さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

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モザイクパターンのCT所見

2015年01月25日 | カンファレンス室

1月21日(水)に当院にてチェストカンファレンスを行いました。寒い中またインフルエンザがはやっている中たくさんの人に集まっていただき、ありがとうございます。そして毎年恒例の佐藤雅史先生のミニレクチャーも大変勉強になりました。このカンファレンスで勉強した症例を混ぜながらの解説で色々懐かしく思いながら勉強させていただきました。

症例検討のなかで、慢性肺血栓塞栓症による肺高血圧症の症例を勉強しました。縦隔条件で肺動脈内に多発欠損を認め、肺血栓塞栓症の診断は容易なのですが、肺野条件を見てみると、肺野濃度の高い部位と低い部位が混在し、いわゆる地図状分布(モザイクパターン)を呈していました。

  (画像が見にくくてすいません)

自分は肺血流の低下による肺野濃度低下を来たしていると考え、肺野濃度の高い部位は正常、低い部位が異常と考えていたのですが、佐藤雅史先生より「肺血流低下により正常肺動脈内の血流が増えるから、その結果正常の肺野は濃度が高くなる、つまり地図状に見える肺野濃度の高い部位も低い部位もどちらも異常である」と教えていただき、本当に勉強になりました。

そこで今回モザイクパターンのCT所見について整理してみましょう。

モザイクパターンのCT所見を見たら、まず肺野濃度の高い部位が病変の主体か、低い部位が主体かを評価しましょう。

1.肺野濃度の高い部位が病変の主体と考えるとき

ニューモシスティス肺炎(PCP)、マイコプラズマ肺炎などが有名でしょうか?そう考えるCT所見としては、両者の血管径が均一、スリガラス陰影のみでなく濃い濃度の部位もある、網状影、結節など他の所見も探すことが重要かと思います。

2.肺野濃度の低い部位が病変の主体と考えるとき

肺野濃度が低くなる原因は空気が多いか(air trapping)、または血流が少ないかです。その両者について検討してください。

(1)空気が多い(air trapping)疾患

気管支拡張症、細気管支炎(BO含む)などの気道病変を考えます。ただし、この病態でのモザイクパターンはair trappingだけの理由でしょうか?実際はそうではないようです。air trappingによる含気の亢進に加えて換気低下による肺血流の低下(hypoxic vasoconstriction)、またその結果正常肺野の血流亢進による肺野濃度上昇と気道病変によるモザイクパターンも両方の肺野濃度が異常ということになります。

(2)肺血流が低下している疾患

肺血栓塞栓症、原発性肺高血圧症、IVL、PTTMなどの微小血管への腫瘍塞栓などが挙げられます。肺血流低下による肺野濃度低下、正常肺の肺血流亢進のみでなく、肺血流低下により60%の頻度で気管支れん縮を来たし、air trappingを来たすことによる肺野濃度低下も関与しているようです。

つまり肺野濃度の低い部位が病変の主体と考えたとき、気道疾患も血管疾患も最終的には同じような病態になり同じようなCT所見を呈してしまうと言うことです。まじめに考えるとすごく難しいですね。やはり、モザイクパターンのみに気をとらわれないで、気道の所見、血管の所見など他の所見にも目をむけ、総合的に診断することが必要と思いました。みなさまの頭を逆に混乱させてしまってごめんなさい。

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