![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/aa/0ab08775c79fc2b06a6fac1ca0bf49c3.jpg)
イタリア製の古い食器棚には
ファミリーの長い歴史がたっぷり詰まっている。
マリアが何回も説明してくれる。
イギリス、スェーデン、ドイツ、ロシア、オランダ、トルコ…
たくさんの思い出と一緒に
ひとつひとつを愛おしむように。
私はまるでアンティークミュージアムを
眺めるような気持ちでこの棚をのぞき込むのが、
ここ数日の楽しみになっていた。
すると、昨日のこと。
そうそう、これは日本から来たお皿よ。
ブロンクスに持って帰ったらいいわ、と
奥から引っ張り出してテーブルに並べた。
マムのいとこが、第二次世界大戦後の
1950年代にミリタリーにいて
日本から持ってきたものだという。
力強い金色の龍。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4f/1e/5cb8e89502758a0ccb0faf02ff7c0982.jpg?1585077387)
指でそっと触ってみると
オレンジとグリーンの背びれの部分や
黄色のフチ部分は盛り上がっていて手書きらしい。
顔も良く見ると全部違う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/01/e4/b031e588acd0f4b40d6e74e12507907a.jpg?1585077416)
んー、日本らしいデザインかといえば、
ちょっと違うような?中国っぽいけど、
と思いながらひっくり返すと赤い文字で
たしかに、Japan と印刷してある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/57/fd956966e476728bdeb643efd2b01f5f.jpg?1585077357)
70年も前に漢字ではなく英語が使われているのは、
もしかしたら米軍基地用に作られたものかもしれない。
いろんな思いをめぐらしてみる。
そしてその昔、
お父さんがバミューダ諸島に海軍として
赴任していた時にマムが使っていたという
バラとタイサンボク(マグノリア)のティーカップ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5a/38/5163847079dfa0da25edad124c141eef.jpg?1585077310)
バミューダはイギリス領で
アフタヌーンティの習慣があり
一人ひとり違うカップを持って
お茶をしたらしいのよ。と教えてくれた。
これはヨーロッパ製なのだろうか、
色合いがとても美しく
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/34/3c482945bf87c187c5afa2b5cf5000f8.jpg?1585079377)
特にこのマグノリアのブルーと
紫のカップを何度か棚から出しては
うっとりとしていた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/64/31/2028737e9bf80c0dd82339993dd9e37b.jpg?1585079348)
これはどこで作られたのかしらね?
マリアが裏をひっくり返すと、
HAND PAINTED
MADE IN JAPAN
と描かれていた。
なんと、日本製。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/c5/a6410420db2b91e19a0e1d1d26d1a36d.jpg?1585077334)
遠い昔、日本から海を渡りカリブ海のバミューダ島へ。
そしてイギリス式のアフタヌーンティのために
アメリカンマリーン(海軍)たちの
ファミリーが愛用し、
そしてニューヨークを経て
ここペンシルバニアのカントリーハウスの棚で
長いこと眠っていたなんて。
そして今、日本人である私のもとに。
同時に古きMade in Japan の
中国風から西洋風までの幅広さにも驚くばかりである。
なんだか感慨深い。
東京のうちから一番近い神社が龍神さまで、
息子が少年野球時代の頃からお祭りやら
新年の挨拶などでとてもお世話になっていて
ご縁がぐっと近くなり、その後も
毎月、1人で、時には母と一緒に、
または友だちを連れてお参りに行き、
年越しはここでカウントダウンをして
初詣、お札と破魔矢を買い
町内会の有志の方々が振る舞う樽酒に
自分で塩を盛って升の角からグビっとして
さらにおしるこを頂く、というのが
楽しみで私の生活の一部になっていた。
ニューヨークに来て、
すっかり離れてしまっていたのに
急に龍神さまが目の前に現れてくれたようで
気持ちがふわっと温かくなった。
しかも金色に輝いて。
ましてこのタイミング。
ニューヨークが世界の中心地になるのも
時間の問題と言われている、
世界中が不安なこの時に。
大丈夫だよ、と励ましにきてくれたような
そんな気がしてなんとも心強い。