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さいたま赤十字病院呼吸器内科 『こちら彩の国 呼吸器科』

さいたま市近隣での呼吸器診療に興味のある、
若手医師、医学生の見学(平日)を歓迎します。ご連絡ください。

きちんと聴診していますか?

2018年11月24日 | カンファレンス室

さいたま赤十字病院は新病院移転後完全外来予約制になり、新患患者さんはすべて他の施設からの紹介患者さんということになっています。

当然ながら自分の初診患者さんもすべて紹介患者さんということになります。その紹介患者さんの中で某クリニックからの紹介がダントツ多いことに最近気づきました。そのクリニックの先生は以前私が若いころに色々指導していただいた先輩の先生であり、私のことを知っているということもあるかもしれませんが、それでもダントツに紹介数が多いのです。ちなみにその先生は呼吸器内科専門医ではなく、循環器内科専門医です。つまりそのクリニック自体の抱えている患者さんが非常に多く、その中で検診などレントゲンを撮るチャンスが多く、その結果肺疾患(胸部異常陰影)が見つかるという流れかと思います。あるとき、紹介患者さんの一人に某クリニックの患者さんが非常に多いという話をしていたところ、その患者さんが「〇先生は診察に行くときちんと聴診をしてくれ、その結果を説明してくれるので、真剣に診察してくれているという姿が伝わってくるのです。」とお話してくれました。確かに診察をするときに聴診を含め患者さんをきちんと診察するという姿は臨床医の基本であり、その基本に患者さんは意外と敏感になっているということかと思います。その先生は臨床能力的にも素晴らしい能力の先生であることは間違いないですが、患者さんの側に立っても素晴らしい臨床医ということだと思います。私は呼吸器内科医として聴診器を離すことが出来ない立場ですから、診察時にほとんどの症例に聴診をしますが、患者さんとの会話の中で「聴診してもらうのって何年ぶりですよ」なんて言葉まあまあ耳にします。びっくりするかもしれませんが、某大学病院の呼吸器内科から移ってきた患者さんのなかでも一度も聴診されていない患者さんがいるんですよ。せめて患者さんからは尊敬されるような診察の出来る臨床医でありたいと思います。

呼吸器領域においては今でも胸部聴診所見は重要です。これから画像診断がさらに進歩してもこの事実は変わらないと思います。

①気管支喘息の可能性を考えたときに、真剣に聴診しますよね。通常の聴診でラ音が入らなければ強制呼気にて聴診してみてください。軽度ですが喘鳴が聴取されたり、喘鳴が聞こえないまでも呼気延長などで疑うことが可能かと思います。

②間質性肺炎診療には胸部聴診(背部の聴診も)は必須です。IPFなど通常の間質性肺疾患であれば胸部レントゲンでも所見があり、胸部聴診所見からさらに診断に確信を持てることになるかと思いますが、意外とレントゲンにて異常を指摘しづらい間質性肺疾患もあります。その代表が過敏性肺炎かと思いますが、過敏性肺炎においても胸部レントゲンにあまり所見がなくてもきちんと聴診すれば異常を指摘できるはずです。(胸部レントゲン異常ないということで、聴診もせずに終診にし、後日当院にてHPと診断がついた某有名病院の患者さんがいました)

③急性経過のびまん性陰影の鑑別、例えば関節リウマチの治療中に出現したびまん性陰影、薬剤性肺炎、リウマチ肺、ニューモシスチス肺炎(PCP)の鑑別に聴診所見が生かせるのではないでしょうか?PCPではfine cracklesなどのラ音は入らず、薬剤性肺炎、リウマチ肺はラ音が聴取されます。聴診所見も鑑別には相当役に立ちそうです。

④肺胞蛋白症、陰影自体はとても派手ですが、胸部聴診所見はほぼ異常なしです。また、PAPの経過中fine cracklesなどラ音が聴取されるようになると、PAPの線維化が出現、進行しているという疑いが出てきますので、要注意です。

⑤急性経過のびまん性陰影、鑑別には必ずうっ血性心不全は上げなければいけません。間質性肺疾患ならばfine crackles、うっ血性心不全ならばcoarse cracklesと聴診所見が異なります。(当然ながらいつもそのようになるばかりではないですが)

⑥以前他の施設で気管支喘息と診断され、吸入ステロイド薬をずっと使い続けていた患者さんが後日左主気管支の気管支結核ということがわかりました。この様な誤診は実診療ではよくあるとのことですが、多分まじめに聴診すると、喘鳴の左右差などで鑑別がついたのではないでしょうか?

⑦急性経過の呼吸困難、心拡大の症例で、何気なく聞いた聴診にてfriction rubが聞かれ、心膜炎と診断つけられた症例の経験もあります。

心雑音など循環器系の聴診も合わせるとたくさんの情報が聴診から手に入れることが出来るかと思います。

まだまだ聴診所見の有用性の話題はあるかと思いますが、近年画像検査はじめ各種検査のモダリティーが増えている中で、胸部聴診も絶対になおざりにしてはいけない診察手技であることを是非とも頭に入れておいていただきたいと思います。聴診所見を大事にすることが立場、意味は違うかもしれませんが患者さんからも信頼される、優秀な主治医になるということも是非とも覚えておいていただきたいと思います。診察するにに聴診器を持っていないなんてもってのほかです。気をつけてくださいね。

先日家族で食事に行ったときに撮った新宿の夜景です。さいたま新都心も現在イルミネーションでとてもきれいですが、東京は当然ながらもっときれいですね。たまにはいいものです。

 

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