我家のワン達~サクムク日記

さくらとムックンの日記です

おじいちゃんと老犬

2007-08-19 06:51:40 | できごと・お話し
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おじいちゃんと老犬

今日の日記は文字だけです。
長いので、お忙しい方はご遠慮頂いて結構です。

朝の散歩で月に一度も会うかどうかなのですが、お歳を召していらしゃるおじいちゃんが老犬(MIX)を牽きながらゆっくり、ゆっくり散歩をなさっていらっしゃいました。
龍之介とさくらが元気にいた頃ですから5年程も以前となりますか。

当時は5時半起床で散歩をしており、お会いするのは6時頃でしたので龍之介かさくらと歩いている時と、半々の割合でお会いしたものです。
いつもにこやかな表情で、何かを話しかけながら愛犬を労り、ゆっくりと散歩なさっていらっしゃいました。
お会いし、会釈致しますと丁寧に挨拶を返して頂き、時に「今朝も寒いですね」と季節の会話を交わし、「犬はおいくつですか?」などとお聞きしますと「もう16歳なんです。でもまだまだ元気にいてもらいたいですから、朝晩にはこうやって少しづつ歩いています。人間と同じで、犬も足から歳をとる気がしますから」とおっしゃり、「では失礼します」と若造の私に対しても深いお辞儀を戴き、恐縮したものです。

龍之介が亡くなり、ムックンを迎えた頃からおじいちゃんの愛犬が急に歳をとったように歩きが遅くなり、おじいちゃんも立ち止まりながら散歩をなさっていらっしゃいました。
とても息の合った一人と一頭で、何とも言えぬあたたかさを戴いていたものです。
でも、ムックンが来た翌年の秋になるとすっかり会えなくなってしまいました。
気には掛かりましたがお名前も知らず、ご自宅も分かりません。
ただ一度だけ、或る休日の朝に、おじいちゃんとゆっくり話すことが出来ました。

おじいちゃんは大正3年生まれで、3歳年下の奥様は2年前に亡くなられたこと。
お子さんご夫婦は直ぐ近くにいらっしゃるものの、おじいちゃんは犬と住んでいて、優しいお子さんのお嫁さんに掃除・洗濯・食事の世話もお願いできて「本当に気楽で幸せ者です」と仰る程に感謝なさっておられました。
ご自身のことは詳しくお話しになることはなくて、でも、一度だけお話を聞きました。
「この子は死んだ女房の分身みたいなもんですわ。兄弟で捨てられていて、見付けた時には一頭は既に死んでいて、この子も危なかったのですが女房が薬をやり、山羊の乳を飲ませ、寝る間も惜しんで看病しました。おかげでとても元気になって、畑などを走り回っていました。女房が息を引き取る時には『この子だけは大切に、頼みます』と私に言うてました。」
「もう歳なので、いつ死んでもおかしくないのですが、ある意味では私の子供と同じで、死んだ女房の分身です。笑われるかもしれないが、そんな心持ちです。今は一緒に寝てます。子供夫婦や孫からは笑われてますが・・・。」
ニッコリなさりながら老犬の首筋を撫でていらっしゃいました。

実はこの時に初めてお話を聞き、驚いたことがあって、それは漢文の素養が私などは足元にも及ばない程に高度で、奥深い体験と知識の持ち主でいらしたのです。
雑談の時に、私が本居宣長が好きだと申しましたら「宣長はいいですね。多分、現在も含めて最高の漢学者でしょう。中国文学にも精通した歴史家としては宮崎一定がいいのですが、彼は・・・」と話し始めて、「ところで、宣長をお好きだとすると漢文学にも贔屓をお持ちでしょ?」と聞かれましたから「二十歳の中頃から論語が好きでしたが、今頃になると老子がとてもよくなってきました。蔵書印には論語の一文を引用したのですが、替えようかと思っています」と申し上げると、静かにワンコを撫でながら「四書五経の中では私も老子が一番しっくりきます。私がそのことを感じ始めたのは60歳を過ぎてからでした」と話され、気付いたら1時間も話したことがありました。
普通の人なら、宣長のことは国文学者だと言いますが、名前を聞いて直ちに漢学者と応えられて、教養の高さを感じました。
何気なく話される和歌の引用の幅広さにも驚き、スゴイ人がいるもんだと驚きの連続で、とても楽しいひとときでした。
近くにこのような方がいらしたのならもっと早くお話ししたかったと思ったのですが、このときが最初で最後の機会となり、老犬ともこれが最後の挨拶となりました。
私の傍らのムックンは、草原に伏せて居眠りを始めていました。

以来、おじいちゃんと会うこともなく一昨年の暮れに、以前に登場頂いた、町内会の班長の時に話し始めた近くのご婦人とお会いした時、「そういえば、以前、こんな方とワンコに会って・・・」と話しましたら「あら、その方なら昨年亡くなられたのですよ」と仰います。
驚いて幾つかの特徴を申しますとピタリでした。

「犬は一昨年の暮れに老衰で亡くなり、おじいさんも翌年の4月か5月にお亡くなりになりました。とてもお優しい方で、私は少ししかお話ししたことはありませんが、奥様と共に飼い犬をとても大切になさっていらして、犬が亡くなった時には少し寝込まれたとお聞きしました。奥様が亡くなられた時以上に悲しまれたとお聞きしました。」
「すごい読書家でいらして、年金生活になってからは、生活費の半分以上を本の購入費に充てる程で、奥様が苦笑いされていらっしゃいました。」
「お子さんが遺品の処分をなさった時、愛用の机の上には奥様と犬の写真があり、骨壺に入った犬の遺骨とは別に、引き出しには犬歯が一対、大切に保存してあったそうです。」

更にお聞きしたところ、おじいちゃんは東京帝国大学を卒業し、終戦時には海軍の尉官(詳しい位は分かりません)をなさり、南方で苦労なさり、日本に引き揚げて来て、故郷に戻られたのは敗戦から2年以上を過ぎた頃だったそうです。
ムク父がお話をお聞きした奥様も又聞きだと仰いましたが、おじいちゃんは戦争のことを話されることは殆どなくて、ただ「戦場では人間の全てを体験した」と仰っていらして、そんなおじいちゃんが愛したのが、ご家族以外では犬と猫、特に犬だったそうです。

お話をお聞きした奥様にある時、おじいちゃんが話されたそうです。
「犬や猫、特に犬はいいですね。どこまでも信じてくれる。いつまでも傍らにいてくれます。縁としか言いようのない繋がりがあって一緒に生活していると、私の体の一部のようにさえ感じます。人間と同じように、魂を共有するってこう云うことかもしれないと、この年になって分かった気がします。」

おじいちゃんと老犬のことをご案内しようかと思い、近所の奥様にもう一度お話しを伺い、書いてみました。
犬って不思議。
どうしてこんなふうに人間を信じてくれるのでしょうか。
そうして、こんなおじいちゃんやおばあちゃんがたくさんいらっしゃるのでしょうね。
晩年となって尚、小動物との生活を心の糧として、安らぎを求めていらっしゃる幾人かの方々を知っています。
多分、私もそうなのですが。

あぁ、もう一度あのおじいちゃんと話し、老犬と会いたいなぁ。


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2 コメント

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Unknown (meronsmama)
2007-08-19 22:44:53
ムク父様
こんばんは。
昨日に続き、今日も考えさせられる内容でした・・・。

教養をお持ちのご年配者とお話しさせて頂くのは、とても
感慨深く又心が洗われるようで大好きです。
ワンコ達は絆が深まるとニンゲンにはなかなか出来ない
本当の「無償の愛」を当たり前のようにやってのけます。
そこに心の糧・支えや癒しを求めるご年配者も多く、素敵な
関係を築かれていらっしゃいますよね。

ただ現実にご年配者がご年配ワンコの介護をしきれず
困った末に病院に安楽死依頼を・・・。も、あとを絶ちません。
センターもそのようです。多くの団体は熟年ご夫婦方や小さな子供のいるご家庭にワンコを譲渡しません。本来個人的にはそんなご家庭にこそワンコが居て欲しいのですが、(ワンコ好きならばです。) 現実は難しいのでしょうか。このご老人のようには行かないものなのでしょうか。

まとまりのない事になりましたが、ワンコとの生活をお望みの皆様に、素敵な出会い、素敵なワンコとの生活が有ることをお祈りします。昴くんが、望み望まれ幸せ一杯のお婿入りをしますように!!
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meronsmamaさまに (ムク父です)
2007-08-20 08:13:02
犬の安楽死の要因の中に仰いますような切ない、でも無責任な、と批判され得る状況を或る獣医師からお聞きしたのは、さくらを迎える数ヶ月前で、今からおよそ7年前でした。
愕然としましたが、当時は手立てがなく、法律上の保護手段もありませんでした。
「こういうことは自治体か、何らかのボランティア団体が引き取りと、新しい飼い主を捜してもらえないと解決できませんが、覚悟と準備もないのに犬達を購入したりもらい受ける人間にも大きな問題があります。実際は猫も同じで、野良猫が生まれる原因のひとつにもなっています」と教えて頂きました。
皆さまに公開致しました今回のおじいちゃんの例は理想型の一例かもしれません。
お年寄りにこそ、成犬や初老犬の里親さんはどうかな? と考えたこともあります。
経済上の裏付けだけでなく、里親さんの年齢と健康も、或る程度の限定が必要なのでしょうか。
でも、経済的に苦しくても、80歳台のご老人が間違いなく幸せな、静かな生活を愛犬と送られていらした生活を幾例かは知っています。
難しい問題ですが、これからはケーススタディーをたくさん持って、困っていらっしゃる方を手助けし、安心できる手立てをご案内できればよいですね。

おかげさまで昴はますますパワーUP!
トイレの躾が難しくて困っていますが、工夫してみます。
お気にかけて頂きましてありがとうございます。
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