少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

一人称単数

2021-02-20 09:00:00 | 読書ブログ
一人称単数(村上春樹/文芸春秋)

タイトルのとおり、一人称単数で書かれた短編集。

個人的な印象に過ぎないが、村上氏が数々の中長編を構想する中で、物語にぴたりと嵌まらなかったパーツを、短編に仕立て上げたような作品が並んでいる。だから、初期三部作や、『ウイーンの森』のような香りをまとった作品があるし、『東京奇譚』に収めたいような作品もある。(そのものずばりの『品川猿』もある。)

私はハルキストではないし、何冊読んでも、『風の歌を聴け』が一番好きだと思っているから、彼の作品を論じる資格はないと思っている。改めて古い文庫を読んでみると、独特の文体も、物語の深みも、最近の作品のほうが優れているとは思うが、そもそも『騎士団長殺し』を再読することはない。

田舎町の図書館でも、彼の作品はすぐに仕入れるし、田舎のことだから、結構早く借りられる。というわけで、実は彼の作品をほとんど読んでいる。『村上T』だって読んだ。愛読者というよりは、優れた文学者としてリスペクトし、読書人としての義務で読んでいる、という感じ。

もちろん、そのたびに十分楽しませてもらっている。