さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

胸部異常陰影は恐ろしい!

2019年01月20日 | カンファレンス室

 我々呼吸器内科の外来診療の一部に「胸部異常陰影(検診異常)」があります。胸部異常陰影で紹介されるわけですから、当然ながら診断をつける努力をするかと思います。では、呼吸器内科医以外の先生方においても「胸部異常陰影」というシチュエーションで診療することはあるかと思います。多分検査の一環としてCTを施行してみたら、胸部に異常を指摘されたなんてまあまあ多いのではないでしょうか?そのとき皆さんならばどうしますか?

例えば70歳代の患者さんで、たまたま他の疾患にて施行したCTにて異常を指摘されました。(呼吸器症状はなしです)

確かに右下葉縦隔側に1.5センチ台の結節が認められます。年齢などを考慮したら鑑別疾患として肺癌含めた腫瘍性疾患は挙げられますが、次のステップはいかがでしょうか?一番の末梢に位置しており、気管支鏡下生検は相当難しそう、エコーで描出できる位置ではない、CT下生検も意外と難しそう‥そう考えると呼吸器内科医の中でも外来にて厳重に経過観察という方針をとる人いるかと思います。

ところがこの症例、次のフォローアップの前の2か月後に肺癌と診断されたのです。それも骨転移(病的骨折)にて発見されたというのです。肺癌としてもここまで早いなんて‥担当医としてはとてもショックですよね。

では、本例のCT所見をもう一度見直してみましょう。腹部、骨盤までスキャンしていました。すると‥

なんと左腸骨は骨破壊をし、軽度ですが腫瘤形成を来しているのです。原発巣が1.5センチとすごく小さい段階で指摘されたときにはすでに骨転移(Ⅳ期)を来していたのです。

この症例の教訓はふたつです。

①胸部異常陰影症例、どのような症例も診断をする努力を惜しんではいけないのではないでしょうか?あらゆるモダリティーを駆使して診断できるかどうかを一生懸命考えないといけないのだと思いました。もし診断をつけるすべがない、または頑張ったけれど診断に至らなかったときにはきちんと説明をしなければいけないことだと思います。検査結果が出ないことイコール悪性ではないと勘違いしてしまう誤解を絶対与えないようにしないといけないかと思います。

②たった1.5センチの肺癌、このような小さい癌でもⅣ期など全身に広がることがあるのだということを肝に銘じておくべきかと思います。

今回提示した症例は診断が出来ていなかった最初のCTのときにすでにⅣ期の進行癌ですから、患者さんの経過としてはあまり変わらなかったのは間違いないですが、あとで病名が分かったということになると、ちょっとがっかりしてしまいます。やはり自分の力で診断したいですから。

胸部異常陰影のなかで原因が肺癌であることが一番多いかと思いますが、安直に「経過観察」を選択しないで「どのようにしたら診断に導くことが可能か?」をよく考えてください。色々検討しても診断が出来なかったときには「現在の状況が進行癌があることも含め全く分かっていない(ひやひやものの診療である)」ということをきちんと説明しなければいけないと思います。そして「肺癌は腫瘍径が小さくても十分転移する可能性があるんだ」という言葉を胸にとどめて欲しかったと思います。

「胸部異常陰影」というありきたりの言葉に対して真摯な態度で患者さんおよび家族の方とお話することが必要かと思います。是非ともお忘れなく!

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現在多数の呼吸器疾患患者さんが入院しています。

2019年01月20日 | 日記

 毎日寒い日々が続きますね。冬になると呼吸器疾患、循環器疾患が増え、病棟をにぎわせます。今年も例外ではなく、たくさんの呼吸器疾患症例が当院に入院しています。先週末78名の呼吸器疾患症例がさいたま赤十字病院に入院していました。さいたま赤十字病院呼吸器内科は通常55床にて診療していますので、20人以上オーバーして診療していることになります。入院患者さんが増えると周りの方から「冬になると高齢者の肺炎が増えるから大変ですね。」と言われることが多いのですが、本当にそうなのでしょうか?高齢者の肺炎が増え、抗菌薬など治療には反応するも嚥下機能が低下し、ADLが低下し、在院日数が伸びるため、ベッド回転が悪くなる?そのあたりについてちょっと調べてみたくなりました。

本日は日曜日であり、退院患者さんがたくさん出ている日なのですが、それでもまだ70名の入院患者さんがいました。(明日よりたくさんの予約入院が入ってくるので、また入院患者さんが増えてしまい、とても恐ろしいです。)では、その中で高齢者肺炎は何人いるのでしょうか?なんとCAP、NHCAP合わせても6名しかいませんでした。当院の呼吸器疾患症例のベッドオーバー、高齢者の肺炎が原因ではないのです。では、どのような症例が入院しているのでしょうか?当然ながら肺癌症例は32人と多く入院していますが、それ以外は間質性肺疾患(間質性肺炎の急性増悪、慢性増悪含め)が16人、COPD急性増悪が5人、その他は慢性肺アスペルギルス症、気管支喘息発作、胸腺癌、肺非結核性抗酸菌症、好酸球性肺炎、肺癌以外の癌性胸膜炎、陳旧性肺結核によるⅡ型呼吸不全、肺胞蛋白症など本当にバラエティーに富んだ疾患患者さんが入院していることがわかりました。つまり我々さいたま赤十字病院呼吸器内科のスタッフみんなは普段の診療を通じてメジャーな呼吸器疾患のすべてを勉強することが出来るというわけです。本当の意味での呼吸器研修病院として最適の施設ではないかと思いました。

各施設に呼吸器内科医が決して多くはいないという現実の中、一人ないし二人の呼吸器内科医で呼吸器器診療をしている友人に聞いてみると、通常より当然ながら入院患者さんが増えて大変とは言うのですが、その症例のほとんどが世間で言う高齢者肺炎ばかりのようです。ある意味ワンパターンの診療になってしまうようです。それに引き換え、当院では確かに入院患者さんがすごく多いのは間違いないですが、呼吸器内科医として勉強すべき多彩な呼吸器疾患を診療することが出来ているのです。自分たちの理想としている呼吸器診療が出来ているわけですから、本当に幸せと感じなけれないけないですね。

我々は呼吸器内科グループとして可能な限りたくさんの呼吸器患者さんを診療することにより社会貢献しなければいけないのは間違いないですが、その社会貢献を通じてたくさんの勉強するチャンスを与えてもらっているわけですから、是非ともこの環境を無駄にしないで、頑張って行きたいと思います。

また、明日よりさいたま市およびその周辺地域の呼吸器疾患患者さんのためにベストを尽くしますね。(院長先生に怒られるまでは仕事し続けます!)

先日の成人式の日にさいたま新都心駅にコバトンが来ていました。

 

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チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)

2019年01月13日 | お知らせ

遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

さて、毎月恒例のさいたま赤十字病院チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)ですが、今月1月は16日(水)に開催いたします。いつもと同様午後7時よりさいたま赤十字病院7階第3会議室です。今回は新年早々ということで、1時間くらいのショートバージョンの勉強会にしたいと思います。密度の濃い勉強会にしたいと思いますので、興味にある方々は奮ってご参加ください。よろしくお願いいたします。なお、カンファレンス終了後有志で新年会を行いたいと思います。時間のある方は声をかけていただけると嬉しいです。

では、当日皆様にお会いできることを楽しみにしています。

追伸。毎年同じことを言っていますが、インフルエンザが流行してきています。高齢者、肺に基礎疾患を持つ症例、インフルエンザを契機に呼吸不全を呈し、緊急入院してきています。日常診療において注意していただけたらと思います。緊急入院するような呼吸不全症例、発熱など感染兆候がなくてもインフルエンザにのチェックをお忘れなく。

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