さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

2019年における気管支鏡

2020年02月22日 | カンファレンス室

 2020年に入りもう少しで2か月が終わろうとしています。本当に早いですね。現在コロナウイルス感染症のことで、医学界も大揺れですね。このようなあわただしい毎日を過ごしていると、もっともっと時を経つのが早くなりそうです。皆さん、是非とも今のうちに今年の目標を掲げていただき、その目標に向かって前進していただけたらと思います。

 話は変わりますが、先日2019年に施行した気管支鏡に関する集計をする機会がありましたので、報告させていただきます。昨年1年間で当院では790例の気管支鏡を実施しました。前年が700例の真ん中くらいだったように思いますので、ほんの少し症例数が増えたと思います。そのうち生検(組織を採取)したのが551例、気管支肺胞洗浄(BAL)を施行したのが236例でした。生検症例において、ガイドシースを用いた(EBUS-GS)経気管支生検(TBB)が378例、EBUS-TBNAによるリンパ節生検が45例、びまん性肺疾患における経気管支肺生検(TBLB)が128例で、その訳半数に当たる55例にクライオ生検を施行しています。

 2020年の展望としては、近年呼吸器疾患症例数が増えている中、件数自体はもう少し増えるのではないかと思いますし、運用を少しでもスムーズにしてより多くの症例をこなしていきたいと思います。多くの症例に生検をしている中、EBUS-TBNA症例がやや少ない印象です。現在診断はEBUS-GSによるTBBにて相当数が診断出来ているのでいいのですが、肺癌症例において治療方針決定にリンパ節転移の有無についてもう少し踏み込んで検索してもいいのではないかと思いました。当院では呼吸器外科、呼吸器内科のコラボがとてもいいので、今後呼吸器外科の先生と討論しながら、EBUS-TBNA施行について検討していこうと思います。びまん性肺疾患における組織診断は通常のTBLBよりはクライオ生検の方が有用であるという感触はつかめていますので、びまん性肺疾患におけるクライオ生検はもう少し増やせる(というか増やすべきではないか)と思います。当初はクライオ生検は1例で気管支鏡の2例分の時間を準備していましたが、最近はとてもスムーズにこなせており、気管支鏡2件の時間で3件くらい出来そうな状況です。当院は間質性肺炎含めたびまん性肺疾患症例がとても豊富ですので、今後の課題にしていきたいと思います。現在クライオ生検はほとんどびまん肺ばかりに行っていますが、オンコマインマルチによる遺伝子検索が行われている現状、クライオ生検によるより大きな検体の採取にも努力いて行ければと思います。

 気管支鏡の症例を増やすためにはそれだけ新しい呼吸器疾患の患者さんを診療しなければいけないのは当然です。また呼吸器疾患を持つ症例はどんどん増えています。今後も呼吸器診療をより充実させることにより、さらなる社会貢献を出来ればと思います。

 

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今週末は学会、研究会で盛沢山でした。

2020年02月16日 | カンファレンス室

 今週末は学会、研究会など盛りだくさんで、先生方もお忙しくしていたことと思います。また、新型コロナウイルス感染症の件で、通常業務以外の役割を果たされている先生方も多いのではないかと思います。感染症においては、基本の基本として自分らの体と心の健康が一番重要ですから、是非とも健康に注意して、体力を落とさないようにしていただけたら幸いです。

 2月14日から15日の2日間日本画像医学会総会が開催されました。この学会は臨床医と放射線科医がコラボして勉強する会であり、多職種の先生方が集める学会という意味ではとても珍しい学会であり、とても有意義な学会かと思います。自分は今年の総会は参加出来なかったのですが、スタッフからはとても有意義でとても勉強になったと好評でありました。

 2月15日は日本呼吸器学会、日本結核・非結核性抗酸菌症学会の合同関東地方会がありました。日本画像医学会と重なってしまい、ご苦労された先生方も多かったのではないでしょうか?症例報告中心の会なので、1例1例がとても興味深く聞いていました。①当院でも施行していますが、クライオ生検にて早期病変のLAMを病理学的に診断出来た2症例の発表、嚢胞性疾患の確定診断にクライオ生検が安全性も含め有用とのこと、今後の診療の幅が広がったように思いました。②EWSにより有瘻性膿胸の治療をした1例においては、気胸の治療と異なり有瘻性膿胸の方が瘻孔を1点に決めやすく、より有用とのお話でした。③原発性線毛機能不全症(PCD)の診断に鼻腔NO値低値が有用との報告も勉強になりました。実臨床で行われている呼気NOをうまく改良すれば出来るのでしょうか?もう少し詰めていければと思います。④とてもdemonstrableだったのが、乳び胸症例の胸腔鏡のビデオを見れたことでした。症例はGorham-Stout病でしたが、胸腔鏡にて胸壁からじわじわと乳びが染み出てくる画像はとても新鮮でした。

 2月16日は神奈川で間質性肺炎の勉強会がありました。遅刻し早退するというだめ学生の典型のような参加になってしまいましたが、とても勉強になりました。(内容的には相当レベルが高く、地域中核病院で仕事している呼吸器内科専門医ではついていけない内容も多々ありましたが)その中でいくつ勉強になったポイントがありますので、列挙してみます。①間質性肺炎診療において間質性肺炎の家族歴は重要ですが、間質性肺炎以外に、膠原病さらには肝硬変の家族歴も聞いた方がいいとのコメントでした。肝硬変があるとテロメラーゼ異常などを来し、間質性肺炎発症に関与するのではないかとのことでした。②MPO-ANCA陽性間質性肺炎において、destructive bronchiolitisが高頻度に合併すること、その結果嚢胞性変化を来しやすいのではないか?③胸部CTにて蜂巣肺を認める間質性肺炎症例において、呼吸状態を含めて安定している症例にはRAなどの膠原病、MPO-ANCA関連間質性肺炎を考えよ。(IPF/UIP症例では蜂巣肺があると、程々に呼吸機能低下は低下していることがほとんど)④NSIPパターンを来す疾患として抗ARS抗体症候群が有名だが、経過を追っていくと、肺胞の虚脱を起こしてくることが多いとのこと(→今後抗線維化薬の適応症例になるのか?)⑤慢性過敏性肺臓炎の画像診断として「head cheese sign」が有名だが、頻度は高くないとのこと、high attemuation、low attenuationは指摘しやすいが、normal attenuationの評価が難しいとのこと(→小生も同意見です)⑥鳥関連過敏性肺臓炎の診断にハト誘発試験が有用であること(→今度依頼させてもらおうかと思います)ほかにもたくさん有用なポイントの伝授があったとは思いますが、このくらいで勘弁していただけたらと思います。

 また明日から1週間が始まります。頑張って仕事をしていきましょうね。

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チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)のお知らせ

2020年02月11日 | お知らせ

毎月恒例のさいたま赤十字病院チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)ですが、今月2月は19日(水)に開催いたします。いつもと同様午後7時よりさいたま赤十字病院7階第3会議室にて行います。興味のある方々は奮ってご参加ください。現在症例を選定中ですが、医師のみでなくコメディカルの方々にも勉強になるような症例を用意するつもりです。当日皆様とお会いできることを楽しみにしています。

 

追伸。現在インフルエンザ、新型コロナウイルスなど感染症の話題でいっぱいですが、是非とも皆様体調管理には十分注意してくださいね。

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免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による薬剤性肺炎

2020年02月02日 | カンファレンス室

 近年進行再発肺癌の一次治療は小細胞癌、非小細胞癌問わず免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を併用する時代になりました。ICIを併用することにより、さらなる生命予後の改善が期待されているところです。また、肺癌以外の領域においてもICIによる治療を行われるようになり、さらには肺癌のように殺細胞性抗癌剤との併用治療も行われています。ということで、悪性腫瘍を診療している部門ではICIについての知識とくに有害事象(irAE)についてきちんと勉強していかないといけないのではないかと思います。そのなかで生命予後に関わるirAEとして薬剤性間質性肺炎は絶対に抑えておかないといけないかと思います。

 最近当院にて経験したICIによる薬剤性間質性肺炎症例を整理する機会がありましたので、報告させていただきます。

 今まで当院では17例のICIによる薬剤性間質性肺炎を経験しました。年齢は52歳~83歳、平均70.5歳です。男女比は男性が12例、女性が5例でした。背景肺の検討では、異常なしはなんと6例しかおらず、それ以外はCPFE(喫煙関連気腫化、線維化)が6例、COPDが3例、間質性肺炎が2例と高頻度に肺疾患を合併していました。驚くことにCPFE、間質性肺炎など線維化を来している症例が8例もいました。ICIを使用するときには間質性肺炎などの線維化には注意すべきで、線維化のある症例には治療内容を慎重に検討すべきですが、実臨床では線維化のあり症例にICIを使用し、その結果間質性肺炎を発症しているということかと思います。治療内容としてはICO単剤が9例、殺細胞性抗癌剤との併用が6例(そのうちICIによる維持療法中に2例が発症)、化学放射線治療後のICI投与が2例でした。ICIに問わず薬剤性間質性肺炎の画像所見はとても注目されているかと思いますが、今回の検討では多発斑状浸潤影パターン(器質化肺炎パターン)が6例と最も多く、次にすりガラス陰影優位パターン(いわゆる過敏性肺炎パターン)が4例、広範な浸潤影優位パターン(このなかの大部分がDADパターンになるかと思います)が4例、原発巣周囲のすりガラス陰影パターン(peri-tumoral infiltration:PTIパターン)が3例でした。PTIパターン以外にPTIを伴ったのが器質化肺炎パターン6例のうち2例に認めました。転帰は1例が薬剤性間質性肺炎に関連して死亡し、それ以外の16例は軽快しました。

 実臨床では半数近くに線維化合併例にICIを使用するなどひやひやものの診療かとは思いましが、死亡例1例と思いのほか治療反応性がいいことがわかりました。今までに言われていたように、器質化肺炎パターン、過敏性肺炎パターン、PTIパターンは予後良好で、DADパターンの一部に不幸の転帰を起こしうるということかと思います。DADパターンについて詳細に語るのは思いのほか難しいですが、ざっくり行くと、広範な陰影であること、すりガラス陰影のみでなく浸潤影がメインになること、陰影内に牽引性気管支拡張を認めること、ステロイドなどの治療反応性に乏しいことがありましたら、DADパターンの薬剤性肺炎が発症したと考え、より慎重に管理することが必要であると思いました。

 これからさらにICIが使用される時代です。是非とも色々な先生方と情報を共有しながらさらにレベルの高い肺癌診療をしていきたいと思います。

 

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