少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

英国のスパイ

2024-02-02 21:46:36 | 読書ブログ
英国のスパイ(ダニエル・シルヴァ/ハーパーBOOKS)

5週前に、この作者の『教皇のスパイ』を紹介した。ガブリエル・アロンを主人公とする作品はシリーズ化されているらしい。調べてみると、2000年以降22作が刊行され、第14作以降の9作品が、この文庫で翻訳されている。

その中で、題名だけをヒントに、面白そうな作品を探してみたのが、この1冊。スパイ小説といえば、ジョン・ル・カレだけでなく、チャールズ・カミングやミック・ヘロンも英国人。それに、スパイ組織が優秀なのは、英国とイスラエル、というのも定説だ。(多分)

冒頭で、英国の元皇太子妃が乗ったヨットが爆発する。実行犯として、IRA出身の爆破テロリストの名が浮上する。イスラエル諜報機関の長官に就任寸前の主人公は、英国当局から秘密裏に事件解決を頼まれる。彼が相棒に選んだのが、SAS出身の暗殺者だった。

シリーズ中の2作を読んだだけだが、レギュラー的な登場人物が多数いて、過去の因縁や遺恨もいろいろあるようだ。スパイ小説を、一定の質を保ちながらこれだけ長期に継続できるのは、それだけで賞賛に値する、と思う。(トム・クランシーのジャック・ライアン・シリーズはそれなりに長いが、私は第5作『恐怖の総和』までで読むのを止めた。)

スパイ小説だから、ロシア大統領が登場するのは当然だ。固有名詞は示されていないが、当然、あの人が想定されている。作者が巻末の「著者ノート」に人物評を載せている。「本物の政治信念は持っていない。私腹を肥やすのが好きな政治家で、権力をふりかざすこと以外は何も考えていない。」

私はその大統領を、政治家ではなくスパイマスターだと思っていたが、もはやスパイマスターですらないのかもしれない。

シリーズの他作品をどれだけ読むかについては、今後の気分次第、ということで。

画像は「イラストAC」から