現在肺癌領域にオプジーボ、キイトルーダの2種類の免疫チェックポイント阻害薬が使用でき、また今後新たな免疫チェックポイント阻害薬が上市されようとしています。ということで、メーカー主催の研究会も多く、また呼吸器学会、肺癌学会での免疫チェックポイント阻害薬の発表、報告が多く、たくさん勉強させてもらっています。今後さらなるデータの集積が期待され、そのデータを今後の肺癌治療に生かして行きたいと思います。
そのなかでいくつか注目していることがありますので、ちょっと記載してみます。
①免疫チェックポイント阻害薬自体の有効性は周知しているとして、治療後の奏効率となると決して高いわけではありません。特にセカンドラインでの治療となると、奏効率(腫瘍縮小のスピード化に対する期待)を考えると、ドキタキセル+ラムシルマブの方がいいのではないかと報告している先生方もおられます。そのあたりの使い方の検討も必要かとは思いますが、先日の研究会で肺癌の大腸転移(3センチ大の転移巣)に対して免疫チェックポイント阻害薬を一度使用しただけで完全に腫瘍が消失した症例の報告がありました。当院でもファーストラインですが、一度免疫チェックポイント阻害薬を投与後、本人の希望で緩和医療に移行していったⅣ期肺癌症例がいたのですが、なんと4か月後ほぼdisease freeの状態で、当院に戻ってきた症例がありました。super responderと言ってもいいような症例が少なからず存在することを目の当たりにしました。このような症例、今後いつまで治療を続けて行くのか臨床的検討が必要になってくるかと思いました。(Ⅳ期の進行肺癌が完全緩解になる時代も遠くないのでしょうか?)
②免疫チェックポイント阻害薬による治療ですから、免疫低下を来すわけでなく、感染症の対してはあまり注目していなかったですが、ニューモシスティス肺炎(以下PCP)の報告が散見されるのに興味を持ちました。症例報告のほとんどは確かにステロイドが投与されているのですが、投与量および投与期間を考えると今までの常識でPCPが発症することは考えませんでした。ステロイド投与によりニューモシスティスの感染、免疫チェックポイント阻害薬により免疫賦活(炎症反応の活性化)が発病に関与しているのでしょうか?非HIVのPCP、一歩間違えると予後が極めて不良ですから、もし免疫チェックポイント阻害薬により発症するとなると、臨床上十分注意しなければなりません。先日の研究会では基礎に肺NTM症などの慢性感染症症例の治療後肺NTM症がに悪化した症例、胆嚢炎治療後に免疫チェックポイント阻害薬投与により腹壁膿瘍が顕在化した症例など重篤な感染症の報告が散見されています。殺細胞性抗癌剤と違い感染症については注目していなかった感がありますが、今後は注意して診療していきたいと思います。
③免疫チェックポイント阻害薬による薬剤性肺炎、大部分が器質化肺炎パターンのようですが、もし器質化肺炎パターンの薬剤性肺炎ならば、治療効果という意味においてはステロイドを使用したくないと思うのですが、免疫チェックポイント阻害薬による器質化肺炎の予後はどうなのでしょうか?診断時のワンポイントの胸部CTにてDADを完全に否定できるのでしょうか?また、腫瘍周囲に新たに出現したすりガラス陰影、浸潤影に対しても薬剤性肺炎としていますが、本当の意味での薬剤性肺炎なのでしょうか?pseudo-progressionとしての肺病変とは違うのでしょうか?まだまだ謎の多い領域ですね。
今後も色々情報を共有して、患者さんのための肺癌診療を続けて行きたいと思います。
12年ぶりに自宅の外壁のタイルを貼り換えました。自分も12年年を重ねたのもありますが、今回のタイル、前回よりやや地味な色になりました。でも、何でもそうですが、新しくなると気持ちがいいものです。気分一新、また頑張って行こうと思います。