さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

チェストカンファレンス無事に終わりました。

2023年04月23日 | カンファレンス室

4月19日(水)に2023年度第1回目のさいたま赤十字病院チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)を開催しました。

新しく初期研修医の先生が入られ、また今回のカンファレンスにたくさんの初期研修医の先生方が参加してくれたので、とても熱気のあるカンファレンスになりました。今後もこのような熱気を続けることが出来るように企画者としては症例選定を含め頑張って行きたいと思います。

今回は若い先生の参加が多かったので、基本的な症例を中心に勉強しました。

①うっ血性心不全の症例→Kerley lineを常にチェックすることを再認識しました。Kerley lineを来す疾患は?⇒①肺水腫、②癌性リンパ管症、③急性好酸球性肺炎の3つは確実に覚えておきましょう。ARDSではKerley lineは,見えるのか?⇒絶対に見えないと言うことはないかもしれないが、頻度は低いと思います。

②無気肺症例の勉強⇒今回は右下葉無気肺、左下葉無気肺症例の勉強をしました。右下葉の無気肺、下葉無気肺か?中下葉無気肺か?は実際は意外と難しいですね。

③肺血栓塞栓症の単純CT:前回肺動脈内にhigh densityになっている症例を提示しましたが、今回はlow densityになっている症例を提示しました。

④中縦隔シュワノーマの症例→中縦隔腫瘍はリンパ系腫瘍(キャッスルマン病も含め)、気管支原性嚢胞など嚢胞性腫瘍を考えればいいですが、それに加えて神経原性腫瘍もあることを勉強しました。ちなみに前縦隔腫瘍は?⇒4T(thymoma、teratoma、tyroid tumor、terrible lymphoma)で覚えましょう。

⑤かくれんぼ肺癌⇒今回は⇒横隔膜下に肺癌が隠れていました。見逃しやすい場所は、①肺尖、②肺門、③心臓の裏、④横隔膜の下ですね。「小三J」の確認ですね。

⑥レジオネラ肺炎⇒今回の症例は浸潤影、すりガラス陰影が混在するような典型画像ではなかったです。

⑦肺胞蛋白症⇒希少疾患である肺胞蛋白症ですが、当カンファレンスでは頻繁に登場するコモンな疾患(?)です。

⑧EGPA、GPAの症例→杉浦先生よりGPAでは気管支血管束周囲の結節、腫瘤影も来すと教えていただきました。GPAのCT所見を復習してみると、①ランダムに分布する多発結節、腫瘤影に加えて②気管支血管周囲の結節、腫瘤、③びまん性あるいは斑状のコンソリデーション、すりガラス陰影、④気管支壁肥厚、⑤小葉中心性結節、⑥空洞と病変分布が多彩なのですね。EGPAとGPAの画像上の鑑別以外と難しそうですね。このあたりは臨床医の腕の見せ所でしょうか?

また、当日は都立駒込病院の四方田先生からまだ結論は出せていないですが、貴重な症例報告をしていただきました。

次回は5月17日(水)を予定しています。皆様と一緒に勉強出来ることを楽しみにしています。

以前胸部画像の勉強会のときに作ったスライドです。我々のカンファレンスによく出てくる「小三J」是非とも理解くださいね。

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チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)のお知らせ

2023年04月15日 | お知らせ

毎月恒例のさいたま赤十字病院チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)ですが、今月も行えそうです。予定通り第3水曜日の4月19日(水)午後7時よりさいたま赤十字病院7階大会議室にて行います。興味のある方々は奮ってご参加ください。今年度初めてのカンファレンスですので、新しい先生方も多く、基本的な症例が中心になるかとは思いますが、時々興味深い症例も出てくると思いますので、是非ともみんなで一緒に勉強出来ればと思います。よろしく御願い致します。

新型コロナウイルス感染症どうにか収まっていますね。しかし5月中旬にピークを迎えるような波が来るという予想はありますし、実臨床で言うと、発熱外来を受診する症例は決して多くはないですが、いざ検査してみるとコロナ陽性症例の比率は上がっているとのこと。今後も標準予防策の徹底をしながら勉強していければと思います。

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抗菌薬投与歴と免疫療法の有効性

2023年04月09日 | カンファレンス室

昨年末「Journal of Clinical Onchology」より過去の抗菌薬投与歴が免疫治療(免疫チェックポイント阻害薬含めた化学療法)の有効性が低下すると論文が出ました。以前から腸内細菌叢と免疫治療との関係は言われており、2022年12月12日(月)に放映されたTBSラジオ「腸から始まる健康ライフ」でも紹介させていただきましたが、今回本当の意味でエビデンスが出たということかと思います。肺癌症例が50%以上を占める2,737例の免疫療法を行った悪性腫瘍症例において、過去1年以内に抗菌薬投与歴のある群は抗菌薬投与歴のない群と比較して全生存期間(OS)が低下することが判明したわけです。さらにはキノロン系抗菌薬の投与歴が1年以内のみでなく、60日以内においてもOSが低下することも判明したわけです。今まで何となく言われていたことではありますが、いざきちんと論文化されると驚きの一言です。我々呼吸器内科医は抗菌薬を使用するシーンが多いと思いますし、実臨床では「感染の可能性を考えて」抗菌薬を投与していることが多々あるかと思いますが、このような「とりあえず」「念のため」の抗菌薬投与はその後の癌化学療法の予後を変えるかもしれないということで、抗菌薬使用時には十分考えていかなければいけないと思います。特にある意味オールマイティープレーヤーと思われがちなキノロン系抗菌薬の使用には要注意ですね。

化学療法を始める60日前に抗菌薬、特にキノロン系抗菌薬を投与するのはどのようなシーンでしょうか?肺炎を考えて抗菌薬を投与後改善しないで最終的に肺癌と診断がついたという症例もあるかと思いますが、一番多いのは肺癌を疑い、気管支鏡を行った後、感染予防目的で抗菌薬を投与することではないでしょうか?自分らは必須ではないですが、症例によっては感染の合併が怖く抗菌薬を投与することがありますね。気管支鏡を施行したあと、当たり前のように抗菌薬を処方するのは止めた方がいいのは間違いないですが、もし抗菌薬は必要と考えたときに本当にキノロン系抗菌薬が必要か否かは個々の症例できちんと検討したほうがよさそうですね。また、当然ながら化学療法の経過中で安易に抗菌薬を使用しないように注意すること、G-SCF製剤などをうまく駆使しながら抗菌薬を投与する機会をなるべく減らせるようにするべきかと思いました。肺癌を含めた悪性腫瘍の治療、全身色々なことを考えて診療しなければいけないのですね。本当に勉強になりました。

追伸。自分が昨年末出演させていただいたTBSラジオ「腸から始まる健康ライフ」で進行役をしているフリーアナウンサー中澤有美子さんがアシスタントをしているTBSラジオの「安住紳一郎の日曜天国」ですが、先日聴いていたら、その番組がこの4月で19年目を迎えたとのこと。自分も今の病院に勤務して19年目を迎え、自分が数年前からリスナーになり毎週欠かさず聴いている「安住紳一郎の日曜天国」に本当に縁を感じました。現病院での勤務も大分長くなりましたが、今年度も安住紳一郎アナウンサーのパワーに負けないようにもう少し頑張ろうと思います。

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縦隔腫瘍

2023年04月02日 | カンファレンス室

新年度を迎えました。ほとんどの方々が4月3日が仕事始めかと思います。新しい環境の中で早く慣れていただき、みんなで一緒に楽しく勉強していけたらと思います。

今年の桜もう少し楽しめますでしょうか?可能であれば今日中に観賞していただけたらと思います。

 昨日の目黒川の桜、まだ大丈夫でした。

新しい先生方の復習で縦隔腫瘍について簡単に解説です。

縦隔腫瘍の診断は組織学的診断が重要であることは間違いないですが、縦隔の部位に出来やすいものは大体決まっていますので、ワンパターンで記憶しておいた方が実診療はしやすいかと思います。

縦隔を前縦隔、中縦隔、後縦隔に分けてそれぞれ後発する腫瘍を記憶しておきましょう。

後縦隔は?→ほとんどが神経原性腫瘍です。腫瘍自体と脊椎との関係を画像上読み取れば診断はそれほど難しくないと思います。

前縦隔は?→色々ありますが、放射線学的には「4T]と覚えてみましょう。→胸腺腫(thymoma)、奇形腫(teratoma)、甲状腺腫(thyroid tumor)、悪性リンパ腫(terrible lymphoma→ちょっとインチキ)の4つを覚えてくださいね。もう少し裾野を広げるならば、胸腺腫→胸腺癌、奇形腫→胚細胞腫瘍も加えたらどうでしょうか?

中縦隔は?→一般的にはリンパ関連腫瘍(悪性リンパ腫、キャッスルマン病など)、気管支嚢胞など嚢胞性疾患が有名ですが、まれながら神経原性腫瘍もあるということを認識しておいてくださいね。確か以前よく使用したレスピロナビの症例(クイズ)にも含まれていたと思います。

中縦隔には迷走神経などが走行するので、まれながら神経原性腫瘍が発生することがあります。

当院でも先日そのような症例を経験しました。

  

胸部CT上中縦隔腫瘍を認めます。本例はEBUS-TBNAにてschwanomaに矛盾しない組織所見が得られました。

縦隔腫瘍は手術などで診断されることが多いかと思いますが、呼吸器内視鏡をうまく利用して確定診断に至ることがあるということを認識しました。呼吸器内視鏡が今後さらに活躍することに期待しています。

我々臨床にとって一番大事なのは如何にたくさんの症例を確定診断するかだと思います。呼吸器領域なかなか確定診断が難しい領域ですが、是非ともみんなで力を合わせて確定診断に努めていきましょうね。

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