【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ3-638 佐々木の結婚観

2007-04-21 | その他佐々木×キョン

638 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 15:25:50 ID:NbvEIPlh
「確かに僕は恋愛感情は精神疾患の一種だと否定したが、結婚という制度まで否定したつもりは無いよ。
 男女が惹かれあうのは、子孫を残し自らの遺伝子を伝えようとする生命体としての本能に基づく自然な欲求だ。
 そして結婚という制度は安定的に子育てを行うために生み出された実に合理的な制度だ。
 それを全否定する事は、幼年期の終わりとかじゃないが、人類という種が全く新しい何かに変化、もしくは進化といってもいいが、そういう世界が一変するような何かが起こらないと無理だろうね。
 無論そんな変化をもたらすオーバーロードなんてやって来ないだろうし、僕は自分が平々凡々たる一般人であることを自覚してる。
 そんな旧人類としては以前からの慣習に従って平凡な一生と平凡な幸せを望むのが分相応というものだろうさ。
 だがね、そうだとしてもそれはまだまだ先の話だ。
 僕らは社会的にはみればまだまだ子供なのだから、今は自分というものをしっかり構築するために力を注ぐべきだろう。
 その大切な時期に、所詮未知なる物への好奇心と思春期ゆえの欲求の集合体でしか無いような“恋愛”なんてものに関わりあわされるのは勘弁願いたい。
 まあ今現在の話ではなく、将来結婚する時期になった時でも、パートナー選びは恋愛なんてものに惑わされず冷静に行いたいと思ってるよ。
 ん?それじゃあまりに打算的に過ぎないかって?
 ……キョン。結婚なんて現実の塊で夢や希望なんてものは欠片も無いんだよ。
 もしそんな事を夢想しているのだとしたら即座に捨て去ったほうがいいね。
 いいかい?結婚した相手とは出産と育児という大変な仕事を共に行わなければならないんだよ?
 それに、子育てが終わった後も、老いて互いに性的な魅力を全く感じなくなった後も、死が互いを分かつまで共に過ごす事を契約するのが結婚というものだ。
 そんな相手を、恋愛なんて病に犯された頭で正しく選べるとは思えないね。
 なにしろ恋愛の最大の症状は視野狭窄なんだから。
 あばたもえくぼなんて言葉があるが、粗暴を男らしさと、我侭を女らしさと勘違いするような輩は理解に苦しむよ。
 ……じゃあどんな相手がいいのかって?
 自分で言うのもなんだが、僕は元より欲求が希薄なほうだから多くは望まないよ。
 そうだね、長い時間を共に過ごす事になるんだから、一緒にいて不愉快になるような相手はごめんこうむりたいね。
 自然な感じで一緒に歩けて、心穏やかに食事が出来て、自分を偽らずに楽しく会話が出来る。
 まあ、そんなところかな。
 簡単?……そうでもないさ。僕にとっては特に、ね。」

佐々木スレ3-605 「karma」

2007-04-21 | その他中学時代ss

605 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 02:35:32 ID:ITisHQkb

「Karma」

 いつの頃かは判然とはしないが、制服の上着を着ていたことは覚えているので、
中学三年の秋頃のことだったと思う。そんなある日の昼休みのことだ。
 給食を食べた後、ちょっとした用足しをすまして、俺は自分の席に戻ってきた。
国木田から借りた週間漫画誌を読んでしまおうと思っていたのだ。
 くだらないギャグマンガに笑い、格闘マンガをワクワクしながら10分ほど読んでいた時、
隣席の佐々木の様子に気がついた。
 目を軽く閉じて音楽を聴いているようだ。昼休みの佐々木は、小難しい文庫本を読んでいるか、
予習か復習をしているのが常であったので、ちょっと意外だった。
「ん、何か僕に用事かな、キョン」
 俺の視線に気がついたのか、佐々木は薄く目を開けて、微笑んだ。
 や、珍しいなと思ってさ。俺は彼女に弁解するような調子で話しかける。
「そうかい、僕はNo music No lifeという人間ではないが、まったく音楽を聞かないわけではないのだよ」
 何を聞いてるんだ。会話の穂をつなぐようなつもりでそう尋ねた。
また、イヤホンから漏れ聞こえる音がどこかで聞いた曲だったのも大きかった。
「これかい? たしか、bump of chickenだよ」
 へぇ、佐々木はそういうの聞くんだな。
「ふぅむ、僕がどんな音楽を聴く人間だとキミは思っているんだい? いや、別に責めている
わけじゃない。キミの目に映る僕はどんな音楽を聴くイメージなのだろうと、ね。興味本位さ」
 そうだなぁ、60年代のハードロックか、クラシックだな。
「クラシックはともかく、ハードロックは聴かないね」
 そうか、doorsとかQueenとか好きそうなイメージなんだがな。ヴァークナーとか口笛で吹け
たりしないのか?
「僕は人間試験に合格した中学生でも、女を殺さずにはいられない殺人鬼でも、
不定形の何かでもないよ」
 俺はお前が今、何を言っているのかがわからない。
「そうかい? 失礼、気を回しすぎてしまったようだ。気にしないでくれたまえ。ちなみに、
これはとある人から借りた物でね、僕のイメージなのだそうだ」
 ほう、ソイツはお前にどんなイメージを持ってるんだ?
「聴いてみたまえ。そして、キミの感想を聞かせて欲しい」
 そう言って、佐々木はイヤホンの片方を寄越して見せた。隣の席に身を乗り出すようにして
イヤホンを耳に引っかける。激しいギターの旋律が耳を叩く。これ、なんていうタイトルなんだ?
「Karma、業という意味だね」


606 :Karma 2/2:2007/04/21(土) 02:36:39 ID:ITisHQkb
 しばし、黙って曲に聴き入る。ふ~~む、なんというか、絶望と希望の歌だな。曲が終わり、
イヤホンを佐々木に返しながら、そう告げる。
「キョン、キミはこの歌からそう感じたというわけだ。どうやら、僕に対するイメージはそのような
ものらしい」
 まぁわからないでもないな。
「くつくつ、なるほど。僕は絶望と希望を体現した人間ということなのかな」
 今のお前がどうというわけじゃないさ。
 だけど、お前が何かを探しているのは鈍い俺にだってわかる。
もちろん、そんなことをお前に告げたりはしない。それはあまりに傲慢な行為だ。
 この時代の俺たちの中に、自分の理解者を見つけたいと思っていないヤツなんていないのだ。
「でも、この歌は気に入ったよ。ひとり分の場所にはひとりしか入れない。
生きると言うことは戦うことさ、誰の言葉だったかな」
 そうだな。生きると言うことは他者を押しのけるということ。受験生である俺たちにとって、
それは他人事じゃあない。
「これこそ、まさにカルマあるいは原罪と呼ぶべきだね。この世のあらゆる生は、他者の存在を
奪わなければ維持できないのだから」
 だから、同じ場所を共有できる存在と必ず出会う。
そんな無根拠な希望を持たなければ俺たちは生きては行けないのだ。
「キョン、ひとつ聞いてもいいかな。キミはこれまでの人生で、同じ場所を共有できる存在を
得たことがあるかい」
 それは中学の昼休みに級友に対してする質問にしては難しすぎるな。
「くくっ、そうだね。許してくれたまえ。まったくTPOをわきまえていない質問だった。
僕らはいま同じ学舎を共有し、同じ学習塾で勉学の時間を共有している。それで十分だね」
 そういって、佐々木はまたあのなんとも表現しにくい笑いをこぼして見せた。
「……来年の僕らはこの日だまりのような時間を懐かしく思い出すことがあるのだろうか」
 俺たちがどう思っていた所で、この場所にはあと半年もいられない。
それもまた生きるってことだろう。
 柄にもなく哲学的になった俺は、そんなことを言っていた。
まったく、似合わない。何を格好付けているんだか。
 何か思う所があるのだろう。佐々木は返答せずにまた瞑目した。会話の終了を感じ取った俺は
哲学をそこら辺に捨て、週間漫画誌に意識を移した。
 だから、佐々木のつぶやきを俺は聞き漏らしていた。

「……僕は得たよ、そしてそれを自ら手放そうとしているんだ」


607 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 02:38:23 ID:ITisHQkb
音楽ネタが続いたので、便乗してみた。
Karmaはわりと、今回の分裂に近いイメージかな。
と。愚考したしだい。

佐々木スレ3-575 「僕」を使い始めた理由

2007-04-21 | その他佐々木×キョン

575 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 22:23:40 ID:1J/Jgblg
佐々木って男と話す時は男口調で話すけど
トラウマでもあるんだろうか


596 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 01:35:05 ID:A1KyBgEp
>>575

僕という人間を自己評価すると変人という言葉がしっくり来る。
幼い頃より知識欲だけは旺盛で、子供らしい遊びよりも図鑑や辞書を乱読するほうが好きだった。
そんな変わり者は当然同年代の子供たちの輪に入ることはできなかった。そして僕自身も周囲に合わせる必要性を感じてはいなかった。僕は常に一人きりだったんだ。
しかしそんな状況が許されるのは幼少期のみ。日本の児童は学校というコミュニティーに放り込まれて社会性を身につけることを強要されるからね。
そんな中で僕自身も社会に適合するべく努力を強いられた。表面上だけではあるがそれらしいものも身につけられたと自負しているがね。
ただどうしても馴染めないものがあったんだ。それは男子だよ。
幼い頃は僕にまるで見向きもしなかったのに、青臭い色恋について知る年頃になると急に僕に馴れ馴れしくし始めたんだよ。自慢じゃないが客観的に見て僕の容姿はそれなりに整ったものらしいからね。
ああ、なんて素晴らしい生き物なんだ、男とは。外見要因だけで恋なんていう不確かなものができるなんて。
僕は男子を軽蔑した。そして彼らを軽んずるようにしたのだ。これで事態は好転するだろうと踏んでいた。しかし僕の予想より社会というものはもっと厄介だったんだ。
周囲の女子が僕に対して嫉妬の念を向けて来るようになったんだよ。彼女らの考えを推察するならば、男子にモテるのにつっけんどんな態度を取ってさらに気を引こうとしているというものだろう。
男子からは気持ちの悪い感情を向けられ女子からはやっかまれ、僕はこの問題の答えを書物に見出そうとした。
答えは意外なところに転がっていたよ。
ある日気まぐれに呼んだ古い漫画に「ボク」という一人称を使う少女がいた。それはまるで天啓のように僕を一つの解決法へと導いてくれたんだ。
そして僕は男子に対してのみ「僕」という一人称を使い始めたんだ。予想通り彼らは奇異なものを見るようにして自発的に僕を避け始めてくれたんだよ。
まあ、これが僕が「僕」という一人称を使い始めた理由だよ、キョン。以来癖でね。まあやめるつもりもないんだが。
え? これから男にも「私」を使うことはあるかって?
ふむ、君が望むなら君だけには特別に使ってあげてもいいんだがどうだろう?
え? 別にどうでもいい? ああ、そうかい。
それは実に残念だね。くっくっ。



はぁ……



佐々木スレ3-594 佐々木ソング集

2007-04-21 | 佐々木ソング

594 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 01:25:15 ID:7pJcrFAl
ありがとよ、とキミに言われると、何故か心が痛むんだ
さよならの後に残る粗悪な遮蔽物
ブラックのコーヒーを飲まされた気分だよ
でもそれもまた人生の一つの要素なのだろう

友達でも恋人でもない親友という対人関係で「いつか」を夢見てる僕

でもあと一歩を踏み出そうとしない僕
じれったいというのはわかってるんだよ、キョン

ありがとよ、とキミに言われると、何故か心が痛むんだ
さよならの後に残る粗悪な遮蔽物
ブラックのコーヒーを飲まされた気分だよ
でもそれもまた人生の一要素なのだろうね

男子からの誘い文句
女子との考察の要素も無いトーク
そんなものに興味をそそれることはなかったさ

思い通りにならない時こそが人生の面白い時なんだろうね

どうした?と突然に聞かれいや、なんでもない と答えた
さよならの後に消える僕の理性
僕らしくない

キミが僕の親友であると信じたいと願えば願うほどノイズが僕の理性を掻きむしる
「恋愛対象」より「親友」の方がキミらしいのかい?
それもまた人生の一つの要素なのだろうか

忘れようとしていたキミとの記憶 突然思い出したあの日
キミとの再会を素直に喜びたかったんだ

でもあの頃よりもやわらかくてあたたかなキミの表情は僕が手にしてはだめなのかい?
限りあるこの時間をキミと過ごしたかったんだ

ありがとよ、とキミに言われると、何故か心が痛むんだ
さよならの後に残る粗悪な遮蔽物
ブラックのコーヒーを飲まされた気分だよ
それもまた人生の一つの要素なのだろう

Flavor Of Life 佐々木ver

勢いでやった。反省はしない。


587 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 00:46:53 ID:UJA9YfZ9
遊佐未森の「夏草の線路」という歌が実に佐々木たんの心情ぴったりの泣ける曲なんでお勧め


598 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 01:37:24 ID:UJA9YfZ9
というわけで、ほんの少しだけいじって「夏草の線路」掲載

夏草に埋もれた線路は錆びた陽射しを集めて
立ち止まる踵を知らない町に誘うよ
霧の朝いちばん最後の貨物列車に託した
僕たちの遥かな未来は走り続ける

何時までもこの場所で
同じ夢見てたはずなのに
キミは今靴紐気にして

枕木は季節を数えて蒼い土へと帰るよ
少しずつほどけるあの日の遠い約束

ポケットに忘れてた
石ころを高く投げてやろう
赤茶けたレールの向こうへ

何にも気づかずに
通り過ぎてしまえそうで
何処まで歩いても
終わりのない夏の線路

夏草に埋もれた線路は低く陽炎揺らして
七色にさざめく小さな風をはじくよ

僕のこと想う時
目を閉じて汽車を走らせて
聞こえない汽笛を聞くから

このまま気づかずに
通り過ぎてしまえなくて
何処まで歩いても
終わりのない夏の線路
いつでもまなざしは
眩しすぎる空を越えて
どんなに離れても
遠くキミに続く線路


612 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 05:46:24 ID:AdeGf+lV
「フォークロア」がなかなか萌える

ねえちゃんと聴いてよ はぐらかさないで
棘より痛く刻みたい
君だけに言うよ その目を見て言うよ
それでも愛と言い切る?

仮面を外さぬ私は孤独で 信じ続けた君は愚か
本気で向き合ってないくせに
虚しく虚しく美しいまま 薄く短い恋遊び

仮面をかぶった私は孤独で 騙され続けた君は愚か
声も届いていないくせに
虚しく虚しく美しいまま 永く破れぬ嘘のまま


635 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 15:11:48 ID:IMUeIv7F
何も見てないフリで 背中見てた
つらくなって走り出す
I miss you, Baby
知った恋はジェラシーの悔しさだけ
おいて逃げていったけど
もう Good-bye, bye! first love

佐「僕はこの歌を聞くと何故か切なくなるんだ」
キ「不思議だな」
佐「不思議だね」

橘「…二人とも鈍すぎなのです」

佐々木スレ3-588 佐々木×キョン

2007-04-21 | その他中学時代ss

588 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 00:48:09 ID:K8zbVdQd
お袋に『今日は受験勉強をちゃんとしたの?』と聞かれたときに、やってもいないのに『した』と答えるのは罪
悪感を感じるし、かと言って正直に『やっていない』と答えて夕食時の会話が小言で埋め尽くされるのもさすが
にどうかと思うので、少なくとも『した』と答えられるぐらいは勉強をしておこうと、昼食後の数時間を学習机
に向かってすごした時にかぎって予想していた質問を母親からされることも無く、少々拍子抜けしながらも風呂
に入りコタツに寝っころがりながら、たいして面白くも無いのにゴールデンタイムに冠番組を持っているコンビ
芸人のたいして面白くも無い番組を見るとも無しに眺めていると電話が鳴り出した。
台所で洗い物をしているお袋の『ちょっと出てー』と言う声を聞きつつ、妹が風呂の入っている状況では電話に
出る事が出来るのは俺ぐらいなので、仕方なくコタツから這い出ると立ち上がり受話器を取った。
「もしもし」
『やあ、キョンかい』
昨日も聞いた聞き覚えのある声。
「佐々木か」
『ああ。キミが直接電話に出るなんて珍しい。てっきりキミの母君か妹さんが出るものだと思っていたよ』
たまたま電話の近くに居たからな。
『そうかい。僕としてはキミの母君と会話をするのが楽しみだったんだがね』
くっくっといつもの調子で佐々木が笑う。
「それは俺にとって楽しくない結果になりそうだ」
『なにそんなに警戒することはない。ちょっとした世間話をするぐらいのものさ』
成績をお前と比べられる俺の身にもなってくれ。
『それはすまない。…ところで本題なんだが、キミの明日の予定はどうなっている?』
「明日か?予定は特に無いな」
『それは残念』
なんだそりゃ?
『朝から晩まで自主学習の予定が入っている。という答えが返ってくるかと期待していたんだが』
そいつは強烈な皮肉だな。
『すまない。僕としては軽い冗談のつもりだったんだが、気を悪くしたかい?』
いや別に。
『それはよかった』
本気でほっとしたような声が聞こえる。
『それではあらためて聞こう。明日の予定はどうかな?』
「朝から晩まで自主学習の予定が入っている」
佐々木の言うとおりに答えると、電話の向こうでくっくっと笑い声がした。
『そうか。では勉強の邪魔をして悪いんだが、明日参考書を買いに行くのにつきあってもらえないだろうか?』
「参考書?駅前の本屋へか?」
『駅前への買い物に保護者を必要とするほど僕は幼くは無いつもりだよ。駅前の本屋へはもう既に行ったんだが、
僕が必要としている参考書は置いてなかったんだ。だからもっと大きい本屋に行きたいんだけど…』
なるほど。二つ隣の市へ行けばいくらでも大きな本屋はあるが、一人で行くのは心許ない、と。
『あそこの地下街は何度行ってもよくわからない。まさに迷路のような街だ』
まあ日本一ややこしいと言われている地下街だしな。
「だからと言って、俺と行っても迷わないとは限らないぞ」
何度か行ったことがあるとはいえ、家族で私鉄のターミナル直結の百貨店で買い物・食事というパターンがほと
んどだ。
『同じ迷うにしても一人と二人では大きな違いがあるからね』
確かにな。なに、迷ったときは地上に出ればいいんだ。地下よりはよっぽど方向感覚が働くと思うぜ。
このあと待ち合わせ時間と場所を決め、それからまたしばらく会話をしてから電話を切った。
「キョン君、電話だれー?」
俺が電話を切るのを待ち構えていたらしい風呂あがりの妹がさっそくまとわりついてきたが、正直に答えるとま
た大声で母親に報告に行くのが目に見えているので適当にあしらいつつ、自分の部屋に戻った。


589 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 00:49:37 ID:K8zbVdQd
翌朝、強い風にふらつきながら自転車を走らせ、銀行の前に駐輪して時間を見ると約束の5分前。待ち合わせ時
間に遅れるのは論外だが、早く来過ぎるのも相手に気を使わせると思うので、5分前とはなんて良いタイミング
だと自画自賛しつつ待ち合わせ場所の駅前に向かうと、佐々木も同じ考えなのか、ちょうど通りの向こうからや
ってくるところだった。
「やあ、キョン。どうやらいま来たところのようだね。それにしても今日は風が強くて冷たいね。いわゆる木枯
らしと言うやつかな」
暖冬暖冬と毎年のように言われているが、やはり寒いものは寒い。こんな冷たい風に吹かれ続けていたら、木じ
ゃなくて俺が枯れてしまいそうだ。早く駅の中に入ろうぜ。
改札の前で佐々木はプリペイドカードを取り出し、そんな便利な物を持っていない俺は券売機に並んで切符を買
い、二人並んで改札を抜ける。
「そういえばキョン、今日は家の人に送ってもらったのかい?」
「いや、いつもどおり自転車で来たぜ」
「それにしては駐輪場と違う方からやって来たじゃないか」
まあそれは自転車を銀行の前に置いてきたからな。
「キョン、それは感心しないな。あそこは駐輪禁止のはずだろう。それによく不法駐輪の自転車が撤去されてい
るぞ」
そうか、俺も少しは悪いなと思っていたが。今度からは駐輪場に止めるとするよ。
「それがいい」
そんな会話をしながら二人してホームに降りると、ちょうど特急が発車していくところだった。仕方が無いので
出来るだけ風の当たらない所へ避難して次の特急を待つ。
あたりを見渡すと、北へ向かう路線のホームにいる人は皆一様に競馬新聞を読みふけっていた。俺にも競馬が面
白いと思える日がくるのか?
俺たちのいる東西に伸びる路線のホームには老若男女を問わずたくさんの人が電車を待っていた。東に行っても
西に行っても大きな街があるからな。そんな人たちの中でも向かい側、西行きのホームにいる女子高生?あの制
服はたしか…
「音楽学校の制服だね、あれは」
俺の視線の先に気がついた佐々木が口をはさんだ。なるほど。ここから北へ向かった市にある演劇学校。合格発
表から入学式、卒業式とテレビのローカルニュースで毎年のように採り上げられている。ある意味、究極のお嬢
様学校だ。なるほど、確かに十人中九人は振り返りそうな美人だな。
「キミはあそこの歌劇を観た事があるかい?」
テレビでチラ見ぐらいなら。
「僕は何年か前に劇場で観た事があるんだが、なかなかの衝撃を受けたよ。こんな世界があるのかと。カルチャ
ーショックというやつだ」
「…やっぱりお前も男役のほうがいいのか?」
「それは僕の一人称から来るイメージなのかい?」
佐々木はくっくっと笑い声を上げた。
「なぜ男役が人気があるのかと言うと、『自分もこんな美形の男性と恋に落ちてみたい』という乙女心からで、
つまり娘役は恋のライバルという訳だ。だから娘役は人気が無いんだが、逆に考えると自分を娘役に投影してい
るということになる。つまりどちらがいいかと問われると、娘役がいいと答える事になるね。まあ清くも正しく
も美しくも無い僕がこんな事を言っても仕方が無いんだが」
そんなことはないだろう。清く正しく美しいと思うぜ、一般的に見て。
「…そうかい、キミがそう言うのなら少し自信を持つことにするよ。そうだ、一度いっしょに歌劇を観に行って
みないかい?最近は娘役目当ての男性客も多いと聞くよ」
「遠慮しとく。あの雰囲気が俺に合うとは思えないしな」
「そう言うと思ったよ」
そのうちに向かいのホームに電車がやってきて、音楽学校生ほかの乗客を乗せ走り去った。佐々木は小さくなっ
ていく電車をじっと眺めている。
「ここから西に向かうと日本有数の観光地があるというのに観光目的で行った事は無いな。せいぜい小学校の遠
足で動物園や水族館に行ったぐらいだ。異人館とか一度は中に入って見たいものだが」
異人館か。俺も行った事は無いが結構入場料が高いと聞くぜ。まあ高校生になればクラスの友達とかと行く事も
あるんじゃないか?
「………」
あれだけ饒舌だった佐々木もやって来た東行きの特急に乗り込むと、無言で車窓を眺めていた。なんか情緒不安
定なのかね。


590 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/21(土) 00:50:54 ID:K8zbVdQd
終着のターミナルに着くと復活したのか、口数も多くなった佐々木の用意した簡単な地図を見ながら駅近くの大
型書店を目指した。結局地下街は通らずに歩道橋を渡り、横断歩道を渡り、直線ならたいして時間がかかりそう
も無い距離を迂回しながら、人ごみを掻き分け結構な時間をかけて書店にたどり着いた。その間佐々木ははぐれ
ないよう俺の上着の裾を掴んでいたが、俺は好きなようにさせておいた。まあはぐれてしまってはお互い困るか
らな。
8階建ての大きな書店の参考書コーナーに行くと佐々木の目的の参考書はあっさりと見つかり、する事の無くな
ってしまった俺たちは帰って受験勉強にせいを出すことにした。帰る前に昼飯をどこかで食べるという事で意見
は一致したが。
駅まで戻り、駅ビルの中にあるカレー店に入る事にした。佐々木は一度来た事があるらしく、佐々木お勧めのカ
レーを注文したがこれが辛さ普通のくせに辛いのなんのって、顔中汗まみれだ。って佐々木、お前知ってて俺に
食わせただろう。自分はちゃっかり甘口を頼みやがって。お前の笑い声がどう聞いても必死で笑いを堪えている
ようにしか聞こえんぞ。

「キョン、今日はありがとう。とても有意義な一日だったよ」
いつもの駅前まで戻ってきて、佐々木はそんな事を言った。参考書を買いに行って昼飯食っただけなのに有意義
だったか?
「ああ、僕にとってはね。どんなに頑張っても報われない事もあるってわかったからね」
?報われないって事は無いだろ。頑張って勉強すれば志望校に合格出来ると思うぞ。
「くっくっ、そうだね。まあ『暖簾に腕押し』を実感したってことかな」
なんだかよくわからない事を言っている。急に黙ってしまったり、今日の佐々木はちょっとヘンだ。
「それじゃあ帰って勉強をするよ。まだ昼過ぎだしね。じゃあキョン、また明日学校で」
「あ、ああ、また明日な」
呆気に取られているうちに佐々木は駐輪場の方へ消えて行った。
さて、俺はそのまままっすぐ帰らずに駅前の本屋へ向かった。大型書店へ行ったときに漫画雑誌を立ち読みした
かったんだが、さすがに参考書を買いに来た佐々木の前では遠慮したからな。
本屋の中の参考書コーナーの前を通ったときに、佐々木が買った参考書が置いてあるのを発見した。入荷のタイ
ミングが悪いな。もうちょっと早く入荷していてくれたらわざわざ遠出して買いに行く必要なかったのに。


おわり

佐々木スレ3-571 佐々木の好物

2007-04-21 | その他佐々木×キョン

558 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 19:37:32 ID:5LXx7WIP
ところで佐々木さんの好きな食べ物はなんなの?


564 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 19:57:15 ID:mGQrq4z1
>>558
ササッキーはベジタリアンな希ガス
野菜をよく食べてそう


565 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 20:04:16 ID:aKAJS1Bp
植物だろうが動物だろうが命を食うことに変わりは無い
という美味しんぼ的理屈で何でも食いそう


566 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 20:06:55 ID:p5eebZ4e
キョン「なあ佐々木。チョココロネの頭は太い方と細い方、どっちだと思う?


568 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 20:21:03 ID:1J/Jgblg
佐々木は甘いものが好きだと思う


569 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 20:22:55 ID:5LXx7WIP
>>564
確かにあんまり肉食なイメージじゃあないな
あと、なんとなくパンが好きそう。


570 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 20:28:32 ID:MpCwmS+V
暑い夏の日キョンと一緒に食べるアイスに勝るものがあるかね。もちろんアイスは一つを二人で、だ。


571 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 20:31:16 ID:GMsHAI0G
>>566
「知らないのかいキョン。アンパンマンは頭がパンなんだよ。つまりチョココロネもそれ全体が頭なんだ。
 だから今キミがしている行為は、いわば脳味噌を吸い取っているという風に表現できるね」

佐々木スレ3-534 佐々木×キョン×ハルヒ

2007-04-21 | 佐々木×キョン×ハルヒ

534 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/20(金) 17:05:23 ID:14dLeo1d
キョン「帰ろうぜ、佐々木」
佐々木「ああ、そうそう帰りに本屋によってもらってもいいかな?」
キョン「何かほしい本でもあるのか。まぁどうせお前のことだから堅苦しい参考書かなんかだろうがな」
佐々木「ご名答、その通りだよ」
キョン「佐々木の考えてることくらいだいたい分かるさ。ずっと一緒にいるんだしな」
佐々木「くっくっ、そうだね」


ハルヒ「ちょっとキョン!今日はSOS団の活動がある日でしょ!?なにしてんのよこんなところで」
キョン「ハ、ハルヒ!今日はちょっと佐々木とようがあるんだ、すまんな…」
佐々木「あ、いや…」
ハルヒ「さぼろうったってそうはいかないんだから、ほらさっさと行くわよ!」
キョン「ひ、引っ張るな!佐々木悪いな、また今度つれてってやるからな…」
佐々木「え………き、キョン?待ってよ!!キョン!!おいてかないで!」


がばっ!


佐々木「はぁ!はぁ!……………ゆ、夢…?」