる。こいつは朝比奈さんにたいしても同じことをしているな。
「へへー、女同士の特権ね。男だったら出来やしないわ」
そりゃそうだ。男だったらセクハラで訴えられるぞ。
「ふふん、あんた気を付けなさいよ。口調はおかしいけどモテるからね。ぼーっとしてると襲われるわよ。
さっさと彼氏でも作って守ってもらいなさい。古泉くんとかはどう?」
なんで古泉が出てくる。気持ち悪い。男と付き合う趣味なんてないぞ。
「だってキョン子、古泉くんと仲いいじゃない」
仲いいの意味が違うぞ。
それにお前こそどうなんだよ。
「あたしはいいのよ。それより本当に彼氏作る気ないの?」
ああ、ない。プランクスケールほどもない。
「そっか……だったらさ、あ、あたしがずっと守ってあげようか」
「は?」
「あ!い、いや、な、なんでもない!」
ハルヒ、顔が赤いぞ。うつむいててもよく分かる。耳が赤い。
「うー、それじゃあね」
カールルイスも真っ青な勢いで走り去って行った。


215 :流様が見ている :2007/05/17(木) 00:02:08 ID:qRRDhCWm
異変は翌日にも起きた。

谷口はうっとおしく、国木田は変わりなく、男子の視線を感じる以外の変化はない。
そして放課後事態が悪化していることに気付いた。



『流様が見ている』



部室のドアをノックすらと
「はぁーい、着替え中でーす」と朝比奈さんの返事があった。
暫く待つと入ってよしとの合図があったので中に入った。
長門とメイドの朝比奈さんがいらっしゃった。
「あ、キョン子ちゃんでしたか。それだったらすぐに入ってもよかったのに」
朝比奈さん冗談でもよして下さい。俺、男なんですから。
「あ!そうでした。なんであんなこと言ったんだろう?」
朝比奈さんは首を傾げている。
長門が顔を上げこっちを見た。
「どうした」
コンコンとノックの音がした。
「はぁーい。どうぞー」
古泉が来たか。
「おや、キョン子さんはまだ着替えていませんね。失礼しました。外で待ってます」
待て古泉。面白くないぞ、そのジョークは。
なんで俺がコスプレするのがデフォルトなんだ。
「いえ、昨日は……?」
古泉も首を傾げた。
妙だ。おかしいぞ。
「私達にも記憶の改竄の兆候が見られる」
長門それはどういうことだ。
「あなたが男性体であったという事実が塗り替えられようとしている。このままではあなたがもとから女性
体であることになる」
それは俺が完全に女になると言うことか。
「そう、あなたが男性体に戻ることが出来なくなる」
それは困る。どうしてそんなことになっているんだ。時間が経てば元に戻るじゃなかったのか。
「涼宮さんの心境が変化したのでしょう。あなたが女性のままでもいいと。昨日の今日のことです、心当た
りはありませんか?」
心当たりか、何がある?
あったのか?そんなことが

『守ってあげようか』

「あ!」「あるようですね」
どうすればいいんだ。俺は嫌だぞ女のままなんて。
「解決するには佐々木さんとのことを決着つけるしかないでしょうね。それも早急に。でなければあなたは
ずっと女性のままです」
結局それかよ。まだなんも答えなんて出てないぞ。昨日はそれどころではなかったからな。
「はじめに言っておきます。この件は僕達は手出し出来ません。あなたの問題です」
冷たいな。俺が女のままでもいいのか。
「そうですね。世界改変に比べれば微々たるものです」うわ!本気で言ってるな
「長門!」「問題ない」
こっちは問題大有りだ。
「朝比奈さん。未来の俺は男ですよね」こんな質問する奴は古今東西俺以外いないだろな。
「えーと、分かりません。でも大丈夫ですよ。キョン子ちゃん可愛いから、安心して下さい。きっと上手く
いきます」
それ、全然大丈夫でもないし、安心なんて出来ません。


217 :流様が見ている :2007/05/17(木) 00:04:52 ID:AhNWzt6b
とりあえずここまで
続きは明日以降
キョンフィルターがブッ壊れてるのは勘弁


                                     「流様が見ている」(2)に続く

佐々木スレ8-354 「流様が見ている」(2)

2007-05-16 | 佐々木×キョン×ハルヒ

354 :流様が見ている :2007/05/17(木) 23:53:26 ID:qRRDhCWm
結局その日の団活は昨日と代わり映えしなかった。
俺は昨日と同じでハルヒに無理矢理着替えさせられた。今度は婦警だ。勘弁してくれ。
長門も朝比奈さんも古泉も止めようとしない。絶対面白がっていやがる。
団活中、佐々木に呼び出しのメールを送った。本来なら次の休日が望ましいのだろうが、そこまで待ってい
たら男に戻れそうにない。
今週中にケリを付けねば。

団活後すぐに光陽園駅前公園に向かった。
ハルヒが一緒に帰ろうと言ったが大事な用があると断った。
すぐアヒル口になったがそれだけで引き下がってくれた。

駅前公園に着く頃には辺りが薄暗くなってきた。
少し心細い。………いやいやいや、待て待て待て。なんでそうなる。元は男だぞ、俺。
長門に呼び出されたときは平気だったではないか。しっかりしろ。
そんなことを考えていると気付いたことがある。今の俺は女であり、佐々木は女に告白したことにならない
のか?しかし告白した時は男だったし、などと心配したがそれは杞憂だった。

「佐々木………と橘と九曜か」
光陽公園には佐々木の他に橘と九曜もいた。こいつらを呼び出した覚えはない。
「えっと……キョン………かい?」
佐々木は戸惑っているな。
こいつらのことも聞きたいがまず確認だ。
「佐々木、今の俺はお前にどう映っている。俺だと分かるか」
「キョン……キョン子?いや、確かにキョンだとは認識出来るが。しかし男性のはずだったが…」
とりあえず佐々木は違和感を感じ取っているな。次に確認すべきことは
「なんでこいつらもいる」
「ん?ああ、彼女達はこの時間の女の子の一人歩きは危険だとついてきたんだ」
「佐々木さんとあなたの行動は出来得るかぎり捕捉しています」
「―――――」
女の子一人は危ないからと言って付き添いに女の子を付けるのはどうかと思うが…こいつらは普通じゃなか
ったな。まあ、佐々木の安全のためなら納得出来る。しかしボディーガード要員なら九曜だけでも充分なは
ず。それに橘本人が出張らなくてもSPぐらいこっそりつけれるだろうに。
「それでしたら、私も直接確認がしたかったのです。あなたに異変が生じているという報告があったもので」
「そう、わた…僕もそれが聞きたい。キミは確かに男性だったはず。それがどうして……」
佐々木はいったん言葉を切って俺を下から上へと見回した。
「いったいキミに何が起きたんだい」
実はだな…





356 :流様が見ている :2007/05/17(木) 23:56:01 ID:qRRDhCWm




「と、言うわけなんだ」
説明を聞き終えた佐々木は年がら年中事件に巻き込まれる名探偵のように顎に手をあてて
「まさかこんなことになるとは。涼宮さん発想には驚かされるよ」
俺も驚かされたよ。今まで散々珍妙なことに巻き込まれて、ある種、諦めの境地にまで達していたがまだま
だ経験が足りなかったようだ。こんな事態は受け入れられない。
「くっくっ、それは僕をふる前ふりかい。キミが元に戻るにはそれが最短かつ確実な手段らしいが…そんな
理由では僕はキミがこれから言う言葉は耳に入りそうにないよ」
「………そうだな、確かにそれは不謹慎だな」
少し焦っていたようだ。自分ために佐々木をふるのはいくらなんでも誠実さに欠ける。
しかし俺は佐々木の告白に対する決定的な答えはまだ出していない。
普通なら佐々木みたいな魅力的な女の子に、しかも頭もよく小難しくあるが話題に欠けることのない奴に好
きですなんて言われたら彼女がいなかったら二つ返事でOKするところだが、悲しいかな生まれてこのかた
およそ十七年、異性から告白なんてされたことがない俺は的確な返事を返すことが出来なかった。
しかも状況が状況だ。あの場で何か出来る度胸は俺はなかった。
それに佐々木とは中学三年での一年間に及ぶ友人としての付き合いがあった。
その佐々木のさらに一年ごしによる告白だ。俺もそれに対して真剣に考える必要があった。
だが昨日今日の騒動で焦った俺は答えを出す前に佐々木を呼び出してしまった。俺の不手際としか言い様が
ない。ならどうするか。
決まっている。
今の俺の正直な気持ちを言うしかない。
俺は佐々木を正面から見つめる。
「佐々木、聞いてくれ。お前に告白されたことは正直嬉しかった。だが、今の俺はお前に対する返事をもっ
ていない。YESともNOとも言えない」
佐々木は静かに佇んで聞いている。
「それなのに、焦ってお前を呼び出したのは謝る。すまなかった」
佐々木の瞳はずっと俺だけに向いていた。
「これから先どうなるかは分からない。お前を好きになるかもしれないし、もしかしたら別の奴かもしれな
い。だからそれまでは…答えが出るまでは『親友』でいてくれないか」
俺が言えたのはそれまでだった。
佐々木は瞳を閉じ「ふぅ」とため息を吐いた。
「まったく。キミという奴は、優柔不断だね。いや、卑怯と言うべきか」
う、それは謝る。しかし今はそうとしか言い様がないんだ。
「くっくっ、だがまぁ、それならまだまだこれから機会はあるということだ。これ以上の関係になるには僕
の努力次第というわけだ」佐々木は目を開いてこちらに歩み寄った。
「ならば今暫らく、よろしく頼むよ『親友』」
そう言って片手を差し出してきた。
「ああ、こちらこそよろしく」
俺は佐々木の手を握り返した。


357 :流様が見ている :2007/05/17(木) 23:58:34 ID:qRRDhCWm
パチパチパチと拍手の音がした。
音源の方を見ると橘と九曜がいた。
「いやぁ、素晴らしいのです。青春なのです」
「――親友―――いい」
ぐはっ!そういえばこいつらがいたんだった。すっかり忘れていた。
「『これから先どうなるかは分からない。お前を好きになるかもしれない』」
「――親友―――親友―――」
ええい止めろ。くそ、自分の顔が耳まで真っ赤になるのが分かる。
なんで佐々木は平然としていられるんだ。とんだ羞恥プレイだ。
橘は一通り笑ったあと
「これで用件はすみやしたか?」
いや、待て。そもそも俺は男に戻るために佐々木を呼び出したんだ。このままではなんの解決にもならん。
だいいち俺が女のままでは佐々木も困るだろ。元は男だとはいえこのままでは佐々木は女が好きだというこ
とになる。
「キョン……いや今はキョン子か。それは些細なことだよ。僕はキミというパーソナリティーに好意を抱い
ているのであって、キミが男であろうが女であろうが大した問題ではない」
なんで俺のまわりは男の威厳というか矜持を軽視するんだ。俺が女のままでいいということか?
あいにく俺は元に戻りたいんだよ。
「ふむ。今のキョン子は外見上からして魅力的にすぎる。変な男に言い寄られるのは不愉快だな。明日ぐら
いに涼宮さんに忠告しておくかな。そうすればキミも元に戻るだろう」
本当か?スマン頼む。
しかしハルヒに言うだけで元に戻るのか?
あいつは人の言うことはほとんど聞かないぞ。
「なに、簡単さ。キミが女性であることの無意味さデメリットを伝えればいいだけさ。涼宮さんが聞く耳を
持たないのは彼女にとってくだらないことだけだよ。それが多いから聞き分けがきかないように見えるだけ
さ。まあ、人は見たいものを見たいように、聞きたいことを聞きたいようにしてしまうからね。なにも彼女
だけに限ったことでさないさ」
そうか。まあ、佐々木は俺が知るかぎり弁論に関してはこいつの右に出るものはいない。
佐々木に任せておけば大丈夫だろう。
「悪いな、佐々木」
「なに、お安い御用さ」


「さて、これで用件は全てすみましたね」
そうだな、最後は佐々木に頼む形になって情けないがなんとかなりそうだ。
「ではこれで解散ですね。私は佐々木さんを自宅までお見送りしますので、九曜さんは彼女をお願いします」
いや、そんなことしてもらわなくてもいいぞ。一人で帰れる。
「それはダメです。今のあなたは女の子なんですから。もう、日はとっくに暮れてます。こんな時間で女の
子一人では襲われちゃいますよ。なんのために私と九曜さんが一緒に出張ったと思っているんですか」
なるほどそういうわけか。


358 :流様が見ている :2007/05/18(金) 00:01:13 ID:qRRDhCWm
しかし九曜と二人で帰るのか。
「大丈夫ですよ。九曜さんと私達があなたに直接危害を加えることはありません。これを機にもっと仲良く
なって下さい」
「僕もそれを願うよ。それではまた」
「失礼します」
佐々木は片手を振って、橘はピョコンと頭を下げて去って行った。

あとに残されたのは俺と九曜だけだ。
「―――」
相変わらず何考えているか分からないな。
「………」
こうしていても仕方ない。帰るか。

自転車を引いて九曜と家路につく。
「―――」
しかし………間が持たない。こいつとの接点がないから会話の種がない。
まあ、あったとしても親睦を深めようとは思わないが。
「………」
自転車に乗らずに引いている家に着くまで時間がかかる。
自転車でさっさと行ってもいいが、それはさすがに九曜に悪いだろう。
でも、スーと平行移動しているこいつを見ると自転車の速度に構わずに、ついてきそうだ。
………それはちょっと不気味だな。
「乗るか?」と言おうかとしたが、髪が長すぎるから車輪に絡まりそうだ。
「………」
「―――」
結局、気まずい空気のまま家まで着いた。

「玄関先まで見送ってもらってありがとな」
とりあえず礼だけは言っておく。
「―――」
しかし九曜はその場に立ったままだ。どうしたんだ。
「―――親友――――」
手を差し出してきた。握手しろということか?
いや、佐々木の真似か。
「親友ってのはな、友達同士が互いに信頼出来て打ち解けあう仲たんだ。俺とお前は違うぞ」
言って聞かせる。
しかし九曜は全く微動だにしない。これは握手するまで帰りそうにないな。
「とりあえず友達からというところから」
握手をした。
「―――友達―――?」
首を傾げた。
「ああ、友達だ」
暫らくそのままにしていたがやがて満足したのか、またあの平行移動で夜の闇に溶けるように去って行った。
長門とはえらい違いだな。いや、長門もはじめは結構機械的だった。今ではかなり人間らしいが。
九曜はまだ知らないことが多いのだろう。いろいろ経験していけばあいつも人間らしくなっていくだろう。
そういえば九曜はどこに住んでいるのだろう。いくら宇宙人とはいえ屋根のないところに住んでいては体に
悪いなどといった心配はあいつには余計かな。

自室に帰った俺はベッドに倒れこんだ。
今日は疲れた。昨日は昨日で疲れたが、今日のはこの三日間で最大だ。
自分を誉めたいよ。
佐々木のおかげで元に戻る目処もついた。
無事に戻ったらあいつになにか礼でもしないとな。
などつらつら考えていたがいつの間にか眠りについていた。


359 :流様が見ている :2007/05/18(金) 00:03:25 ID:iyPQnFHA
翌日
制服のままで寝てしまったから服とスカートにしわが出来ていたがもともとの不精スキルが発動してそのま
まで登校した俺を見たハルヒが余計な世話焼きスキルが発動して長門と朝比奈さんとおまけに鶴屋さんまで
交えてちょっとした騒動があったがこれは蛇足だな。

その日、ハルヒは用があると放課後部室には来ずにすぐに帰った。
佐々木が呼び出したのだろう。佐々木とハルヒがなにを話し合うか気になるが、ここはあいつに任しておこ
う。

その夜、ハルヒから電話があった。
『今日、佐々木から呼び出しがあったんだけどさ』
それは知ってるとは言えないからうなずいておく。
『昨日あんた、佐々木と会ってたんだって』
佐々木のやつそんなことを言ったのか。
『あんたと佐々木、中学の時仲良かったらしいけど……そういう趣味?あんた男に興味持ってないようだか
ら』
なんだ、そういう趣味とは。佐々木よ、ハルヒになにを吹き込んだ。
『あたしは別にそういうのは否定しないけど。個人の自由だし。それにあたしも………』
急にゴニョゴニョと声が小さくなった。聞こえないぞ。
『とにかく!あんた、慎みなさい。SOS団員なんだから!』
と、だけ言って切りやがった。
………佐々木、本当にハルヒになにを言ったんだ。
ハルヒもなんだか変だったし。不安だ。
こんなんで俺は元に戻るのか?
今日やることのない俺は寝るしかなかった。

朝、妹に叩き起こされた。
「キョン君おっはよー」
キョン君じゃない、お兄ちゃんと言いなさい。
ん?キョン君?
もしや、と洗面台に直行した俺はそこにいつもの顔を見た。
良かった。戻っている。
佐々木はうまくやってくれたようだ。
とりあえず佐々木に電話して礼を述べた。そしてハルヒとなにを話したのか気になっていたから聞いてみる
と『女同士の会話には秘すべき秘密があるのだよ。詮索は無用だ』とはぐらかされた。
まあ、聞いてはいけないならば無理強いはするまい。
俺は久しぶりにブレザーに袖を通して登校した。

いつもの目線、まわりの奴らも女扱いしない。いいね。
教室にはやはりハルヒが先にいる
「おっす」
挨拶した俺を胡散臭げに見た。
「機嫌いいわね。なんかいいことでもあった?」
「まあな。」
「あっそ」
興味ないのかそれだけ言って机に突っ伏した。


360 :流様が見ている :2007/05/18(金) 00:05:19 ID:qRRDhCWm
放課後
ハルヒがまだ来ていない部室で
「おやおや、戻ったようですね」
なんだそのもの言いは、戻らなかった方がよかったみたいだな。
「いえいえそんなことは。ただ、もう少しあのままでもよろしかったと」
洒落にならんことを言うな。面白くない。
「残念」
長門、お前まで。
というかお前が情報操作すればすぐに解決出来たのではないか?
「まさか」
長門、棒読みだぞ。
「でも、少し残念です。せっかく仲間が出来たのに」
朝比奈さん勘弁して下さい。俺はもうコスプレなんてしたくありません。
三人とも無責任なことばかり言ってくる。
あかほり〇とるや高橋〇美子もびっくりな、リアル性転換なんてもうこりごりだ。

次の日の放課後、俺はとんでもないのを見た。
「ハルヒなんだそれは」
「これ?なんかね、有希とみくるちゃんと古泉くんと、あと佐々木さんの友達の京子ちゃんだっけ、みんな
から面白からってくれたの」
部室の机の上に置いているのは
ら〇ま1/2、MAEZ、かしまし
等々ある方向に偏りがあるDVDやら漫画、文庫等だった。

………………………………………………………………………………………………

ホント…もう、マジやめて。



その後、俺の性別が宙を舞う紙より不安定になったのは言うまでもない。



END


361 :流様が見ている :2007/05/18(金) 00:07:49 ID:iyPQnFHA
『おまけ』
駅前広場にて

「さて、もう一つ確認したいことがある」
ガシッと後ろから羽交い締めされる。
なんだ?橘!いつの間。何をする。そして佐々木がにじり寄ってくる。
なんか場の空気が急に変わったぞ。
「そのなんだ、キミ胸部はおかしくないか?なんだか僕より大きく見える」
佐々木は俺の胸を凝視している。目付きがヤバイ。渦巻いている。
「これはもう直接確かめるしかない」
むんずとわしづかみしてきた。
ちょ、やめろ。
「これは!やはり!」
もみもみもみもみって、おい!
「くっ!この!いけない、こいつはいけない胸だ」
マジ………やめて。
「ふっ、ふあ…っく」
マズイマズイマズイ。
変な気分になってきた。
「ふー」
って、橘!耳に息を吹き掛けるな。離せ。
「はむっ」ゾクゾクゾクッ
だーっ、耳たぶを噛むな。「はぁはぁはぁ」
佐々木、お前もいい加減やめろ。お願いだから。
「…………」もみもみ
くそ、聞いちゃいねえ。
あああああああ!
お前ら、やめろーーーーー!
・ ・ ・
・ ・


「はぁはぁはぁ」
あ、危なかった。
いけない世界の扉が開くところだった。
「ふむ、僕の精神衛生上、すぐに戻ってもらう必要があるね」
「私としてはこのままでもいいのですが」
お前ら、言いたいことはそれだけか?人の体を弄びやがって。
「僕はただ確認したまでさ」
「私はもっと楽しみたかったのです」
ああ、もう分かった。
橘、お前はガチレズだ。

「―――出番―――なし――」



お わ り


362 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/18(金) 00:11:11 ID:iyPQnFHA
とりあえずこれで終わりです
なんか佐々木分少なくてゴメン

この先キョン子ネタが思い付くようだったら
この話しを基本設定でやろうかと思ってます



お粗末さまでした




ササッキー、百合ンゲラー橘京子、キョン子は百合ん百合ん

佐々木スレ8-88 「初恋」

2007-05-15 | 佐々木×キョン×ハルヒ

88 :初恋 1/2:2007/05/16(水) 02:56:36 ID:fJdKJxWT
二人は手を繋いでいた……
その姿を見た時、自分の心がチクチクと痛んだ……
涼宮さんは少し慌てた様に手を離そうとしていたけど、キョンは手を離さなかった。
「佐々木、まぁ、アレだ……俺とハルヒは……わ、わかるよな?」
キョンは顔を赤らめながら、繋いだ手を見せた。わたしの心はまたチクチクと痛んだ……

わたしはちゃんと笑えていたんだろうか……

「くっくっ、勿論だよキョン。キミもやっと自分の気持に素直になった訳だね。
それとも、親友としてはもう少し凝っ言い回しをお望みかな?」
「勘弁してくれ……結構いっぱいいっぱいなんだぜ。なぁ、ハルヒ?」
「えっ、そ、そうね。そんなの古泉君だけで十分よ……思い出しただけで……もぅ!」
そう言いながら、涼宮さんは顔を真っ赤にしながら、キョンと繋いだ手に力を込めていた。


89 :初恋 2/2:2007/05/16(水) 03:01:18 ID:fJdKJxWT
わたしは胸の痛みに負けそうになった……

「キョン、そろそろ行くよ。少し寄る所もあるし……これ以上キミ達の邪魔をすると馬に蹴られそうだからね。」
「あぁ、じゃあまたな」
本当は走ってこの場から去りたかった……
でも、駄目……あの角を曲がるまでは……いつものわたしで……
5m……4m……3m……たったこれだけの距離が……2m……
こんなにも遠い……1m……どうして?

角を曲がったと同時に視界がぼやけた。
そして涙が頬を伝う感触で、自分が泣いている事に気づいた。
やっと……やっとわかったよ……どうしてこんなに胸が痛いのか……
いや、本当はわかっていたのに……ただ、気づかない振りをしてきたんだ……
初めてキョンに会った時から、ずっとずっとわたしは恋の病にかかっていたんだね……
気がつくのが遅かったね……キョン……
伝えられないのがこんなに辛いなんて思わなかったよ……


聞こえないけど、伝わらないけど……これがわたしの気持ち……
わたしキョンが好き……大好き…………だったよ…………


おわり

佐々木スレ7-688 小ネタ

2007-05-15 | 佐々木×キョン×ハルヒ

688 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 22:24:17 ID:IMZ+EukX
佐々木「涼宮ハルヒの力はかつて恐るべき科学力で天空にあり、全地上を支配した恐怖の力だったのだ。
     そんなものがまだ北高をさまよっているとしたら平和にとってどれだけ危険なことか君にもわかるだろう。
     キョン、僕に協力してほしい、涼宮ハルヒの力を移す呪文か何かをキミは知っているハズだ。
     僕は手荒なことはしたくないが、涼宮さんの運命はキミが握っているんだよ。
     キミが協力してくれるんなら、涼宮さんを自由の身にしてやれるんだ」


695 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 22:40:24 ID:yBYZGTfk
>>688
佐々木・キョン「バルス!」

佐々木スレ7-527 「フラクラ返上」(1)

2007-05-15 | 佐々木×キョン×ハルヒ

527 :フラクラ返上 :2007/05/12(土) 23:36:04 ID:3JUbXOPm
先日の日曜日に、佐々木はともかくとして、その他の同席しているだけでも怒気を抑え切
れなくなりそうな連中と会談を持ってから早数日が経過していた。
その日は、あと5時間も経過すれば再び休日となる週末の夜であり、運動部という強制休
日出勤団体には幸い入っていない俺としては、休みの前の優雅なひとときを過ごせる最良
の状況でもあった。

それにSOS団のトンデモ市内探検も翌月まではないだろうし、脳内を検索しても俺の検索
エンジンからは一件も出てこないほどに憂慮すべきことがなかった。何を言っているのか
わからないだろうが、そのときの俺はそれほど上機嫌だったってわけだ。
だが、そんな気持ちよく自分のベッドに寝っ転がっていたとき、マイ携帯が予告もせずに
鳴り響いた。やむなく俺がベッドから起き上がり、卓上ホルダに差し込まれている携帯の
ディスプレイを確認すると、日曜日に会ったばかりの佐々木だった。

電話に出たところ、佐々木から会って話がしたいという事だ。だが、俺は再び橘を始めと
して、あのいけ好かない未来人に会うことを望まないと答えたところ、佐々木一人だけだ
ということでその誘いを承諾したわけだ。
それでも俺は、穏やかな休日が蒸気カタパルトで射出される航空機のように遙か彼方へ飛
びさっていくことを頭の片隅で感じ取っていた。
そして俺は、自分の熱を帯びて温くなった携帯を無意識に弄びながら、しばらくの間だら
しなく仰向けで伸びきっているシャミセンを見つめていた。



その翌日、そして現在、俺は北口駅前にある公園に向かっている。なんと約束の20分前
だぜ。いつもこうしてりゃ、毎回ハルヒたちに気前よく茶店代を上納することもなかった
ろうにな。
それから間もなく公園にたどり着いた俺は、見回すほど広さもないのですぐに人待ち顔の
佐々木を視界に補足し、右手を挙げて到着の合図をした。
「やあ、キョン。よく来てくれたね。5分前行動というのは運命共同体である軍艦の中で
欠くべからざる船乗りの習慣だったらしいが、キミは20分前に来てくれた。船乗りの鑑
だね。もっとも僕が早く来すぎたのがいけないのだが、それでも待ちぼうけになることが
なくてホッとしたよ」

佐々木は口調自体は普段とは変わらないが、表情には何処か余裕がなさそうに見えた。こ
れから持たれる話というのは、おそらく深刻なのではないだろうか。佐々木の表情がそれ
を物語っているようでもあった。
しかし、佐々木よ。俺はいつから船乗りになったんだ? それに、佐々木は俺がこれほど
早く来たことに意外そうな面持ちであったのは実に失礼なことだ。
だが否定できんのは、日頃の行いかね。遺憾ながら俺の行動パターンは、佐々木とつるん
でいた頃からあまり変わってはいないことだしな。

「ではキョン、件の喫茶店へ赴くとしようか。先週と同じ休日であるから、キミの先輩に
再び相まみえる可能性も否定できないことではあるがね」
そうだな、だが喜緑さんなら俺たちの姿を見たところで誰彼かまわず吹聴して回ったりは
しないだろう。
知られて困るやつなど別にいない、と言いたいところだが、残念ながら約一名にこの秘密
会合のことを知られると、俺の体から脂汗が落ちてくることになるだろう。いや、これ以
上考えるのはよそう。わけもなく頭痛がしそうだ。
そんな考えを振り払うように俺は首肯し、春の日差しが穏やかに降り注ぐなか、2人連れ
だって行きつけの喫茶店へと足を進めた。


528 :フラクラ返上 :2007/05/12(土) 23:36:41 ID:3JUbXOPm
俺たちがその喫茶店に立ち入ると、チリンと来客を知らせる鈴が鳴り、それに気づいたウ
ェイトレスが接客のためにカウンターあたりから近づいてきた。
「いらっしゃいませ!」
笑顔を浮かばせながら接客を行うその女性店員は、予想通り私服にエプロンの出で立ちの
喜緑さんだった。
彼女は俺の顔を見ると、にこやかに会釈し、
「こんにちは」
学校での事務的な微笑みよりも20%ほどは親しげなのがうれしい。
ただし俺の主観にすぎない。それに彼女は有機アンドロイドであるし、そう演技している
だけとも言えるが。

喜緑さんの挨拶を受けて俺が「喜緑さん、今日もアルバイトですか?」と尋ねると、
「はい」とたおやかな笑みを返してくれた。
実は喜緑さん、隠れファンがけっこういるんじゃないだろうか。そう思える笑顔だ。
その後喜緑さんの案内に従い、俺たちは窓際の席へと腰を下ろした。
席に座ると、メニューを手に取ることもなく、すぐさま俺たちはお冷やを置きつつある喜
緑さんに注文を伝えた。
俺は前回と同じく、ホットコーヒーを注文した。だが、佐々木はこれから持たれる話のこ
とに気を取られていて無意識によるものなのか、意外なものを注文した。
いや、今は指摘しないでおこう。

「キョン、今日キミにわざわざ来てもらったのは他でもない。先週の日曜日、キミや橘さ
んとの会合を持って以来、ずっとあのことを僕は考えてたのさ。何度も何度もね。という
のも僕にはそもそも、キミのように神秘との遭遇といった経験の積み重ねがないわけだか
ら悩みもするさ。でもね、僕はようやく決断したのさ。今日はそれをキミに報告したくて
わざわざお呼び立てしたわけなのさ。それでだね……おや、注文の品がやってきたよう
だ」
と、佐々木の話が核心に入ったところで喜緑さんが注文の品をトレイに乗せてやってテー
ブルにやって来た。

喜緑さんは俺の前にコーヒー、そして佐々木の前になんと、チョコレートパフェを静かに
置いた。そして恭しくお辞儀をしカウンターに戻りゆく。
俺には意外だった。佐々木がこういったような、いかにも女の子が食するものを注文する
とは思いも寄らなかったからな。まあ、新鮮な発見ではあるが。
「キョン、キミは何を不思議そうな顔をしているんだい? ああ、これかい? こ……こ
れは誰が注文したのかな?」

どう考えても、お前しかいないだろう。
「そ……そうかい。僕としたことが不覚だ。いや、何でもないないんだ。……キョン、キ
ミはこのことを忘れてくれたまえ。未来永劫にだ。もしできることなら、キミの脳から修
正液で記憶を真っ白に塗りつぶして忘れさせたいぐらいだよ」
佐々木は傍目にもわかりそうなほどに動揺していた。
なにもそれほど焦ることもないだろう。むしろ佐々木が年頃の女らしい嗜好を持っている
ことを知ることができて、俺にはほほえましく思えたほどだ。

「忘れろと言っても、今現在俺の前で展開されている光景から目をそらすことは出来んぜ。
それにお前がそう言ったものを注文することは、おかしなことじゃないだろう。佐々木、
お前は気にすることはない」
俺の気休めが功を奏したのか、1分ほど沈黙したのちようやく気持ちを落ち着かせた佐々
木は、俺の顔色を窺いながらおそるおそるアイスクリームをスプーンで口に運んだ。
まあ、なんだ。こうして見ていると、佐々木も普通の女なんだよな。


529 :フラクラ返上 :2007/05/12(土) 23:37:17 ID:3JUbXOPm
だが、俺がぼんやりと見つめていたことにややうろたえた佐々木は、
「キョン、キミには見苦しいものを見せてしまったな。お恥ずかしい限りだよ。それにど
うも話が途方もなくそれてしまったようだね。その上なにやら気を削がれてしまった気分
だが、……ここは強引にでも話を元に戻そう。」
佐々木は次に生クリームを口に運びながら、いくぶん真剣な眼差しでそう述べた。
少し緊迫感に欠けるがな。
しかし、佐々木はその様子に反比例して再び重々しく口を開いた。


「キョン、僕はね橘さんの提案を受け入れようと思う」

最初佐々木が何を言ったのか、俺にはまるで理解できなかった。
なんて言ったんだ? 今。
「わからなかったかい? ならもう一度言おう」
佐々木は俺の顔をじっと見据えて、おもむろに口を開いた。

「僕は橘さんの提案を受け入れるよ。そして、キョン。ひいてはキミに協力を願いたい」

その瞬間、俺があの日佐々木を残して一人で帰ってしまったことをひどく後悔した。
佐々木なら、奴らに言いくるめられることもないと考えたのだが、それは甘かったのかも
しれない。やつらは佐々木に何を言ったんだ? 
それに冷静かつ自分が担がれることを好まない佐々木をそう決断させたのはいったい何
だ?
「佐々木、なぜそんなことを言い出すんだ。お前だってあの時、ハルヒのようなトンデモ
能力なんていらないと言ったじゃないか。それに、そんな能力を持ってしまったら精神を
病むなんて事もな。……お前いったい、あの連中に何を吹き込まれたんだ?」

「そのことは聞かないで欲しい。とにかく僕はそう決断したんだ。それに涼宮さんから能
力がなくなれば、キミも苦労することはないし、秋に桜が咲くこともないんだ。だからキ
ョン、協力してもらえないだろうか?」
佐々木の真剣そのものの表情からは意気込みといおうか、断固とした決意が伝わってくる。
しかし、考えてもみろ。ハルヒの変態的能力はあいつの力に対する自覚のなさと、ある意
味いい加減な性格があってこそまともでいられるんだ。
佐々木がその力を認識しつつそれを手にしてみろ、その力の大きさとプレッシャーに耐え
られるか? いや、佐々木自身も懸念を示したとおり、押しつぶされてしまう可能性が高
いだろう。

それともあの胡乱な未来人と、長門とは別個の宇宙人である周防たちに良いように利用さ
れちまうだけだ。どっちだって良い事じゃない。
……躊躇することはない。俺は全力で佐々木を説得し、そして思いとどまらせるだけだ。
俺は佐々木に居直り、
「佐々木、お前には悪いが、その提案を受け入れることは出来ん。もう少し頭を冷やした
らどうだ? あの力をお前が持ってしまったら、佐々木、お前はどうする。 その力を持
つ重さに耐えられるのか? 悪いことは言わん、あんな力はハルヒに任せておけばいい。
俺だって目の届く範囲にあいつがいれば、俺があいつの暴走を止めることだって出来るん
だ」


530 :フラクラ返上 :2007/05/12(土) 23:38:11 ID:3JUbXOPm

ひとしきりしり話し終えると、俺はすでに冷めてしまったコーヒーを口にし、喉を潤した。
だが、佐々木はどことなく寂しそうな表情をしつつ、
「そうか、キミは涼宮さんが大切なんだね。 ……いや、なんでもない。僕にはその説得
を受け入れることは出来ない。それと、返事は改めて聞かせて欲しい。そうだね、2日後
にでもまた駅前で会おう。キミにだって考える時間は必要だろうからね。……でも、出来
れば前向きに考えてもらえると有り難い」
俺はハルヒのことについて、そう語ったつもりはないのだが、佐々木はなぜかそう捉えた
ようだ。なんだろうな、このもやっとする気分は。

佐々木のまっすぐすぎるその言葉に、俺にはこれ以上佐々木を思いとどまらせる上手い言
葉が出なかった。情けないことにな。
その後佐々木とは喫茶店を出て、そこで別れることになった。
しばらくの間立ちすくんでいた俺は、呆然とした心持ちでおずおずと帰路についた。
そんな俺の心境を表してか、店に入る前に感じた心地よい風が、今はむしろ俺の心を逆な
でしているようにさえ感じた。



その夜、俺は部屋のベッドに仰向けになり、自分への憤りで歯噛みする思いだった。
なぜあの時、佐々木を橘たちの手に委ねて帰ってしまったのかと。
返す返すも俺のうかつさが悔やまれる。
だが、そんな俺の懊悩を遮るかのように1階から階段を上りつつある音とともに、妹の声
が耳に届いた。
「キョンくーん、でんわー。女の人からー」
部屋の扉をノックもなしで開け放った妹が、幼稚園児のような脳天気さで語尾を伸ばしな
がら電話の子機を手渡しに来た。
俺はそれを受け取ると、電話の内容に興味津々の妹を追いやって電話に出た。

ひょっとして佐々木か? 思いとどまってくれればいいのだがな。
しかし、あいにくと今現在において最悪と言っていいだろうと思える女の声を聞くことに
なった。
「こんばんは。先週の日曜日以来ね。お元気でした?」
この声は、朝比奈さんの誘拐未遂犯にして、佐々木をたぶらかした張本人。橘京子だ。
よりによって、今俺にとって最も怒りをぶつけたい人間から電話が来るとはな。
もう少しで怒鳴りつけてしまうところだったぜ。
だが、佐々木についての情報を何か得られるかも知れない。怒りにまかせた軽率な言動は
控えたほうがいいだろう。
そう考え、俺は極力感情を抑え気味に話しかけた。

「何の用だ?」
「そんな怖い言い方をしなくても良いじゃない。あなたは佐々木さんから話を聞いたんで
しょ? だったら、あたしたちは志を同じくする仲間のはずです」
こいつ、何か勘違いしているな。そもそも俺は、ハルヒの能力を佐々木に移すなんて事を
承諾しちゃいない。佐々木に対してもな。
しかし、橘はそんなことはお構いなしに話を続けた。

「では、あなたに協力してもらう方法について今簡単に説明します。準備の都合もあるの
で、決行は3日後としますね。……あなたには藤原さんについてもらって4年前の7月7
日に遡行してもらいます。そしてもう一人のあなたが涼宮さんに会う前に、あなたには
佐々木さんに会って、本来彼女に備わるはずだった力を芽生えさせるきっかけを作っても
らいます。あなたにはそれだけを協力してもらえればいいの。どう、簡単でしょ? それ
だけで、もうあなたは涼宮さんに振り回されることはないのです」

佐々木スレ7-527 「フラクラ返上」(2)

2007-05-15 | 佐々木×キョン×ハルヒ

531 :フラクラ返上 :2007/05/12(土) 23:39:02 ID:3JUbXOPm
橘が必死なことは分かった。だが、いまだ協力するとも明言していない俺に対して、それ
ほどに重要なプランをいともたやすくしゃべっちまうなんざ、軽率のそしりを免れないだ
ろう。こいつも根は素直な普通の女なのかも知れないな。
もっとも、橘は俺が協力するものだと疑っていないんだろうが。
さて、このうっかり者にそれを教えてやるべきだろうか?
おっ、ちょっと俺の怒りが収まってきたぞ。大分冷静になれたようだ。
それに今こいつを拒絶すれば、今後こいつらの妨害によって、佐々木を説得することさえ
ままならないかも知れん。それは得策じゃないだろう。
だから否定も肯定もせず一言だけ、
「……そうか」

今はこう答えておく。そして俺は電話を切った。
……全てはこの2日間にかかっている。
だが、俺はその後脳漿を絞り出すような思いで佐々木の説得工作を考えていたが、考えれ
ば考えるほど思考は袋小路に入り、ついに名案が思いつかないままに力尽きた。



翌日の放課後、俺はいつものように文芸部室でSOS団の活動(といっても古泉とチェスを
打っていただけだが)をつつがなく行い、空が茜色に染まりつつある時間になり活動終了
のチャイムとともに本日の活動を終えた。
そして古泉をはじめとして長門、朝比奈さんが部室を出て行く中でハルヒが俺を呼び止め
た。
ハルヒは俺と目を合わせず、後ろの中庭に目を向けながら、
「キョン。あんた……最近佐々木さんと仲が良いらしいわね」
何を思ったのか、ハルヒはいきなりそんなことを言い出した。
だが、なぜかギクッとする俺であった。昨日のことを知っているとでも言うのか?
「何のことだ。俺が友人と仲良くしておかしいことがあるって言うのか?」

「別に……。ただ、昨日あんたと佐々木さんが喫茶店で仲良さそうに話してたっていう話
を聞いたもんだから、ちょっと気になっただけよ。あくまでも団則を重んじる団長として
だけ」
何も聞いていないのに、ハルヒはわざわざそんな言い訳がましいことを捲し立てた。
しかし、あれを誰から聞いたんだ? ひょっとして喜緑さん……じゃないよな。あの人は
そういったことを漏らす人じゃないと思うんだ。
「お前、どこからそんなことを……?」

ハルヒはここでやっと少し得意げに、
「ふん、あたしの情報網を見くびらない事ね」
などと、ハルヒはお庭番の頭領にでもなったつもりらしい。
じゃあ、誰から聞いたんだ?
「誰だって良いじゃない。あたしが言いたいのはね、壁に耳あり障子に目ありって言うで
しょ? だから、あんた、いくら佐々木さんがかわいいからって、妙なことをしようなん
て考えない事ね」
ハルヒはお得意のアヒル口で、俺に極太の釘を刺して、そして「じゃあ、あたし帰る」と
部室を出て行った。
つうか、俺が佐々木にそんなことをするわけがないだろうが。まったく何の心配をしてい
るんだか。


532 :フラクラ返上 :2007/05/12(土) 23:39:41 ID:3JUbXOPm
俺は首を振りつつ肩をすくめ、カバンを脇に抱えて部室を出た。
そして階段を下り、下駄箱の前までたどり着くと、解説好きの二枚目野郎が俺を待ってい
た。いうまでもなく古泉なんだがな。
古泉のやつは俺と下校を同じくしようと待っていたらしい。その道すがら、話題はもちろ
ん、佐々木のことに触れざるを得なかった。
「それで、あなたはどうするおつもりですか?」
どうすると言ってもだな、佐々木を説得して思いとどまらせるしかないだろう。
「そうですか。ですが、今のままでは決して佐々木さんを納得させることは出来ないと、
僕は断言できますね」

なぜだ? お前になぜそんなことがわかるんだ。
古泉は意外そうな顔つきで俺を見据え、
「ではお聞きしますが、あなたはなぜ佐々木さんが、涼宮さんの力を得る決断をしたのか
が分かっているのですか?」
いや、残念ながら見当が付かない。佐々木に尋ねたが教えてくれもしなかったな。
古泉はさもありなんといった表情をしたのち、嘆息し、
「僕にはその日、いったいどういった話が持たれたのか、詳細なことは機関の調査でも分
かっていません。ですが見当は付いています」

それはなんだ?
「涼宮さんがそうであるように佐々木さんもまた、いえ、それ以上に根は普通の女性なの
だと思いますよ。あなたの前で被っている仮面を外せば、まさにそうでしょう。彼女は恋
などは精神病の一種と、あたかも達観したような言動を見せていても、実際には人を恋い
慕う気持ちに抗うことのできない普通の女子高生なのです。橘さんはそこにつけ込んで彼
女を引き込んだのでしょう。あなたを涼宮さんのもとから、自分の元に引き寄る事が出来
るとでも言ってね」

そりゃないだろう。佐々木ほど冷静で、恋愛問題にも冷淡と言っていいほどの反応を見せ
る女はいないぜ。
俺がそこまで言うと、古泉はやおら糸目を見開いた。
俺にはこいつの目がギラリと光ったようにさえ感じらるほどの鋭い視線だった。
「今ほどあなたを殴って差し上げたいと思ったことはありませんよ」
なんだと?
「あなたは本当に佐々木さんの気持ちに気づいていないんですか? いや、そんなことは
ないでしょう。あなたは気づいているんだ。それを気づかないふりをしているのでしょ
う」

偽悪的に微笑む古泉のその問いかけに、俺は答えることが出来なかった。
佐々木のことはある程度理解しているつもりだった。なにせ1年もの間つるんでいたダチ
だからな。
だが、佐々木が言葉の端々で、あるいは素振りで見せる俺への好意というか感情に気づい
ていないと言えば嘘になる。
それでも俺はその時、佐々木のその仕草は親しい友人に見せる好意であって、決して女が
男に見せる恋愛感情ではないと思おうとした。
卑怯者だと思ってくれてもいい。それでも俺は、その親友と言うには微妙すぎる間柄では
あっても、それに甘んじていたんだ。


533 :フラクラ返上 :2007/05/12(土) 23:40:16 ID:3JUbXOPm
「どうやら答えは出たようですね。あなたが佐々木さんのことを本当はどう思っているの
かはわかりません。涼宮さんに対してもね。あなたのその本当の気持ちを涼宮さんのこと
も含めて佐々木さんにぶつけるべきです。そうすれば、きっと佐々木さんも理解してくれ
るはずです。……いや、言い過ぎました。それ以上はあなたが結論を出すべきでした」
いつになく熱くなったことを恥じたのか、古泉は俺の沈黙を気にしながらも手を振り、
「では僕はここで失礼します」
俺に背を見せて足早に去っていった。
それを見て、俺は聞こえるかどうかわからなかったが、
「古泉、ありがとよ」
そう古泉の背中へと投げかけた。



その夜、俺はハルヒに電話を掛けた。
ハルヒはあまり機嫌はよくなさそうであったが、門前払いは避けられたようだ。
「ハルヒ、手短に言うが、実は俺、SOS団の外部団員をスカウトしたんだ。今度連れて行
くから入団を許可してくれないか?」
ハルヒはやや呆れたような声で、
「はあ? わざわざこんな夜中に掛けた来た用件がそれなの? それに今のところ団員は
不足してないんだけど」
「頼む、ハルヒこの通りだ!」
俺は受話器の前で手を合わせた。間抜けな姿だが。

ハルヒは俺の気迫に押されたのかたじろいだような息づかいが感じられた。
「……わ、わかったわよ。あんた、今日はやけに迫力あるわね。いいわ、許可したげるわ。
誰だかわかんないけど。でも、一つだけ条件があるわ。それはね―――」
ハルヒの提案を聞いて、俺はすぐに受け入れた。
これで準備は万全だ。あとは明日を待つだけだ。



翌日の放課後、俺は授業が終わるとハルヒに断りを入れ速やかに校門を急いで飛び出した。
目的地はもちろん佐々木との待ち合わせ場所である北口駅前の公園だ。
俺は制服のまま、ママチャリを飛ばしてやってきた。俺はママチャリを保管場所に留め置
き、公園にたどり着くと前回と同じく佐々木がすでに待っていた。
「やあキョン、待っていたよ。この2日間は一日千秋の思いだった。大人と子供では時間
の感じ方に違いがあるというが、まさにそれは相対的なもので、どちらにとっても同じ一
日つまり24時間なのだね。まさに僕は、恥ずかしながら、まるで小学生のように相対的
な時間というものを感じていたよ。一つの季節が終わるのではないかと思うほどのね」

こういった物言いはいつもの佐々木なんだがな。
俺はこのまま持論を展開し続けている佐々木を促し、件の喫茶店へと足を運んだ。
残念ながらと言おうか、当然ながらそこには喜緑さんはいなかった。平日だから当たり前
か。生徒会は今好評営業中のはずだからな。
今回は二人ともホットコーヒーを注文し、気持ちを落ち着けた後佐々木は手を組んでテー
ブルの上に載せ、やおら口を開いた。


534 :フラクラ返上 :2007/05/12(土) 23:40:58 ID:3JUbXOPm
「さてキョン。この間の返事を聞かせてもらえるかい? 出来れば僕に協力してくれると
有り難いものだが」
これから俺が吐き出す答えをすでに予想しているかのように、佐々木は俺にそう問いかけ
た。
「佐々木、お前の期待に応えられなくてすまんが、協力は出来ない。お前にとって非常に
リスクが高い、そういった目に遭わせるわけにはいかないんだ!」
佐々木は今まで俺に見せたことのないような哀しそうな顔で、
「やはり、そうかい。でも、これが涼宮さんであればキミはおそらく彼女のために受け入
れたんだろうね。そして必死で守ろうとしたんだろう。……やはり僕の負けだ。いや、最
初から勝負にもならない、わかりきったことなのにな。……すまない、キミの答えさえも
らえればそれでいいんだ。わざわざ来てくれて悪かったね」

と言って佐々が席を立とうとすると俺はあわてて押しとどめ、
「佐々木、まだ俺は話し終えちゃいない。まあ、聞いてくれ」
さあ、いよいよ最終段階だ。上手くやれよ俺。今の佐々木に嘘やごまかしなんて通用しな
い。だから俺は自分の思いを全て佐々木に話してやるんだ。
俺は佐々木をまっすぐに見つめ、そしてゆっくりと、かみしめるように俺の思いを語った。

「佐々木、例えハルヒがお前と同じようなことを言ったとしても俺は全力で止めようとし
ただろうぜ。どっちも俺にとって大切な人間だからな」
佐々木は少し驚いたような表情で俺を見返した。その瞳にはやや揺らぎが見える。
「お前が思っているとおり、俺にとってハルヒは大切なやつだ。それは単なる友達という
わけではないし、団長だからというわけでもない。しかしそれ以上の感情については俺は
わからないとしか答えようがない。少なくとも今の時点ではな」

俺はいつの間にかテーブルに置かれたカップから漆黒の液体を流し込み、さらに続けた。
「だがな、佐々木、俺にとってはお前も同じだ。お前も大切な存在だ。もちろん親友と
言った曖昧な存在じゃない。ハルヒと同じく特別な存在だ。だが、これ以上俺の言葉では
齟齬を生じかねない。だから後は察してくれ。……今の俺にはそれしか言えない」
話し終えた後、俺には佐々木の顔が見られなかった。顔から火を噴くとはこのことだぜ。
ったく、分不相応なことはするもんじゃないぜ。

だが、佐々木は俺の言葉を聞き終わった後、くっくっという真似の出来ない笑い声を上げ、
「キョン、本当にその……僕のことをそう思っていてくれているのかい? ―――あれ?
 なぜか目から涙が流れてくるんだろう? 訳のわからない状態なのに……。これはどう
やら、うれし涙というやつだね。どうやら僕は病気にかかってしまったようだ。でも決し
て嫌じゃない、むしろ良い気分なんだ」
佐々木のその様子を見るに付け、俺には理由の見つからない不思議な感情が湧き出し、こ
こが喫茶店じゃなければ佐々木を抱きしめていたかも知れなかった。

不躾な俺の視線を感じて恥じたのか、佐々木は涙を納め無理に笑顔を作った、
「しかしだね、キョン。僕は橘さんたちに宣言してしまった。これはどうしたもんだろう
ね。今さら止めると言えば彼女たちはいったいどういう行動に移るか、僕は不安だよ。悪
いのは僕なのだがね」
「そのことなら心配はいらない。佐々木、お前はSOS団に入ってくれ。外部団員としてな。
そして俺たちと共に行動しよう。なに、ハルヒには了解を取り付けているんだ」
そうさ、佐々木をSOS団に取り込んで俺やハルヒたちの仲間にしちまえば、奴らとてそう
手出しは出来ない。何しろハルヒの力は強力だ。


535 :フラクラ返上 :2007/05/12(土) 23:41:48 ID:3JUbXOPm
佐々木はそれでも少し不安げに、
「しかし、良いのかい? 僕は言ってみれば、キミたちの敵対組織の親玉みたいなもん
だ」
「そんなことでかまうハルヒじゃないぜ。それに、ウダウダ言うやつなんてSOS団にはい
ないさ。だから佐々木、安心して俺たちの元に来てくれ」
佐々木はハルヒにも負けず劣らずの笑みを浮かべ、

「よろしくお願いするよ、キョン」



さて、ここからは後日談になる。
佐々木は橘に対してきっぱりと断りを入れた。しかし俺の策が奏功してか、今のところ奴
らは手を出しては来ない。万々歳ってやつだ。

それとハルヒが佐々木の入団に際して出した条件だが―――

「ようこそ、佐々木さん。あたしたちはあなたを歓迎するわ。……その前にこれを着ても
らえるかしら?」

ハルヒは佐々木になんとバニースーツを着せようとしたが、それはハルヒ用のものだった
ため、佐々木の一部のボリューム不足により、その部分がはだけそうになり危うかったこ
とをここに付け加えておく。

念のために言っておくが、俺は見ていないぞ。


おわり

佐々木スレ7-461 小ネタ

2007-05-15 | 佐々木×キョン×ハルヒ

461 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/12(土) 17:52:12 ID:EGh5q4gJ
「やあ、キョン」
振り向くと佐々木がそこにいた。
「一人かい、涼宮さんはどうしたのかな?」
「はぁ、お前まで俺とあいつをセットみたいに言うのかよ…」
「ということは今の友達にも言われているのかい?」
「ああ、『涼宮と一緒じゃないのか?』やら『涼宮さん知らない?』やら、俺はハルヒの保護者じゃないっての」
「ふふ、たしかに『保護者』ではないね、それ以上だもの」
「…どういう意味だよ。何が言いたいんだ」
「さて?僕に言いたいことなんてないよ。君が自覚すべき問題だ」
あいかわらずおかしな言い回しだ。
「話は戻るが今日は本当に一人なのかい?」
「いや、SOS団で不思議探しの途中だ。ハルヒとペアだったんだが『ちょっと待ってなさい』とか言って走り出してな」
「置いていかれたというわけだね。ふむ、追いかけなくていいのかい」
「なんでだよ。待ってろって言ったのはあいつだぞ」
「乙女心は複雑なのさ」
その口調で女の佐々木に言われるとなんとも言えないものがあるな。
「まあいいさ、こっちは時間が空いてしまってね、少し話でもしようか」
まあ特に断る理由もない。ハルヒが帰ってくるまでのいい時間つぶしになるだろう。

他愛のない近況報告。
なぜか佐々木はハルヒのことを聞きたがった。理由は「僕と正反対の人物だからね。興味があるんだ」だそうだ。
「ってわけだ。チョコを渡すなら渡すでもっと簡単に出来ないものかね。どうせ義理なんだし」
「…それを本気で言っているなら君はいつか刺されるよ?」
「ぶっそうだな。なんでそうなるんだよ?」
「やれやれ、君はそういうところは変わってないね」
「一年じゃあそんなに変わるわけないだろ」
「いや、一つ変わったところがある」
変わったところ?少なくとも自覚はない。何だというのだろう。
「人の目を見て話すようになった」
「…そうか?」
言われてみればそうかもしれない。だがそれがどうしたって言うんだ。
「以前の君はあまり人と関わろうとしなかったからね。目を見て話すということはその人を正面で捉えるということだ」
「そんな大げさな…」
「少なくとも君は前向きになった。親友としては嬉しい限りだ。涼宮さんに感謝だね」
「ハルヒが何の関係があるんだ」
「わかっているのにとぼけるのはよくないな。涼宮さんはそういう人だろう?僕がそうでないように」
そういえば佐々木の目を見て話した記憶はあまりない。
「正直僕のような引っ込み思案な人間からするとそんなに見つめられると話しにくいったらないんだ」
「そうなのか?そりゃ悪かったな」
「悪いのは僕だよ、キョン。君は涼宮さんに感謝すべきだ」

「キョーン!あれ?誰かと話してた?」
「ちょっと佐々木とな。お前に感謝しろ、だとさ」
「よくわかんないけど言ってることは正しいわね。あんたは団長に対する感謝の気持ちが足りないわ」
「お前は団員に対するいたわりの心が足りないな」
「む、なにそれ。キョンの癖に生意気」
たしかにあいつの言うとおりだ。俺はハルヒの目を見て話してる。ハルヒも俺の目を見て話してる。
いつからそれが当たり前になったのか。俺自身も覚えていない。
「ま、いいわ。キョン!あっちですごいもの見ちゃった。行くわよっ!」
俺の手を引いてズンズン歩き出すハルヒ。
「早くしなさいっ!」
振り向いたハルヒの目は期待に満ちてキラキラしていた。
そうか、俺はこの瞳が見たかったから目を見て話すようになったのか。
…なんてな。佐々木の口調が移ったみたいだ。
普段の俺ならこんなこと思うわけないからな。

佐々木スレ6-671 小ネタ

2007-05-08 | 佐々木×キョン×ハルヒ

671 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/08(火) 07:41:47 ID:C9M3D0Aw
『涼宮ハルヒの分裂』のハルヒと佐々木の立場台詞をまるまる置き換えた文章を書き起こしていたが、
あまりの文章量に挫折した。各々妄想してくれ。
P.73
「毎度のことながら、遅刻をするとは・・・。もう少しパンクチュアルな生活を心掛けようとは思わないのかい?
あれだけ僕が注意を促しているというのに、今日に至っては最後に姿を現すどころか、
待ち合わせ時間を過ぎてしまうところを見る限り、そういった気概は皆無であるようだけれど。
いいかい、キョン。時間というのは、そう、一秒一秒をもっと大切にしたほうがいい。
何故なら、君の時間は常に君だけのものとして在るとは限らないからさ。
今この時、今回のケースに於いては、君が待ち合わせ時間を超過して発生した時間は、
待たされていた僕達の時間と等価と言ってしまっても過言ではないのだよ。
だからというわけではないが、従来の団則の他に、今日君が遅れてきた時間の分だけ、罰金を加算させてもらうよ。
何も金銭に拘っているわけではないということはもちろん君も分かっているとは思うが、
この様にペナルティを増やしでもしない限り、君の時間に関する認識は改まりそうに無いからね。
過ぎ去ってしまった時間は何物にも代えられないとはいえ、せめて、図らずも抱いてしまった僕達の君への苛立ちの解消や、
君が”贖罪行動の遂行によって得る満足”を獲得するには、簡易且つ合理的な罰則だとは思わないかい?
ああ、遅れてしまった言い訳なら、喫茶店できちんと聞かせてもらうから安心したまえ。くっくっ。」

佐々木は一気に喋り終え、少し長めの呼吸をして、そして興味深そうな視線を俺の隣に向けた。

「ところで、君の横に居られる美しい女性は誰なんだい?紹介してもらえると有難いのだが。
もしかしたら、遅れて到着した理由は彼女に起因するのかな?」

「ああ、こいつは俺の・・・・・・」
と俺が言いかけた途中で、
「親友よ!」
ハルヒが勝手に解答を出した。