【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ8-117 佐々木×キョン(佐々木視点ss)

2007-05-15 | 佐々木視点のss

117 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/16(水) 16:25:41 ID:iA/DbRfs
幻視した風景を投下

状況は各自想像して欲しい
BGMはサンボマスター「そのぬくもりに用がある」を推奨

キョン… 君はついに橋を渡ってしまったね

ならば私も

視界が、少しぼやけていた。多分少し鼻声になってもいた

頭上でふたりを見下ろしているもう一人の自分は、
この状況を面白そうに眺めているだけだ
私はどうしたらいい?普段なら三十通りでもすらすら出てくる答えが
まるで記憶喪失にかかっているかのように出口を見失っている
彼はわたしを静かに見守っている 火刑場に引き摺り出された隠れキリシタンの
ようにすべてを受け入れる眼差しで 
心臓から吐き出された血液が、熱く体中を駆け巡っているのを感じる

私はどうしたらいい?

その時、私の手は私の意思なしに動いた。私の右手は彼の右手を取っていた

「残念だよ、男女の間に紛れもない友情が存在し得ることを、身を以って証明できると
思っていたのだがね。キョン、君が一歩踏み出した以上、もうその僕のささやかな実験も
終わってしまったと同義だね で、僕はどうしたらいい?君の望みを聞かせてもらおうか
僕の出来る範囲で、君の要望に応えることはやぶさかではないが?」

私は彼に今どう見えているんだろう 多分私は今泣いている 私は空虚に続けていた

「男女間の性的な交わりを望んでいるのなら、答えはyesでもありnoでもある。そういう
行為にはそれなりに状況や心の準備を必要とするのでね」

「そんなんじゃない お前のその理屈っぽい話や、堅い鎧越しに話しかけてるような態度や
そんなの全部ひっくるめて その、なんだ 好きなのさ」

私の中の何かが音を立てて氷解していくのを感じた それは、もう何も偽らなくていいと感じた
安堵かもしれないし、自分の弱さを人に晒してしまった不安かもしれない 私は多分ぼろぼろに
泣いていた

ありがとう

そのあと自分が何を言ったか正直憶えていない。多分今まで溜め込んでいた彼への想いの一端を
暴露してしまったのだろう。今まで何度聞いても、彼は知らぬ存ぜぬを貫いている

それから何が変わったといえば、取り立てて変わったことなど無かった。携帯電話の料金プランを
変更したことと、僕という一人称が私に変わったことを除いては

佐々木スレ7-723 「佐々木さんの葛藤」

2007-05-15 | 佐々木視点のss

723 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/13(日) 23:37:56 ID:k02tA7Qe
うぅ~最近ずっと寝不足続き…
これも全部キョンのせいだ。
キョンがわたしを惑わすから
彼の何気ないところで見せる優しさとか、その純粋でこっちまで嬉しくなるような笑顔とか
そうゆうもの全てがわたしの心を滅茶苦茶にしていくからだ。
キョンの表情とか声とか、全部目に、耳に残ってる
刻まれちゃってる。
気付けばいつもキョンの事ばっかり考えてる自分がいるの。
ねぇ、もっとわたしを見てよ!
本当のわたしを見つけてよ!
キョンが、悪いんだから‥
こんな切ない気持ちになるのも全部キョンのせいなんだから!

最近自分が寝不足だと気付いてなんとなく思いついた
「佐々木さんの葛藤」
佐々木さんならこんな感じもありかなと思った

佐々木スレ6-69 小ネタ

2007-05-06 | 佐々木視点のss

69 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/05(土) 21:20:13 ID:IrHdB6dW
中学生の頃「好きな人はいないの?」と事を聞かれる度に、
そんな人はいない、と答えていた。
ただ、いつも頭には彼の顔が浮かんでいた。
私と彼の間には確かに特別な感情が存在していた。
しかし、それは友情であって恋愛感情ではなかった。
お互いにそれ以上必要とはしていなかった。
卒業式の日、私達はごくありふれた挨拶だけで別れた。
私達の友情は変わらないとお互い知っていたから。
今でも時々「好きな人はいないの?」と聞かれる事がある。
私の答えはいつも変わらない。
そんな人はいない、と言っていた。
彼の顔を思い出しながら……。

そして、私達は再び出会った―――


中学生の頃「好きな奴いないのか?」と聞かれる度に
そんな奴はいない、と答えていた。
ただ、いつも頭にはアイツの顔が浮かんでいた。
確かに俺とアイツは一緒にいる事が多かった。
だが、そこに友情はあっても恋愛感情は無かった。
お互い恋愛感情が入り込むと友情が壊れてしまうと分かっていた。
卒業式の日、俺達はいつも通りに過ごして、そして別れた。
俺達の友情は変わらないとお互い知っていたから。
今でも時々「好きな奴いないのか?」と聞かれる事がある。
俺の答えは変わらない。
そんな人はいない、と言っていた。
ただ、思い浮かぶ顔はあの頃とは違っていた……。


そして、俺達は再び出会った―――


なんとなく書いてみた。
特にオチも続きもないww

佐々木スレ4-747 小ネタ

2007-04-29 | 佐々木視点のss

747 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/29(日) 05:51:05 ID:iMuQ7SIZ
暦の上では十分に秋と言える時期だったが、気候の上ではまだそれなりの暑さを残した程度の時候。
リフレッシュを兼ねた日課としている休日早朝ジョギングの最中、妙なものが落ちているのに気が付いた。

何これ――鳩の羽根? 白い鳩なんてこの辺には居ない筈だったけど。

好奇心からか、その羽根を摘み上げ、まだ柔らかい日光に透かしてみる。
空が高いな――
羽根の向こうに見えた巻積雲が視界に収まり、私はただそう思った。


卒業式のあの日以来、私達は会う事も言葉を交わす事も無かった。
「じゃあ、またな――」
「――ああ、またいつか」
『いつか』は、まだ来ていない。

彼の事が好きでは無かったと言えば嘘になるだろう。
友達としての好意は当然のようにあったし、彼と言う人間に惹かれていた事も事実。
でも――
彼との関係が途切れる事に比べたら、あの頃はそれは大した事では無いように思えた。
彼と一緒に居る時間は、私にとって最上の時間だったのだから。
それ以上を考える事など、意味の無い事だと思っていたのだ。

「キョン――」
「ん」
「――いや失敬、何でもない。忘れてくれ」
「どうした、珍しいな。何か悩み事でもあるのか?」

あの頃、彼に自分の真意を伝えるべきだったのか。そうではないのか。
ただ彼と一緒に居たかったから、私は『彼の友達』としてのロールを選び、それは為された。
切っ掛けさえあれば『彼の彼女』としてのロールを選び直す事だってできたかもしれない。
それをしなかったのは私の弱さだ。彼と一緒に居たかったからこそ、私の真意を圧殺してきた。
幾夜の間を煩悶とし、それでもなお今の関係こそが最善なのだと、そう自分を納得させながらも
どうしようもなく抑えられない気持ちが今も心の奥底で疼く。

――恋愛が精神的な病と言うのなら、私は完全にインヴァリッドだ――

彼と離れたのに、否、だからこそ、それが実感としてよく判る。
いつも近くにいたせいで、そんな事にも気付かなかったんだ――


――突然の突風が全身を煽り、私は我に返った。どれほどの間、空を見上げていたのだろうか。
右手で摘み、空に翳していたあの白い羽根は吹き飛ばされてしまっていた。
天球で控えめに光を反射し輝く月の彼方へと、まるで舞い踊っているかのように。

この空の下にいるキミに、いつか私の思いが伝わりますように――
願を掛けるなんて柄ではないけれど、飛び去る羽根を見送りながら、私は思った。


---

ネタ元は茶太の『誓い』。歌から膨らませるの難しいな……
『俄雨』とかもいい感じだと思ったのだけれどPart3の678-680『雨宿り』が
相当にそのまんまだったので見送り。あれはGJだ。

というか連休初日から何やってんだ俺

佐々木スレ3-948 「お友達(佐々木サイド)」

2007-04-24 | 佐々木視点のss

948 :お友達(佐々木サイド) 1/3:2007/04/24(火) 11:36:50 ID:Ta+Aps0O
「お友達:佐々木サイド」

 それは私の第一志望である私立校の受験がちょうど終わった頃のことだから、
2月の半ばといった頃だ。世間ではヴァレンタインデーがどうのこうのと喧しい時期
ではあったが、私は受験生だったし、そういった世俗的なイヴェントとは自分は関係
がないというキャラクターをすでに構築していた。
 もっとも、若干約一名、世間的に言えばチョコレートを渡してもいい、渡すべき男の子
の友人がひとりいるが、自分が決定的なアクションを起こすことで、彼との関係が変化
してしまうことの方を私は恐れた。もっとも否が応でも彼との関係は一ヶ月後には決定
的に変わってしまう。彼は中学の同級生であり、志望校は私とは異なっていた。順当に
行けば私と彼とは離ればなれになり、その後は……
 そう今のように会うこともできなくなるだろう。
 そんなことを考えていたら、彼との待ち合わせ時間が近くになっていた。私は意を決し
て、ワゴンの中から小さな包みを取り、会計をすませた。きっと、渡せない。確かな予感
を胸に秘めて。

 今日は図書館で彼の勉強を見る約束だった。なんというか、主要五科目で彼に負けて
いる物はなかったのである。中央図書館、見慣れた彼の自転車の横に自分の自転車を
止める。さりげなく、くっつけちゃったりしてね。
 外から内部を覗く、机の並んだエリアに彼の姿はない。休憩でもしているのかな? 
玄関に回り込んだ私は、なんとも不愉快な風景を目にすることになる。

 自販機の置かれた休憩エリアに彼はいた。見知らぬ女の子と一緒に。
 思わず、眉間を押さえてできあがったしわを伸ばす。なぜ、彼は私との約束の前に別の
女の子と話し込んでいる。そして、女の子の上気した顔を見れば、用件は一目瞭然、
ピンとくるとはまさにこのことだ。自慢ではないが、他人の表情から感情を読み取るのは私
の得意とする所なのだ。意地の悪い笑みを顔に浮かべさせ、朗らかな口調で勢いよく話しかけた。
「やぁ、キョン。僕との約束の前に、逢い引きとはお安くないね」
 ゴフッ、彼が含んだコーヒーで咽せた。いい気味だ。
 あらかじめ、準備していたティッシュを取り出して彼の顔をぬぐう。
「驚かせてしまったようだね、すまない。大丈夫かい」
 ふふ、遅い…よ。反応がおくれた彼女はハンカチを片手に立ちすくむ。
「そんなんじゃねぇよ」
 彼は彼女と自分の関係を言外に否定する、おやおやそんなこと言っていいのかなぁ。
彼女が傷ついてしまうよ。
「俺とそんな風に見られたら彼女が可哀想じゃないか」
 そんな彼の態度を見て、たまらず、咽から笑いがこみ上げた。
「いや、すまないね、謝罪させて貰うよ。驚かすつもりはなかったんだ。ただ、
キミにね、こんな可愛らしい彼女がいるなんて、思いもしなかったからさ」
 とりあえず、とりなしの言葉を述べておく。まぁ、そんな甲斐性がキミにあるとは思って
いないが、彼と彼女が予想通りの関係であることに、心臓の奥が安堵した。
「だから、そんなんじゃないって言っているだろ。彼女は……」
 彼のセリフを遮るようにして、彼女が叫ぶように言った。
「わ、私は吉村美代子っていいます。キョ…キョンさんのセックスフレンドです」


949 :お友達(佐々木サイド) 2/3:2007/04/24(火) 11:39:18 ID:Ta+Aps0O
 その時、世界が静止した。
 彼は右手に握った紙コップを握りつぶした。びちゃびちゃと中身のコーヒーがこぼれ落ちる。
だが、そんなことにはまったく頓着していないようだ。
「な、な、な、なにを言っていやがりますか、この娘は? というか、知らない言葉を軽々しく
使っちゃうのは、お兄さん、感心しませんよ」
 いつの間にか私は、彼がなんというかそう言うことに興味がある健全な男子中学生と言う
ことを失念していたようだ。彼女はどう見ても年下だった。
 携帯電話を取り出す。110番は何番だったろうか。
「キョン、見たところ、彼女は13歳未満のようだ。だとすると、たとえ同意の上であったとしても
性行為は犯罪となる。わかっているね」
「ぼ、僕はですね、潔白です。この娘、吉村美代子さんはね、僕の妹の親友で、家にもよく遊び
に来る仲でしてね」
 彼がいつもとは異なる口調で言い訳を始めた、見苦しい。
「そして、ふたりは一線を越えた……と。へ~。そうなんだ。ふ~~ん」
 彼が何かを言っていたようだが、耳には届かなかった。
「いや、キョン。僕は冷静だ。僕は常に理性的かつ論理的な人間であるつもりだよ。キミが犯罪を、
性犯罪という男として、人間として最悪の犯罪に数えられる罪を犯していたとしても、キミがそれを
ちゃんと償う気持ちがあり、反省し、罪を精算し、罰を受けるのであれば、僕らの間の友情は失わ
れることはない。約束するよ。そしてさようなら、大好きなキョン」
 口からはかねてから用意してあったかのように長尺のセリフが流れ出た。
 何か、とんでもない発言も飛び出たが、特になんの感慨もなかった。
「彼女はミヨキチは、単なる友人なの。お友達、マイ・ディア・フレンド、アーユーオーケィ?」
 混乱して、できもしない英語で返答を返す彼。っていうかミヨキチってなによ。
「そうか、ニックネームで呼び合うような仲なんだね」
「人の話を聞けよ、わからず屋」
 それはキミの方だろう。そう返そうと口を開いた時、
「やった!! 言われていた通りです」
 そんな私たちを余所に、彼女は小さくガッツポーズをした。
「衝撃的な発言で、びっくりさせれば、ちゃんと本音で答えてくれるって、妹さんに言われていたんです。
そうしないと、キョンさんはごまかすだけで、まともに答えてくれないって」
 いたずらが成功した、とばかりに喜びの表情を見せる彼女。
どうやら、手強い存在かもしれない。女であることを認識されていないことを悲しむのではなく、
現状を正しく認識できたことをよしとするわけか。
「それじゃ、私は行きますね。キョンさん、受験がんばってください。それから、
お裾分けなんて嘘。気持ち、ちゃんと込めてますから」
 こうして、アピールするのも忘れない。ふふ、大した物だ。
 そう言って、ぴょこんと頭を下げて、彼女は私たちの前から去っていった。
 って戻ってきた。
「あ、それから、言葉の意味、ちゃんとわかってますから」
 ぴゅーと、風のように去っていく少女。その後ろ姿を私たちは眺めるばかりである。
げに不可解なるは少女なり、自分のことを棚に上げて私はそんなことを考えていた。
思わず、ククッと咽奥から笑みがこぼれる。


950 :お友達(佐々木サイド) 3/3:2007/04/24(火) 11:41:41 ID:Ta+Aps0O
「一本取られたね、キョン。いや、一本どころじゃないな。三本先取で三本勝ちというところだ」
「まったくだ。女の子はわからん」
 茫然自失という雰囲気で答える彼。
「まぁ、それはともかくだね。手を洗ってきたまえよ、それから、さっきのとやらを頂こうか。
彼女から何か食べられるものを貰っているだろう」
「なんだよ、その辺りから見てたのか」
 そんなにびくつかなくてもいいよ。取って食おうというわけじゃないんだ。
「いいや、僕にはのぞき屋の趣味はない。ないがね、先ほどの顛末に関する精神的な慰謝料
くらいはもらってもかまわないと思うんだ。キミから、そして彼女からね」
 彼は左手でコートの右ポケットからピンク色の包みを取り出して、放ってくれた。
「ふむ、まだほのかに温かいね。焼きたてというところか」
 手の中で転がす、かすかに漂う甘いチョコの香り。……やっぱりね。
 手洗いに向かった彼の背中を見送って包みを開封する。中身はチョコチップクッキー。
想像通りだ。ひとかけら口に運ぶ。悔しいがいいできだ。私にここまでの作品が作れるとも思えない。
中から、メッセージカードを取り出し、ポケットにしまい込む。以上、計画通り。
 ほのかに悔しさがにじむ。ああやって彼女は正面切って、彼にぶつかった。顧みて私はどうだ。
鞄から先ほど買ったつつみを取り出して、開封する。小さな生チョコがふたつ。
 彼のために、自販機でココア、自分のためにブラックコーヒーを買う。彼のココアと私のコーヒーに、
チョコを投げ込む。自販機付属の使い捨てマドラーでよくかき混ぜる。
 カフェ・モカとホットチョコレートのできあがり。
 ティッシュを置き、彼と自分とでクッキーを分ける。この美味しいクッキーに罪はない。
せめて、供養はしてやろう。
 戻ってきた彼に手を振った。不機嫌な顔を態度を作る。
「一応、キミの分だ。もとより、キミが彼女からもらったものだからな。
全部、僕が食べてしまうのも悪いだろう」
 隣に座った彼が黙々とクッキーを口に運ぶ。きっと、くだらないことを考えているのだろう。
その瞳は焦点が合っていなかった。
「それから、飲み物なしでクッキーを食べるのもつらいだろう。これは僕のおごりだ。心して飲み給え」
 意を決して、ココアの紙コップを渡す。まったく、私もとんだ意気地なしだ。
 HappyValentineの一言も言えないんだからな。
「……ってココアかよ」
「気に入らないのかね、僕の心づくしの贈り物だ」
 チョコチップクッキーにココアじゃ合わない。そんなことは百も承知さ。
だけど、時期と贈り物の内容で、相手の気持ちを思ってくれても罰は当たらないだろう。
「すみません」
 そう言って、彼は素直にココアに口を付けた。
「キョン、確か妹さんは、今年、小学5年生になるのだったな」
 こくりと、肯定のサイン。
「ということは十歳か……まったく、最近の小学生は……まったく」
 ほんとに、色気づくのが三年は早いよ。それに最初はクラスメイトの男の子とかにしておくべきだ。
 ずずっと隣で、彼は生ぬるいココアを啜る。茫洋としている。
 また、関係ないことを考えているに違いない。
 ココアとチョコチップクッキーでカカオが被った、そんな顔をしている。
「まったく……キミがそんなだから……まったく」
 おもわず、彼に対する愚痴が漏れた。春は未だ遠く。私たちの別れまで、後一月、
そんな2月の頃のことだった。

佐々木スレ2-876 佐々木×キョン

2007-04-16 | 佐々木視点のss

876 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/16(月) 00:01:02 ID:VtVRaile
投下。中学時代の何てことない話。


「キョン。たわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話なんだが、キミはサンタ
クロースの存在をいつまで信じていた?」
中学三年の初夏の事だったろうか。僕がこんな季節外れな質問を”彼”にしたのは。
彼―キョンという変わったニックネームで呼ばれている―はしばし考えるような素振りを見せた
後、どこか寂しげな顔をしてこう答えた。
「…最初からだ」
「最初から、というと?」
「俺がサンタっつー赤服じーさんがどういう存在で何をする人なのかを理解した時、からだな」

僕がこんな質問をしたのには勿論理由がある―という訳でもない。僕ら二人は文字通り”たわ
いもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話”をしては休み時間を無為に過ごす
のが専らとなっていた。
キョンと僕が同じ学習塾に通っている誼で話すようになったのは四月中頃の事。彼が高校進学
を危ぶんだご母堂によって半ば強制的に塾へ叩き込まれたというのは後で聞いた話さ。
「幼稚園のクリスマス会に出てきたサンタさんは園長先生か誰かだと思ってたし、オフクロがサ
ンタにキスをする場面を目撃したわけでもねぇしな」
「"ママがサンタにキッスした”かい?僕が初めてその歌を聞いた時は、母親とサンタの不倫劇
を幼心ながらに想像したものさ」
僕がまだあどけない子供だった頃、”ふりん”だの”りこん”だの負のイメージを持つ言葉、それ
も決まって男女間の軋轢に関する言葉について異様に詳しかったのは何故だろうと思案して
いると、
「お前は?」
いつまで信じてたんだ?という論旨の問い掛けが返ってきた。
「僕は、そうだね…。幼稚園の年長組になる頃には信じてはいなかったと思う。くく、一体何が
どうして信じられなくなってしまったのか」


877 ::2007/04/16(月) 00:02:47 ID:VtVRaile
友達同士の実りの無い話。そんな会話の出来る相手とは実に貴重なものだ。僕とってはキョン
がその人物に当たる。
僕とキョンは話が合う、というか僕が一方的に喋り、キョンが時折相槌を入れながら静かに聞い
てくれるというパターンの方が多い。気付くと自分のみが意見を発しており、また一人で語って
しまったと悔いてしまう事も多々あるのだが、彼は別段嫌がる事もなく黙って耳を傾けてくれる
。彼と、もとい、彼に話していると心なし落ち着くような気がする。

「何ていうか、悲しいもんだよな。サンタ然り、アニメ的特撮的マンガ的ヒーロー然り。超能力だ
のUFOだの、そういうものを信じられなくなっちまうってのはさ」
その日キョンは珍しく饒舌になり、アニメ的特撮的マンガ的物語とやらに描かれる世界がとても
魅力的に思えた事、自分もそんな世界に生まれたかったという事、そして世界の命運を分ける
出来事に遭遇したいと本気で考えていた時期があったという事などを話した。

「しかし現実ってのは意外と厳しい。もっと世界がイロイロと面白けりゃ、勉強だってはかどりそ
うなもんなんだけどな」
「ないものは仕方がない。詰まる所、人間はそこにあるもののみで満足しなければならないの
さ。言うなれば、それを出来ない人間が己の欲望を満たさんが為に発明、発見等をして文明を
発達させてきたのだよ。大空を自由に飛びたいと考えたから飛行機を作ったし、快適に移動し
たいと考えたから自動車や列車を産み出したんだ。でもそれは一部の人間の才覚や発想によ
って始めて生じたものなんだ。天才と呼ばれる者たちが、それを可能にしたわけだね。凡人た
る我々は、人生を凡庸に過ごすのが一番なのさ。身分不相応な冒険心など出さない方が身の
ためだと思いたまえ」

「………」
この三点リーダは僕とキョンのぶんだ。僕たちは今互いに見つめ合っているのに気付き、少し
気まずくなったという心境にあった。キョンは興味深そうな瞳で僕を見ている。はて、こんな表情
のキョンは前にも見たことがあるような。そうそう、あれは確か理科の問題の解説を頼まれた時
だった。その時のキョンもこんな感心したような顔をしていたっけ。
キョンは鼻から息が漏れたような笑いをしてから言った。
「何ていうか、佐々木。お前はかなり達観した考えを持ってんだな」

達観?そうだろうか。僕だってキョンと同じように、世界がもっと面白ければいいのにと考えた
事がないわけじゃない。例えば、ある日突然、初対面の女の子から「実はあなたは神のごとき
力を持った存在なのです!」というトンデモ告白をされたり、人間に擬態したちょっとキュアーな
地球外知性体と友人になったり、過去を変えようとしている未来人に出会ったり、とかね。
しかし、そのような事は十数年程度の人生しかおくっていない僕にすら、ある筈がないと断言
できる代物である。せいぜい昔の恋人と街中で偶然の再会を果たす程の事しか起こらないで
あろう。いや、そんなのもいかにも小説的過ぎる。キョンの言う通り、現実とは厳しいものだ。

「そうだよな。普通が一番だよな…」
キョンはどこかしみじみとした雰囲気でそうつぶやくと、窓の外に目を向けた。僕も窓から景色
を眺める事にする。校庭の桜の樹は春の面影をすっかり失くし、枝に青々しい葉を携え、今日
もせっせと光合成に勤しんでいた。

平和だ…。

退屈、などと言うてくれるな。何一つ起こらないからこそ、僕たちは平穏無事に暮らしていける
のだからね。まぁ、たまには衝撃的な事があってもいいかなとは思うが。

終わり。続きは多分書かない。

佐々木スレ2-441 佐々木のポニーテール

2007-04-12 | 佐々木視点のss

441 :1/4:2007/04/12(木) 00:10:27 ID:QzD2R3c/
「ねえ佐々木さん、髪型変えてみたら?」
理科の授業の時、同じ班の岡本さんからそう声を掛けられた。
いつからそうしてたのかはよく憶えていないけれど、
少なくとも三年生になってからは、ずっと肩口までのセミロングのままだったと思う。
「うーん、私は別にこのままでも良いと思っているけれど」
「そんなんだから、アイツといつまで経っても進展しないのよ」
「アイツ……キョンの事?」
はあ。一体何度この事を聞かれたのだろう。岡本さんだけにしたって、これで何度目なのか判らない。
「だから彼とはそんなんじゃないんだって。ただの塾友達だよ」
「ただの塾友達が自転車の後ろにいつもいつも乗せてってくれるのかしらね。
 それに、あなただってよくそれに付き合ってる。それでただの塾友達なんて、ヘンだわ」
「だからそれも前に言った通り、道が同じだしバス代が浮くからだって」
「ふーん? 佐々木さんの為ならバス代わりになりそうな男子がここにはいっぱいいる気がするけどね。
 例えば……ほら、そこの須藤とかさ」
水を向けられた須藤君が机の上に突っ伏す。実験机だからきっとあまり清潔じゃないと思うけど。
「ちょっ、勝手な事言ってんなよ岡本?!」
起き上がった須藤君は反論の言葉を上げたが、岡本さんは素知らぬ顔で相手にしない。
「はいはい、怒らない怒らない。ま、そんなのはどうでもいいわ。
 とりあえず一度やってみる事を勧めるけど。彼がどんな反応をするのか。面白いと思うわ」
今は5月の終わり頃。夏日を記録する日も増えてきた辺りだった。
髪型か……彼はどんなのが好みなのだろう?


442 :2/4:2007/04/12(木) 00:12:07 ID:QzD2R3c/
6月に入って最初の土曜日。この日は朝から温度も湿度も高く、かなり不快指数の高い日だった。
何か思う所があった訳でもなく、この前の岡本さんの言葉が引っ掛かっていた訳でもないけれど、
その日、私は髪を結い上げて――世間一般に言うポニーテールで――登校した。
「おはよう、佐々木さん」
教室に入って、挨拶してきたのは岡本さんだった。私も挨拶を返す。
「今日はポニーテールなんだね? すごく良いと思うよ、それ。アイツもイチコロだね」
くすくすと笑う岡本さんに、だからそうじゃないんだ、と反論しようとした時。
「はよー」
彼が来た。
「やあ、おはようキョン。相変わらずだるそうな顔をしているね」
くっくっと喉の奥で笑ってみせる。彼に対しての私のいつもの笑い方だ。
「お前……佐々木か?」
「僕が僕以外の誰だっていうんだい? まったくキョン、キミと来たら早速脳細胞にカビが生え始めたらしいな」
「あ、ああ……」
私を目視確認した後の彼の様子は明らかに変だった。何か呆然としているような、うろたえているような、
どうしたらいいのか判らずに思考がストールしてるような。
「キョン、どうしたんだ? 体調が悪いなら帰って休養する事をお勧めするよ。夏風邪は性質が悪いと言うしね」
「い、いや大丈夫だ。それよりお前、何だその髪型は。珍しいな」
「これか? 今日は暑いからね。しかし素に返った途端にいきなりそんな台詞が出てくるとはね、
 キミはいつものキョンのようだ。心配して損をしてしまったよ」
「ああ、悪かった」
ふと笑った彼は手を振って、自分の席へと向かう。
「……彼もまあ、随分と判りやすい事ね。言った通りでしょ? きっと面白いって」
確かにいつもと違う彼の反応は面白かったけれど――


443 :3/4:2007/04/12(木) 00:14:27 ID:QzD2R3c/
翌週、雨の振る月曜日。珍しく通学路で彼を見掛けた。
「おはよう、キョン」
「おう」
振り返る彼の視線を傘で遮蔽し、ゆっくりと顔を合わせる。
「……さ、さき? お前、髪」
「ん?」
彼の視線の先にはショートカットになった私の顔があるはずだった。
「切った、のか」
「ああ、暑くなったからね」
彼の反応を見て、私は笑った。なるほど、確かにこれは面白い。
「そう、か。そう、だよな。暑くなったもんな」
随分と歯切れ悪く彼が言う。はは、という彼の笑い声も、陽気に似合わず随分と渇いた感じがした。

前言撤回。
もしかして、やっちゃったのか、私は?

どうしよう。どうしよう。
今更ながらによくよく考えてみれば、土曜日彼が見せたあのリアクションは
彼なりの褒め言葉だったようにも解釈できなくもない。早とちりした一昨日の自分が恨めしくてしょうがない。
こんなにも自分が鈍感だったなんて、私って、何て莫迦。


444 :4/4:2007/04/12(木) 00:16:43 ID:QzD2R3c/
その後教室までずっと、私達は無言のまま共に歩いた。
ホームルームが終わっても、頭の中はずっと後悔が渦巻いているばかり。
だからと言っていつまでもこんな気持ちを抱えてもいられない。とりあえず、彼と何か話を――
「佐々木」「キョン」
何て間の悪い! まさかこのタイミングで呼び掛けを同時にしてしまうなんて。
「キョン、キミが僕よりも数ミリ秒程度先に口を開いたのだからまずはキミから話すべきだ。反論は受け付けない」
「そ、そうか、じゃあ……佐々木」
何でだろう、喉が渇く。唾を飲み下した時のごくり、という音がやけに大きく響いたように感じた。
「お前、一限の宿題、やってる?」
「はあ?」
「いや、今教科書を開いて思い出したところなんだ。一限始まるまででいいから、頼む。ちょっと写させてくれ」
「……まったく、キミには呆れたな」
私が一体どんな思いでいたかなんて、キミには何の関係もないんだね。
「まあいい、始まるまでならね。まったく、僕はキミの代わりに宿題をやっているわけじゃないんだけどね」
「あのなあ、それを言うなら俺の自転車の荷台だって、お前専用ってわけじゃないんだぜ」
「塾への輸送分で相殺しようって事かい? くく、まあいいだろう。そういう事にしておいてあげるよ。
 ああそうだね、今日もお願いしようか。なに、傘くらいならキミの代わりに差してやるさ」
そう、彼の自転車の後ろは、代わりなど存在しない私の指定席。
誰にも譲るつもりなんてないんだから。

「ところで佐々木、さっき言いかけたのは何だったんだ?」
「……もう、どうでもいいことさ」

佐々木スレ2-200 小ネタ

2007-04-11 | 佐々木視点のss

200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/10(火) 04:03:02 ID:pUIZDXxG

あれから一ヶ月。────胸の奥にある痛みに、気づかない振りをしていた。
あれから二ヶ月。────消えない痛みに、ただ堪え続けることしかできなかった。
あれから三ヶ月。────失くしただいじなものの価値に、気づかなかった自分を呪った。
あれから四ヶ月。────これは、何も解っていなかったあの頃の自分への罰なのだと悟った。
あれから五ヶ月。────全てを忘れて前を向いて生きる、そう心に思い込ませることにした。
あれから六ヶ月。────半年たっても、彼と、彼との思い出を振り返らない日は、ない。
あれから何ヶ月か後。──────苦しい。胸の奥が苦しい。助けて────────

あれから一年後。
久しぶりに再会した彼は、前とすこし違っていた。
揺り動かされて痛む心を必死に抑え、落ち着かせようとするあまり奥底にある想いとは全く別のことを喋った気がする。
でも、何よりも私の心をざわつかせたのは、あの時、あの場所で、私に、私にだけに見せると思っていたあの優しい目を、
一緒にいたあの人に向けていたこと。
もう、過去にも、未来にも彼の中に私の居場所はないのだ。

彼と一年振りに再会した、すこし後────────

もう痛みが消えることも、彼の傍にいることも許されなくていい。
あの時間、確かに私と彼はお互いがお互いの一番近くにいた。
そう信じられる何かが欲しい。
その為なら、他の何かを失っても私は構わない。


わたしは、終わらない痛みで壊れてしまった心にそう誓った。

佐々木スレ1-593 キョンからの年賀状

2007-04-11 | 佐々木視点のss

590 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/07(土) 10:00:29 ID:9Yvp7Z5a
キョンの家に電話する際
押入れに仕舞った名簿をひっくり返したとかあったけど
年賀状に電話番書いてあれば苦労しないとも書いてあった。

キョンから来た年賀状はすぐに取り出せるところにあるらしい。

図書カードと長門といい、ハルヒにポニテといい、
本当にキョンは無意識のモテ男だな。クソッ!


593 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/07(土) 11:29:23 ID:h7c2BSRu
>>590
き、ききききキョンから年賀状が届いてきちゃったぁ!さすが、ぼ、僕のキョンだなぁ!キョン、大好き!大好き!愛してる!!
そうだ!今年はキョンにたくさん会えるようなきがするぞ!!
→分裂へ続く

佐々木スレ1-582 小ネタ

2007-04-11 | 佐々木視点のss

582 :らしくないSSで申し訳ない :2007/04/07(土) 07:05:52 ID:9jhiFyOF
「ふぅ」
ベッドに身体を投げ出すと、吐息が口をついた。
久しぶりに彼と喫茶店に入ったことで我知らず緊張していたようだ。
「結局、僕もただの女だってことか」
理性ではわかっていた、彼にもそう口にしたことがある。
しかし、それを実感するのは初めてだった。

彼と共にいて太陽のような笑顔を見せる彼女、
困ったような表情、
それでいて彼女を優しい眼で見る彼の姿が瞼を閉じると浮かんでくる。
微かに胸を刺す痛み。

「……」
彼の名前をそっと口に出してみる。
それは自分が彼を少しでも理解したという思い出。
思い出すのはその時の彼の表情。

神の力など欲しくはない。
そんなものをもらって何になる?
「でも」
自分が橘京子の誘いに乗ったのは別の理由。
どうしても諦めきれないものがあったこと、
大切なものがあったこと、
譲れないことがあること、
それに気付かせてくれたことを感謝しよう。

相手がたとえ神であったとしても、女には戦わなければならないときがあるのだと。