とはずがたり

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COVID-19肺炎におけるimmune cell circuits

2021-02-16 23:02:48 | 新型コロナウイルス(疫学他)
医療従事者で「COVID-19はただの風邪」と考えるヒトはあまりいないとは思いますが、それではCOVID-19の病態の特殊性はどのようなところにあるのか?という点についてはまだまだ分かっていないことが沢山あります。新型コロナウイルス感染症の最も重要な病態は肺炎です。この論文で著者らはICUに入院している88人の重症COVID-19肺炎患者から経時的に肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage, BAL)サンプルを採取し、COVID-19以外のICU入院重症肺炎患者211名のBALサンプルとの違いを検討しました。
まずCOVID-19患者では、健常人や他の肺炎患者ではほとんど見られないT細胞や単球の割合が多いことが明らかになりました。また肺胞マクロファージ中にSARS-CoV-2のRNAのpositive & negative strandsが認められました。このことはSARS-CoV-2ウイルスが肺胞マクロファージの細胞内で複製されていることを示しています。このようなマクロファージではCCL4やCXCL10などのケモカインの発現が亢進しており、これによってT細胞や単球を局所に誘導すると考えられます。Single cell RNA-sequencingの結果、COVID-19患者肺中のT細胞ではinterferon(IFN)-γの発現が亢進しており、これによって単球・マクロファージの活性化および炎症物質の産生を促進するとともに、単球からマクロファージへの分化を促進すると考えられます。すなわちウイルスの肺胞マクロファージへの感染および細胞内での複製⇑→ケモカイン産生⇑→T細胞、単球の局所への誘導⇑→T細胞によるIFN-γ産生⇑→単球・マクロファージ活性化⇑、炎症増悪→マクロファージの誘導⇑という"immune cell circuits"が回ることで、ウイルスが消失した後も炎症が遷延化すると考えられます。この仮説はあくまでも遺伝子発現から推測されたものですが、COVID-19における炎症遷延を説明するものとして興味深いです。
Grant et al., Nature. 2021 Jan 11. doi: 10.1038/s41586-020-03148-w.