さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)のお知らせ

2017年10月15日 | お知らせ

毎月恒例のチェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)ですが、今月は10月18日(水)に開催いたします。興味のある方々は奮ってご参加ください。いつもと同様午後7時より当院7階第3会議室で行います。外部からいらっしゃる先生方は、院内に入った後、外来エレベーターに乗っていただき、7階に降りていただけたら係りの者が案内させていただきます。基礎的な疾患から珍しい疾患までバラエティーに富んだ症例を用意していますので、楽しみにしていてくださいね。では、当日皆様とお会いできることを楽しみにしています。

(いつもと同様軽食の用意はしてあります)

昨日より横浜で肺癌学会総会が開催されています。大盛況でした。たまたま出たワークショップで、ALK陽性肺癌の画像所見の話を聞きました。特徴的所見としては原発巣が充実性(サイズはそれほど大きくない)で内部に粘液産生を示すLDAを示すことが多いこと、リンパ節転移が高頻度であることは間違いなのですが、その腫大したリンパ節が周囲臓器へ浸潤していく所見を認めること、癌性リンパ管症、胸膜播種が多いこと、肺内病変があまりにも派手なので原発巣の同定が難しい症例も多いと報告されていました。比較的まれであるALK陽性肺癌、画像所見から遺伝子変異まで推定するのは難しいですが、ちょっとユニークな特徴であり、実臨床の参考になるのではないでしょうか?

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間質性肺炎の診断

2017年10月08日 | カンファレンス室

呼吸器内科医でも苦手意識を持っている間質性肺炎の診断について、近年MDD診断がなされており、その実際の様子などを研究会などで目の当たりにさせていただいています。MDD診断を含めて勉強すればするほど頭の中が混乱してしまっていることがあるのですが、今の現状での間質性肺炎の診断について自分なりに少しまとめてみました。

MDD診断は基本的には①臨床サイドの診断、②放射線画像からの診断、③病理学的診断を行い、最終的に総合診断するという方法です。最終診断は臨床医が責任を持って診断するというスタンスがまず大事かと思います。

臨床サイドの診断においては、二次性間質性肺炎を臨床的に如何に鑑別出来るかが重要ではないでしょうか?二次性間質性肺炎の代表格は膠原病肺、過敏性肺炎(鳥関連など)、石綿肺など吸入性疾患、MPO-ANCA関連疾患でしょうか?身体所見、生活歴、職業歴などを詳細に評価し、KL6などの間質性肺炎マーカー以外に膠原病関連自己抗体、MPO-ANCA、尿検査の測定が重要です。KL6について著明高値であれば過敏性肺炎はどうか?膠原病ではシェーグレン症候群を確実に鑑別出来ているか?(リップバイオプシーなどをどこまで行うか?)また、気管支鏡は施行すべきである。TBLBをするかどうかは別にして(今後クライオバイオプシーによる気管支鏡レベルでの診断が可能になってくるかもしませんが)、BALを確実に行い、UIPパターンか否かの検討は必要かと思います。

放射線サイドの診断においては、確実にUIPか?(definite UIP)UIPらしいか?(possible UIP)UIPらしくないか?(inconsistent UIP)の判断をし、UIPらしくない症例に対して他の組織パターンに当てはまるのか?それとも分不能間質性肺炎とするしかないのか?の検討が必要です。ここで、大事なことはUIPパターンらしいという症例においてもHRCT所見から香膠原病肺らしい、過敏性肺炎らしいという所見があるならば、きちんと記載することが重要です。UIPパターンイコールIPFでないわけであり、副所見があるならばきちんと評価することが必要かと思います。

病理サイドの診断においては、病理学的にUIPパターン、NSIPパターン、その他のパターン、分類不能型IPパターンに分類するわけですが、分類された後も放射線学的評価と同様、膠原病肺、過敏性肺炎など二次性間質性肺炎らしい所見をきちんと評価することが重要と思います。

臨床、画像、病理で診断(副所見も加味して)したあと、それらを総合的に臨床診断すること、最終的には臨床医が診断をするということで大体まとまるのではないでしょうか?パターン化しただけでは診断の核心には迫れず、パターンに隠れてしまっている副所見をうまく集めながら診断していくスタンスが重要ではないかと感じました。間質性肺炎のMDD診断について、自分自身まだ完全には理解できていないことが多いと実感しており、今後も努力していく必要を痛感している次第です。呼吸器内科医の先生方、これからも間質性肺炎の診断頑張って行きましょうね。

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切除不能局所進行非小細胞肺癌の治療

2017年10月08日 | カンファレンス室

切除不能局所進行非小細胞肺癌の治療として現在化学放射線治療が標準治療になっているかと思います。現在当院にて化学放射線治療に使用する化学療法レジメンについて整理しています。今までも化学放射線治療に有効とされるレジメンを化学療法単独レジメンの方から選択して使用していたのですが、種々のマニュアルを参考にすると、投与方法、投与量が化学療法単独とは若干異なっているため、医療安全の面からも化学放射線治療用のレジメンを作成したほうがいいと判断し、もう一度文献に立ち返り、レジメン登録をした次第です。

文献を調べてみると古い文献が多く、また最近の文献とは異なりエビデンスレベルのやや低い論文が多いと思いました。この領域、なかなかデータを出すのが難しいとは思いました。

現在化学放射線治療に使用されている化学療法レジメンは①CDDP+VNR、②CBDCA+PAC、③CDDP+TS1の3レジメンかと思います。①のレジメンについてはVNRの投与量が化学療法単独と比較して減量(25mg/m2⇒20mg/m2へ)、②のレジメンについては2剤ともweekly投与(CBDCAはAUC 2で)、③のレジメンのついてはCDDPをday 1に投与し、TS1については14日間内服と設定されています。基本的には有害事象を加味した投与量変更かと思います。安全性を確保しながらより効果の高い治療を行うというスタンスは正しいかと思いました。上記3レジメンに対する文献を読んでみるとどれもまあまあ共通していて、奏効率は80%以上と高いものの、PFSは1年前後、OSは3年以下と生存に関しては決して満足の行く結果ではないと思います。つまり化学放射線治療後の治療戦略が乏しいというのが現実でしょうか?そのような結果から、実臨床としては外科的治療も選択肢としては捨てきれず、治療の経過の中で常に外科医と討論しながら、手術可能な症例を抽出しているのが現状ではないかと思います。

そのような状況の中、先日ESMOでPACIFIC試験の結果が発表されました。切除不能局所進行非小細胞肺癌で化学放射線治療後SD以上の症例において、抗PDL1抗体であるデュルバルマブ投与によりPFSを10カ月以上延長させる(プラセボ5.6カ月から16.8カ月へ)という素晴らしい結果です。登録症例はPDL1発現率に関係なくSD以上の症例ということですから、切除不能局所進行非小細胞肺癌の治療反応性(奏効率80%以上)を考えると、ほとんどの症例がデュルバルマブを使用することが可能になり、その結果延命することが可能になるというわけです。今後OSの結果を待ちたいと思いますが、今後は是非ともこの治療を行っていき、切除不能局所進行非小細胞肺癌患者さんの幸せにつなげていきたいと思います。切除不能局所進行非小細胞肺癌症例、今後は外科的治療についての検討をしなくてもいい時代になってくるのでしょうか?逆にデュルバルマブによる奏功により外科的治療がより有用になってくるのでしょうか?superresponderになり、完治してしまうのでしょうか?今後のデータに本当に期待したいと思います。

10月に入り、各地で紅葉のニュースが流れています。奥日光の龍頭の滝も綺麗とのこと。本当は実際見に行ってみたいのですが。6年前の写真で我慢しましょう。

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免疫チェックポイント阻害薬

2017年10月01日 | カンファレンス室

現在肺癌領域にオプジーボ、キイトルーダの2種類の免疫チェックポイント阻害薬が使用でき、また今後新たな免疫チェックポイント阻害薬が上市されようとしています。ということで、メーカー主催の研究会も多く、また呼吸器学会、肺癌学会での免疫チェックポイント阻害薬の発表、報告が多く、たくさん勉強させてもらっています。今後さらなるデータの集積が期待され、そのデータを今後の肺癌治療に生かして行きたいと思います。

そのなかでいくつか注目していることがありますので、ちょっと記載してみます。

①免疫チェックポイント阻害薬自体の有効性は周知しているとして、治療後の奏効率となると決して高いわけではありません。特にセカンドラインでの治療となると、奏効率(腫瘍縮小のスピード化に対する期待)を考えると、ドキタキセル+ラムシルマブの方がいいのではないかと報告している先生方もおられます。そのあたりの使い方の検討も必要かとは思いますが、先日の研究会で肺癌の大腸転移(3センチ大の転移巣)に対して免疫チェックポイント阻害薬を一度使用しただけで完全に腫瘍が消失した症例の報告がありました。当院でもファーストラインですが、一度免疫チェックポイント阻害薬を投与後、本人の希望で緩和医療に移行していったⅣ期肺癌症例がいたのですが、なんと4か月後ほぼdisease freeの状態で、当院に戻ってきた症例がありました。super responderと言ってもいいような症例が少なからず存在することを目の当たりにしました。このような症例、今後いつまで治療を続けて行くのか臨床的検討が必要になってくるかと思いました。(Ⅳ期の進行肺癌が完全緩解になる時代も遠くないのでしょうか?)

②免疫チェックポイント阻害薬による治療ですから、免疫低下を来すわけでなく、感染症の対してはあまり注目していなかったですが、ニューモシスティス肺炎(以下PCP)の報告が散見されるのに興味を持ちました。症例報告のほとんどは確かにステロイドが投与されているのですが、投与量および投与期間を考えると今までの常識でPCPが発症することは考えませんでした。ステロイド投与によりニューモシスティスの感染、免疫チェックポイント阻害薬により免疫賦活(炎症反応の活性化)が発病に関与しているのでしょうか?非HIVのPCP、一歩間違えると予後が極めて不良ですから、もし免疫チェックポイント阻害薬により発症するとなると、臨床上十分注意しなければなりません。先日の研究会では基礎に肺NTM症などの慢性感染症症例の治療後肺NTM症がに悪化した症例、胆嚢炎治療後に免疫チェックポイント阻害薬投与により腹壁膿瘍が顕在化した症例など重篤な感染症の報告が散見されています。殺細胞性抗癌剤と違い感染症については注目していなかった感がありますが、今後は注意して診療していきたいと思います。

③免疫チェックポイント阻害薬による薬剤性肺炎、大部分が器質化肺炎パターンのようですが、もし器質化肺炎パターンの薬剤性肺炎ならば、治療効果という意味においてはステロイドを使用したくないと思うのですが、免疫チェックポイント阻害薬による器質化肺炎の予後はどうなのでしょうか?診断時のワンポイントの胸部CTにてDADを完全に否定できるのでしょうか?また、腫瘍周囲に新たに出現したすりガラス陰影、浸潤影に対しても薬剤性肺炎としていますが、本当の意味での薬剤性肺炎なのでしょうか?pseudo-progressionとしての肺病変とは違うのでしょうか?まだまだ謎の多い領域ですね。

今後も色々情報を共有して、患者さんのための肺癌診療を続けて行きたいと思います。

12年ぶりに自宅の外壁のタイルを貼り換えました。自分も12年年を重ねたのもありますが、今回のタイル、前回よりやや地味な色になりました。でも、何でもそうですが、新しくなると気持ちがいいものです。気分一新、また頑張って行こうと思います。

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