さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

5月のチェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)のお知らせ

2019年04月29日 | お知らせ

皆さま、ゴールデンウイークは如何お過ごしでしょうか?休みが多いというのは身も心もリフレッシュ出来て良いことかと思いますが、医療現場においては完全にお休みすることも出来ず、診療をしている先生方も多いかと思います。昨日4月28日に病院に顔を出してみると、呼吸器内科の緊急入院がすでに6人いました。まだ連休2日目なのに!本当にビックリしますね。先生方も同じように格闘されているのではないかと思います。そのような忙しい中でも是非ともリフレッシュしていただけたらと思います。

話は変わりますが、さいたま赤十字病院5月のチェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)のお知らせです。いつもは第3水曜日に開催しているのですが、5月は第2水曜日の5月8日に開催する予定です。開催日を間違いないでいただけたらと思います。場所、開始時刻などはいつもと同様午後7時よりさいたま赤十字病院7階第3会議室にて行います。基本的な疾患から興味深い疾患、まれな疾患などバラエティーに富んだ症例を用意していますので、是非ご出席いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

平成も残すところわずかです。令和になっても一緒に楽しく勉強しましょうね。

 

追伸。先週東京に某呼吸器勉強会に行ってきました。担当施設から出される症例について鑑別診断含め勉強をする会です。最近勉強不足でなかなか診断名を挙げることが出来ず、参加の足がやや遠のいていきそうなのですが、自分の勉強になることを信じて頑張って参加しています。今回の症例は日常臨床よく遭遇する粟粒結核、転移性肺腫瘍(膵臓癌の転移)でした。普段よく見る疾患も個々の症例では意外と診断に苦労しているということを表しているのだと思います。粟粒結核については、肺病変自体は粟粒結核に典型的なランダム分布の微細粒状影がなく難しい症例かとは思いましたが、その数か月前に腋窩リンパ節、縦隔リンパ節腫大を認めていました。高齢者、腎不全など全身状態不良ということで、精査をしなかったという経過がありました。リンパ節腫大の段階で自分自身結核症とは思っていなかったのですが、自分がもし主治医であるならば、リンパ節腫大の鑑別診断をきちんとしなけばいけないと思いますし、腋窩リンパ節生検は決して高齢者でも侵襲性の低い検査ではなかったかと思います。臨床医たるもの、まずは普段から以下に診断するか?diagnostic prodedureをきちんと決定しないといけなかったと思いました。膵臓癌による転移性肺腫瘍の症例は基礎にCOPDがありましたが、右下葉主体に浸潤影があり、両側肺に粒状影、結節影を認め、その一部が空洞化していました。右下葉主体の浸潤影は「治らない肺炎」という概念からは肺癌などの悪性腫瘍は十分に考えないといけないかと思っていましたが、ランダム分布に見えた粒状影、結節影が一元的に説明がつきませんでした。粘液産生肺癌ならば、経気道的に広がる転移になると思ったからです。今回の症例のように膵臓癌でしたら、血行性に転移(ランダム分布の粒状影、結節影)したあと、肺胞置換性に(lepidic spread)広がって行けば右下葉主体の浸潤影も説明可能かと思いました。肺炎様陰影を呈する悪性腫瘍は多々ありますが、すべて経気道的な広がりで説明可能ならば肺癌を、経気道的広がり、血行性分布の両者が混在するならば転移性腫瘍を考えておくと少し道が開かれていくのではないでしょうか?次回以降も頑張って参加しようと思います。

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チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)のお知らせ

2019年04月14日 | お知らせ

 皆様、4月12日~14日の3日間、日本呼吸器学会総会お疲れ様でした。さいたま赤十字病院からもたくさんの演題を出しましたが、本当にどの会場も大盛況でした。今回久しぶりにポスターにもゆっくり目を通しましたが、実臨床で本当に興味を持っているテーマについてたくさんの施設で研究してくれており、今後の臨床に生かせる内容が多かったと思います。今年は例年より参加者が多かったのではないでしょうか?各会場、本当に満席で聞くことすら出来なかったセッションもありました。参加者が増えていると言うことは呼吸器内科医が増えてくるということですから、呼吸器内科としてはとてもうれしい限りです。可能であれば、今後学会場のスペースにおいてもう少し検討をしていただけるとありがたく思います。(テーマの内容で、集まる人数も大分異なるかと思います。そのあたりをよく考えた構成にしてもらえるとありがたく思います)

 ところで、毎月恒例のさいたま赤十字病院チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)ですが、今月4月は17日(水)に開催いたします。いつもと同様さいたま赤十字病院7階第3会議室にて午後7時より開始いたします。今回も興味深い症例をたくさん用意していますので、興味のある方々は奮ってご参加ください。皆様の当日お会い出来ることを楽しみにしています。

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進行再発非小細胞肺癌の一次治療

2019年04月07日 | カンファレンス室

 先日東京にて開催された肺癌研究会に行ってきました。最近の研究会は製薬会社主導の研究会がほとんどで、そうなると治療の進歩が著しい肺癌関連の勉強会が多くなってしまいます。それは仕方がないのでしょうか?地域中核病院にて呼吸器診療をしている我々としては肺癌領域以外にも目を向けなければならず、研究会においてももう少しバランスがいい方が望ましいと思っています。

 現在進行再発非小細胞肺癌の一次治療は、ドライバー遺伝子変異陰性例に対して殺細胞性抗癌剤+免疫チェックポイント阻害薬の併用の時代に突入してきました。もちろん年齢、PS、併存症など他の要素も加味しながら治療方針を決定するのですが、殺細胞性抗癌剤+免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が出来るかどうかの検討は個々の症例に必要であるのは間違いないかと思います。

 では、非小細胞肺癌のなかで腺癌症例にはどのような治療をすべきなのでしょうか?現在非小細胞非扁平上皮癌(ほとんどが腺癌)の治療レジメントしては①プラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラチン)+アリムタ+キイトルーダ(抗PD1抗体)と②カルボプラチン+パクリタキセル+アバスチン+テセントリク(抗PDL1抗体)(ABCP療法)が認められた治療ですが、どのように使い分けをしていったらいいのでしょうか?正直に言ってそのあたりの使い分けの確固としたものはないのではないかと思います。今まで腺癌に対しての殺細胞性抗癌剤のレジメンはプラチナ製剤+アリムタが高頻度に使用されていたと思いますので(カルボプラチン+パクリタキセルは神経障害、脱毛などの有害事象にて苦労することが多かったです)、プラチナ製剤+アリムタ+キイトルーダでいいかとも思いましたが、そうばかりは言ってられません。最近の研究で免疫チェックポイント阻害薬と抗VEGF抗体(アバスチン)との相乗作用に注目され、アバスチン併用レジメンに対して注目が集まっているのも事実です。また、アバスチンにより胸水のコントロールが容易になったり、肝転移、脳転移にも有効性を示したり、さらには腫瘍量を減らすため、進行度の高い症例、進行の早い症例には有用ではないかと言われています。また、また殺細胞性抗癌剤のパクリタキセルにおいて、腺癌イコールアリムタという図式がある中で、本当に腺癌?と言えるような症例(例えば低分化腺癌、扁平上皮癌のような壊死傾向の強い症例)にはアリムタの有効性が乏しいような印象があり、そのような症例においてはパクリタキセルの方が有用性が高いのではないかということは実臨床では多々経験することかと思います。ということで、腺癌症例においては今後もプラチナ製剤+アリムタ+キイトルーダのレジメンを使用する頻度が高いかとも思いますが、①典型的腺癌ではないような症例、②脳転移、肝転移、大量胸水など転移の激しい症例、③腫瘍量の多い症例、その後の経過が早い症例においてはABCP療法も十分検討すべきレジメンであるのではないかと思います。個々の症例でよく検討しながら治療方針を決定していこうと思います。

 ふと考えると、腺癌症例において実診療ではプラチナ製剤+アリムタ+アバスチンを投与していることが多いのですから、それに免疫チェックポイント阻害薬併用のレジメンにエビデンスがあればもっといいと思ったいたのですが、それについては有効性を示すエビデンスは今のところないようです。また、抗PD1抗体、抗PDL1抗体と殺細胞性抗癌剤併用の相性などはあるのでしょうか?そのあたりも今後知りたいテーマのひとつかと思います。

 肺癌領域においてもまだまだ勉強すべきテーマが多いですね。これからも頑張って行きたいと思います。

 

我が家の庭の端っこに芝桜が咲いてきました。4月下旬になると秩父の羊山公園の芝桜が奇麗かと思います。

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粟粒影について

2019年04月07日 | カンファレンス室

皆さんは胸部CTなどで「粟粒影」を認めるとどのような疾患を考えるでしょうか?

「粟粒」という言葉のつく疾患として「粟粒結核」がありますので、「粟粒影」イコール「粟粒結核」と考えてしまう先生方もいるかとは思いますが、「粟粒影」においてはもう少し深く考察していただきたいと思います。

「粟粒」とは「あわ(イネ科の植物)の粒(つぶ)」という意味です。

 

  

つまり「あわのつぶのように小さい陰影」ということを意味しているに過ぎません。その「粟粒影」に対してすぐに「粟粒結核」という病名に結びつけてはいけないのではないでしょうか?

「粟粒結核」症例の典型的画像所見としてはびまん性にランダム分布の微細結節(粒状影)を認めるということですから、「粟粒結核のCT所見は粟粒影を来す疾患のひとつである」と考えていかないといけないと思います。病名を頭に思い浮かべてしまう所見名はあまり好ましくなく、素直に所見を評価する姿勢が大事かと思います。びまん性粒状影の中には小葉中心性粒状影(経気道的分布)や広義間質病変もあります。病変の分布がどうなっているのか?という評価からスタートしていただけたらと思います。

では、びまん性ランダム分布の小結節影の症例を提示します。

これはいわゆる「粟粒影」と言ってもいいのかもしれませんが、粟粒結核でいいでしょうか?本例の小結節は一つ一つがきちんとした結節です。粟粒結核はその病理像を頭に思い浮かべるとひとつひとつの結節が淡くなり、もう少しぼやけるのではないかと思います。粟粒結核とは異なる粒状影の性状かと思いますが、いかがでしょうか?

今度は粟粒結核症例の胸部CTを提示します。

 

一部にきちっとした結節も見えますが、大部分の陰影は周囲がぼけ、しっかりしていない陰影に見えるかと思います。

結節(粒状影)の密度が違うという言い方が正しいかどうかはわかりませんが、1例目は密度の濃い結節、2例目は密度の低い結節で、比べてみると違う疾患名を考えなけれべいけないのではないかと思います。

1例目の症例は転移性肺腫瘍でした。転移性肺腫瘍もいわゆる「粟粒様」陰影を来すことはありますが、結節自体の性状が違うと言うことを是非とも会得していただきたいと思います。

日常臨床において、いろいろな言葉で表現することが多いですが、病名に直接結びついてしまうような表現は逆に足下をすくわれるもとになりますので、ここは正確なる表現を第一に考えて所見を読んでいった方がいいのではないでしょうか?

 

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気管支喘息診療の現状

2019年04月07日 | カンファレンス室

最近当院における気管支喘息診療の現状について調べる機会がありました。呼吸器内科にて診療した気管支喘息症例において2018年1年間のデータをお示ししようと思います。

当科では年間400例強の気管支喘息症例を診療していました。程々の気管支喘息症例を診療していると言うことがわかったと同時に、その症例のなかで周囲の医療施設に紹介出来る症例もまあまあ多いのではないかと思いました。今後の検討課題かと思います。

そのうち重症喘息症例が80名でした。全体の20%に当たります。一般的には気管支喘息症例の10%が重症喘息になると言われており(喘息との鑑別の問題、吸入治療のアドヒアランスの問題など考慮すると厳密には約5%が重症喘息ではないかとも言われています)、それを考えると当科での気管支喘息症例における重症症例の割合が高い印象です。先ほどもう少し逆紹介が出来るのではないかと書かせていただきましたが、現在の病病連携、病診連携の流れの中、程々に重症症例が集まっているということでよろしいかとは思います。また、合併症(併発症)についてはCOPD合併(ACO)症例が約30人(胸部CT初めもう少し詳細に評価すればもう少し症例は多いように思います)、EGPA、ABPAが各10名前後いました。重症喘息の治療選択肢に抗体製剤があるかと思いますが、当科では27名に抗体製剤を使用していました。重症喘息の3割強にあたる数字です。抗体製剤については医療費の問題など含め治療導入に躊躇することが多々あるかと思いますが、自分の予想以上に使用しているというのが感想です。抗体製剤の使用にて喘息のコントロールが改善しているのは間違いないようですが、今後いつまで続けていくべきなのかなどきちんとした評価法が定まっていないのが現状であり、それについても今後の課題かと思います。

重症喘息、抗体製剤を使用している症例において、さらなる治療選択に迫られることがあるかともいますし、気管支サーモプラスティーもその選択肢かと思います。さいたま赤十字病院も今年度より気管支サーモプラスティーを導入することになり、先日院内でハンズオンセミナーを開催しました。当院ではいままで気管支サーモプラスティーを施行した症例はいないのですが、今後適応症例については検討していかなければいけないと考えています。ただ、抗体製剤と気管支サーモプラスティー、全く治療内容(機序)が異なるため、気管支サーモプラスティーが抗体製剤にとって変わることはなく、重症喘息については両者の治療を組み合わせて行っていくようになるかとは思っています。今後も勉強していきたいと思います。

 

 

3月31日に大宮公園の桜を見てきました。すでに満開でたくさんの人で賑わっていました。急に暖かくなってきましたので、今日くらいで今年の桜も見納めでしょうか?

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