少し偏った読書日記

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宇宙の終わりに何が起こるのか

2024-10-11 10:44:38 | 読書ブログ
宇宙の終わりに何が起こるのか(ケイティ・マック/講談社)

宇宙物理学者が、現在の物理学で想定される「宇宙の終わり」について論じた本。

取り上げられている終末パターンは5つ。

1 ビッグクランチ
2 熱的死
3 ビッグリップ
この3つは、宇宙の加速的拡大をもたらしているダークエネルギーの強さによって違いが生まれる。1では、宇宙はやがて収縮に転じ、特異点につぶれてしまう。2では、すべてが拡散して無に帰す。3では、2よりもずっと早く、宇宙はばらばらに引き裂かれる。現在の観測事実から、2が最も有力視されているようだ。

このほかに、特異なパターンが2つ。

4 真空崩壊
物質に質量を与えるヒッグス場は完全に安定ではなく、「真の真空」に転移する可能性がある。すると、その泡は瞬く間に宇宙全体に広がり、すべてを飲み込む。将来の話ではなく、今すぐにでも起こりうるが、その可能性は極めて小さいらしい。

5 ビッグバウンス
超弦理論から導かれたブレーンワールドを前提に、2つのブレーン宇宙が衝突を繰り返すサイクリック宇宙論に基づく終末。宇宙は縮小と拡大を繰り返すが、その内部の物質が無傷で残存するわけではない。

2022年1月に紹介した、ブライアン・グリーンの『時間の終わりまで』では、2を前提に宇宙の進化と終末を論じているが、3~5にも言及している。

宇宙の終末について、多くの研究者がさまざまな研究をしていることが紹介されている。そして、いずれにしても鍵となるのは、量子重力とダークエネルギーの解明、ということらしい。