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さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

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免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による薬剤性肺炎

2020年02月02日 | カンファレンス室

 近年進行再発肺癌の一次治療は小細胞癌、非小細胞癌問わず免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用する時代になりました。ICIを併用することにより、さらなる生命予後の改善が期待されているところです。また、肺癌以外の領域においてもICIによる治療を行われるようになり、さらには肺癌のように殺細胞性抗癌剤との併用治療も行われています。ということで、悪性腫瘍を診療している部門ではICIについての知識とくに有害事象(irAE)についてきちんと勉強していかないといけないのではないかと思います。そのなかで生命予後に関わるirAEとして薬剤性間質性肺炎は絶対に抑えておかないといけないかと思います。

 最近当院にて経験したICIによる薬剤性間質性肺炎症例を整理する機会がありましたので、報告させていただきます。

 今まで当院では17例のICIによる薬剤性間質性肺炎を経験しました。年齢は52歳~83歳、平均70.5歳です。男女比は男性が12例、女性が5例でした。背景肺の検討では、異常なしはなんと6例しかおらず、それ以外はCPFE(喫煙関連気腫化、線維化)が6例、COPDが3例、間質性肺炎が2例と高頻度に肺疾患を合併していました。驚くことにCPFE、間質性肺炎など線維化を来している症例が8例もいました。ICIを使用するときには間質性肺炎などの線維化には注意すべきで、線維化のある症例には治療内容を慎重に検討すべきですが、実臨床では線維化のあり症例にICIを使用し、その結果間質性肺炎を発症しているということかと思います。治療内容としてはICO単剤が9例、殺細胞性抗癌剤との併用が6例(そのうちICIによる維持療法中に2例が発症)、化学放射線治療後のICI投与が2例でした。ICIに問わず薬剤性間質性肺炎の画像所見はとても注目されているかと思いますが、今回の検討では多発斑状浸潤影パターン(器質化肺炎パターン)が6例と最も多く、次にすりガラス陰影優位パターン(いわゆる過敏性肺炎パターン)が4例、広範な浸潤影優位パターン(このなかの大部分がDADパターンになるかと思います)が4例、原発巣周囲のすりガラス陰影パターン(peri-tumoral infiltration:PTIパターン)が3例でした。PTIパターン以外にPTIを伴ったのが器質化肺炎パターン6例のうち2例に認めました。転帰は1例が薬剤性間質性肺炎に関連して死亡し、それ以外の16例は軽快しました。

 実臨床では半数近くに線維化合併例にICIを使用するなどひやひやものの診療かとは思いましが、死亡例1例と思いのほか治療反応性がいいことがわかりました。今までに言われていたように、器質化肺炎パターン、過敏性肺炎パターン、PTIパターンは予後良好で、DADパターンの一部に不幸の転帰を起こしうるということかと思います。DADパターンについて詳細に語るのは思いのほか難しいですが、ざっくり行くと、広範な陰影であること、すりガラス陰影のみでなく浸潤影がメインになること、陰影内に牽引性気管支拡張を認めること、ステロイドなどの治療反応性に乏しいことがありましたら、DADパターンの薬剤性肺炎が発症したと考え、より慎重に管理することが必要であると思いました。

 これからさらにICIが使用される時代です。是非とも色々な先生方と情報を共有しながらさらにレベルの高い肺癌診療をしていきたいと思います。

 

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