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さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

空洞を来す疾患ですか?

2019年12月15日 | カンファレンス室

12月11日(水)の今年最後のチェストカンファレンスを開催いたしました。人数的にはこじんまりしていましたが、内容的にはとてもおもしろく、大変勉強になりました。来年も引き続き開催いたしますので、奮ってご参加ください。よろしくお願いいたします。

今回出させていただいた症例を簡単におさらいしますね。

①肺癌、癌性心膜炎(心タンポナーデ):呼吸不全、ショックにて緊急搬送された症例です。心拡大のみで明らかな肺水腫を認めないときに鑑別としてあげるべきかと思います。当然ながら癌性心膜炎の原因として最も多いのは肺癌かと思います。

②前縦隔腫瘍(セミノーマ):前縦隔腫瘍は4Tで覚えましょう。→胸腺腫瘍(胸腺腫、胸腺癌)、奇形腫(胚細胞性腫瘍も含めて)、甲状腺腫瘍、悪性リンパ腫(terrible lymphomaのTです)をカバー出来ればとりあえずは大丈夫かと思います。(画像所見、年齢など考慮すればもう少し診断を絞れるのではないでしょうか?)

③アカラジア:心陰影からはみ出るように上部から下部まで陰影を認めています。胸部レントゲンにて異常を指摘出来れば、胸部CTにて診断は容易ですね。レントゲンで指摘出来ることが重要かと思います。

④肺癌(粘液産生腺癌):多発浸潤影の症例です。「治らない肺炎(unresolving pneumonia)」ということで知識を整理していただけたらと思います。ちなみに「治らない肺炎」の悪性腫瘍はこの肺癌(粘液産生腺癌)とMALTリンパ腫が有名です。

⑤肺胞蛋白症:当院のカンファレンスでは毎回出てきますが、基本的には希少疾患のひとつかと思います。研修医の先生も感動してくれましたが、「メロンの皮のような陰影:crazy paving appearance」がよくわかり、本当にきれいな画像所見でした。

⑥乳癌にて乳房温存治療(腫瘍摘出、放射線治療後)の器質化肺炎:非区域性陰影(さらには葉間をまたぐような陰影)を見たら、器質化肺炎を考えましょう。器質化肺炎に特徴的所見とされているreversed halo signにも注目してくださいね。画像所見として器質化肺炎を疑い、病理学的に器質化肺炎に矛盾しない所見が得られたときに簡単に特発性器質化肺炎(COP)と診断しないで本例のように原因検索に努めてくださいね。クリプトコッカスなど感染後のOPもありますので、安易にステロイド治療をしないことも重要です。

今回は済生会栗橋病院の大久保先生が2例症例提示してくれました。

①数年の経過が終えた肺MALTリンパ腫の症例でした。均一に造影されているのが興味を持ちました。

②MDSによる大血管炎の症例です。血管炎の原因に梅毒を含めた感染症、薬剤、肝炎ウイルスなどのウイルス感染に加えて悪性腫瘍による大血管炎があることを初めて知りました。その中で造血器腫瘍が多く、さらにMDS(RAEB)が最も頻度の高い疾患であることを初めて知りました。MDSは二次性肺胞蛋白症を発症したり、医学的にはとても興味ある疾患のひとつですね。

 

当院から提示した最後の症例(メインイベント)ですが、40代の男性で、ぶどう膜炎、皮疹、胸部異常陰影の症例です。ぶどう膜炎の原因としてサルコイドーシスの可能性はどうかと眼科から依頼されました。呼吸器症状はありません。

胸部単純写真はサルコイドーシスらしくないとは思いましたが、よくわからず胸部CTを施行してみました。

  

胸部CTにて多発空洞性腫瘤を認めています。(一部単なる腫瘤影もありました)では、診断は何でしょうか?空洞を来す疾患は?「CAVITY」で解決出来ますか?

実を言うと本例は梅毒の症例でした。ブドウ膜炎の原因検索として梅毒検査を施行したところ、陽性になっており、さらなる診察にて陰茎に梅毒に矛盾しない皮疹を認めました。気管支鏡では他の原因菌は特定出来ず、梅毒による肺病変でいいかと思います。

梅毒の肺病変の報告は決して多くないですが、単発および多発結節、腫瘤影が有名で、症例の中では肺化膿症のような画像を呈することもあるようですが、今まで空洞を認めた症例報告はないことから、とても貴重な症例かと思います。抗菌薬投与にて胸部画像所見も改善してきているので、臨床的にも間違いないかと思います。今後胸部CTのフォローアップで確認していこうと思います。

空洞を来す疾患:CAVITYの「I]は感染症ですから、感染症の中に梅毒も入れておかないといけないと言うことですね。その症例提示後に防衛医大の杉浦先生から同じような画像所見を呈する梅毒症例を見せていただきました。もしかしたら調べていないだけで、まあまあいるのかもしれないですね。今後も注意深く見ていこうと思います。

今回のカンファレンスのなかで、「SALT(ソルトと読めばいいのでしょうか?」という言葉が出てきました。S:サルコイドーシス、A:エイズ、L:リンパ腫、T:結核のようです。この4疾患は色々な画像所見を呈する疾患と言うことで、放射線学的にはどんな画像所見でも鑑別に挙げなければいけない疾患にようです。確かに多彩な画像所見を呈しますよね。実臨床では常に注意を要する疾患ということで記憶しておいていただけたら幸いです。

来月は1月15日(水)に開催予定です。是非とも奮ってご参加くださいね。

 

 いつ見ても富士山はきれいです。

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