さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

肺癌治療における免疫療法

2015年08月02日 | カンファレンス室

先日肺癌治療の勉強会に行ってきました。近年肺癌治療の中心は細胞障害性抗癌剤から分子標的薬に移行している感がありましたが、今年は免疫療法に注目が集まっているようです。今年のASCOでも免疫療法のセッションにたくさんの聴衆が集まっていたと聞きました。それもそのはず、免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体、抗PDL-1抗体)がセカンドラインの治療として今までのエビデンスになっている細胞障害性抗癌剤と比較して全生存期間を有意に延長したと報告されたからです。近年セカンドラインの治療のエビデンスが乏しかった現状において本当に朗報でした。自分が特に注目したのが、扁平上皮癌でも非扁平上皮癌でも有効性が証明できたことでした。非扁平上皮癌(腺癌)においては有効な薬剤がどんどん出ているなかで、ほとんど進歩していなかった扁平上皮癌において有効性が証明できたことは実臨床をしている自分らにとっては本当に朗報ではないかと思います。さらには今までのデータは非喫煙者と比較して喫煙者ではなかなか有効性が証明しづらかったのに、免疫療法においては喫煙者においても有効性が高いとのこと、これも実臨床においては興味があります。

免疫療法が実臨床で使用できるようになるのが今年度末くらいになるのでしょうか?今でも次の一手を探っている扁平上皮癌の患者さんがたくさんいます。是非ともその患者さんたちに早く使ってあげれる日を心待ちしている次第です。

これからも肺癌治療は急速に進歩する予感がします。肺癌の治療、今後はさらに複雑化してくるのではないでしょうか?呼吸器疾患をすべて対応することが使命とされているさいたま赤十字病院ではありますが、肺癌治療が遅れをとってしまってはもともこうもないです。きちんとした標準治療を行えるように、今後も一生懸命勉強して行こうと思います。

追伸。

先日我が家で大原櫻子さんのニューシングルCDを買いました。大原櫻子さんは今年全国高校サッカー大会のテーマ曲「瞳」を歌ったシンガーです。すごく声がきれいで、また「瞳」が歌詞がとてもよく、今でも時々聴いています。今回のCD「真夏の太陽」もとても夏らしいさわやかな歌ですので、是非とも聴いていただけたらと思います。ちなみにこのCDに入っている「Glorious morning」はフジテレビのめざまし土曜日のテーマ曲です。

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IPF/UIPのCT診断

2015年08月02日 | カンファレンス室

7月25日(土)に熊谷にて第18回肺病理講習会があり、参加してきました。自分は第1回から今回まで皆勤で勉強させていただきましたが、今回が最終回と言うことで、感慨深く1日を過ごさせていただきました。ちょっと寂しい気持ちですが。

この勉強会のメインテーマである間質性肺炎の診断についてコメントさせていただきます。間質性肺炎のなかではIPF/UIPは最も高頻度の疾患であり、間質性肺炎診断においてはIPF/UIPの診断が一番重要ではないかと思います。呼吸器内科医としては胸部画像所見(特にCT所見)からいかにIPF/UIPを診断していくかと言うのがテーマになっているかと思います。IPF/UIPの胸部CT所見として、下葉、胸膜直下、背側を主体とした不規則な網状影、牽引性気管支拡張、蜂巣肺が有名です。特に蜂巣肺があると「IPF/UIP」と言っている自分たちがいますが、これは本当に正しいことでしょうか?という症例が出てきました。

症例は間質性肺炎のなかではまれとされているDIP症例です。ステロイド治療後10年以上経過した現在、胸部CTにて両側下葉主体に立派な蜂巣肺を来たしていました。福井大学の伊藤先生も現在の胸部CTだけを見させられたらUIPと診断するとおっしゃっていました。「蜂巣肺=UIP」に待ったをかけた一例と思いました。

当院でも最近同じような症例を経験しました。

今回入院時の胸部CTです。

両側下葉胸膜直下に蜂巣肺を認めます。このCTだけを見たらIPF/UIPと言ってしまいますよね。

この症例は数年前に胸部CTがあります。

数年前のCTでは両側下葉の気管支血管束に沿った浸潤影、網状影です。このCT所見はUIPには見えず、NSIPを疑うCT所見と思いますし、実際VATS肺生検にてNSIPと診断がされています。

つまり、自分たちがUIPの画像診断で一番注目している蜂巣肺の有無のみで判断してしまうのはいけないと言う教訓的な症例ではないでしょうか?

7月25日の講習会のときにもコメントしたのですが、「間質性肺炎の診断において常に時間経過を大事にしなさい」と神奈川県立循環器呼吸器病センターの小倉高志先生がアドバイスしてくれている言葉の重要さを本当に身にしみて感じることが出来ました。

肺の結節影の診断(良悪性の判別)に過去のレントゲンとの比較を口をすっぱくするように教育されてきましたが、肺結節のみでなく、びまん性肺疾患においても過去のレントゲンとの比較を習慣づけていただきたいと思います。これからびまん性肺疾患の画像診断、少しレベルアップ出来たらいいですね。

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