さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

特発性肺線維症に発症した肺結核症の臨床、画像的特徴

2020年01月26日 | カンファレンス室

昨年末に発刊されたRespiratory Investigation(日本呼吸器学会誌の英語版です)に特発性肺線維症(IPF/UIP)の発症した肺結核症について検討した論文が出ていました。

以前からIPF/UIP、COPDなど背景肺に異常があると、発症した肺結核症は非典型的画像所見を呈するとは言われていますが、きちんとした検討をしたのはあまりなかったのではないかと思います。

17年の経過の中、IPF/UIP609例中28例(4.6%)に肺結核症が発症しました。4.6%の発症率、ちょっと多め?という印象です。(ちなみにこの報告は韓国からの報告です)約半数はIPF/UIPと肺結核症が同時に診断され、30%の症例はIPF/UIPにてフォローアップ中、胸部画像所見などで偶然見つかっていました。IPF/UIP症例ですから当然ながら予後は不良ですが、死亡原因の2番目に結核死でした。

胸部単純写真では浸潤影を認めることが多く(75%)、また陰影を指摘ない症例も25%ありました。

胸部CT所見としてはS1,2,6などの典型的病変分布を来すことが少なく、コンソリデーションパターンが多く、小葉中心性粒状影の頻度が低いことがわかりました。つまり、通常見る肺結核症の画像所見である病変分布、粒状影を来しずらいということで、実臨床でIPF/UIP症例から肺結核症を診断するのは意外と難しいということがわかりました。IPF/UIP症例においてはこまめに胸部画像所見をフォローアップし、新たな陰影が出現した際には細菌学的検査をしなければいけないというメッセージかと思いました。(当然ながら肺癌などの鑑別のために細胞診も大事ですね)また、IPF/UIPに発症した肺NTM症との比較では両者ともコンソリデーションパターンが多く、画像的にはほぼ同様の所見を来すとのことでした。個人的な意見としてはIPF/UIP症例に発症する抗酸菌症は肺結核症より肺NTM症の方が高頻度ではないかと思います。

肺結核症のようなcommonな疾患も基礎疾患があると意外と診断が難しいということがわかりました。とても勉強になりました。日々の診療の中、常に気を抜けないですね。

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チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)のお知らせ

2020年01月11日 | お知らせ

毎日寒い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?インフルエンザも猛威を振るっていますので、是非とも健康管理には注意してくださいね。

ところで、毎月恒例のさいたま赤十字病院チェストカンファレンス(胸部画像カンファレンス)ですが、今月1月は15日(水)の午後7時よりさいたま赤十字病院7階第3会議室にて開催いたします。興味のある方々は奮ってご参加ください。医師以外の方も大歓迎です。基礎的な症例から、興味深い症例まで色々な症例を用意していますので、よろしくお願いいたします。今年も皆様一緒に楽しく勉強していきましょうね。

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呼吸器内科をうまく利用してください。

2020年01月02日 | カンファレンス室

皆さま、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。現在インフルエンザが猛威を奮っています。我々も感染する可能性ないわけではないです。毎年のことですが、インフルエンザワクチンを打っているにも関わらず、発病しているスタッフもまあまあいます。是非とも注意していただけたらと思います。

昨年はスタッフ12人フル稼働で、さいたま市およびその周囲の呼吸器地域医療に貢献してきました。また、実臨床で経験できたことを学会発表、論文作成を通して情報発信も頑張ってやってきました。今年はスタッフが一人増員され、さらにパワーアップするのは間違いないとは思います。否、増員分以上の仕事をこなしていこうと思います。今まで以上にさいたま市民の皆様が呼吸器診療で不安にならないように誠意を尽くしていきたいと思います。

ところで、実診療において、我々呼吸器内科医はどのように関りをもっていけばいいのでしょうか?答えは簡単です。呼吸器症状を伴う患者さんにおいて、胸部聴診所見、胸部画像所見、血液検査、喀痰検査などを駆使しても診断がつかないときには是非とも呼吸器内科専門外来を利用していただけたらと思います。

先日60歳代の女性が紹介されました。2か月の経過の呼吸困難のようです。前医では胸部聴診上明らかな気管支狭窄音を聴取せず、血液検査上も炎症反応などなし、胸部レントゲン上も明らかな異常なし、重大な病態がないように判断できる状況ではあったのですが、本人の希望も当院を紹介受診しました。喫煙歴なく、受動喫煙歴もなしです。

自分が全身をくまなく診察をしましたが、胸部聴診を含めて明らかな異常なく、胸部単純写真上も呼吸困難を来すような異常所見を認めないと思いました。

我々は呼吸器専門外来を行っているわけですから、「念のため」に胸部CTを施行してみましたら、何と異常があったのです。

  

胸部CTにて右中葉支入口部に隆起性病変を認め、肺門リンパ節腫大を認めています。これは胸部単純写真では写らないですよね。

気管支鏡を施行、CT所見通り右中葉入口部はポリープ病変で閉塞し、気管支生検にて小細胞癌が検出、なんと肺癌(小細胞癌)と確定診断されたわけです。

(非喫煙者の小細胞肺癌なんて今まで1例も経験ないのに、それも驚きでしたが)

本人の希望通り、呼吸器専門外来に来てもらってよかったとは思ったのですが、もう少し詳細に問診してみると、症状出現頃より胸痛があり、体重も減少傾向とのこと。PET-CTを施行してみると・・

多発骨転移が見つかり、Ⅳ期という病期になってしまいました。

診察上も胸部画像診断上も全然大したことがないと思っていた症例のなかに、本例のような病状に進行を認めている症例が呼吸器疾患にはまあまああるのです。このような症例は自分をはじめとした呼吸器内科医が優秀なのではなく、胸部CTなどステップアップした画像診断をしなければわからない症例ということかと思います。胸部CTで100%呼吸器疾患が診断可能なわけではないですが、相当の診断率になるのではないでしょうか?

今の日本の医療では、胸部CTの意義付けは相当高いものと思います。特に呼吸器診療においては単純写真での診断に相当上乗せがあるかと思います。

日本における呼吸器内科医の位置づけは、とりあえず「胸部CTくらい撮って、確定診断ないし除外診断をしたいなあ?」と思える症例をきちんと診療することかと思います。我々さいたま赤十字病院呼吸器内科はなるべく早く紹介患者さんを診察できるように週50枠以上の紹介枠を用意しています。是非とも呼吸器内科への紹介の閾値を下げていただければと思います。

今年もお付き合いよろしくお願いいたします。

追伸。

年末に京都の鈴虫寺に行ってきました。和尚さんの楽しいお話を聞かせてもらった後、お札を手に持ち、祈願してきました。鈴虫寺では、ひとつだけ願いことを祈願してくれれば必ずかなうとの和尚さんのお話。「では、何を?」と考えたら、第一に思い浮かんだことは「健康」でした。ずっと健康でいられるように祈願してきました。人間にとって一番大事なことが健康であると自分自身にも言えるような年齢になってしまったのですね。皆さんも「健康一番」で今年を乗り切りましょうね。

 

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