先日呼吸器症例検討会にて漢方薬による薬剤性肺炎の発表がありました。薬剤性肺炎においては診断が何より大事ですが、確定診断にこれと言ったものがないことから、総合的に臨床診断しているのが現状であり、ある意味呼吸器内科医の腕の見せどころかと思います。
漢方薬による薬剤性肺炎は1989年に小柴胡湯による報告以降多数の報告があり、また死亡例の報告もあることから、日常臨床上注意が必要です。漢方薬自体色々な成分の合剤であり、どの成分が肺炎に関与しているかという疑問には完全なる答えがありません。原因成分としてオウゴンが最も高頻度で、その他柴胡、半夏、甘草、人参なども言われていますが、牛車腎気丸のように上記成分のまったく含まれていない薬剤の報告もありますから、本当に苦労してしまいますね。他の薬剤性肺炎と比較して薬剤内服後症状出現まで1ヶ月以上とやや長めの経過にも注意が必要です。
漢方薬による薬剤性肺炎症例において、診断後一番重要なことは今後漢方薬とどう付き合ってもらうかだと思います。日常診療において漢方薬をうまく使いこなすことは重要です。漢方薬をまったく使用せずに診療するのは意外と難しいかと思います。まず原因薬剤である漢方薬にどのような成分が入っているかを検討することが重要かと思います。確実なことは言えませんが、オウゴン、柴胡、半夏など薬剤性肺炎の原因成分が含まれている漢方薬であるならば、原因成分が含まれている漢方薬は極力内服しないような指導の徹底が必要と思います。原因薬剤のみを内服しないように注意しても再発を防ぐことは出来ません。原因成分も考慮した患者指導を徹底していただけたらと思います。もし原因成分がはっきりしない薬剤であったら?それは原因薬剤中止に加えて漢方薬内服後の咳、息切れなど症状をよく観察してもらうように指導すべきでしょうか?
近年漢方薬も市販されており、自分の意思で普通に手に入る薬剤です。薬剤性肺炎の原因薬剤としては決して少ないものではないですから、皆さんの方でも患者指導に努めていただけたらと思います。